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PBP2019: 本編⑨ BREST~Carhaix-Plouguer(693km)
13:26、PC6: BREST(610km地点)に到着。
大西洋に面し、フランスでもっとも西に位置するこの街は「フィニステール(地の果て)」とも呼ばれる。色々あったが、ついに折り返し点だ。
BRESTの街に入ってすぐ、にわか雨に降られた。5分ほど休憩したにもかかわらず、到着時刻はCarhaix出発時点の予想よりも1時間早い。Carhaixからのグロス平均時速は17.7km/hと大きく回復している。
いつまでこのペースが続くか分からないが、これはまだ希望は潰えていないのかもしれない。
駐輪場に自転車を置き、急いでControlでブルべカードにチェックを貰う。その後はトイレへ。そして、こんなTweetを投稿した。
ブレストに来てやる気が出たらしいサメハル氏、前言を撤回し続行を決定。残り609km/45時間。どこまで行けますやら。 pic.twitter.com/sMo6pcszR1
— ばる (@barubaru24) 2019年8月20日
妻のDNF宣言ツイートとの整合性のためにこう書いたが、実は妻はずっと「やる気」だった。やる気を取り戻したのは、むしろ私の方である。しぶとさと諦めの悪さは妻の方が私より数段上だな、と改めて感じたのだった。
「どう? ワンチャン出てきた?」
妻の問いに頷く。
残り復路600㎞。駄目で元々、やってみようじゃないか。
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そうと決まれば、残りの600㎞を走れるだけの準備が必要だ。
まずはメカニックサービスに行き、フロアポンプを借りる。ブチルチューブとはいえ、最後に空気を入れてから二日半経ち、600㎞を走行している。案の定、1気圧ずつ落ちていたので、2台分のタイヤを全て7気圧に戻した。
次に、フロントバッグからオイルを取り出して注油。今回もオイルは愛用の「Vipro’s muon」。このオイルは持ちが良いが、それでも600㎞走ると潤滑性能が低下する。ここで注油しておけば、残り600㎞は持つだろう。
売店で補給を買い込み、次は道を挟んだレストランの建物内にあるカフェへ。妻にはカフェで食べ物を買うように頼んだが、何故かレストランの列に並んでいた。二つの違いをもう少し明確に教えておくべきだったかもしれない。ただ、BRESTのラタトゥイユは中々美味しいので、本心ではレストランで食事をしたかった。
カフェは行列もなく、すぐにパンとスープ、コーヒーを買うことが出来た。スープに塩を掛けて塩分補給をし、食べきれなかったパンは背中のポケットに詰める。ここからは無駄な時間をいかに減らせるかが勝負だ。
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14:10、BRESTを出発。ゴールのリミットは明後日の午前11:45。残り時間は45時間35分。ブルベペースと言われるグロス15km/hを維持すればゴールには間に合う計算だが、600㎞走った後にこのペースを保つのは辛い戦いになるだろう。
BRESTのPCを出てしばらくは街中の走行が続く。ルート上ではほぼ見ることが無い信号峠がここにはあった。
復路が始まってしばらくは往路とは異なる道を走るが、30㎞ほど走ると往路と同じ道に合流する。対向車線には今からBRESTへ向かう人たち。ヘルメットに貼り付けられたゼッケン番号を見る限り、84時間の部の人たちがほとんど。彼らは90時間の部よりも10時間程度遅れてスタートするので、この時間にすれ違う人たちは標準的なペースだろう。ただ、中には90時間の部の人も混じっている。彼らはここから苦しい戦いになるはずだ。
復路のRoc Travezelはあっさり通過。妻もペースは落ちてきていたが、まだまだ眠くは無さそう。
私の体に若干問題が出てきたのがこの辺りだった。どうにも左の尻の筋肉に痛みがある。普段良く出るのは右側の痛みで、左側はあまり経験が無い。ストレッチをすれば若干マシになるので、坂のたびに一人で飛び出して頂上でストレッチしつつ妻を待つリズムで走っていく。この痛みが悪化しなければ良いのだが……。
Roc Travezelの長いダウンヒルが終わると、再びCarhaixの街に入る。
往路のCarhaixではトイレとレストランの行列の長さで、かなりの時間を浪費した。そこで復路はPC直前のブーランジェリー(パン屋)に立ち寄り。前回のPBPの経験では、店内で飲食可能なブーランジェリーのトイレは綺麗だった。競争率も高くない。ここで補給とトイレを済ませて、次のPCは速攻で出る作戦である。予想通り、この店のトイレは綺麗だった。
パンを2個とコーラを買い、1つのパンは背中のポケットへ。もう1つのパンをコーラで流し込み、自転車に跨る。
ふと、道の脇を見るとマクドナルドが。前回、復路で立ち寄ったマクドナルドだ。ここで休んでも良かったかもなぁ……と思いつつ、時短を考えるとブーランジェリーがベストだったのだろう。ビッグマックに後ろ惹かれる気持ちはあったが、目の前に迫ったPCへと急いだ。
