キャノボ1回あたりの補給量

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キャノボの補給について考えます。

「キャノボ中にどれだけ食べればよいのか」を熱量(カロリー)ベースで考えていきます。

※私自身が生化学に詳しいわけではないので、最新の研究内容とは異なることを書いている場合があります。あくまで目安とお考えください。

目次

消費する熱量

まずは、キャノボを達成ペースで走る場合、どれだけの熱量を消費するのかを考えてみます。

色々な計算方法はあると思いますが、今回は過去記事「キャノボ達成に必要な出力」で算出したパワー値から推測します。計算の結果、求められた出力は168Wでした(無風、走行21時間、停止3時間の場合)。

1Wで1時間の運動をした場合、体から消費される熱量は約4kcalであると言われています(個人差はあります)。停止時間を除いた走行時間を21時間とすると、運動によって消費される熱量は以下で近似できます。

  168[W] × 4 × 21[h] = 14112[kcal]

また、基礎代謝分の熱量も、もちろん消費します。基礎代謝は、年齢/筋肉量/体重に左右されますが、概算だと、体重1kgあたり24kcalとなります。65kgで標準的な筋肉量の20代男性の1日の基礎代謝は、

  65[kg] × 24[kcal/kg] = 1560[kcal]

となります。つまり、キャノボ1回で体が消費する熱量は、以下となります。

  14112[kcal] + 1560[kcal] = 15672[kcal]

最後まで動くためには、これだけの熱量が必要であるということです。もちろん、追い風ならもう少し少なくて済むでしょうし、逆に向い風ならば更に多くの熱量が必要となるはずです。気温によっても左右されると思うので、あくまで目安とお考えください。

摂取すべき熱量

消費する熱量は分かりました。では、どれだけの熱量を摂取すれば良いかを考えてみます。

キャノボは1日で終わるチャレンジです。何日も走り続ける場合は消費する熱量に相当するだけの食べ物を食べ続ける必要がありますが、1日で終わる場合は消費する熱量の一部を摂取すれば問題ないはずです。足りない分は、体に蓄えられたエネルギー(グリコーゲン・脂肪等)で賄われます。

まずはグリコーゲンについて。肝臓や筋肉に蓄えられたエネルギーです。筋肉量や年齢にもよりますが、ざっくり成人男性で1500-2000kcal程度とされています。この量を増やすのが有名な「カーボローディング」で、正しく行えれば約2倍のエネルギーを蓄えられるとも言われています(特にやったことがないので詳細は不明)。ここでは仮にグリコーゲン量を2000kcalと置きます。

 15672 – 2000 = 13672[kcal]

なので、まだ13000kcal程度の熱量が必要です。

次に体内の脂肪について。体脂肪はもっとも大きいエネルギー源ですが、容易に無くなってくれないのは皆さんご存知の通り。ただ、キャノボにおいては重要なエネルギー源です。

運動時は糖質と脂質が消費されますが、その消費される熱量の割合は運動強度によって変わると言われています。強度が低いほど脂質の使用割合が増え、強度が高いほど糖質の使用割合が増えます。例えば、最大心拍数の7割程度の場合、糖質55%:脂質45%程度の割合になると言われています。

7割の心拍数で走った場合に脂質で賄えるエネルギーを計算してみると、

 13672 × 0.45 = 6152[kcal]

つまり、経口摂取すべき熱量は、

 13672 – 6152 = 7520[kcal]

と言うことになります。スタート前に食事(800kcal想定)をしたとしても、走行中に6720kcal分の食べ物を摂取する必要があると言うことです。

ここで、「じゃぁスタート直前にラーメン二郎(約2000kcal)を食べておけば、走行中の補給量は減らせるんじゃ?」と思う方もいるかもしれませんが、それはあまり良い方法とは言えません。血液が消化器に取られてしまい、筋肉に十分に行きわたらなくなるからです。それに、単純に食べ過ぎは気持ち悪くなる可能性がありますし、トイレによるタイムロスも考えられます。なるべく小分けに、多すぎず少なすぎない量を摂るのが良いでしょう。

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ちなみに、私がキャノボ相当のライドをしたとき(2015年Fleche、大阪→東京、23時間49分)にライド中に摂取した熱量をレシートから計算すると、6548kcalとなりました。計算で出た6720kcalには少し足りていません。ただ、この時は若干の追い風だったので、必要な熱量は少なくなくて済んだはずです。

ライド中に空腹によるパワーダウンは感じなかったので、摂取量は足りていたはず。計算結果とは大きくズレてはいないのではないかと考えています。

どのように摂取するか

前述のように、走行中に摂取すべき熱量は6720kcalと計算されました。これをなるべく小分けにして食べることを考えます。ルーチンワーク的に食べると忘れることが無いので、私はこうしたファストライドではスタート時間から1時間ごとに、持っている補給食を食べていくことが多いです。

ということで、6720kcalを24時間に分けてみると、

 6720[kcal] ÷ 24[h] = 280[kcal/h]

となります。1時間あたり大体280kcalを摂取すると、最後までエネルギー切れにならない可能性が高いと思われます。

そして、これは体内のグリコーゲンを使い切った上での値なので、摂取すべき最低限の熱量となります。余裕を持つならもう少し食べたほうが良いでしょう。

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「1時間ごとに食べる」方法を取ると、「コンビニで買うべき食べ物の量」を逆算することが出来ます。例えば「次のコンビニまで3時間掛かる」となると、大体900kcal分の食べ物を買っておけば良いと言うことになります。ミニようかん1本で約180kcalなので、大体5本といった具合に計算できます。ただ、途中に山岳(箱根や金谷峠など)が挟まる場合は、少し多めに食べ物を買う必要があることに注意してください。

何を食べるか

これがとても難しい。即エネルギーにしたければ糖質でしょうが、脂肪も遅れてエネルギーになるとも言います。タンパク質を取ると筋肉に良い気もするし。

foodpic8337791.jpg

参考までに、私の場合は以下のものが多かったです。

 ・チョコバー(ブラックサンダー・キットカットバー)
 ・おにぎり
 ・パン(薄皮4~5個入り)
 ・スポーツドリンク
 ・飲むヨーグルト

大体このループ。そして100kmごとくらいにBCAA。普段はこれらの他にミニようかんも良く使います。基本的には糖質メインの補給ですね。タンパク質や脂質はそこまで摂っていませんでした。ブルベだとコンビニのホットスナックも良く食べるのですが、それなりの強度で走ることが多いキャノボにおいては気持ち悪くなるリスクがあるので、脂物はあえて避けていたという事情もあります。

あと、私的に避けているのはカフェインを含む飲み物。利尿作用でトイレが近くなる(タイムロス)と、いざ眠気が来たときのための秘密兵器として使うために、常用はしないようにしています。

基本的には糖質中心の補給になると思いますが、個人差はかなり大きい部分だと思います。各人の経験から、食べ続けられるものを食べるのが良いのではないかと。

なお、清涼飲料水も人工甘味料使用のものでなければ、結構な熱量を持っています。固形物で摂取しきれない分は飲み物で摂るのも手かもしれません。私は炭酸で胃が膨れる感じがするので炭酸飲料は飲みませんが、コカコーラ(赤ラベル)の愛用者もこの界隈では多いです。

まとめ

以上、キャノボに必要な熱量と、補給内容について考察してみました。

「どれだけの熱量が必要か」については、かなりブレが大きい値なので、あくまで目安であるとお考えください。例えば、以下のようなパラメータで必要な熱量はかなり違ってくるでしょう。

 ・当日の気温
  →体温維持の熱量、空気抵抗の差
 ・当日の風向き
  →必要な平均パワーが追い風と向い風でかなり異なる
 ・グリコーゲン貯蔵量
  →個人差、体格差、カーボローディングの有無など
 ・運動効率
  →1kcalの熱量で、どれだけの出力が出るか(個人差あり)
 ・達成ペースの強度
  →強度次第で糖質と脂質の割合が変わる
  →達成に必要な強度が高いほど食べる量は増える
 ・栄養の吸収効率
  →食べた物が全て熱量に変わるとは限らない

天候による差もありますが、一番の差はやはり「個人差」です。試走や日頃の練習で、「この強度なら、これだけ食べておけば動きつづけられる」自分の中でのラインを見極めておく必要があると思います。

(完)

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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