この記事は約 2分で読めます。
東京→糸魚川ファストラン2012 ④CP3: セブンイレブン信濃町穂波店~直江津
3CPを出ると、黒姫駅まではゆるい登り、そこをすぎれば野尻湖より先は一直線に日本海へのロングダウンヒルとなる。昨年の東京→直江津では余裕であった黒姫駅までの登りも、膝をやられた自分には果てしなく激坂に思えた。
黒姫駅を超え、野尻湖に差し掛かったところで、後ろから声をかけられる。Roubaix SL3を駆るSさんだ。
「一緒に行きましょう!」
ということで、暫くは自分が前を走る。・・・が、既にもう下りで回すだけで膝が痛む。そうこうしているうちに追い付いてきたのは、元・国体代表でもあり、川口車連の監督でもある菅原さん。昨年も2番目のタイムだった超強豪だ。野尻湖→日本海へは基本的に下りだが、時々登り返しがある。菅原さんが前を引くと、登りでも全くスピードが落ちない。なんとか付いて行こうと頑張ったが・・・
ピキッ
本日二度目の致命的な痛みが走る。右足が攣った。左膝をかばって右足に過剰な力が掛かっていたからであろう。いつかは来ると思っていたが、ついに来てしまった。こうなるともうペダルが回せない。ここで一旦ストップ。どんどん離れていくSさんの後ろ姿を見送った。
・・・さて、どうするか。ストレッチをし、アミノバイタルを飲みながら考える。ここからは下り+平坦とはいえ、後70kmはある。時間にして3時間弱、回せるだけの脚が残っているだろうか。今年はサポートカーがいるため、どこか目立つ場所で待っていれば回収してもらえるはずだ。このまま走り続けて膝の痛みを後まで引きずるのは得策ではない。
「リタイヤしたほうがいいんじゃない?」
自分の中の弱気が囁く。
「大人の判断」「勇気あるリタイヤ」「戦略的撤退」
そんなワードが頭に浮かぶ。
・・・しかし。怪我は直るが、悔しさとリタイヤした記録は残るのだ。
本当にそれでいいのか?
答えは「No」だ!!
そう思うと、走りだしていた。泥臭くてもいい、格好悪くてもいい、とにかくゴールだ!確かに、261さんに追いつかれないという目標は達成できなかった。11時間以内の完走も難しいだろう。だが、とりあえず完走さえすれば最低限自分を納得させることは出来る。社会人としては失格な判断かもしれない。だが、時として意地を優先させたいこともある。
暫く走れなくなったとしても、今日はなんとしてもゴールするのだ。
決意は固まった。下りではなるべく足を休めることに注力し、登りでは最低限の軽いギヤで登る。せっかくの下りで思いっきり回せないのは歯がゆいが、仕方ない。縮退運転でなんとかするしかない。
クランクを一回転する度に膝に痛みが走る。
一分間に数十回、何度も繰り返される激痛。
それでも脚は止めない。
ゴールするんだ。絶対に!!
-----
幾度クランクを回しただろうか。目の前には青く光る海が広がる。…日本海だ!下源入交差点を左折すれば、ゴールの糸魚川まで一直線。
あと50km。持ってくれ、俺の膝!!
(つづく)