自転車ライトの照射角

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ライトのスペック表に掲載された「ルーメン」「カンデラ」の値から、照射角を推定する方法の紹介です。

照射角を算出するためのオリジナルツールも掲載しています。

目次

調査動機

現在、夏コミに向けて「自転車ライト攻略本」なる同人誌を作成中です。自転車ライトについてスペックの読み方などをマニアックに解説したり、レビューしたりする本となっています。

照射角が算出できる?

その中で「ルーメン」「カンデラ」「ルクス」の関係性について調べたのですが、その中で「ルーメンとカンデラが分かれば、照射角を算出できる」ということを知りました。

ここでいう照射角は、「一番明るい場所に比べて、50%の明るさとなる角度」を指します。半減角とも言われます。

自転車のライトで言えば、「左右方向にどれだけ広い範囲を照らすか」。路肩まで照らせるのか、正面だけなのかを現す値と言えます。

CATEYEやOLIGHTなど、一部のライトメーカーは公式サイトでルーメンとカンデラの値を公開しています。その値から照射角を算出できれば、「そのライトはスポット配光なのか、ワイド配光なのか」が想像できることになります。

とはいえ、ここで算出できるのは「光が一様に出ている」場合の照射角。大抵のライトはリフレクターで光を反射したりレンズで屈折させたりして、「明るくする所」「暗くする所」を制御しています。必ずしも照射角の数字通りにはなりません。

ただし、「このライトは路肩まで照らしてくれそうかな」と判断する目安にはなるはずです。

照射角の計算方法

こちらのサイトに変換ツールがあるのですが、「ルーメンと照射角からカンデラを算出する」機能はあったものの、「ルーメンとカンデラから照射角を算出する」機能はありませんでした。

計算式が公開されていたので、それを元に計算ツールを自力で作ってみました。

照射角 計算ツール

ライトのルーメン値とカンデラ値から照射角を算出するツールです。Javascriptで作成しました。

・「ルーメン」「カンデラ」の値を記入して「計算」ボタンを押すと、「照射角」の値が算出されます。
・「照射角」は、光源から一様に光が出ている場合の値です。普通はリフレクターとレンズで光を加工してから照射するので、この通りにはなりません。あくまで目安とお考えください。

ちなみに計算式は以下(X: ルーメン、Y: カンデラ)です。

これで算出される値はラジアンなので、角度に変換しています。

主なライトの照射角 計算結果

「ルーメン」「カンデラ」の値が公開されている一部のライトについて、上の計算式を使って照射角の計算を行いました。

計算結果一覧

・照射角は計算結果であり、実際のライトの配光とは異なります。あくまで目安。
・ルーメン、カンデラの値は公式サイト掲載の値です。
・LED数が増えると照射角が大きくなる傾向があるため、LED数も掲載しています。
・「特殊配光」列に「○」が付いているライトは、光の加工具合がかなり大きい(照射角の値が参考にならない)ライトです。上側の光をカットして下方向に向けている、防眩加工付きライトが対象です。
メーカー 製品名 LED数 ルーメン[lm] カンデラ[cd] 照射角[°] 特殊配光
CATEYE Volt1700 2 1700 11000 25.5
Volt800 1 800 6500 22.7
Volt700 1 700 6000 22.1
Volt400 1 400 3500 21.9
Volt300 1 300 4500 16.7
Volt200 1 200 3000 16.7
GVolt100 1 320 10000 11.6
GVolt70 1 260 7000 12.5
AMPP1100 2 1100 6000 27.7
AMPP800 1 800 5000 25.9
AMPP500 1 500 4500 21.6
AMPP300 1 300 2500 22.4
SYNC CORE 1 500 5000 20.5
Econom Force 1 170 4000 13.3
URBAN 1 50 800 16.2
URBAN2 1 50 1700 11.1
OLIGHT RN3500 5 3500 31000 21.8
RN1500 1 1500 6700 30.7
RN1200 1 1200 5400 30.6
RN800 1 800 4700 26.7
RN600 1 600 2800 30.0
RN400 1 400 1900 29.7
ALLTY 2000 2 2000 7000 34.7
BFL1800 1 1800 11000 26.2
BFL900 1 900 5600 26.0
Magicshine RN3000 2 3000 17412 26.9
RAY2600 2 2600 8400 36.1
RAY1600 2 1600 5200 36.0
GENTOS SG-455B(スポット端) 1 250 4840 14.7

表にプロット

横軸に照射角、縦軸にルーメン値を取って、表の内容をグラフにプロットしてみました。

上に行くほど光源が明るく、右に行くほどワイド配光ということになります。

Gvoltなどの防眩加工ライトはかなりスポット配光の位置に来てしまっていますが、実際の配光はそこまで極端にスポット配光ではないです。

JIS規格を満たすためにカンデラ値を無理やり上げているURBAN2は実際に使ってみてもスポット配光です。

JIS規格では前照灯の基準を「400カンデラ以上」としているので、照らす範囲が狭くても中心部が明るければ基準を満たします。ただ、実際走る上では、こういった配光は走りにくいですね。

JIS規格での前照灯の基準は、2021年から「800カンデラ以上」に引き上げられました。

傾向分析

「ルーメン値が小さいのに、カンデラ値が大きい」ライトは、照射角を狭い範囲に絞っている(照射角が小さい)可能性が高いです。光は狭い範囲に集約すると明るくなりますので。

逆に、「ルーメン値が大きいのに、カンデラ値が小さい」ライトは、かなり広い範囲を拡散して照らしている(照射角が大きい)可能性が高いといえます。

概ね、「カンデラ値がルーメン値の10倍」前後となるのが、自転車ライトでは普通のようです。10倍より大きければスポット気味、10倍より小さければワイド気味の配光と想像できます。

参考として、左がRN1500(照射角: 30.7°)、右がVolt300(照射角: 16.7°)です。数字ほどの開きは見えませんが、確かにRN1500の方が広い範囲を照らしているように見えます。

ただし、防眩加工を施されたライトは、上向きの光を反射・屈折させています。その分の明るさがプラスされるので、一番明るい部分の明るさは強くなる(カンデラ値が大きくなる)ことになります。

GVolt70(写真)やGvolt100は中央部分に明るさを集中させているため、カンデラ値が大きく出ています。ただ、左右方向にも光を拡散させており、スポット配光というわけではありません。同心円状ではなく、明らかに整形された光の形だというのが写真を見ても分かると思います。こういうライトの場合、照射時の写真を見ないと配光は分かりません。

なお、GENTOS「SG-455B」のように、配光を変更できるライトも存在します。

こちらは「一番光を絞った状態(スポット端)」です。「カンデラ値が大きい」状態です。

こちらは「一番光を広げた状態(ワイド端)」です。「カンデラ値が小さい」状態です。

まとめ

ルーメンとカンデラから照射角を推定する方法の紹介でした。ライトを購入する前の目安としてご活用頂ければと思います。

ここまで色々と面倒くさい話をしてきましたが、配光は照射時の写真を見るのが一番手っ取り早いです。ルーメンとカンデラから配光を想像する方法は、こうした写真がない場合の苦肉の策。

東京~大阪キャノンボール研究
自転車ライト配光比較ツール 自転車用ライトの配光を比較するためのツールです。

当サイトの「配光比較ツール」などを是非ご利用ください。

著者情報

年齢: 37歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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