PBP2019: 本編⑪ St-Nicolas-du-Pélem~Loudéac(783km)

ばる

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22:36、WP: St-Nicolas-du-Pélem(738km地点)に到着。

情報通り、やはりここが復路のシークレットPCであった。駐輪場に入れる前に外のテントでブルベカードにチェックをもらう。

幸い、妻も私も眠気はまだ大丈夫。予防としてコーヒーを飲んでおくことにする。カフェでコーヒーとパンを注文。おばちゃんがなみなみと器にコーヒーを注いでくれた。気温が下がり始めるこの時間帯、温かい飲み物を入れておくのはカロリー以上の意味がある。

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23:00、出発。結構急いで出たつもりだが、なかなか滞在時間を20分以下にすることは難しい。

ここから今日の仮眠予定のLoudeacまでは45km。3時間で到着しておきたい所だが、既に今日の活動時間は22時間。途中に何度か仮眠を挟んだと言っても、スピードのキープは厳しいかもしれない。

しばらく走って違和感があった。往路で通ったSaint-Martin-des-Presを通っていない。というか、ルート上の風景に全くの見覚えがない。Loudeacの前のこの区間、それなりに街があった気がするのだが、ほぼずっと山の中を走っているのだ。


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後で地図で確認して分かったが、St-NicholasからLoudeacのルートは大きく前回とは変更されていた。赤が前回のルート、青が今回のルートである。この区間、前回は往復とも通っていないし、今回も往路では全く通っていないルートを抜けている。道理で見覚えがないはずである。獲得標高は大して増えていないが、大きな山が増えていた(といっても日本の山に比べると随分小さいが)。

山ばかりということは、必然的に暗い。暗いので写真もない。更に風景が変わらないので、どうにも同じ場所をグルグル回されているような錯覚に陥るほど。その影響から、妻が眠気を訴えることが増えてきた。


  「眠気を飛ばすために何か歌って!」


無茶振りである。え、今、一応坂を登っているんだけど? というか、そういうのって自分で歌うから眠気が飛ぶんじゃないの??

……とは思ったものの、論じても仕方ないので、歌うことにした。


  「◯◯◯◯た~~~!!
   ◯の◯◯◯~~~!! (権利対策のため伏せ字)」


フランスの夜空に響き渡るジャパニーズアニソン。曲目は某聖闘士アニメのオープニング。確か、ざくさんがキャノボの際に眠気覚ましに歌ったと言っていたのを思い出したので、真似をしてみた。なんか無駄にテンションが上って自分の眠気は吹き飛んだが、妻は眠そうだった。結局、楽しくなってしまい、そのまま3曲くらい熱唱した。やっぱり妻は眠そうだった。

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そしてLoudeacまであと20kmと迫ったところで、妻の眠気がついに限界を迎えた。

  「もうダメ! そこの芝生で寝る!」


今朝は霧が出ていて芝生が濡れていたので止めたが、現在は完全にドライ。止める理由はない。私は絶対やらないが

「先に行ってて」と言われたものの、大自然で寝ると言っている妻を置いていけるほど薄情ではないので、寝ている間の見張り兼タイムキーパーを引き受けることにした。「5分後に起こすよ」と言うと、妻はすぐに寝息を立て始める。Twitterでも見て時間をつぶすか……と思ったものの、無情の圏外。空を見上げると、星だけは綺麗だった。

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5分経った所で妻を起こし、続行。まもなく一番大きい山を越えて、道は下りに入る。恐らく遠くに見えている光がLoudeacの街だろう。ようやく登りも終わりか……と思ったが、再び山が始まった。この堂々巡り感。さすがに私も眠くなってきた。時刻は既に午前1時を回っている。午前2時には着いていたいと思っていたが少々厳しそうだ。

ここで今後のプランを考え始める。例えば2:10にLoudeacに到着したとして、そこからゴールまでの距離は435km。グロス時速15km/hで走れれば29時間で走りきれる計算だ。だがそう上手くは行かないはず。良くて14km/h。となると、31時間は掛かる。Loudeacを4:45に出れば残り時間はちょうど31時間。ということは、PCに滞在できる時間は2時間半。寝られる時間は賞味2時間あるか無いかだろう。

長く寝て、後から巻き返しを図るか。それとも、PCを早く出て、時間を少しでも取り返す方向にするか。

この時点での判断は後者だった。元々の予定からこの時点で3時間以上遅れており、焦っていたのかもしれない。睡眠というものは長い時間をまとめて取らないと、結局少しずつ何度も寝ることになって非効率である。しかし、そこに頭が回らなかった。それだけ私も疲れていたのだろう。

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二人してかなりヘロヘロな状態で、何とかLoudeacの街に入った。寝心地は悪いが、ようやく寝床に辿り着ける……。長い長い一日がようやく終わろうとしていた。


(つづく)
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