この記事は約 10分で読めます。
2度目のハブダイナモ挑戦 -ディスクブレーキ編-
前輪ハブの回転で発生した電力を使ってライトを点灯させる「ハブダイナモ」システムに2度目の挑戦をしてみます。
まえがき
2度目のハブダイナモ挑戦に至る経緯についての説明です。
ブルベにおけるハブダイナモについて
日本のブルベではハブダイナモユーザーはそこまで多くありません。全体の1割程度でしょうか。それはここ10年くらい変わってない気がします。
ただ、海外に行くとハブダイナモの割合はかなり増えます。PBPでも、4割くらいの人がハブダイナモユーザーだった気がします。LELだと更にその割合は増えるそうです。
ロングライド玄人になればなるほどハブダイナモのユーザー比率は増える傾向にある気はしています。
1度目のハブダイナモ挑戦
過去にも一度、ハブダイナモに挑戦したことがあります。2014年のことです。
2014年のGWに予定されていた本州一周と、2015年夏のPBPに向けたテストとして2014年の初めにハブダイナモを導入しました。
どちらのイベントも充電の場所や時間が確保できるかが怪しいコースだったので、ライトの充電が不要になるハブダイナモシステムに魅力を感じたのです。
ところが、いざ使ってみるとかなりの不満が感じられるものでした。
ブルベでハブダイナモを使ったのは、ランドヌ東京主催の「東京400 ぐるっと富士山」のみ。このブルベは、奥多摩から柳沢峠に登り、そこから富士川沿いに南下、最後に箱根の十石峠を越えて帰ってくるというコースでした。
昼間に通過した柳沢峠はまだ良かったんですが、夜になってから登った十石峠が本当に地獄。夜になるとライトが点灯するのでハブダイナモの回転抵抗は大きくなります。ハブダイナモの消費電力は上限3Wですが、抵抗は10W程度と言われています。しかし、足に伝わってくる感触は10Wのそれではありませんでした。大量の重りをハンドルに吊り下げられたかのような抵抗感で、すっかり嫌になってしまったのを覚えています。
その後、1ヶ月位は試していましたが、やはり夜のヒルクライムでの重さはいかんともしがたく、使用継続を断念。その後、ハブダイナモホイールは売却しました。
重く感じた原因
その後はバッテリーライト一辺倒となり、しまいにはライトの研究本まで出してしまいました。
ただ、周囲のランドヌールには少数派ながらもハブダイナモを継続している人たちがいます。彼らは口を揃えて「抵抗はそれほど感じない」と言うのです。
その方々が鈍感(ブルベ界隈ではある意味褒め言葉)だという可能性はありますが、そもそも私が当時選択したハブダイナモシステムにも問題があったんじゃないのか?と思うようになりました。
当時私が参考にしたのが、「ランドヌール vol.4」に掲載されていた、杉田さんの構成でした。ほぼ彼の構成をそのまま真似しました。
■ホイール
ハブ: SON delux 32H
リム: DT RR440(21mmハイト・内幅16mm)
スポーク: DT Competition 32本
ニップル: 真ちゅうニップル 32個
■ライト
フロント: B&M Lumotec IQ2 LUXOS U
リヤ: なし
まずホイールですが、実測1070gでした。21mmのローハイトにもかかわらずこの重さ。当時使っていたユーラスの前輪が640gだったので、430gの増量。ほぼリム1本分だけ重くなっているわけです。
ホイール側
重くなった要因としては、もちろんハブダイナモシステムの要であるハブの重量があります。単体では実測していませんが、公称390g。通常のロードハブが100g前後と考えると、そこだけで約290g重くなります。ちなみに、SON Deluxはダイナモ用ハブとしては最軽量で、これより軽いハブはありません。
残りの140gはどこで生まれているかと言えば、スポークとニップル。ハブでの抵抗によりスポークに負担が掛かるということで32本スポークとしましたが、スポークが増えれば重量も増えます。
さらにスポークが増えれば、それをリムに固定するためのニップルも増えます。こちらも丈夫さを意識して、アルミではなく真ちゅうのニップルとしました。これも重量化に繋がります。
前輪のスポーク本数が増えると、重さが増えるだけではなく、空気抵抗も増えます。ユーラスが16本なので、スポークの本数は2倍。回転時にスポークが空気を切り裂く回数も2倍です。
また、21mmとローハイトなので、スポークの露出長が増えます。ディープリムの空気抵抗が少ないのは、リムハイトが高くなることでスポークの露出長が短くなることが大きいわけですね。
かくして、「重い&空気抵抗の高い」ホイールが誕生してしまったわけです。そこに発電時の抵抗も加わってくるわけで……そりゃあ重いよなぁという感じです。
ライト側
ライトはB&Mの「LUXOS U」というライトを採用していました。
こちらのライトから伸びたスイッチにはUSB出力がついています。ライトの製品名についてる「U」はこれの意味。
ハブダイナモを使っていた時代には、トップチューブバッグに入れたモバイルバッテリーを常に充電状態にしていました。こうすれば電池切れになることはないと思ったのですが……よく考えると、これも常に負荷が掛かってる状態になるということですね。
そもそも出力の安定しない電源で充電をするのは電子機器にとっては良くないので、あまり良い仕組みとはいえないかもしれません。
ディスクロードで再チャレンジ
「こりゃダメだ」と思って諦めた1度目のハブダイナモ挑戦から8年。
先日、ブルベのゴール受付で知人のMさんとライトの話をしていた所、彼が熱心なハブダイナモ派であることが発覚。そこでMさんからの「ハブダイナモはいいぞ」話を聞きました。更にその後、フィリップさんもロードに導入を決めたとの話が。
そこで頭に浮かんだのは、「ディスクロードでハブダイナモはアリなのか?」という疑問。
リムブレーキ時代はロングライド用途で考えるとアルミリムを選ばざるを得ませんでした。しかし、ディスクブレーキならば特にデメリットなく軽量なカーボンリムを選ぶことが可能です。
また、リムハイトを高くしてもそこまで重量が増えないので、3-40mmのミドルハイトにすれば空力的にも性能が改善されるはず。
そして、ディスクブレーキは元々スポークへの負荷が掛かる方式であり、フロントでも24本が基本。同じスポーク本数で組めば重量的にも空力的にも差も感じにくいはずです。
それでもハブの重量と発電時の抵抗は残りますが、その他の弱点はディスクブレーキにすることで消すことが出来ます。
果たして、これが許容できる範囲の抵抗に収まるのか? ちょっと興味が出てきたので、試してみることにしました。
ディスクブレーキ×ハブダイナモ計画
ということで、今回は「カーボンリムを使ったディスクロード用のハブダイナモシステム」を組んで見ることにしました。
どうせならライトは「最強のものを選ぼう」と思い、2022年現在で世界最強のハブダイナモ用ライトを選びました。
構成比較
1度目の構成と、2度目の構成予定を比較してみます。
1度目(リムブレーキ) | 2度目(ディスクブレーキ) | |
ライト | B&M「Lumotec IQ2 LUXOS U」 | Supernova「M99 DY PRO」 |
ハブ | SON「Delux QR 32H」 | SON「Delux 12 Center Lock 24H」 |
リム | DT「RR440 32H」 | Growtac「EQUAL 30mm 24H」 |
スポーク | DT「Competition」 | Sapim「CX-RAY」 |
ニップル | 真ちゅうニップル | アルミニップル |
計算通りに行けば、ホイール重量は880g程度になるはず。リムブレーキ時代よりも200g程度の軽量化に成功したことになります。
ライト
ライトは、2022年現在で一番明るい、Supernova「M99 DY PRO」を奢りました。
Supernovaはトライスポーツが国内代理店を務めていますが、この製品はまだ日本には入ってきていません。なので、今回はドイツの通販サイトで購入しました。日本のサイトにレビューは見当たらないですし、Twitterでも言及がないので、私が最初の国内ユーザーかもしれません。
このライトはドイツの道路交通法であるStVZOに準拠していながら、ロービームとハイビームを切り替える機能を持っています。
ロービームで700ルーメン、ハイビームで1000ルーメンという恐ろしい明るさ。これまでで一番明るかったのはSinewave「Beacon」だったと思いますが、それでも750ルーメンです。ついにハブダイナモ用ライトで1000ルーメンの大台に乗った記念すべき製品と言えましょう。
前に使っていたLumotec IQ2はルーメン値は公開されていませんが、恐らく2-300ルーメンだと思われます。3倍以上の明るさということになりますね。
そして、このライトにはUSB出力機能はありません。不要な機能だと考えていたので、逆に好都合でした。
ハブダイナモ手回し発電 pic.twitter.com/BV5Fye8zDR
— ばる (@barubaru24) November 26, 2022
とりあえずハブを手回しして発電。かなりの低速回転でも点灯することが分かりました。
なお、ダイナモ式のテールライトは配線が複雑になるので不採用です。
ハブ
ハブは前回と同じくSON Delux。ディスクブレーキ用のセンターロックバージョンです。穴数は24個。
なぜか国内に入ってきているのは32Hバージョンしかないので、こちらもドイツからの調達となりました。
手で回してみると相変わらず抵抗はありますが、「ゴリゴリ」というよりは「コリコリ」という感じで、若干マシになった感じはあります(気のせいかもしれません)。
ライトを繋いだ状態で手で回すと、露骨にゴリゴリ感が増します。妻にも触ってもらいましたが、「Tacx Neoで坂を登ってる時の感触と同じ」とのこと。Tacx Neoはフライホイールなしで電気によって負荷を調整しているので、実は仕組み的にはハブダイナモと全く同じだったりします。
リム
リムは、グロータックが近日発売を予告しているカーボンリムを使う予定です。
こちら。サイクルモードでも展示されていたもので、30/40/50mmが発売予定とされていました。
サイスポ8月号のオーダーホイール特集でもこちらのリムは取り上げられており、30mmハイトで368gとのこと。
これが販売されればすぐにでもホイール組みを依頼しに行くところなんですが、まだ発売時期が分かりません。
スポーク
ど定番のエアロスポーク、CX-RAYを予定。
32→24本にして、軽量化と空力性能の向上を狙います。組み方は普通に左右クロス。
また、前に使ったDTのスポークは丸断面だったので、それがエアロスポークになることでも少しは違いが出るはず。多分。
端子の工夫
ライトとハブは有線で繋ぐんですが、SONの通常版の端子は正直イマイチです。
こんな感じで、ハブの法線方向に差し込みます。これだと車体に取り付けた時に、若干ケーブルに負担がかかる形になってしまいます。
また、輪行時には抜き差しを行う必要がありますが、結構固い。無理に引っ張って断線した人もいるそうです。私も一度目のハブダイナモでは結構これに苦労しました。
そこで登場するのが、SON「コーキシアルアダプター」。別売りのオプション端子です。
こちらを使うと、このように接線方向に端子が入るようになります。また、抜き差しにも大きな力が要りませんし、防水性能もアップ。
ただし、この端子を使うにはハンダ付けをする必要があります。実は電子工学科出身の私、16年ぶりにハンダ付けをやりました。
ハンダごては持っていませんでしたが、830円で買えました。安い。
ホイール組み上げ
いつも通りサイクルキューブさんにお願いする予定です。
ONYXハブのホイールを組んでもらって一年、ブルベや日常のサイクリングで使い倒しましたが、コレといった不具合はなし。振れも出ておらず、今回も安心してお任せできます。
まとめ
「ハブダイナモ、二度目の挑戦をしますよ!」という宣言記事でした。
さすがにこれで「やっぱり自分には合わないや」となったら三度目はないと思います。最後のつもりでハブダイナモのテストですね。使い続けようと思えれば良いのですが。
あとはグロータックのリムが発売されるのを待つばかり。発売されたらすぐにホイール組みを依頼する予定です。
著者情報
年齢: 38歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。