水平ステムを使わずハンドルを下げる方法の検討

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本記事は、ロードバイク Advent Calendar 2023の13日目記事となります。


載せ替え先のフレームでポジションを出すためにステムを探した記録をまとめておきます。

誰得な内容な気もしますが、「見た目を気にしつつハンドルを下げたい」という人の役に立つかもしれないと思い、書くことにしました。

目次

まえがき

久々にロードバイクフレームを買おうかなと思っています。実に4年ぶりです。

……が、そこで問題が起きました。

載せ替え先フレームのスタック値が大きい

今回購入を検討しているフレームはエンデュランス系ロードフレームです。

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こちらの記事でも書きましたが、エンデュランスロードというものはアップライトな姿勢を前提としていることが多いもの。

レーシング系ロードに比べると、同サイズでスタック値(一般にはBB中心からヘッドチューブ上端までの高さを指す)が15~20mmほど大きくなっていることが多いです。

そうなると困るのが、「ハンドルが下がりきらない可能性がある」ということです。

今回の事情

私はロングライドメインの人間の中では、比較的ハンドルが低いほうだと思います。

ハンドルが高すぎると、ハンドルにもたれ掛かるようになってしまい、手のひらの神経が圧迫されやすいことが理由です。ある程度下がっていたほうが体幹の筋肉で上体を支える意識が出来るため、ハンドルへの荷重が減らせると思っています。

レース系のスプリンターの方ほどは下げていないんですが、エンデュランスロードを検討すると大抵は「ハンドルが下がりきらない」問題に直面します。

今乗っているINFINITO CVはエンデュランスロードとしては比較的スタックが低く、ロード用としては一般的な角度である-7°ステムでも2mmのコラムスペーサーを入れた状態でポジションが出せました。

今回もジオメトリ表とにらめっこしながら検討をしたわけですが、案の定欲しい高さまでハンドルを下げるのは難しそうでした。

一般的な「角度: 6°」「コラムハイト: 40mm」「長さ: 100mm」のステムを使った場合、欲しいハンドル高よりも15mmも高くなってしまうことが分かりました。

ここから何とか15mm下げられるステムを探す必要があります。

なお、外装フレームであれば薄型のトップキャップを使うことでハンドル高を下げることが可能ですが、今回は内装フレームの制約で指定のトップキャップを使う必要がありました。

でも17°以上のステムは使いたくない

ステムでハンドルを下げる場合、一番簡単なのは「17°ステム」を使うことです。

上: 17°、下: 6°

下が良くロードバイクで使われる6°ステム、上が17°ステムです。角度の数値が大きくなるほど、ハンドルの位置を下げることは出来ます。

多くのロードバイクのヘッド角は73°前後なので、17°ステムを付けるとステムが地上に対して水平になります。それより角度が小さければ斜め上向きになりますし、角度が大きければ斜め下向きになります。

17°ステムを使えば、6°ステムの時に比べて約19mmハンドルを下げることが出来ます。これで目標の-15mmは解決です。

ただ、個人的には17°ステムは使いたくないのです。

こちらはかつてエンデュランスロードでハンドルが下がらず、17°ステムを取り付けた時の写真です。

写真の中で黄色い線で示しているのは、トップチューブとステムの傾き。これが大幅にズレているのが気になるのです。なんというか「連続性が途切れて見える」というか。特にエンデュランスロードはスローピングの具合が大きいことが大きく、この傾きの角度差が大きくなります。

周りの人はそんなことまで気にしてないとは思うんですが、気になるものは気になる。出来れば、トップチューブとステムを平行に近くしたい。

初期LOOKのカーボンフレーム

かつてトップチューブがホリゾンタルだった時代は、ステムも17°前後にすることが一般的でした。トップチューブもステムも地上から水平になるので「連続性」も保たれています。

しかし、2000年代初頭にGIANTが始めたスローピングフレームが一般的になるにつれて、完成車に付けられるステムも若干上向きのものが増えていきました。現在は6°のステムが取り付けられている事が多いと思います。ハンドリング等の理由もあるかもしれませんが、横から見た時のトップチューブとの連続性も考慮されている気がします。

15mm下げられるステム探し

……ということで、「ハンドルを15mm下げられる」かつ「角度が17°より小さい」ステムを探すことにしました。

これが中々の紆余曲折だったので、順を追って書いていこうと思います。

ハンドル高に影響するステムのスペック

まずはこの後の話を進めやすくするために、ハンドル高に影響するステムのスペックについて説明します。

ステム角度(angle)

ヘッドチューブに対してステムがどれだけ傾いているかを表します。これまで何度も出てきた角度はこの部分のものです。

この数値が大きいほど、ステムは前下がりとなり、ハンドル高も下がります。

ロードバイクの場合、ヘッド角(ヘッドチューブの角度)は73°であることが多いので、17°ステムを使うと「73+17=90°(地面に対してステムが水平)」となります。

コラムハイト(stack)

フォークコラムをクランプする部分の高さを表します。意外と気にする人は多くないんですが、実はハンドル高に関わる数値です。

ロード用ステムの場合、一般的にはコラムハイトが40mm前後のものが多いです。

例えば角度が同じステムであっても、コラムハイトが40mmのものと30mmのものでは、後者のほうが5mmほどハンドルが下がります。コラムハイトが10mm短くなると、ハンドルクランプ位置が「10mm÷2=5mm」下がるわけですね。

見た目で「薄い」ステムを探すと、ハンドル高を下げられる可能性があります。

オフセット

一部のステムには「オフセット」という特殊な数値が存在します。

例えばOnebyESUのスージーステムはオフセットのあるステムとして有名です。

OneByEsuサイトより引用

図を見ると、ステムの胴部分の中心線よりも、ハンドルクランプ部分の中心が下がっていることが分かると思います。胴部分の中心線とハンドルクランプ部分の中心線は一致する(オフセット0である)ことが一般的ですが、オフセットすることでステム角度が小さくてもハンドル高を下げられるわけです。

こういったステムは、まさに今回の私のように「ハンドルは下げたいけど、ステムは微妙に上向きにしたい」人をターゲットに作られています。

ステム検討

ようやく本編のステム検討の話です。

今回の私のステムに求める要件をまとめると以下のようになります。

  1. 一般的なステム(角度:6°/コラムハイト:40mm)よりもハンドル高を15mm下げられること。
  2. ステム角度は17°未満であること。
  3. ある程度の剛性を持ったステムであること。
  4. 出処のはっきりしているブランドであること。

ちなみに、検討するステムの長さは110mmです。ステム角度によるハンドルの下がり具合は以下の式で計算しています。

( sinα° – sin6°) x 110

垂直方向の下がり具合は、ステム角度をαとすればsinα°で表すことが出来ます。今回のステム長は110mmなので、その長さを掛ければハンドル高の下げ幅となります。

ステム角度17°未満で15mm下げようとすると、角度は12~15°程度は必要になりますが、この角度のステムはほとんどありません。

検討1: OnebyESU「スージーステム」

まず検討したのが、まさにこういう目的のために作られた製品である「スージーステム」です。

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スペックを以下に示します。

製品名 OnebyESU「スージーステム」
ステム角度 13°
コラムハイト 35mm
オフセット 7.5mm
素材 6061アルミ
ハンドル高
(6°/40mmのステム比)
-22.2mm
角度による下げ幅: -13.2mm
コラムハイトによる下げ幅: -2.5mm
オフセットによる下げ幅: -7.5mm

長さ110mmのステムで比較した場合、一般的なステムに比べてなんと23mmもハンドルが下がります。目標を8mmも超えています。

「もうこれでいいんじゃない?」と思ったんですが、以前試した時に感じた感触が思い出されました。個人的に求めるラインに剛性が足りないのです。形的にはゴツいので硬そうなんですが、感触としては不足を感じました。

私の使い方の中心はブルベなので、スプリントをするわけではありません。ただ、信号発進やヒルクライム時にダンシングを多用するので、その際にステムに捻れを感じると気持ち悪いと言うだけの理由で「剛性が欲しい」と思ってます。

とはいえ、VIBE SPRINTのような「剛性の塊」みたいなものは求めてないです。アルミの高性能なステム(3T ARX TEAM等)くらいの剛性があれば十分です。

ハンドルが下げられることは魅力ですが、剛性も大切なのでこちらの採用は見送ることにしました。

検討2: OnebyESU「カーボンスージーステム」

スージーステムにはカーボン版があります。「剛性に不足があるならこっちはどうだ?」と思っての検討です。

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スペックを以下に示します。

製品名 OnebyESU「カーボンスージーステム」
ステム角度
コラムハイト 42mm
オフセット 9.1mm
素材 カーボン
ハンドル高
(6°/40mmのステム比)
-8.1mm
角度による下げ幅: 0mm
コラムハイトによる下げ幅: +1mm
オフセットによる下げ幅: -9.1mm

なんと、目標の-15mmに対して7mmも届かない結果となりました。

実はスージーステムとカーボンスージーステムは造形が大幅に違っています。角度もコラムハイトもオフセットも全てが異なります。これにより、あまりハンドル高が下がらなくなっているのです。

形そのままで素材だけ変えてくれれば良かったのに、なぜ形まで変えてしまったんでしょうね。製造上の理由とか強度的な理由があるのかもしれませんが。

今回の最優先事項はハンドル高を下げること。カーボンスージーステムの採用は見送りとなりました。

検討3: OnebyESU「77ステム」

3本目の検討もOnebyESUです。それだけ色々マニアックなステムを出しているブランドであるということですね。

77ステムは、その名の通り「77°のステム」です。この記事の表記法で言えば、90-77=13°のステムということになります。

スペックを以下に示します。

製品名 OnebyESU「77ステム」
ステム角度 13°
コラムハイト 41mm
オフセット 0mm
素材 7075アルミ
ハンドル高
(6°/40mmのステム比)
-12.7mm
角度による下げ幅: -13.2mm
コラムハイトによる下げ幅: +0.5mm
オフセットによる下げ幅: 0mm

13°という角度による下げ幅は大きかったですが、コラムハイトがそれなりに大きかったことであまりハンドルが下がりませんでした。目標に2.3mm足りません。しかし、2mm程度であれば「慣れ」で吸収できる可能性はあります。

ただ、77ステムは所有していて過去に使っていたこともあるんですが、こちらも剛性に不満がありました。

90mmステムの実測重量が104gと異様に軽かったので、胴部分の肉厚が薄いのかもしれません。

ハンドルの高さ・剛性ともに不足ということでこちらも見送りとなりました。

検討4: SPECIALIZED「S-WORKS SL STEM」

ようやくOnebyESU以外のブランドです。SPECIALIZEDも珍しい角度である「12°」のステムをラインナップしています。

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スペックを以下に示します。

製品名 SPECIALIZED「S-WORKS SL STEM」
ステム角度 12°
コラムハイト 40mm
オフセット 0mm
素材 7075アルミ
ハンドル高
(6°/40mmのステム比)
-11.3mm
角度による下げ幅: -11.3mm
コラムハイトによる下げ幅: 0mm
オフセットによる下げ幅: 0mm

角度は良かったのですが、コラムハイトが普通なので3.7mm下げ幅が足りませんでした

性能は良さそうなので、今後同じように悩むことがあればSPECIALIZEDという選択肢があることを覚えておこうと思います。

その他、ENVEやZIPPも12°のステムをラインナップしてはいますが、いずれもコラムハイトが40mmを超えているので下げ幅は同様に足りないはずです。

検討5: FSA「SL-K MTB 12°ステム」

色々探し回って最後に見つけたのが、FSAのMTBステムでした。

名前の通りMTB用のステムですが、ロードバイクに取り付けるのに特に問題があるわけではありません。

スペックを以下に示します。

製品名 FSA「SL-K MTB 12°ステム」
ステム角度 12°
コラムハイト 34mm
オフセット 3mm
(写真からの推定値)
素材 2014アルミ
ハンドル高
(6°/40mmのステム比)
-17.3mm
角度による下げ幅: -11.3mm
コラムハイトによる下げ幅: -3mm
オフセットによる下げ幅: -3mm

このステムは12°ではありますが、コラムハイトが低く、さらにオフセットもあるのでかなりハンドルを下げることが出来ます。目標の-15mmよりも2.3mm低い、-17.3mmとなりました

重量から推察するに肉厚もそれなりにありそう。試してはいませんが、剛性面でも問題はなさそうです。

実際使ってみての問題が出る可能性はありますが、今回の要件には合いそうなので注文してみることにしました

12~15°のステム一覧

上記のステム検討で登場したのは5本のみですが、12~15°のステムは大体スペックを確認しました。抽出条件は以下です。

  • 長さが100mm以上のステムで、角度が12~15°であること。
  • ハンドルクランプ径が31.8mmであること。

似たような情報を探している人がいるかも知れないので、一覧として残しておきます。

ブランド製品名角度コラムハイト素材
BOMAST-02ステム13°42mmAL+カーボン
DARIMOiX2 ステム12°47mmカーボン
DARIMOiX4 ステム12°46mmカーボン
DARIMOIX2AL ステム12°38mm7075AL
ENVEAERO STEM12°42.5mmカーボン
EXTRALITEHyperStem12°38mm7075AL
FSAKFX -12° MTBステム12°35mm2014AL+カーボン
FSASL-K -12° MTBステム12°34mm2014AL
FSAAFTERBURNER MTBステム12°34mm6061AL
OnebyESU77ステム13°41mm7075AL
OnebyESUスージーステム13°35mm6061AL
ROVALALPINIST STEM12°40mm7075AL
SPECIALIZEDS-Works Tarmac SL7 Stem12°不明不明
SPECIALIZEDS-Works Venge Stem12°不明不明
SPECIALIZEDS-Works SL Stem12°40mm7075AL
SPECIALIZEDComp Multi Stem12°
14°
不明6061AL
TruVativXR Stem12°不明6061AL
ZIPPSL SPRINT CARBON STEM12°41mmカーボン

まとめ

水平ステムを使わずに何とかハンドルを下げるまでの検討をお送りしました。

最後まで残ったのは、FSA「SL-K -12° MTBステム」でした。実物を使ってみて不満があった場合、もはや代替手段がないのは気がかりではありますが……とりあえずポジションは出ることが分かったので新フレームの発注は進める予定です。

あと10mmずつくらいエンデュランスロードのスタック値を小さく設計して頂ければここまで悩まなくて済むのですが。もしくは、ステムの角度の選択肢がもう少し増えると良いですね。今は6°か17°しか見かけないので。

著者情報

年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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