3Dプリンタによる泥除け用ブリッジ

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3Dプリンタで、GE-110専用の泥除けブリッジを作って頂きました。

目次

GE-110に残る課題

「ブルベ用に設計されたエンデュランスロード」というGHISALLO「GE-110」。

積載のためのアイレットの多さや、走行フィーリング等はたしかにブルベ用として最適なものです。

ただ、一点だけ気になっているのは「泥除けの取り付けが考慮されていない」という点です。

泥除けが考慮されていない

時に数日間を走り続けるブルベでは、雨に遭遇する確率も低くありません。そんな時、必須なアイテムが泥除けです。

「雨が降ってきたらどうせ濡れるのだから、泥除けはあってもなくても同じ」と思われるかもしれませんが、雨天走行中に体や車体に掛かる水の半分は地面から巻き上げたもの。これが無くなるだけで被弾する水の量は大いに減り、これによって浸水の度合いがかなり変わってくるのです。車体に掛かる水も減り、チェーンオイルも流れなくなります。

GE-110はブルベについて真剣に取り組まれたフレームですが、泥除けについての言及は製品ページには全く無く、ちょっと残念には思っていました。積載用のアイレットはたくさんあるのに、泥除け用のアイレットは無し。後述しますが、昨今のエンデュランスロードには泥除けのためのアイレットを備えたものも少なくはないのです。

フロント側は「これ!」というものが決まっています。SKS「S-BOARD」。リムブレーキでもディスクブレーキでも使える優れもの。GE-110にも問題なく取り付けられました。

一方、リヤ側はなかなか「これ!」という決定版が思いつかずにいました。

ディスク時代のロードバイク用泥除け

ロードバイクは競技用自転車なので、ほとんどの製品において泥除けの取り付けは考慮されていません。とはいえ、通勤などに使うのに「泥除けが欲しい!」という声もありました。

以下、リヤ側の泥除けに限定して話を進めていきます。

使えなくなった泥除け

リムブレーキ時代は、「シートステーの間のブレーキの取り付け穴」「クイックリリースに挟み込む金具×2」という3点で保持するタイプの泥除けが多く発売されました。

しかし、時代はディスクブレーキに。シートステーの間にブレーキの取付穴はなくなり、スルーアクスルになったことで金具を挟み込むことも不可能になりました。

これにより、3点保持のものだけでなく、ブレーキの取付穴のみで保持するこのようなタイプの泥除けも使えなくなってしまいました。

Qbicle(キュービクル)タンジェントフェンダー ロードバイク用

クイックリリースに金具を取り付ける、QBICLEの泥除けみたいなタイプも使えません。

ディスクブレーキで使える泥除け

「ディスクブレーキ」かつ「泥除け用のアイレットがない」ロードバイクに取付可能な泥除けは今の所2タイプしかありません。

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一つは、シートポストにバンドを巻き、そこから伸びたステーがタイヤをカバーするタイプ。

私も数本持っていますが、ペダリング時にバンドが太ももに擦って気になるので使っていません。また、サドルバッグのストラップと場所の取り合いになります。

もう一つは、SKS「RACE BLADE」に代表される、左右のシートステーにアームを固定するタイプ。ディスクブレーキ時代になってから、この方式の泥除けが増えました。

この方式はブレーキシステムを選びませんが、シートステーに取り付けるアームの固定パーツがそれなりに大きいという特徴があります。

ブルベの場合は「テールライトを2個以上取り付ける」というルールとなっている団体も多いため、シートステーにテールライトを付けたいところですが……写真で見てわかるように、アームの固定パーツと位置が被ります

ブルベではサドルバッグのような揺れるものにテールライトを付けることは禁止されていることもありますし、シートポストには大型サドルバッグが付いている事が多いもの。結局、シートステーくらいしかテールライトを付ける場所がないのです。

各社エンデュランスロードの泥除け対応

そういった事情を汲んでくれているのか、昨今のエンデュランスロードには泥除けが付けられるように配慮されたフレームも増えてきました。

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前にこちらの記事で調べたのですが、北米ブランドのエンデュランスロードの多くは泥除けに対応しています。

TREK「DOMANE」

例えば、アメリカブランドのTREK「DOMANE」は早くから泥除けに対応していました。

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エンド部には泥除け用のアイレットを備えています。

また、シートステーの間にブリッジを後付け出来るようになっています。これによって、3点で泥除けが固定できるわけですね。

Cannondale「Synapse」

同じくアメリカブランドのCannondale「Synapse」も泥除けに対応しています。

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フレームにはエンド近くに隠しアイレットを備えているようです。

そして、こちらも専用のブリッジがあります。TREKと異なり、幅が可変になってますね。

Cervelo「Caledonia」

カナダブランド、Cerveloの「モダンロード」であるCaledoniaも後付パーツで泥除けが取付可能になっています。

このような感じで3つのパーツを増設することで泥除けに対応する方式です。

これまで紹介したTREK・Cannondaleはシートステーにネジ穴が開いていて、そこにブリッジをボルトで取り付けるという方式でした。

しかし、Caledoniaはフレームには穴が開いておらず、樹脂パーツで締め付ける形でブリッジを固定しています。

一応存在する汎用ブリッジ

実は、汎用のブリッジも存在します。NOGUCHI「フェンダーステー」です。

これは私も持っていて試してみたんですが、剛性が明らかに足りませんでした。

結局、このパーツの使用は諦めました。

3Dプリンタでブリッジを作れないか?

とりあえずシートステーの間にブリッジが付けられれば、1点固定の泥除けを付けることは可能になります。

ブリッジをフレームに付ける方式についても、Caledonia方式を見習って寸法を合わせれば、似たような後付ブリッジを作ることが出来るはず。

そんな事を考えていたら、最近3DプリンタにハマっているNAOさんから「作りましょうか?」というご提案を頂きました。

早速、GE-110のシートステーの太さ・幅・厚みを計測し、ブリッジの制作をお願いしました。参考までに計測データは以下の通りです。

A: (幅)15.4mm, (厚)12.4mm
B: (幅)15.5mm, (厚)12.4mm
C: 33.2mm
D: 27.6mm
E: 10.1mm
F: 37.0mm

完成した泥除け用ブリッジ

半月ほどして、完成したブリッジが送られてきました。

外観

材料は、PA12Carbon。カーボンを混ぜたナイロンだそうです。

裏面。ナットが埋め込まれています。

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最大の特徴は、CATEYEのテールライト用ブラケット・SP-11が取り付けられる形状になっていること。

私は当初タイラップ留めをイメージしていたんですが、NAOさんの提案でSP-11ブラケットを採用することになりました。

組み立てた図。上部にはGE-110専用を示す文字入り。

取付

フレームにブリッジを取り付けます。

SP-11ブラケットの固定力は凄まじく、かなりガッチリ固定できます。

裏から見るとこんな感じです。

そこに一点固定タイプの泥除けのステーを取り付けます。

今回は、定番の泥除けの一つであるFLINGER「SW-670FR」のリヤ用を取り付けています。

完成図です。

本来、泥除けは出来るだけタイヤに近づけたほうが効果が高いのですが、この泥除けは結構しなるので少し離しています。タイヤと擦ることは避けたいので。

ブリッジ+泥除けで重量は約100gでした。

実走

雨は降っていませんが、走行中に問題が起きないかを確認してきました。

前述の通り多少しなる泥除けなので揺れはします。ただ、根本がガッチリしているのでタイヤに触れるまでは行きません。走行中も振動が気になることはありませんでした。実用には十分そうです。

これでテールライトやサドルバッグと場所の取り合いをすること無く、泥除けを使えるようになりました。

今後の展望

今回は一点固定タイプの泥除けを付けましたが、3点固定タイプの泥除けもやり方次第では使えるはず。

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DAVOSのキャリア用スルーアクスルを使えば、リヤエンド部にアイレットを増設することが可能になります。

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OnebyEsuのミドルフェンダーのようなタイプの泥除けも付けられるはずです。

まとめ

3Dプリンタで泥除け用のブリッジを作ってみたという話でした。

こういった3Dプリンタモノは何往復かしてようやく完成……というイメージを持っていたので、一発目でこんな要望にピッタリのものが出来るとは思っていませんでした。NAOさん、素晴らしいです。

次の雨ブルベには、このブリッジを使って泥除けを取り付けて臨むつもりです。


出来ることなら、他社のエンデュランスロード同様に、こういったブリッジを純正オプションとして欲しかったというのが本音です。

……今からでも追加の純正オプションで出してくれたら、私は買うと思いますし、喜ぶユーザーも多いんじゃないでしょうか。フレームのキャラ的にも泥除けを使いたい人は多いはずですし。前述の通り、リヤエンドのアイレットはDAVOSのスルーアクスルを使えばOK。そしてDAVOSはGHISALLOと同じくフカヤのブランドですからね。

フカヤさん、是非ご検討を宜しくお願いします。

著者情報

年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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