CATEYE ライトブラケット進化の歴史

現時点で究極のライトブラケットとも言える、CATEYE「フレックスタイトブラケット」。

とはいえ、CATEYEもいきなりこの優れたライトブラケットを開発できたわけではありません。改良を積み重ねてこの境地に辿り着いています。本記事では、その辺りの歴史を紹介します。

調べた動機

先日書いた「Magicshine RN3000」の記事がきっかけです。

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RN3000のブラケット

Magicshineは「OLIGHT RN1500」の製造元でもあり、ライト自体の品質はかなり高い水準にあります。しかし、ライトを支える土台であるブラケットの出来がイマイチでした。

 

こちらがそのライトブラケットです。RN1500に付属するブラケットと同一のもの。このブラケットは固定力が貧弱で、600kmブルベの後半ではライトがお辞儀するという事件がありました(500km地点までは特に問題なく使えてはいました)。

それから、私はこのブラケットを捨て、フレックスタイトブラケットを使うためのカスタムを実施しました。

 

170gのRN1500でその有様なのに、280gのRN3000に同じブラケットを付けてくるのは……案の定、全くライトを支えきれませんでした。ちょっとした段差でライトは後ろ側に傾き、上空を照らしてしまいました。

今回は近所のライドだったのですぐに停止して事なきを得ましたが、これが夜の峠の下りだったらどうでしょうか? 最悪の場合、止まりきれずに崖の下に転落していたかもしれません。

せっかくライトが素晴らしい性能を持っていても、土台であるブラケットがダメだと台無しになります。

ライトメーカーはブラケットをあまり重視しているようには見えませんが、ブラケット(特にライトをしっかり固定する能力)って、ある意味ライトの性能以上に大切なものだと思うんですよね。

フレックスタイトの素晴らしさ

そんな自転車ライト界で、ブラケットをどこよりも重視してきたのがCATEYEです。

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現行品でもある「H-34N」ブラケット、通称「フレックスタイトブラケット」は名品中の名品です。ざっくりまとめると、以下のような特徴があります。

・固定力の高さ
 しっかりハンドルに固定でき、ライトがお辞儀しない。
・調整の容易さ
 工具不要で締める&緩めるが行えるため、角度調整も容易に可能。
・汎用性の高さ
 円形ハンドル以外のエアロハンドルにも取付可能。
・互換性の維持
 年式にかかわらず、CATEYEのフロントライトは基本的に全て取付可能。
「Flex(柔軟)」で、「Tight(きつく固定)」出来る。その名の通りの特性があります。
私もさまざまなメーカーのライトを使ってきましたが、ライト本体の性能はさておきブラケットがイマイチなことが多く、結局CATEYEに戻ってくることが多いのです。ブラケットは、ライトの性能以上にユーザーを囲い込む力があると私は思ってます。
今のメインライトはOLIGHT RN1500ですが、これもフレックスタイトブラケットに付けられるようにカスタムして使っています。それだけ、このブラケットがよく出来ているということです。

CATEYEのブラケット変遷

非常に完成度の高いH-34Nブラケットですが、これも一朝一夕で完成したわけではありません。調べてみると、結構な変遷がありました。

過去の自転車雑誌やインターネットの記事から調べると、CATEYEのフロントライトに付属するブラケットは以下のような変遷を辿ったようです。

 ①H-31 (2008年頃まで)
  クイックレバーで固定するタイプのブラケット。フレックスタイト方式ではない。
 ②H-34 (2008-2009年)
  フレックスタイト方式のデビュー作。1年ほどしか売られなかった。
 ③H-34N (2009年~)
  改良を加えたフレックスタイトの現行版。
実際には更に細かいマイナーチェンジがあった可能性がありますが、型番だけを追うとこの3つに集約されそうです。
この記事では、これら3つのブラケットを見比べながら、その改良の歴史を追っていきたいと思います。

H-31ブラケット

確認されている最古のCATEYEのライトブラケットです。実測21.2g。

実は2021年現在でも購入可能。なぜ販売されているんでしょう?

いつ頃から使われ始めたのかは不明ですが、2002年のサイクルパーツカタログではCATEYEのライトにこのブラケットが付いていました。2008年頃までは、ライトとこちらのブラケットがセットになって販売されていたようです。

固定方式

ネジの先にクイックリリース的なカムが取り付けられています。ネジを締め込んでいき、最後にカムを閉じて固定します。

 

EL-540やVolt1700のような「外側から包み込む」マウント方法のライトのみ取り付けが可能で、Volt800のような「内側に差し込む」マウント方式のライトは使えません。

バリエーション

実はH-31は「28.0mm-31.8mm」径のハンドルに対応するタイプのブラケットで、ハンドルの太さ別にいくつかのバリエーションがありました。

こちらは22.0-26.0mm径のハンドルに対応する「H-32(型番: 533-8825)」。他にも、「H-30(型番: #533-8780)」という物もあったようです。

かつてはノーマルサイズ(25.4-26.2mm径)のハンドルと、現在でも使われるオーバーサイズ(31.8mm径)のハンドルが入り乱れていたんですよね。今はほぼオーバーサイズに一本化されましたが。

固定力

古典的な固定方式ですが、固定力は全く問題無かったです。

EL-540のような大物ライトでも問題なく、「H-34」が登場してからもその固定力の高さから、わざわざ「H-31」を使っていた人もかつては多かったようです。

 

固定力の秘密は、このバンドと滑り止めゴムの幅だと思います。十分な接触面積があり、大物ライトでもズレない工夫が伺えます。

問題点

2008年頃を最後に、このブラケットはライトに付属しなくなっています。

正確な理由は不明ですが、このブラケットでは丸断面のハンドル以外に対応できないのが理由ではないかと推測されます。異型ハンドルもこの頃から増えてきましたので。

更に、丸断面であってもハンドルの太さに応じて複数のブラケットを作らなければならなかったのは負担が大きかったとも思われます。タイト(固定力は十分)であっても、フレックス(柔軟)ではなかったわけですね。

 

実際に使っていた人に話を聞くと、ハンドルの径によってはこのネジがライト裏まで張り出してしまって、ライトが取り付けられなくなったこともあったとか。

H-34ブラケット

2008年頃からCATEYEのライトに標準付属するようになったブラケットです。実測17.3g(カット済み)。フレックスタイト方式の第一弾でしたが、わずか一年ほどで姿を消しています。

2006年には「固定具および締付具」として特許も取得されており、それを製品化したものと思われます。幅広い径の円形ハンドルに対応し、ある程度の異型ハンドルにも対応するフレックスタイト方式を導入したことにより、ブラケットはH-34一つだけで済むようになりました。

もう販売はされておらず、今回はヤフオクで中古品を落札しました。

固定方式

バンドをハンドルに回し、ダイヤルを締め込んで固定する、現行のフレックスタイト方式と変わりません。ただ、ダイヤルの回転が渋く、力が要ります。

EL-540やVolt1700のような「外側から包み込む」マウント方法と、Volt800のような「内側に差し込む」マウント方法の両方に対応しています。

固定力

固定力はあまり高くなく、強く締め込んでも手で押すとライトが回ってしまうほど。「フレックス」にはなりましたが、「タイト」であるとは言えません。

 

恐らく原因は、バンドの幅です。十分な固定力を持っていたH-31に比べて、約半分ほどの幅しかありません。

この幅ではライトの重量を支えきれなかったということになります。

問題点

当時使っていた人に話を聞いてみると、やはり固定力の面で不評だったようです。どんなに締め込んでも段差等でライトがお辞儀をしてしまうことから、H-31に戻す人も多かったとか。

 

また、このブラケットはダイヤル部分が外せない構造になっています。このため、ベルトのノッチが尽きるまでダイヤルを回し続ける必要がありました。そのダイヤルのノッチも脆く、締め込みすぎると折れることもあったと聞きます。

こうして、わずか一年でH-34ブラケットは姿を消し、改良版のH-34Nブラケットが販売されることになります。

H-34Nブラケット

2009年から現在に至るまで、CATEYEのライトに同梱されているブラケットです。個人的には最強のライトブラケットだと思っています。

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もちろん現在でも単独購入が可能です。

H-34の弱点を潰し、より完璧に近づいたライトブラケットだと言えます。

取付

バンドをハンドルに回し、ダイヤルを締め込んで固定します。

H-34と同様、EL-540やVolt1700のような「外側から包み込む」マウント方法と、Volt800のような「内側に差し込む」マウント方法の両方に対応しています。

 

改良前のブラケットよりもバンドの柔軟性が増し、Metronハンドルのような異型ハンドルでも安定した取り付けが可能となりました。

固定力

全く問題ありません。250gにもなるVolt1700などの重量級ライトでもしっかりと支えてくれます。手でダイヤルを回して締め付けているのに、手で動かせないほど強力にライトを固定できるのは驚きですらあります。

 

その固定力の秘密は、バンドの一部の幅を広げ、それにともなって裏側のゴムパッドの幅も広げたことでしょう。このハンドルとの接触面積の増加により、固定力が大幅に改善されています。

 

ゴムが取れたり横にズレたりしないように、ゴムパッドを嵌め込む形式にしているのもユニーク。Magicshineのマウントは締め付けると裏側のゴムが横にズレてくるんですよね……このズレ防止にも大きな意味があったことに気付かされました。

H-34とは異なり、ダイヤルが外れるようになっています。これにより、最後までダイヤルを回さずとも一気にバンドを引き抜くことが可能になりました。

また、H-34と見比べて気づいたのは、「ノッチの形状が改良されていること」でした。

 

H-34(■形状)
H-34N(▲形状)

ベルトのノッチを横から見ると、H-34が四角形をしているのに対し、H-34Nは三角形となっています。H-34Nはダイヤルの回し心地もスムーズで、あまり力を必要としないのですが、このノッチ形状の変更の成果だと思われます。

問題点

長いこと使っていますが、このマウントに問題らしい問題は見つかりません

 

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強いて言うならば、たまに首振りの機構にガタが出ることくらいでしょうか? ただ、これはH-34Nだけではなく、H-34もH-31も同様の問題があるはずですが。

まとめ

CATEYEのマウント3世代の比較と改良の歴史を紹介しました。

こうして細かく比較してみると、CATEYEという企業がいかにライトについて真面目に考えて改良を重ねてきたがよく分かります。

ハンドル径のバリエーションが増えれば、それに対応するためにフレックスタイトという方式を生み出す。固定力が低いことがわかれば、固定力を増すためにバンドとゴムパッドを太くする。ダイヤルの回転が重ければノッチ形状を変更して対応する。

実にユーザー目線の素晴らしい改良です。自転車以外の業種に目を向けても、ここまでちゃんとユーザー目線で製品に改良を進めてきた企業は少ないんじゃないでしょうか。「究極のライトブラケット」たるフレックスタイトブラケットは、こうした歴史の上に完成したものだということです。

繰り返しになりますが、ライト本体の性能がいくら良くても、ブラケットがダメならばその価値は大きく落ちます。逆に、ブラケットが良ければライトの性能はそこそこでも売れるのではないかと私は思っています。もちろん、ライトの性能も良ければ最高ですが。

CATEYEほどとは言わないまでも、自転車用ライトを製造する会社はもう少しブラケットに力を入れて開発をしてほしいものです。それは結果的に売上につながるかもしれません。

 

著者情報

年齢: 37歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。


この記事を書いた人
ばる
ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019年の2回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間13分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)