ロードバイクのジオメトリに言及した書籍の紹介

この記事は約 9分で読めます。

自転車フレーム各部のサイズや角度を数値で示したものが「ジオメトリ表」です。

本記事では、ロードバイクのジオメトリについて詳しく言及している書籍を紹介します。

目次

導入

この記事では、「ジオメトリ」の意味について解説した本を紹介します。

きっかけとしては、私の個人的興味。

ロードバイクのジオメトリについて体系立てた情報を改めて学びたいと思って調べたのですが、ジオメトリに言及している本があまり多くはなかったのです。

そこで、ジオメトリについて知りたい方が知識を得る際の一助になればと思い、この記事を書くことにしました。

ジオメトリとは

ジオメトリは、自転車の製品ページに行くと必ずある、この手の図と表に書かれている寸法や角度の数値を指します。

Bianchi公式サイトより引用

こちらは、私が最近購入した、「Bianchi OLTRE XR4」のジオメトリ表です。フレームサイズごとに各場所の寸法・角度が書かれています。

ジオメトリ表が一番良く使われるのは、「そのフレームサイズの自転車に自分が乗れるか?」を判断する時だと思います。乗れないサイズのフレームを買ってしまったら悲劇ですからね。

例えば、私は同じBianchiのINFINITO CVでは53サイズに乗っていますが、Oltre XR4は55サイズに乗っています。同じメーカーのフレームであっても、適したフレームサイズが異なることはよくあることで。それを見抜くのにジオメトリ表は大変重要です。

もう一つ、ジオメトリ表を見る目的は、「その自転車の性質を大まかに把握すること」です。ジオメトリの数値にはそれぞれ意味があり、その意味を知っていれば設計者の意図が見えてきます。

 

寸法を一から決めるオーダーフレームでは、使い方や要望を元に、フレームビルダーの方がジオメトリ表を書き起こしてくれます。

ここで記入される数値には、フレームビルダーの方の哲学や理論が色濃く反映されるもの。そこがオーダーフレームの奥深いところでもあります。

ジオメトリの意味を学ぶ方法

このように数値に設計者の意図が込められたジオメトリの数値ですが、「その意味をどうやって理解すればいいか」を学ぶ方法はあまり無い気がしています。

ショップで店員さんに聞けば数値の大まかな意味は教えてくれますし、ネットで検索すれば断片的な意味は分かりますが、それらを体系立てて学ぶ方法ってあまり無いんじゃないかと。サイクルデザイン専門学校にはそういったものを教えてくれる授業もありそうですが。

こういう時、役に立つのは「本」です。専門家が書いた情報がわかりやすく纏まった本は、今も昔も貴重な情報源であると言えます。

ジオメトリに言及した本

ただ、あまりジオメトリについて深く突っ込んだ本というのは多くないようです。

そういった本を書く知識がある人と言えば、「自転車メーカーのフレーム設計者」か「フレームビルダー」ということになるわけですが、こういった方の著書はほとんど見つけることが出来ませんでした。

そんな中で見つけた、貴重なジオメトリについて言及した日本語の本が以下の3冊です。

・自転車ビルダー入門 (著・今野真一)
・自転車道 vol.1 (著・安井行生/吉本司)
・ロードバイクの科学 (著・ふじいのりあき)
偶然にも、3冊とも我が家にありました。「自転車ビルダー入門」は私の持ち物ではなく妻の持ち物です。なんというか似た者夫婦ですね……。
以降は、それぞれの本を簡単に紹介します。突っ込んだ内容を書いてしまうと営業妨害になってしまうので、あくまで簡単な紹介に留めさせていただきます。

書籍①「自転車ビルダー入門」

フレームビルダーの中でも特に有名な「CHERUBIM」の二代目である今野真一さんの著書です。

ジオメトリを設計する立場の人が書いた珍しい一冊。

書籍概要

今もっとも勢いがあるハンドメイド自転車ブランド「ケルビム」(今野製作所)の代表自らが筆を執った、本邦初となるスポーツ自転車作りの解説書です。
そのデザインから実際の金属加工方法に至るまで、詳細に解き明かします。

Amazonの書籍説明より

ジオメトリだけではなく、「フレームを作る」立場から各種ノウハウが詰め込まれた本となっています。

海外にはこの手の本はいくつかありますが、日本のフレームビルダーによる本は唯一これだけじゃないでしょうか(まえがきにもそのような記載があります)。

ジオメトリに関するトピック

第二章「自転車フレームの神秘」の章で、約10ページに渡って触れられています。

・フレーム設計の優先順位と概念
・体格によるフレームスケルトンの違い
・フロントホイールのトレール
・BBの高さと自転車の機動性
・フロントセンターとリアセンター
・トップチューブ長とシートチューブ長

この本では、「ジオメトリ」ではなく「スケルトン」という言葉に統一されていますね。

感想

さすがに設計者自らが書いているだけあって、なかなかお目にかかれない詳細な内容が掲載されています。

設計の意図についても明確に書かれており、「ケルビムはこう考えているんだな」ということがよく分かりました。実際に試行錯誤を重ねる中で得た結論には説得力があります。

競輪フレームも作るケルビムなだけあって、ロードバイクとトラックバイクの違いについても触れられているのが興味深い点でした。


ちなみにこの本は、「シクロツーリスト」誌の編集長である田村さんが編集しています。

巻末に載っている「フレームオーダーの実例」では、田村さんがケルビムのランブラーという車種を注文した際のレポートが事細かに掲載されています。知っている人は知っていますが、その後色々あったんですよね、このランブラー……。

書籍②「自転車道 総集編 Vol.1」

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サイクルスポーツ誌で連載された、かなりマニアックな特集記事を集めた本です。

その特集の一つに「ジオメトリ」について真正面から取り組んだものがあります。

書籍概要

月刊誌「CycleSports」の人気連載「自転車道」をまとめた総集編です。
Vol1.の本書では、第1回から第13回までの企画を掲載。
〝製品作りの源流を覗く〟という本書のコンセプトから、カーボン素材の先端メーカーである東レ、ベアリングのトップメーカーであるNTNなどを取材。
これまでの自転車専門誌では決して語られることがなかった製品開発の真実に迫ります。
ロードバイクをより深く理解することのできる一冊です。

Amazonの書籍説明より

様々な「製品作りの源流」に関する特集があり、ジオメトリもその一つとして詳しく掘り下げられています。

著者は、自転車ライターの安井行生さんと、吉本司さんです。

ジオメトリに関するトピック

特集「ジオメトリーの謎に迫る」で、27ページに渡って触れられています。

・ジオメトリーの基本
・700Cの意味
・ハンドリング
・真のトップチューブ長を見抜くには
・シート角
・ボトムブラケット下がり
・チェーンステー長
・ステム長
・オーダーメイドの意味
・海外ブランドに聞く、その数値の理由とは?

感想

この本は様々なテーマにマニアックに突っ込む内容となっていますが、どのテーマも「ライターが専門家に聞いた内容を纏める」という形式を取っています。

ジオメトリの章もそれは同じで、ブリヂストンサイクルの設計者と、フレームビルダーの中川茂さん(NAKAGAWA)にインタビューをし、その内容を纏めています。

技術者本人が書いたものではないので網羅性には欠けている可能性がありますが、その分読者が知りたい点を分かりやすく纏めていると思います。


この本自体は前から持っていて、一度当サイトでも取り上げました。

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ジオメトリの章も一度は読んだのですが、最初は何を言っているのか全然頭に入ってきませんでした。この本は一つ一つのテーマに対してかなりマニアックに突っ込んでいくので、少し油断するとすぐに内容についていけなくなるんですよね。

今回改めて読み直しましたが、「このテーマについて知りたい!」と思っている時はスラスラ内容が頭に入ってきますね。テーマだけを覚えておいて、興味を持った時に読むには最高な本だと思います。

書籍③「ロードバイクの科学」

本田技研の技術者で自転車乗りである、ふじいのりあきさんの著書です。

理屈で自転車を理解したい人にとってのバイブルとも言える名著です。

書籍概要

エンジンを使わず、自らが原動力となって駆動するロードバイクは、自然物理学と切っても切れない関係にあります。
たとえ計算式がわからなくても、理屈から導き出される結論を知ることができれば、充分に納得した上でライディングに活かすことができるはずです。
レースで、ファンライドで、そして実生活で活用できるテーマが取り上げられています。

2008年出版と少し古い本ですが、ロードバイクに関するあらゆる科学的事象について取り上げられた本となっています。

ジオメトリに関するトピック

「走り方」に重きを置かれた本であり、ジオメトリについてはあまり真正面から触れてはいません。

第四章「安全に曲がるためのヒント」にて、主にオフセットとトレールという2つの数値について掘り下げられています。

・ハンドルは何故傾いた方に切れるか?
・トレールとキャスター

感想

自転車の専門家ではなく、クルマの技術者が書いた本ではあるのですが、著者自身が自転車マニアなだけあって、かなり突っ込んだ内容まで書かれている名著です。

ふじいのりあき氏は、定期的に行われるサイクルスポーツ誌のコーナーリング特集でも呼ばれるお方で、オフセットとトレールについては一家言を持っておられるお方です。

大体の自転車の物理現象については言及があるのですが、ジオメトリに関してはオフセットとトレールの話くらいで、トップチューブやチェーンステー長について触れられていないのは少々意外でした。

この本も「自転車道」と同様に各テーマが重く、読むのが結構疲れる本でもあります。数式やグラフが目白押しなので、理系の人におすすめできる一冊。

まとめ

ロードバイクのジオメトリについて言及している本を紹介しました。

いやー、予想外に少なかったですね、ジオメトリに関する本。「自転車文化センター」の図書目録を調べてみましたが、コラム的に触れているものはあっても、ページを多く割いてジオメトリについて述べているのは、ほぼ今回紹介した本くらいなのではないかと思います。もし他にもジオメトリについて書いている本があれば是非教えて下さい。読みます。

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この記事を書こうと思ったのは、↑の記事がきっかけです。

フレームオーダーの際を振り返ってジオメトリに関しても色々書いたんですが、「そういえばあまり体系立ててジオメトリについて解説した資料がないな」と思いまして。またオーダーする機会もあるかもしれませんし、詳しく学ぼうと思ったのですが、あまり情報は多くないようですね。

同じように、ジオメトリについて調べたいと思った人のお役に立てば幸いです。

著者情報

年齢: 36歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

 

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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