いってこいビワイチ1000 : 2日目 名古屋~琵琶湖~名古屋(332~670km)

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10/6 5:00、起床。

さすがにホテルのベッドで6時間半も寝るとスッキリさが違う。個人的には複数日に渡るライドの場合には、適当な場所での仮眠を何度も取るよりも、ちゃんと布団で寝られる場所で寝ることにしている。同じ時間の睡眠でも回復度合いが全く違うからだ。

スマホは睡眠中は機内モードにしていたが、起床直後に解除。妻からの連絡を確認すると、大体予想通りの時間にホテルに着いたようだ。事前の計画より長く寝られたようで、クローバー1200に比べたら滑り出しは上々である。「5:30ごろ出発する」とのことだったが、自分は5:45出発予定。少し後から妻を追いかける格好になる。

5:45にホテルのフロントに鍵を預ける。チェックアウトではなく、あくまで一時外出。今回は連泊なので。

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外に出ると、空気が生ぬるい。空は晴れているが空気は湿気を含んでおり、「これはひと雨くるかな」と感じた。ホテル前のコンビニで腹ごしらえをして、5:55ごろ再スタート。

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2日目は、名古屋から西に向かい、ビワイチをして、再び名古屋まで戻ってくる338km。特にコース的に辛いところはないが、台風の動き次第では雨と風に大きく足止めされることになるだろう。

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県道29号に出て西を向くと、どうも進行方向の雲行きが怪しい。明らかに黒い雲がある。今日も何とか逃げ切れるかと期待していたが、前半から雨具を着用することになりそうだ。

リスタートから10kmほど進んだところで、ポツポツと雨が降ってきた。予想より早い。まだ雨具を着るほどの勢いではなかったのでそのまま走行を継続する。

今回のルートは、木曽川を越えて揖斐川を越える手前で進路を北に変える。木曽川の上で雨脚が強くなり、一旦停止してレインジャケットとレインパンツを着用。グローブは、指抜きから軍手+テムレスに変更した。進行方向を見ると雲が低く、この雨はしばらく上がらないことがわかった。

しばらく川沿いを走ると、広域農道へ。信号もなく車通りも少ない道なのだが、いかんせん整備状況は良くない。そこに雨が降ったものだから、水たまりがあちらこちらに出来ている。当然そこを通れば水が跳ねるわけで、靴が少しずつ濡れてくる。先程レインウェアを着たものの、シューズカバーはまだ付けていなかった。さっさと付けなければ。

広域農道が終わり、揖斐川を渡る今尾橋で妻の後ろ姿を捉える。ホテルからここまでの距離は約40km。妻のほうが25分ほど先にスタートしているのだが、正直もう少し早く追いつくと思っていた。調子よく走っていたということだろう。そして妻は既にシューズカバーも含めて全身レインウェアを着用している。レインウェアを着るタイミングはなかなか難しいと思うのだが、今回の妻の決断の早さは素晴らしかったと思う。追いついて信号停止をしたところで、私もシューズカバーを着用した。

再び広域農道に入ると、雨脚は更に強くなった。

この辺りの風景には見覚えがある。2014年の本州一周で、加賀でリタイヤを決めて撤退する際、名古屋へと抜ける際に通った道である。あの時はたかだか数時間の雨に気持ちが萎えていたが、今は違う。止まなければ、雨具を纏って前に進むだけだ。

養老から関ヶ原への登りが始まるが、ここから妻とは別行動。関ヶ原への登りは、ルートを見る限り唯一の登りらしい登りである。だが、斜度は緩めでアウターのみで登りきることが出来た。

下りでトイレに行きたくなってコンビニに立ち寄り。用を足してコンビニを出ると、ようやく雨は上がった。このまま晴れてくれれば雨具が脱げるのだが……残念ながら少し進むと雨がパラついてきた。

PCまであと少し、米原駅の横を走っていると、前からゆーさくさんが走ってきた。「膝がダメです!!」とのこと。残念ながらリタイヤとなったようだ。

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10:33、通過チェック:セブンイレブン米原中多良店(411km地点)に到着。このコンビニでは、クローバー1200の時に食堂でお話しした方との再会があった。

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残念ながら雨は降り続いており、進行方向の雲も暗い。どうやらこれは雨のビワイチになりそうだ。

通過チェックを出発すると、すぐに琵琶湖の湖岸に入る。ここが約180kmのビワイチのスタート地点ということになる。今回のルートは反時計回りで、まずは北に向かって走る。

実はビワイチは未経験。琵琶湖の上を横切ったことは何度もあるのだが、一周はする機会が無かった。関東から来るにはちょっと遠いし、目的にするにはちょっと物足りない。とはいえ、「一周」は好きなので、実績を解除できるのは嬉しい。

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折角なので、琵琶湖の湖畔で一枚。琵琶湖一周の道は昨今の首都圏のように路上に自転車走行用の矢羽根マークがペイントされており、どこを走ればよいか分かりやすくなっている。また、風景がよく写真を撮るのに適した場所にはビューポイントであることを示す看板も建てられていた。これらの施策は2015年から始まったらしい。

爽やかな風景の中のサイクリングを楽しみにしていたのだが、実際にはかなりの勢いの雨の中を走ることになった。よくよく考えてみれば台風が通過する日本海側に向かって走っているのだから仕方ないのだが。幸いにも風は追い風であるが、それはつまり湖の北から折り返した後は向かい風ということでもある。

長浜市の市街地を過ぎ、ブリーフィングで危険と言われたトンネルを抜けると雨が上がった。この辺りで前にランドヌールが見えたので追いかける。追いついてみると、R東京スタッフの兼定さん(@i_kanesada)だった。自分の雨天装備の一部は彼を見本にしているのもあり、ちょっと観察させてもらった。

間もなく琵琶湖の北端を折り返すと、想定通りの向かい風。ここで兼定さんから、

  「次のPCまで協調して走りませんか!」

とお誘いを頂く。実を言うとこの程度の向かい風なら気にならないのだが、返事は「はい!」。兼定さんと走ったことが無かったので、一緒に走ってみたかったのだった。

奥琵琶湖の道は狭く、台風の影響か落ち葉や枝も多い。数kmごとに兼定さんと先頭交代しながら走っていく。雨は降ったり止んだり。「これはもう降らない」と踏んでレインウェアを脱いでも、少し走ると雨が降ってきて着なおす場面が多かった。途中から面倒になり、PCまではレインウェアは脱がないことにした。

兼定さんは私と同じく、GORIXの片手持ちフェンダーを後輪に取り付けていた。フェンダーの効果は実際に後ろを走ってみないと良く分からないので、この機会にしっかり観察。果たしてちゃんと仕事をしているのか疑問を持ちながらも使っていたのだが、思ったよりも後ろに飛んでくる水しぶきを防いでいる。見た目は頼りないが、今後も使っていこうと決めた。

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14:03、通過チェック:セブンイレブン滋賀新旭店(473km地点)に到着。雨はPC直前に強まり、雨雲レーダーを見ると周辺は緑色(強い雨)の雲に包まれている。とはいえ、雨天装備は完璧なので休憩もそこそこに走り出す。

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……が、安曇川駅前に来たあたりでバケツを引っくり返したような豪雨に襲われ、たまらず銀行の軒下に避難した。典型的なゲリラ豪雨で、すぐに雨脚は弱まる。

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少し待つと青空が。しかし、すぐそばに黒い雲が迫ってきており、また雨が降ってくることは明らかだった。

この時点で少しマズいことに気づいた。当初計画では、16:17に次のPC3に到着予定だった。新旭の通過チェックからの距離は54km。そして、妻からの連絡を見ると10㎞近く手前にいるようだ。新旭の通過チェックに着くのは早くても私が着いてから40分後の14:45前後と予想。このペースのままだとPC3への到着は18:45前後になってしまう。

台風による特別措置により、PC3以降は全て通過チェックになったので厳密な時間を気にする必要はないのだが、ここでの遅れは睡眠時間の減少に繋がる。睡眠時間の減少が走りに及ぼす影響は良く知っている。予定からの遅れをこれ以上拡大させないようにしなければならない。

雨が弱まったところを狙って走りだし、白髭神社の先にあった海沿いのローソンで一旦停止。ここで妻が来るのを待つ。次のPCまでの約45㎞をアシストすることに決めたのだった。向かい風という状況を考えると、風よけの有無で平均速度は1~2km/hは変わってくるはず。ここまでの妻のグロス速度は15km/h程度なので、1人で走ったらPC3まで3時間掛かる。しかし、アシストによって17km/hで走れれば、20分早く次のPCに着く。18km/hで走れれば30分早く着く。そこで稼いだ時間は睡眠時間になるのだ。

ここまで食事らしい食事を食べてこなかったので、久々にガツンと弁当を食べる。反射ベストを着た人が隣にいたので話しかけてみると、彼は大阪のスポーツバー「Grupetto」主催の走行会の最中だという。Grupettoさんとはご縁があり、不定期で開かれるライドイベントのイメージキャラクターのデザインを妻が担当している。そのことを伝えると、「世間は狭いですねぇ」という言葉が帰ってきた。

彼と会話しながら目の前の湖岸道路を眺めていると、時折ビワイチ1000とは逆の方向に走っていく反射ベストの人たちがいた。

 「彼らもGrupetto走行会の参加者ですかね?」
 「いや、この時間に北上していたら制限時間に間に合わないので違うかと……」
 「じゃあ他のブルベですかね?」

 
後日調べた所、同日に開催されていた近畿1000の参加者だったようだ。そうと分かっていたらエールの交換をしたのだが。ちょっと惜しい。

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15:55、妻が追いついてきた。待機中にすっかり雨は上がり、眩しいほどの日光が差している。

妻には時間が押しているため、次のPCまでは自分が前を引くことを伝えて出発。再スタート後は巡航速度を25km/h前後で走行するが、妻には疲れが見える。まだまだ全体工程の半分程度とはいえ、そろそろ走行距離は500kmを越える。600kmブルベなら終盤の距離だ。

雄琴温泉のあたりまでは調子よく走っていたが、この辺りから道が混みだす。17時を過ぎた時間と、市街地である大津が近づいてきているためだ。かなりの渋滞&信号峠。自分の設計するコースは都市型ばかりだが、走る方になってみると、確かに厄介であった。近江大橋より南に来ると、なんとか渋滞は一段落。そして、京都周りのキャノボでも通る瀬田川大橋を渡ってPCへとなだれ込んだ。

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18:08、PC3: ファミリーマート玉野浦店(528km地点)に到着。前の通過チェックで18:45到着と予想していたが、なんとか37分ほど取り返した。とは言っても、当初予定よりは2時間近くの遅れである。油断は許されない。

このPCでは、フォロワーのはるさん(@KSR1450)とお会いした。かなり我々より先行していたはずなのに、なぜここに……と思ったら、コースから外れて京都市街まで買い物に行っていたらしい。往復20kmくらい多く走っていることになる。なんというダイナミックコースアウト。

20分ほど休んで出発。PC3までで牽引終了と思っていたが、借金(予定からの遅れ)はまだ残っている。次の米原の通過チェックまでは牽引を継続することにした。

先程のPCがほぼ琵琶湖の最南端であったため、ここからは米原に向けて北上していく。先程までとは打って変わって妻の調子がいい。巡航速度を30km/h程度に上げても問題なく付いてくる。本人は「ネットゲーマーなので夜になると調子がいい」と言っているが、真偽の程は不明である。

夜の湖岸道路は車通りも少なく、路面も綺麗で走りやすい。信号もほとんど無いので、順調に距離を重ねていく。途中には、一時期「ガラガラすぎるショッピングモール」として有名になったピエリ守山の横も通過。19時過ぎの通過だったが、かなり賑わっていた。

しばらく順調に走っていたが、20時を回ったあたりで妻が付いてこられない場面が増えてきた。話を聞くと、

 「眠い!次のコンビニで止まっても良い?」
 
とのこと。ちゃんと眠さを自覚して止まれる判断が出来るのは大事。しばらく走った先にあったローソンに立ち寄った。

屋外のベンチで妻はタイマーをセットして仮眠開始。自分は特に眠くない(6時間半も寝ているので)ため、同じくコンビニに吸い込まれてきたランドヌールたちと話していた。やはり皆眠気が出てくる時間らしく、コーヒーを飲んでいる人が多かった。

10分後、起きた妻にコーヒーを渡す。眠気はちゃんと飛んだらしい。米原へと向けて再出発したが、その後はグロス20km/h程度で順調に進むことが出来た。

次の通過チェックの2kmほど手前の入江橋交差点で、「ビワイチ」完了。距離180km、所要時間は10時間40分ほど。結構休んだが、さすがに信号が少ないのでグロス17km/h程度は出ていたようだ。

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21:40、通過チェック: セブンイレブン米原中多良店(592km)地点に到着。PC2で予定からの遅れは2時間あったが、この64kmで1時間遅れを取り戻すことが出来た。ここまで約600km、経過時間は39時間40分なので、大体600kmブルベのギリギリ隊のタイムということになる。600kmを越えると要求される速度が12km/hまで低下するため、この先は少し気が楽になる。

ただ、再び妻は眠気が出てきてしまったので、私が食事をしている間にまたしても仮眠。その間に、フォロワーのおがさん(@Addict_Crawler)と会話。この方、1日目に抜きつ抜かれつを繰り返したVCRあおばジャージの方である。あれだけ早いのに何故同じ時間に同じ場所にいるのか不思議だったが、どうやら初めての1000kmでなかなかペースが掴めないらしい。「とりあえずホテルでたっぷり寝る!これが一番!」と僭越ながらアドバイスをしておいた。

15分後、妻を起こす。妻はこれから食事とのことで、再び別行動となった。

 「関ヶ原では、ライトをフル点灯するように!」
 「眠くなったら寝られそうなところで寝る!」

と言い含めて、一足先に出発した。

さて、約7時間ぶりのソロライド。なんとなく物足りなさを感じながら、関ヶ原への登りをこなしていく。ホテルまでの距離は78km。疲れているとは言え、4時間もあれば走りきれるだろう。現在時刻は22:00。ホテル到着は2:00と言ったところか。

関ヶ原は霧の中。試走レポートで「鹿が出た」と書かれていたので警戒していたが、特に動物とは出会わず。淡々と走り、養老から広域農道へ。お得意の平地区間ということで、下ハンドルを握ってTT開始。向かい風で思ったようにペースは上がらないが、それでもグロス20km/h程度で進んでいった。

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10/7 1:46、PC4: セブンイレブン名古屋篠原橋通2丁目店(668km)到着。はるさんが先着しているのを見つけて声を掛ける。琵琶湖南のPCで先に出られていたので追いつかないかと思ったが、意外と近くにいたようだ。

妻からの連絡を確認すると、18kmほど後ろにいるようだ。これなら3:00にはPC4に到着するだろう。ホテル近くのコンビニで食事を購入して、即ホテルに入った。

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2:00、金山プラザホテル(670km地点)に到着。20時間15分の「一時外出」から戻ってきた。当初予定より3時間ほど遅いが、エースを勝たせるための仕事をした結果なので悔いはない。しかし、翌朝の出発予定は6:36。このままだと寝られる時間は3時間半程度。妻に至っては2時間半程度になってしまう。1000kmブルベの二日目の睡眠としては少なすぎるので、ここは作戦変更が必要だろうと判断した。

シャワーを浴びて、風向き予報サイトをチェック。台風が過ぎ去り、どうやら明日は1日中強い追い風予報となっている。これは多少出発を遅らせても、遅れを取り返せる可能性は高い。ならば、その分をホテル滞在時間に使おうと判断。「翌朝の出発時間を1時間10分後ろ倒しにし、7:45出発にする」と妻に連絡。追い風が吹かなかったら破綻する可能性のあるプランだが、ここは睡眠時間をなるべく長く取りたい。安全に走るにはそれが不可欠だからだ。

寝る前に明日の準備。着るものと往復宅急便で送り返すものを分けて、送り返すものを箱詰め。さっさと寝たかったが、朝バタバタするのも嫌なので。

3:00就寝。起床予定は7:15。1日目より遥かに早く意識が遠のいていった。

(つづく)

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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