富士3PEAKS 3rd Peak: スカイライン

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写真 2013-06-30_4

14:50、表富士登山競走のスタート地点である篠坂交差点をスタート。いきなり10%の斜度に面食らう。ただ、平均勾配は5%のはずだから、どこかで楽になるはず……そう思って登るが、一向に斜度は緩くならない。先ほどまで曇っていた空も、なぜかここに来て晴れだす。それまで15度前後であった気温は20度近くまで上がり、体から水分が際限なく奪われてゆく。

登り始めて8km地点で、ボトルの中身がほぼ底をついた。ヤバい……と思ったが、標識によると、あと2kmほどで西臼塚のパーキングがあるとのこと。確か、表富士登山競走の元々のスタート地点はそこだった(現在は篠坂交差点スタート)。それだけ大きい駐車場であれば、自動販売機か水飲み場くらいはあるだろう。残り少ないボトルの中身を飲み干し、2kmを登り切った。

西臼塚の駐車場に着いて絶望した。自動販売機も、水飲み場も無かったのだ。トイレ前に水道はあったが、「飲用水ではありません」の張り紙。

「そんなこと言っても飲めるんでしょ?」

と思って少し口に含んですぐに吐き出した。これは無理。見た目は透明だが、かなりの臭み。よく見たら、雨樋からタンクにホースが繋がっている。雨水を濾過しただけのものか……道理で生臭いはずだ。これは飲み水には使えない。

どうする……下るか?ただ、ここで下ってしまったら日没までのゴールは望めないだろう。あと2kmほど進めば、旧料金所があるはずなので、その周辺には何かあるかもしれない。しかし、この駐車場と同様、何も無いこともありうる。

そんな時、東屋で休んでいる年配のハイカーご一行の姿が目に入る。テーブルの上には食べ物と飲み物。……葛藤すること1分。腹は決まった。

「すみません……大変申し訳無いのですが、少し飲み物を分けて頂けないでしょうか?」

すると、快くスポーツドリンクを分けて頂いた。優しさが沁みる。ただ、若干「祖父母の家に遊びに来た孫」状態になってしまい、「これも食べて行きなさいよ」と、食べ物や飲み物を色々と頂いて、しばし談笑。そして、別れ際には「これでスタミナ付けなさい!」と鰻パイも頂く。ありがとう、おばちゃん。頑張るよ!!

西臼塚から2kmほど登ると、旧料金所に到着。予感は悪い方に当っており、自動販売機も店も何も無かった。正確には、全て潰れていた。どうやら、このスカイラインはスバルラインに比べると人気が無いらしい。

そしてここで、絶望的な勘違いに気付く。

「新五合目(標高2400m)」

あまりに驚いて落車しかけた。精々2000m程度だと思っていた頂上は、更に400m上にあったのだ。まさか渋峠より標高が高いなんて。平均勾配は1500m/27km=5.5%ではなく、1900m/27km=7.0%だったのだ。

料金所の標高は1400m。……あと1000mも登るだって!?後で調べたところ、スカイラインの新5合目は一般の車で行ける日本最高所らしい(舗装路の最高所は乗鞍だが、あマイカー規制が掛かっている)。ロードバイクが走行可能な道路としては、乗鞍に次いで日本2番目の高さというわけだ。

さて困った。あと1000mも登るなんて思いもしなかった。残り距離は13kmなので、平均斜度7.7%。これはかなり厳しい部類に入る。先週の糸魚川で痛めた膝もそろそろ悲鳴を上げてきていた。飲み物も、さっきおばちゃんに貰った500mlのスポーツドリンクのみ。あと1000m持つのか……?ただ、ここまで来て3Peaksを諦めることなんて出来るはずもない。覚悟を決めて料金所のゲートをくぐった。

――辛い。ひたすらに辛い。時速10kmも出ない時間が続く。あざみ+スバルで3分の2が終わったというのは、大きな間違いであった。精々、3割くらい。残り7割の辛さが、スカイラインに凝縮していた。ラストの登りはそれだけの辛さがある。溜まりに溜まった疲労が、体に襲い掛かってくる。思い出すのは、宇都宮山岳ブルベの「ロマンチック片道」。あのコースも、ラストに草津温泉から渋峠まで1000mを登らせる。ブルベならば一緒に走る人がいるが、今回は単独での挑戦。それが辛さに拍車をかける。

スバルライン同様、この道も100mごとに頂上までの距離を示すキロポストが立っている。登っても登っても、距離が減る気がしない。余計なお世話とはこのことだ。

ボロボロになりながら、ようやく残り5kmに至る。もう脚はパンパン。右膝の痛みも酷い。休むダンシングを織り交ぜながら、インナーローでだましだまし登る。時折「あーー!」とか「ちくしょー!!」と叫び声が漏れる。ロングライダースvol.1のいしこうさんの心境が、この時になってよく分かった気がした。「なんでこんなに辛いんだ!」と思う自分と、「でも、好きで来たんでしょ?」と突っ込む自分。ロングライド中、幾度と無く繰り返されるセルフ漫才である。

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17:50、3rd Peak: スカイライン5合目に到着!!結局、登り口から3時間もかかってしまったが、何とか日没には間に合った。3Peaks登頂完了までに、スタートから11時間と7分が過ぎていた。

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標高2400mということで、風景には期待していたのだが……あいにくガスっていてそこまで遠くまでは見えず。ただ、晴れた日ならば駿河湾を一望出来る事だろう。そういう日にもう一度登ってみたいものだ。

そそくさと飲み物を買って、下りの準備をする。本当は頂上で温かいものでも食べようと思っていたが、レストハウスは既に閉まっていた。どうやらハイシーズンである7・8月以外は15時で閉まるらしい。いくらなんでも早すぎだろう(笑) 思い返してみれば、スタートの篠坂交差点から、この5合目までの27kmの間には、店はおろか自動販売機すらなし。次にここを登る際には、十分な補給を持って登ることにしよう……でないと死んでしまう。

新5合目の気温は10℃を切って1桁。やはり標高2400mは伊達ではない。ウインドブレイカーとインナーグローブを装着してダウンヒル開始。気温的にはさほどでもないものの、やはり下りは冷える。ストップして寒さで痺れた手をマッサージしていると、5合目から下りてきたバスに追いぬかれた。……しめた!すかさずバスの後ろに着く。大型車の後ろは温かいのである。100mくらいの距離を保ち、付かず離れずのまま料金所まで。何とか凍えずに降りてくることが出来た。

 

次のエピソード
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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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