CATEYE「VOLT800 NEO (HL-EL475RC)」詳報

この記事は約 17分で読めます。

CATEYEの名作ライト「VOLT800」の後継製品「VOLT800 NEO」が発表されました。前作から7年待ちました。

前半はただの思い出話なので、VOLT800 NEOの進化ポイントを知りたい方は、こちらのリンクから記事後半をご覧ください。

目次

まえがき

10月29日、CATEYEの新製品「VOLT800 NEO」「VOLT400 NEO」の発表がありました。発売は12月予定とのこと。

東大和で自転車をお探しならY's Ro...
新作『VOLT』発表!CATEYE『VOLT 800 NEO』&『VOLT 400 NEO』が遂に出る! | 東大和で自転車をお探しならY'... 不動の人気を誇るサイクルライト『VOLT800』&『VOLT400』最新モデル『NEO』誕生CATEYEVOLT800NEOHL-EL475RC¥18,700-CATEYEVOLT400NEOHL-EL465RC¥9,900-…

さらに、同日開催のイベント「サイクリングしまなみ」に出展されたCATEYEブースでは、実機のお披露目が行われました。

この記事では、「VOLT800 NEO」にフォーカスして、旧VOLT800からの進化ポイントを紹介します。「サイクリングしまなみ」現地の写真も使用許可を頂きましたので、そちらも交えつつ内容を見ていきます。

VOLT800について

まずは旧VOLT800についての紹介から。

VOLT800の発売は2015年10月。

上のツイートにもあるように、VOLT700の後継品として発売されました。この頃は10月末に開催されるサイクルモードに合わせて新製品を出すメーカーが多く、CATEYEもだいたいこの時期に新製品を発表していました。

VOLT700の発表は2014年9月。発売開始は11月ごろだったはずです。

VOLT700からVOLT800へのバージョンアップは僅か1年で行われたわけですね。

私とVOLT700&800

2014年当時の私はVOLT700発表時のスペックを見て即「買いだ!」と判断し、発売開始と同時に購入しました。

実際、その性能は(当時としては)素晴らしかったです。「オールナイトモード」という、100ルーメンで10時間持つ機能を備えており、このモードはブルベに最適でした。今でこそ100ルーメンでは弱く感じますが、当時のライトでそれだけ明るくそれだけ長持ち(しかも明るさを一定に保つ)なライトはそうそう無かったのです。

2015年8月、4年に1度の大ブルベ「PBP」にもVOLT700を投入。完走に大いに役立ってくれました。

そしてPBP完走の翌月には後継品の「VOLT800」が発売。オールナイトモードはローモードに名前を変え、200ルーメンの明るさになりました。明るさは2倍になったものの、点灯時間は2時間減って8時間に。バッテリー容量は変わっていないので正当進化なのですが、個人的には点灯時間が減ったことは少し不満でした。

そのため、買ったのは発売から半年後でした。ただ、いざ使ってみたら8時間でも特に問題なくブルベを走れることが判明。予備バッテリーを持っていれば瞬時に復活できるわけで、それならば200ルーメンという明るさのほうがメリットがあります。

こうしてVOLT800はブルベにおける私のメインライトとなり、2019年のPBPはVOLT800を2本という体制で臨みました。

いつまでも出ない後継機

さて、VOLT700→VOLT800の発売まで1年しか掛からなかったことは既に述べました。当然、VOLT800の後継機も翌年か翌々年くらいには出るだろうと思っていました。

自分のツイートを振り返ってみると「そろそろVOLT900出るかな?」と、毎年のようにツイートしています。しかし、実際は5年経っても6年経ってもVOLT800の後継機が発売されることはありませんでした

cyclowired
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2019年、ようやくCATEYEが発表した新製品「AMPP」シリーズは、VOLTシリーズの特徴であったカートリッジバッテリー方式を捨て去り、バッテリー交換が出来ない方式のライトでした。点灯時間も短くなり、ただルーメンの値だけを追い求めたようなライトには正直言って落胆しました。

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あまりにもCATEYEが新製品を出さないので、「点灯時間が長くて明るいライトはないか?」と探して見つけてきたのがRN1500です。

RN1500は「大容量の21700バッテリー搭載」「Type-C端子搭載で充電も高速」と、従来の「18650バッテリー」「microUSB端子」のライトから一歩進んだスペックを持っていました。しかし、配光がイマイチであったり、ブラケットの出来が良くなかったりと、不満な点も多くありました。

その思いが強く現れているのがこのツイート。

RN1500が備えていた「21700バッテリー」「Type-C端子」という特徴を持ったVOLT800後継機が出れば、それは最強のロングライド用ライトになるに違いない。

CATEYEのサイトには「ひらめきフォーム」という製品アイデアを送れるコーナーがあり、上記の内容を何度か送りました。知人にも頼んで似たような要望を送ってもらったりもしました。

7年の沈黙を破り、発売!

そして2022年10月、ついに「VOLT800 NEO」が発表されました!

VOLT800の発売から実に7年。長かった……実に長かったですが、スペックを見る限りでは「期待通り」の製品が出てきてくれました。

① 大容量カートリッジバッテリー採用(21700電池)
② type C充電対応
③ 300ルーメンで12時間持つ高効率LED採用

私が2020年12月時点で書いていた「こんなVOLT800の後継品が欲しい!」というポイントのうち①と②はズバリ的中。③は「200ルーメンで12時間」でしたが、それでも十分なスペックです。

防眩機能の追加は少々意外でしたが、配光に厳しいドイツで販売する狙いがあるのかもしれません。もちろん、日本でも求めている人が多い機能だったと思います。

CATEYE「VOLT800 NEO」

さて、VOLT800 NEOについて、旧作・VOLT800と比較しつつ、ポイントとなる点を見て行きます。

撮影: ふぃりっぷさん

「サイクリングしまなみ」で公開されたVOLT800 NEO実機の動画・画像も交えつつ紹介いたします(Special Thanks: メイリンさんふぃりっぷさん)。

製品スペック

まずはスペックを比べてみます。

全体的に進化していますが、大容量のバッテリーを採用した分だけ重くなっているはずです(重量はまだ非公開)。

VOLT800
(HL-EL471RC)
VOLT800 NEO
(HL-EL475RC)
定価 18700円(税込) 18700円(税込)
重量 140g ??g
バッテリー 3.6V / 3400mAh
(18650×1本)
3.6V / 4800mAh
(21700×1本)
標準充電時間 5-9時間 4時間
防水性能 IPX4 IPX4
充電端子 microUSB USB Type-C
防眩対策 なし あり
配光 円形・スポット 長方形・ワイド
光の色 白色系 黄色系
逆さ吊り 非対応 対応
(マウントパーツの上下反転が可能)

点灯モード/ランタイム

次に点灯モードとランタイムも比べてみます。

モードと明るさはそのまま。ランタイムがおよそ1.2~1.5倍になっています。なぜかハイパーコンスタントと点滅のランタイムは変わらず。

VOLT800
(HL-EL471RC)
VOLT800 NEO
(HL-EL475RC)
ハイモード 800lm / 2時間00分 800lm / 2時間30分
ミドルモード 400lm / 3時間30分 400lm /  5時間00分
ローモード 200lm / 8時間00分 200lm / 12時間00分
ハイパーコンスタント 7時間30分 7時間30分
点滅 100時間00分 100時間00分

 

こちらの動画を見ると、モード遷移は「ハイ→ミドル→ロー→ハイパーコンスタント→点滅」で、従来のVOLT800と同じようです。

外観

サイスポ編集者の江里口さんが写真を公開してくださっています。やはりバッテリーが長いですね。

少しゴツくなっていますが、これはライトが3つのパーツに分割できるようになったから。後述しますが、吊り下げた時にもスイッチが上を向くように、マウント取り付け部分のパーツを上下反転可能になっています。

価格

定価はなんと据え置きです。円安や物価上昇の影響で20000円超を予想していましたが、据え置きということでちょっと驚きました。

とは言え、VOLT800 NEOはどうやら実店舗限定販売になるようです。通販と違って値引きはしばらくないでしょう。

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VOLT800の通販での実売価格は12000円ほどなので、それに比べれば高くはなりそうです。

重量・大きさ

VOLT800 NEOはVOLT800に比べて重くなっているそうです。

バッテリーの種類は厳密には公開されていませんが、VOLT800のバッテリーは「18650」という規格のもので、VOLT800 NEOのバッテリーは「21700」という規格のものであると思われます。

以下に、18650バッテリーと21700バッテリーのスペック比較表を示します。

規格名 容量 重量 大きさ
18650 2000-3500mAh 45-50g 外径:18mm
長さ:67-69mm
21700 3000-5000mAh 70-75g 外径:21mm
長さ:72-74mm

18650とか21700という数字は「直径」と「長さ」を表したものです。

18650は「直径18mm」「長さ65mm」で、21700は「直径21mm」「長さ70mm」ということです。つまり、VOLT800 NEOのバッテリーは少し太く、長くなっています

18650と21700

上が18650、下が21700。バッテリーが大きくなった分だけ容量も増えますが、その分だけ重量も増えるということです。18650と21700の重量差を考えると、恐らく旧VOLT800よりも30g前後は重くなると思われます(170gくらいと予想)。

ちなみに21700バッテリーは、RN1500に搭載されているバッテリーでもあります。Bontragerの上位モデルのライトでも採用されていますし、今後は自転車用ライトのスタンダードになる可能性もあります。

バッテリー容量

撮影: ふぃりっぷさん

VOLT800 NEOは4800mAhのカートリッジバッテリーを積んでいます。VOLT800が3400mAhだったので、約1.4倍の容量となりました。

気になるのは、この「4800mAhのカートリッジバッテリーは従来のVOLTシリーズと互換性があるのか?」という点。

結論から言えば、「新バッテリーはVOLT NEOシリーズにしか使えない」そうです。逆に、「旧バッテリーはVOLT NEOシリーズにも使用可能」とのこと。

残念ながら、旧VOLT800に新バッテリーを付けてパワーアップということは出来ないようです。ただ、VOLT400 NEOには新バッテリーが付けられるそうなので、そちらの方向でのパワーアップはアリですね。

充電時間

バッテリー容量が増えると気になるのは充電時間。

VOLT800よりバッテリー容量が増えたのに、充電時間は短くなっています。4時間で満充電は嬉しい。従来よりも大電流を流せる充電回路がVOLT800 NEOには搭載されているものと思われます。これならば、ブルベでの短い仮眠時間でもしっかり充電できます。

ただ、2時間半で満充電になるRN1500と比べると少し遅くはありますね。カートリッジバッテリーだから予備を持っておけば充電の回数は減らせますが。

充電端子

VOLT800 NEOの充電端子はType-Cになりました。CATEYEでは恐らく初のType-C採用です。

充電速度から見るとType-Cにもかかわらずかなり電流を絞っている(恐らく1~1.2A程度)印象があります。これはmicroUSB端子でも十分実現できる電流です。

Type-Cに変わったことのメリットは充電の速さというよりは、「使うケーブルの種類が減らせる」という点でしょう。

今どきはスマホもモバイルバッテリーもType-Cケーブルで充電するものばかり。ブルベではVOLT800のためだけにmicroUSBケーブルを持ち歩いていましたが、今後は不要になりそうです。

防水性能

防水性能は従来と変わらずIPX4。

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こちらの記事にも書きましたが、自転車用ライトにはIPX7よりもIPX4~IPX6が相応しいと思っているので、十分な防水性能だと思います。

配光

撮影: メイリンさん

左がVOLT800、右がVOLT800 NEO。

長方形の配光になり、VOLT800に比べてかなりワイドな配光になっていますね。道路の端までしっかり見えそうです。

撮影: メイリンさん

ちょっと意外だったのは、レンズが防眩対応(上向きの光を減らす)になっていたこと。

確かにこの機構を入れると対向車への眩惑は無くなりますが、その分だけ車からの被視認性は落ちますし、高い位置にある道路標識や青看板が見づらくなるというデメリットもあります。

VOLT800(撮影: メイリンさん)

VOLT800 NEO(撮影: メイリンさん)

ただ、横からの照射画像を見る限り、VOLT800 NEOは上方向の光を「カット」というよりは「軽減」する方向性に見えます。

目潰しになるような強い光をカットしつつ、被視認性を得る&標識を照らせるだけの光が上に出ているという絶妙な配光に見えます。これは素晴らしい。

ちなみに、VOLT400 NEOの3500カンデラらしいですが、VOLT800 NEOのカンデラ値はまだ計測されていないようです。

点灯モード/ランタイム

モードと明るさは据え置きとなりました。

私は各モードの明るさを+100ルーメンしてくると見ていたんですが(だからVOLT900(仮称)とずっと呼んでいた)、据え置きでした。増えたバッテリー容量を明るさではなく、ランタイムに振ってきたわけですね。意外ではありましたが、ブルベライダーとしては拍手を送りたい決断です。

ここ数年のCATEYEのライトはルーメン値の大きさばかりを重視していたように見えました。といってもこれはCATEYEに限った話ではなく、自転車ライト界全体でそういう傾向があります。

ランタイムの長さの重要性を業界のリーダーであるCATEYEが示してくれたことは本当に大きい。素晴らしいと思います。

7年も経っているのにランタイムはバッテリー容量に比例しただけしか伸びていない(バッテリー消費量に対する明るさの効率は向上せずキープ状態)のは気になりましたが、最近のCATEYEは逆サバが多いので表記よりも長く使える可能性はあります。あくまで希望的観測ですが。

VOLT800は2015年の発売時のバッテリーが3100mAhで、その後2017年くらいに3400mAhに増量された経緯があります。今、VOLT800のスペック表に書かれているランタイムは3100mAh時代から変わっていませんが、3400mAhのバッテリーでテストすると、ローモードが公称8時間に対して10時間17分点灯します。今回、3400mAhが4800mAhに変わったので、バッテリー容量は1.4倍。バッテリー容量の増分だけランタイムも増えると仮定すれば、14時間20分持つ計算です。

購入次第、実際に照度計を使ってテストする予定です。

逆さ吊り対応

今回度肝を抜かれたのが、逆さ吊り対応のギミックです。

ライトをマウントする部品が外せるようになっていて、上下反転が可能になっているのです。これによって、ハンドルの下にライトを吊り下げた場合にもスイッチが上方向を向きます。

CATEYEのライトのスイッチは電池の残量を表すインジケーターにもなっています。電池残量が10%を切るとスイッチが赤く点灯するんですが、従来のVOLT800では逆さ吊りにしたときにスイッチが下を向くので見えなくなっていました。しかし、今回の機構であれば常にスイッチが上を向くので、電池残量を確認可能になるわけですね。これはありがたい!

また、スイッチが下を向いている時には充電端子が上向きになっていたので、浸水のリスクが高くなっていました。その問題もこれで解決です。

順方向取付の場合 (撮影: メイリンさん)

逆さ吊り取付の場合(撮影: メイリンさん)

うーむ、まるで変形型ロボットですね。

上下反転の動画はこちら。

充電クレードル

VOLTシリーズには、バッテリーだけを急速充電するための充電器(充電クレードル)が用意されています。

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これですね。

新型バッテリーに対応した充電クレードルについては、現在企画中とのこと。同時には発売されなそうです。

まとめ

いやーーー、7年待った甲斐がありました。凄いものを出してくれました、CATEYEさん。

これこそまさに「顧客が本当に求めていたもの」を具現化したものだと言えましょう。

私は既に、近くのショップでVOLT800 NEOを予約してきました。どうもファーストロットはCATEYEのプレミアムディーラーを優先してデリバリーされるそうなので、予約するならそちらが確実です。

発売は12月。今から楽しみです。早く使いたい。

著者情報

年齢: 38歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

 

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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