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アルテホイール(WH-R8170)のスポークテンションについて
ホイールのスポークテンションを推奨範囲内で上げたところ、乗り味が変わった件についての記事です。
導入
先日、ディスクブレーキ用のホイールを新たに購入しました。
購入したホイール
購入したのは、「WH-R8170」。新型アルテグラのホイールになります。
新型アルテグラのホイールは、36mm/50mm/60mmハイトがラインナップされており、前後別売りされているのが特徴。今回は、「前36mm」「後50mm」の組み合わせで購入しました。
購入理由
先日、La routeのインプレ企画に参加させていただきました。
アルテグラホイールの3種類のハイトを乗り比べて、その感想を安井さんと話し合うというもの。記事は近日公開予定。
36と50と60。#ultegra #whr8170 pic.twitter.com/1dgqLRMEYW
— ラルート (@laroutejapan) April 9, 2022
そこでの乗り味が忘れられず、買ってしまったというわけです。
本来は行きつけのショップで買おうと思っていたのですが、折からのパーツ不足で入荷は夏以降とのこと。
ネット通販を探したら在庫を持っている店が少ないながらあったので、(行きつけのショップには申し訳ないと思いつつ)そちらで購入しました。なお、本当にどこも在庫が無いようで、今回は前後別々のショップで買うことになりました。
乗り味が試乗時と違う
さて、早速ホイールを取り付けて乗ってみたんですが。
……あれ、なんか乗り味が試乗時とぜんぜん違う。La routeの企画で試乗した時とは別物。ポジティブ方向なら良かったんですが、残念ながらネガティブ方向の変化でした。
具体的には以下のような感じです。
① 漕ぎ出しの反応が悪い。
② 巡航状態から加速した時に「後ろから押し出されるような感覚」が消えている。
③ 自転車の後ろ側が若干沈んでいる気がする(いつもよりハンドルが高く感じる)。
端的に言えば「モッサリしてる」ということになります。
空気圧が低いのかと思いましたが、ちゃんと試乗時と同じ7気圧まで入っていました。
空気圧もそうですが、タイヤもアジリストの25Cで同じ。フレームも同じ。試乗時と比べて機材面での条件は完全に揃っているはずなのです。
となると、怪しいのは「スポーク」です。具体的には後輪(C50)のスポークテンション。
ホイールには適したスポークテンション(張る力)があるはずですが、それが低いのではないか?というのが私の仮説。①と②もスポークテンションの低さに由来しそうですが、③が決め手。タイヤの空気圧が適正なのに、自転車の後ろ側が沈むのは、恐らくそういうことではないかと。
スポークテンションの確認と修正
残念ながら私はホイール組みに関する知識も経験も無く、家に工具もないので、行きつけのショップでスポークテンションを見てもらうことにしました。
電話をすると朝イチの作業枠が開いているとのことだったので、小雨の中を訪問。
テンションの確認
早速店長に後輪のテンション確認を依頼しました。
タイヤに空気が入っているとスポークテンションが下がるとのことで、タイヤの空気を全て抜いてから確認が始まりました。
今回使っていたのはパークツールのテンション確認工具。てっきりデジタルで値が出るのかなと思ってたんですが、意外とアナログ。スポークの太さで値が変わってしまうので、なかなかデジタル化は難しいとのお話でした。高級なものだとスポークのパラメータを入力することでデジタル表示してくれるものはあるようです。
後輪のスプロケ側のスポークを何本か確認した店長はおもむろに口を開きました。
「これは明らかにテンションが低いですね。
大体カーボンリムで後輪スプロケ側だと120kgf前後になるのが普通ですが、
こちらは100kgfしかない。」
やはり。その20kgfの差分がどれくらいなのかサッパリ分かりませんでしたが、低いことだけは確かなようです。
適正なテンション値は?
では次に問題となるのが、「このホイールの適切なテンション値はどの程度なのか」というもの。
一番確実なのは試乗の時に乗ったアルテグラホイールのスポークテンションを測定することですが、あのホイールは既に返却されているはず。
他の個体を確認するという手段も考えられますが、そもそもが現在は品薄で手に入らない製品です。
ではどうすれば……と思ったんですが。「シマノだったらディーラーズマニュアルに書いてあるんじゃね?」と思ってググって見みました。
なんと、かなり細かく値が書いてありました。ちなみにマニュアルはこちらから確認できます。
こちらの表を見ると、後輪である「WH-R8170-C50」の後輪右側(スプロケ側)のスポークテンション値は「950-1250N」となっています。
店長が言っていたスポークテンションの単位は「kgf」なので、値を換算してみると、「97-127kgf」という範囲になります。
私のホイールの後輪右側のスポークテンション値は100kgfですから、適正範囲内には収まっているものの、ほぼ下限の数値ということになります。
これで私の感じていた違和感に数値的な裏付けが取れたことになります。気のせいじゃなかった。
テンション値の是正を依頼
ということで、後輪右側のスポークテンション値を120kgfまで引き上げてもらうことにしました。
右側だけ上げるということは出来ないので、左側もそれに合わせてスポークテンション値を上げてもらいました。
一応、前輪もテンション値の確認を依頼。ただ、こちらは左右ともに上限近い値となっており、特に問題はないとのことでした。
修正後
後輪のテンション値を修正後、早速10kmほど走行してみました。
結果
試乗時の感覚が戻りました。
加速性能は復活し、巡航も2km/hほど向上。そして、後輪が沈み込む感触もなくなりました。
もちろん試乗して購入に至ったのは「欲しい!」と思わせるだけの感触があったからなのですが、その感覚がようやく私の個体にも戻ってきたわけです。
地面からの突き上げは多少キツくなった感覚はありますが、それはタイヤの空気圧を落とすなりでカバーすれば良い話。加速性能が戻ってきたことが大きいです。
考察
やはり仮説通り、「後輪のスポークテンションが低かった」というのが今回の違和感の原因だと思われます。
恐らくですが、私がLa routeのインプレ企画で試乗した個体(WH-R8170-C50)はシマノの定めた適正範囲内で上限近いスポークテンションとなっていたものと推測されます。
方や、私の手元の個体は適正範囲の下限値でした。確かに低い値ではありますが、「適正範囲内に収まっているので問題ない」として出荷されたのでしょう。
どちらも適正範囲内の話なので何とも言えませんが、恐らく「WH-R8170-C50の本来の乗り味」はテンション是正後(後輪右側120kgf)の方のはず。
今回はたまたま私が試乗をして「本来の乗り味」を知っていたので、スポークテンションの低さに気づくことができました。
しかし、もし試乗をしていなかったらどうだったか。テンション値の低い状態を「本来の乗り味」と思い込み、「所詮アルテはこんなもんか」と判断していたはずです。
「購入店で好みに合わせて調整してください」ということなのかもしれませんが、ちょっと不親切に感じますね。メーカーとして考える一番オススメな状態で出荷してほしいものです。
まとめ
スポークテンション値が推奨範囲内であっても、下限と上限ではかなり感触が変わる……という話でした。
「完組ホイールと言えど、出荷時のスポークテンションにはそれなりにバラツキがある可能性がある」というのは知っていましたが、体感できるほどの感触の違いを生むとは思っていませんでした。試乗時にあれだけ良いと感じたホイールが、テンション一つでここまで魅力を失うものなんですね。
今までスポークテンションには全く興味を持っていなかったんですが、少し興味が出てきました。
ようやく「本来の乗り味」を取り戻したWH-R8170。楽しんで乗り回そうと思います。
追記
ファーストインプレッション記事を書きました。
著者情報
年齢: 37歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。