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PBP スタート地点の変遷(1931-2023年)
PBP(Paris-Brest-Paris Randonneur)のスタート地点の変遷(1931~2023年)をまとめました。
まえがき
前提となる知識と、この記事を書こうと思った理由について説明します。
実は2つ存在する「PBP」
実は、「Paris Brest Paris」という大会は2種類存在します。
「Paris-Brest-Paris Randonneur」と、「Paris-Brest-Paris Audax」です。
両者の違いを以下に示します。
Paris-Brest-Paris Randonneur | Paris-Brest-Paris Audax | |
主催者 | Audax Club Parisen | Union des Audax Français |
開催周期 | 4年毎 (次回2027年) |
4年毎 (次回2024年?) |
開催数 | 20回
1931, 1948, 1951, 1956, 1961, 1966, 1971, 1975, 1979, 1983, 1987, 1991, 1995, 1999, 2003, 2007, 2011, 2015, 2019, 2023 |
17回
1931, 1948, 1951, 1956, 1961, 1966, 1971, 1976, 1981, 1986, 1991, 1996, 2001, 2006, 2011, 2016, 2022(2020延期分) |
走行方式 | 個人単位で走行 | 大集団での走行 |
このサイトで良く出てくる「PBP」は、左の「PBP Randonneur」を指しています。
ブルベとしてのPBPの歴史
PBPは1891年に「レース」として始まりました。
当時のPBPは10年ごとの開催でありましたが、4回目の開催となる1931年にブルベ部門が追加されました。これが今日まで続く「ブルベとしてのPBP」です。
このあたりの歴史的経緯は、Randonneurs USAの「A Short History of PBP」のページに詳しく書かれています。
1971年までは「Randonneur」と「Audax」は同年に行われました。しかし、その次の大会からは「Randonneur」は4年毎の開催、「Audax」は5年毎の開催となり、開催時期が分かれていくことになります。
本記事では、「Randonneur」のスタート地点の変遷について書いていきます。以降、単に「PBP」と書いた場合は「PBP Randonneur」を指します。
PBP Randonneurのスタート地点
「パリ-ブレスト-パリ」という大会名なので、普通に考えれば「パリ」をスタートして「ブレスト」で折り返し、「パリ」にゴールするコースのはずです。
しかし、2023年現在のスタートとゴールは厳密にはパリではありません。
現在のPBPのスタート地点はRambouillet(ランブイエ)という街です。2019年大会からこの街のスタートに変わりました。
この街はパリの南西50kmほどの場所にあります。パリと同じイル・ド・フランス圏という地方に属してはいますが、「パリ」と呼ぶには少し違和感のある地域です。
これに対し、大会名に使われているもう一つの都市である「ブレスト」については、ちゃんと市の中心部を通過します。
「もしかして、過去には本当にパリの街中をスタートしていたのでは?」と疑問を持ったことが、この記事を書く発端となりました。
PBP スタート地点の変遷
PBPのスタート地点の変遷について示します。
主に、こちらのサイトに掲載されていた歴代のブルベカードから、スタート地点を割り出しています。
年表
時系列で並べた年表です。
# | 開催年 | スタート/ゴール地点 | 参加人数 | 備考 |
1 | 1931 | Porte Maillot | 53 | 当初は10年毎開催 |
2 | 1948 | Porte de Saint-Cloud | 205 | 第二次大戦のため、1941年分を1948年に開催 |
3 | 1951 | Porte de Saint-Cloud | 488 | 以降は5年毎の開催に |
4 | 1956 | Porte de Saint-Cloud | 210 | |
5 | 1961 | Suresnes | 166 | |
6 | 1966 | La Celle-Saint-Cloud | 186 | |
7 | 1971 | La Celle-Saint-Cloud | 368 | 以降は4年毎の開催に |
8 | 1975 | Montesson | 675 | |
9 | 1979 | Montesson | 1762 | |
10 | 1983 | Rueil-Malmaison | 2105 | |
11 | 1987 | Rueil-Malmaison | 2579 | |
12 | 1991 | Saint-Quentin-en-Yvelines | 3276 | |
13 | 1995 | Saint-Quentin-en-Yvelines | 2860 | |
14 | 1999 | Saint-Quentin-en-Yvelines | 3573 | |
15 | 2003 | Saint-Quentin-en-Yvelines | 4069 | |
16 | 2007 | Saint-Quentin-en-Yvelines | 5160 | |
17 | 2011 | Saint-Quentin-en-Yvelines | 5002 | |
18 | 2015 | Saint-Quentin-en-Yvelines | 5870 | |
19 | 2019 | Rambouillet | 6418 | |
20 | 2023 | Rambouillet | 6431 |
変遷
記念すべき第一回大会のスタート地点は「Porte Maillot」という街でした。「le Mauco」というカフェの前からスタートしたそうです。
これがPorte Maillotの位置になります。
ほぼパリ市と外部の境界線上ではありますが、れっきとしたパリ市内からスタートしていたことになります。やっぱり最初は本当に「パリ-ブレスト-パリ」だったんですね。
しかし、その後のスタート地点は変更を繰り返すことになります。参加人数が増えるごとに、交通事情や危険性などの理由により、郊外への移転を余儀なくされたようです。
4回目の大会まで使われたスタート地点である「Porte de Saint-Cloud」はパリ市内でした。その後はパリ市の外へとスタート地点が移ります。
決定的であったのが、1991年のサンカンタン・アン・イブリーヌへの移転です。
この年はPBP100周年の年であり、本来のスタート日の前日にパリ中心部からパレードランが行われたそうです。しかし、実際のスタートはパリ中心部から遠く離れたサンカンタンでした。以後、24年に渡ってサンカンタンはPBPのスタート地点であり続けました。
私が初めてPBPに参加した2015年も、スタートはサンカンタン。これがサンカンタンをスタートする最後の大会になりました。
2019年、PBPのスタート地点は更に郊外の街であるランブイエに移転します。
「それまでスタート地点として使っていたサンカンタンのベロドロームがパリ五輪の準備のために使えなくなる」という理由だったと当時は聞いた気がしますが、正確な理由は不明です。
こちらが、1931年→2023年前のPBPのスタート地点変遷を地図上に表したものです。
だんだんとスタート地点が郊外へと移転していることがお分かりになると思います。増える参加者と時代の流れに従った結果なのでしょう。
日本に例えると、「最初は池袋からスタートしていたけど、その後に杉並・練馬スタートに変更。その後、立川スタートに変更になり、現在は高尾スタート」みたいな位置関係です。距離的にもだいたい同じです。
まとめ
PBPのスタート地点の変遷についての調査結果でした。
最初は本当に「パリ」スタートだったんですね。しかし、大規模になるにつれてパリ市の発着は難しくなり、交通の少ない郊外に移転したと。それに伴い、かつては国道をメインに使っていたルートも交通量の少ない県道に切り替えられてきた歴史があるようでした。
次回2027年のスタート地点は現時点では未定のようです。
こちらの記事によると、ランブイエの市長が「我々は次回もスタート地点に名乗りを上げます」と発言した様子。ということは別の場所をスタートする可能性もあります。
個人的には現在のスタート地点であるランブイエは良い場所であると思っていて、今後も是非定着してくれればと思っています。
スタート地点の至近には立派なランブイエ城がありますし、大人数の参加者を受け入れられるキャパシティもあります。何より、今回のゴールでの歓迎っぷりが非常に素晴らしかったことが一番の理由ですね。これだけ世界中のランドヌールを歓迎してくれる街はそうそうないんじゃないでしょうか。
次回のスタート地点が決まるのは恐らく2026年の中頃。発表を楽しみに待ちたいと思います。
著者情報
年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。