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PBP2023: 本編⑯ PC13:Dreux~Goal:Rambouillet(1224km)
いよいよ最終区間。いつになく慎重に走った気がします。
PC13:Dreux~Goal:Rambouillet(1224km)
8/24 7:41、PC13:Dreux(1178km地点)に到着。クローズまで1時間39分の余裕があります。
前回とは違う側の入口からPCに入りました。Dreuxのサイクリング協会の方々が拍手でお出迎え。嬉しいですね。
最終PC、到着
ついに最終PCです。
そそくさとコントロールに赴き、ブルベカードに最後のPCスタンプを頂きました。
計画ではこのPCに2人揃って8:01に到着の予定でしたが、それよりも20分早く到着。ここまでほぼ計画通り。しかし好事魔多し、ここで気を抜いてはいけません。
前回のPBPから今回までの4年間のうちに良く見るようになったのが「将棋」です。
2020年にコロナ禍になってからというもの家にいる時間が増えましたが、Abemaが将棋中継を本格的に始めたことで将棋に触れる機会が増えました。
将棋は逆転の多いゲームです。終盤まで勝率99%の状態だったのに、1手間違えるだけで逆転負けになる様子を何度も目にしてきました。
それを防ぐにはどうするかと言えば、「最後までしっかり体力と時間を残す」。そして、その残った体力と時間を注ぎ込み、相手が投了するまでは一切気を抜かない姿勢が大事であると学びました。
私が好きな棋士は永瀬拓矢王座。彼の将棋は「負けない将棋」と言われますが、極端なほどに安全勝ちを目指すスタイルです。逆転の芽をあらかじめ摘みながら試合を運び、安全に勝ち切る。そんな彼の姿勢を見習い、今回のPBPは「いかに安全勝ちをするか」を考えて臨みました。いわば、「負けないブルベ」です。
残り距離46kmに対し、残り時間は5時間07分。要求時速はグロス9.2km/h。ママチャリでも何とかなるレベルに余裕があります。
将棋で言えば、勝率99%。詰みが出ている局面に例えられます。あとは安全に指し切れば勝ちですが、一手でも緩手があれば逆転負けとなってもおかしくありません。
落車・事故・パンク・メカトラ。この辺りだけは絶対に起こさないように、細心の注意を払おうと再び気を引き締めました。
最後の腹ごしらえ
記憶によれば、ここからゴールまでは補給できるポイントが少なかったはず。
そして、Dreuxのレストランはレベルが高いことを記憶していたので、ここでじっくり最後の腹ごしらえをしていくことにしました。
ここでスマホの電池が尽きたので、食事中はスマホを充電ブースで充電。残念ながら料理の写真はありません。今回のPBPは充電ブースを設定しているPCが増えていた気がします。
基本的に、PBPのPCには手軽に食べられる軽食コーナー(カフェ/バー)と、本格的な食事を食べられるレストランが別個に存在しています。
Dreuxは例外的にカフェとレストランが一体化しており、食べ物を手に入れるためには行列に並ぶことになる可能性が高いです。今回も行列になっていましたが、そこまで大きく待ちそうもないので、並んでいくことにしました。
GUTTIさんと偶然お会いしたので一緒に並んでいると、割と列は早く進んで行きました。
メインディッシュはラザニアと牛肉の煮物から選べましたが、今回は牛肉の煮物をチョイス。妙に盛りが良かったことでスタート前に行った「ブイヨン・シャルティエ」を思い出しました。フランスって牛肉が安いんですかね?
ここで食べようと思っていた、デザートのパリブレストは残念ながら売り切れ。残っていたケーキを取りました。
しっかり食べてエネルギーを充填。残り46kmと短いですが、身体にカロリーを行き渡らせるイメージで食べました。
リスタート
食後は、充電ブースからスマホを回収し、トイレへ。
駐輪場から自転車を出そうとしていると、日本人の男女二人(後で確認した所、よねだっくさんでした)に「もしかしてbaruさんですか?」と話しかけられました。ここまで一緒に走ってこられたそうで、完走は目前。私のサイトの情報がとても参考になったということでお礼の言葉を頂きました。
今回のPBP、出国時の羽田~フランス~帰国時の羽田と、割とコンスタントに「ブログの情報が役に立ちました」と話しかけて頂きました。これらの情報は自分たちの完走のために調査してまとめたものではありますが、「公開して良かった」と、Dreuxでお礼を言われた際に強く思いました。
話しかけてくださったお二人には、「でも最後の区間がまだ残っているので、そこだけは気をつけてくださいね!」と返した気がします。半分、自分たちに向けて言い聞かせた言葉でもありますが。
Dreuxを滞在時間59分で、8:41に出発。
ちょっと長めではありましたが、元々ここには50分滞在して8:50に出発する予定でした。予定より11分早いリスタートです。
直前に決まった迂回路は……
Dreuxの駅前を抜けて、郊外へ。
この先は直前で急遽ルート変更になった部分を通ることになります。
当初は池の北を抜けるルートでしたが、池をぐるっと南から迂回するルート変更になりました。スタート12日前の出来事です。池の北の道に工事が入るということで、これによって距離は3kmほど伸びました。
そろそろ池……という所でパラパラと雨が。雲の感じから見ると、しばらく本降りになる雰囲気はありません。というか、既に暑いのでレインウェアを着たくありません。どうせあと40kmも走ったらゴールですし、多少の雨は気にせず走ることにしました。
さて、この池の迂回路ですが。迂回路に入った途端に標高が下がり始めました。これは……登り返す流れじゃないか?
案の定、こんな道を登らされることになりました。最終区間で一番つらい登りだった気がします。もう少し良い迂回路あったのでは……ACPヒドイ!
街中の減速装置に注意
いよいよ最終盤。この辺りも小さな丘はありますが、基本的には平坦路となります。PBPでは貴重な平坦です。
前回はこの辺りでヴァントゥーさんに写真を撮ってもらいましたっけね。妻は4年前と同じジャージを着ています。
妙に壮大な写真が撮れました。妻とは「何かゲームのオープニングみたいだね」と話していた記憶。
ゴールまで残り15kmを過ぎたBéchereau(ベシュロー)という街で、今後のための資料写真を撮影しました。
PBPで通る街の多くは、制限速度30km/hの「ゾーン30」という区域に指定されています。その区域内は車を減速させるために様々な装置(段差や幅員減少など)が設けられています。
その中でも特に自転車にとって危険なのが、この写真の減速装置。ここだけではなくルート上に何箇所もありますが、恐らく今回のPBPでこれに引っかかって落車した人もいたのではないでしょうか。
この減速装置は4年前にはありませんでした(ストリートビューで確認済み)。この4年間で新設されたもので、明らかに見た目も新しかったです。
次回も恐らくこの減速装置は残るでしょうし、さらに新しい減速装置が導入されているかもしれません。次回の挑戦を考えている方は、街中に入った時に「路上に罠があるかもしれないぞ」と警戒するクセを是非付けておいてください。
1200kmの果てに
ついに残り10kmを切りました。
今回のPBPは、残り15kmから5km刻みで残り距離の表示看板が出ていました。こういうのを見ていると、なかなか距離が減ってくれないんですけどね。
残り8kmを切った所で、制限時間までは2時間20分ほどが残っていました。人間は徒歩でも時速4km出るので、ここから先は歩いても間に合います。
「もう今ここでフレームが突如崩壊しても歩いてゴールできるよ!」と言うと、妻から「フレームが崩壊したら乗り手も無事では済まないのでは……」と冷静なツッコミが返ってきました。はい、その通りです。
とはいえ、ここから先はパンクやメカトラが起きても時間内のゴールはほぼ確定ということです。一気に気が楽になりました。あとは落車と事故だけ気をつければOK。
スタート直後に通った並木道を逆に辿り、ランブイエ城の敷地が近づいてきました。
ランブイエ城の門をくぐり、敷地へと入りました。いよいよゴールは目前です。
ゴールタイムはこの緑の門の下にあるセンサーを通過した時点で読み取られます。通過の瞬間、ゴールは確定しました。
あとは数百m先にあるゴールゲートに辿り着けば真のゴールなのですが……
驚きました。ゴールゲート前の道は両脇に沢山の人。その人達が口々に「Bravo!!」と言いながら拍手で迎えてくれました。
2015年、当時のゴールであったサンカンタンはかなり閑散としており、全く盛り上がっていませんでした。そのイメージがあったので、ゴールをこんなに盛大に迎えてもらえるとは思っていなかったのです。
2019年はランブイエのゴールで盛り上がってはいました。しかし、時間外完走ということで素直にその盛り上がりを受け入れられませんでした。
しかし、今回は違います。全身で祝福の言葉を受け止めることが出来ました。
自分ではゴールの瞬間の動画は撮れなかったので、はまいぬさんの動画でお楽しみください。ゴール周辺の盛り上がりが伝わると思います。
(元々はツイート添付動画でしたが、許可を得てYoutubeにアップしています)
11:06、最後は妻とタイミングを合わせてゴールゲートを通過!!
スタートから88時間18分、1224kmの旅路が無事に終了しました。4年越しのリベンジ達成です。