この記事は約 5分で読めます。
いってこいビワイチ1000 : 4日目 興津~石和温泉(904~1003km)
10/8 0:00、起床。睡眠時間は3時間ほど。隣のイビキおじさんは既にいなくなっていた。
スマホを確認すると、少し前に駿河健康ランド前を通過したとの連絡があった。途中で少し仮眠をしたので、タイムロスの大きい健康ランドはスルーするとのこと。様々な設備が魅力の健康ランドだが、仮眠までには、
・駐輪所に預ける
・受付を済ませる
・風呂に入る
・仮眠所まで移動する
と言うステップが要求される。それならばコンビニ前のベンチ等で少し目を閉じるほうがタイムロスは確かに少ない。
妻の健康ランド前の通過時刻は23:50。タイムアップは朝9:00なので、約100kmを9時間10分以内に走りきれば良い。途中で一度仮眠を入れても安全圏のタイムと言えるだろう。
-----
最終日である4日目のルートは、静岡の海沿いから富士川沿いに石和温泉まで北上する99㎞。川を上流に向かうので、当然登り基調となる。距離あたりの獲得標高で見れば、4日間で一番多い(それでも761mしか登らない)。
-----
0:25、駿河健康ランドを出発。深夜だが空気は生暖かい。台風の運んできた温かい空気がまだ残っているようだ。寺尾の押ボタン信号を渡って由比の旧市街に入るところで、香港からの参加者が記念撮影をしていた。日本人であり、やたらこの辺りを走っている自分からすると特に珍しい風景には見えないのだが、海外から来た人には珍しい風景なのだろう。
由比のファミリーマートで補給を済ませ、一路妻を追いかける。通過時刻から考えると、差は7-8km。次の通過チェックまでには追いつくだろうか。
富士川沿いに北上。富士川橋を過ぎると一気に街灯が減る。交通量もほぼゼロになるので走りやすくはあった。ライトの光量を上げて先を急ぐ。
-----
1:35、通過チェック:セブンイレブン富士川松野店(926km地点)に到着。ここで先着していた妻をキャッチ。既に出発しようとしていたので、「すぐに追いかける」と告げて先に行ってもらう。
由比のファミリーマートでの休憩から20㎞も走っていないが、ここから先はしばらくコンビニの無い「無補給区間」。トイレも済ませた上で、なるべく多くの食べ物を買い込んでおく。妻が急に眠くなった時に備えて缶コーヒーも買って、ポケットに突っ込んだ。
リスタートから2㎞ほどで妻に追いつき、何度目かのパックを形成。登り基調ということで、20km/hくらいのスピードでゆるゆると走っていく。
富士川沿いを南下したことは何度もあるが、北上するのは今回が初めて。予想外だったのは、時折現れる急斜度の坂。長さとしては1km以下のものがほとんどだが、これが何回も繰り返される。道中、一緒になったランドヌールたちは、
「通った覚えが無い坂を登らされてる!」
と口々に言っていたが、ルート自体は間違いなく往路で通った道と一緒である。妻に至っては、
「私たちがビワイチしている間に地殻変動でも起きたの!?」
とも。確かに自分としても、1日目は傾斜面を下っていた記憶しかないのだが、意外と急な斜度の坂を下っていたことになる。一瞬で終わり過ぎて印象にすら残らなかったということだろう。
身延線の内船駅前で一旦停止。ここは7月に行われた「ゆるキャンスタンプラリー」でチェックポイントだった駅だ。妻は一度訪れた場所をよく忘れるので「ここどこか分かる?」とテストしてみたが、今回はちゃんと覚えていた。小休止して補給を取り、再出発。
何度目かの坂で後ろから追いついてきたランドヌールに声を掛けられる。
「もう大きい坂はあと一つだけだから頑張ろう!」
この大きい坂というのは、身延市街地の手前にある坂のことである。こちらも南下方向でしか走ったことは無いが、時折10%以上の斜度が出現する急な登りである。恐らく逆側も結構な斜度なことは予想が出来た。
そして、登坂開始。これは確かにキツい。長さとしては1km以下、平均斜度も8%と言った所だが、950㎞走ってきた体には辛かった。妻が膝の痛みが出てきたとのことだったので、途中から押し歩いた。坂の頂上に辿りつくと、身延の街並みが目に入る。観光地としても有名な街であるためか、夜でも街灯が多く、夜景が綺麗だった。
坂を下って身延の街へ。ここで妻が「どこかで仮眠をしても良いかな……」と声を上げる。駿河健康ランドまでの道のりで仮眠をしたとのことだったが、やはり4日目ともなると疲労の色は濃い。眠いときには寝ておくべきだと思い、記憶の中にあったとある場所へ。
身延の街中には、富士川沿いにベンチがいくつかある。深夜であれば眠っても特に迷惑にはならないはず。ランドヌールのサガとでも言うべきか、ゆるキャンスタンプラリーでここを通った際に「仮眠に良さそうだな」と目を付けていた場所だった。
座ったまま寝るのかと思いきや、「10分後に起こして!」とベンチに横になる妻。そしてすぐに寝息を立てだす。自分は野外で寝るのがかなり苦手で、もっぱら寝るのはホテルか健康ランドの仮眠室と決めている。どこでも寝られるというのは、ロングライドに向いた才能であると思う。これは来年のPBPも乗り切れるかも……と思いながら、しばしTwitterを眺めた。
時刻は3:30。この日は台風後の追い風を狙い、大阪東京キャノンボールに挑んでいる人が大勢いた。残念ながら失敗してしまった人も多かったが、個人的に相談に乗っていたペチョニャスさんは調子が良さそうだ。メカトラなどが無ければ達成はほぼ確実だろう。
10分後、妻を起こして再スタート。波高島のトンネル脇から富士川を渡り、右岸へ。この辺りでは大声で「眠い!」と叫んでいるランドヌールがいた。気持ちはわかるけれど、制限時間にはまだまだ余裕があるんだから寝られそうなところで寝ような……。
4:28、966㎞地点のローソンで休憩。残りは36km、残り時間は4時間半。ほぼほぼ勝利は確定。念には念を入れて、コーヒーでカフェインを入れておく。夜明けの時間が自分的には一番眠くなるためである。
新割石トンネルまでの最後の登りを終えると、甲府の街並みが見えた。あそこまで行けばゴールだ!
逸る気持ちで先に進もうとするが、妻が千切れてしまう場面が多くなってきた。割と膝が限界を迎えているらしい。前回のクローバー1200で膝を痛めてからというもの、整形外科に通って治療を進めており、なんとか走れるまでには回復した。ただ、やはり1000㎞ブルベは厳しいもの。後半になって痛みが出た後は騙し騙し走っていたが、そろそろ耐え切れなくなっていたようだ。
ペースを落とし、巡航速度は18km/h。残り20kmを3時間10分で走ればよい。膝を痛めないように歩くような速度で走った。
-----
6:49、GOAL: 石和健康ランド(1003km地点)に到着!! タイムは、二人揃って72時間49分。2時間11分を残して、無事に1000㎞を走り切った。
そして、緊張のレシート確認。今回は通過チェックばかりではあったが、集めたレシートの数は12枚。果たして全て揃っているか心配だったが、無事にすべてのレシートがあることを確認。認定を頂けることが確定した。メダルをその場で購入できるかと思っていたが、残念ながら在庫切れとのこと。後日の発送を楽しみにしようと思う。
(つづく)