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PBP 2023 GPSサイコン用の海外地図データ作成
GarminのGPSサイクルコンピューター用に海外の地図データを入れる方法を紹介します。
本記事で説明するのは、Garminのサイクルコンピューター(EDGEシリーズ・eTrexシリーズ)向けの手順となります。
まえがき
GPSサイコンに海外の地図データを入れる必要性について説明します。
地図データの必要性
PBPはフランスで開催されます。
PBPはコース上に矢印による案内が出ているのでキューシートのみでも走れないことはないのですが、ミスコースをした場合などに備えて地図を表示可能なサイクルコンピューターがあったほうが心強いです。
通常、皆さんが使っているGPSサイクルコンピューターには日本国内の地図しか入っていません。
例えばその状態のサイクルコンピューターを持ってフランスに行った場合、マップを表示しても白地図が表示されるだけです。どのように道が通っているかなどは表示されません。
マップに道路情報などを表示させるためには、その地域の地図データが必要となります。
PBPで必要な地図データ
PBPはフランスの北西部、パリ~ブレスト間で開催されます。
具体的には、画像の破線で囲った部分の地図データを入手し、サイクルコンピューターに入れる必要があります。
地図データの購入
王道の方法は、地図データを購入することです。
Garminのサイコンの場合は、こちらの地図を購入してインストールすればヨーロッパの地図が表示可能となります。
地図データの作成サービス
一方、無料で地図データを作成できるサービスも存在します。
こういった際に良く使われるのが「OSM(OpenStreetMap)」と呼ばれるサービスです。
オープンストリートマップ(英語: OpenStreetMap、OSM)は自由に利用でき、なおかつ編集機能のある世界地図を作る共同作業プロジェクトである。GPS機能を持った携帯端末、空中写真やほかの無料機械からのデータをもとに作られていくのが基本だが、編集ツール上で道1本から手入力での追加も可能である。与えられた画像とベクトルデータセットはオープンデータベースライセンス (ODbL) 1.0のもと再利用可能である[1]。
いわば、Wikipediaの地図版。
そして、このOSMのデータをGarminのサイクルコンピューター用に変換してくれるサービスがいくつか存在しています。
2019年のPBPの際には「Free maps for Garmin brand GPS devices」というサービスを使っていましたが、こちらのサービスは終了。
その後継となるサービスが「BBBike extracts OpenStreetMap」です。
かなり帯域を使うサービスと思われますので、少額でも是非寄付してあげてください。
今回の記事では、「BBBike extracts OpenStreetMap」を使ってPBP用の地図データを作る方法を説明します。
地図データの作成手順
まずは、地図データの作成手順を説明します。
1. BBBike extracts OpenStreetMapにアクセス
まずは、BBBike extracts OpenStreetMapにアクセスします。
アクセスすると、左側に地図データ作成用のメニュー領域、右側に操作可能な地図が表示されます。
初期状態ではドイツのベルリンが中央に表示されています。恐らく、現在のサイト管理者がドイツの方であることが理由と思われます。
2. フランスの北西部を表示する
地図をドラッグ&ドロップして、フランスの北西部を表示します。
左側のメニュー領域にある「here」と書かれたボタンをクリックします。
すると、地図上に長方形の領域が表示されます。この長方形の選択範囲が地図データを出力する範囲となるわけですが、このままでは不要な領域の地図データも出力されてしまいます。
東西方向はこれでちょうどよいサイズですが、南北方向にはカバー範囲が広すぎます。もっと狭くてもPBPを走るだけなら十分です。
選択範囲が広いほど地図データのファイルサイズは大きくなり、ダウンロードや転送にも時間が掛かります。あくまで必要な範囲を最小限だけ選択するのがコツです。
3. 選択範囲を操作する
そこで、選択範囲を操作して、最小限の範囲だけを選択します。
メニュー領域のラジオボタンが「resize or drag polygon」を選択されている状態になっていると思いますが、これを「add points to polygon」の選択に切り替えます。
その状態でオレンジの選択範囲をクリックすると、選択範囲が青色に変わります。
同時に、選択範囲の枠線上にオレンジの○が表示されます。この○をドラッグ&ドロップすることで、選択範囲の大きさを自由に変更することが出来ます。
PBPを走るだけであれば、これくらいの領域の地図データがあれば十分です。
4. 地図データのメタ情報を入力
次に、地図データのメタ情報(地図データの名前や、出力する際のフォーマット)を入力して行きます。
データを入力するのは、↓に示した3つの項目です。
Format
出力するデータのフォーマットを選択します。
色々な地図データを選べますが、とりあえずは「Garmin OSM (latin1)」を選んでおけば問題はないと思います。
ファイルサイズをより小さくしたい場合は「Garmin Openfietsmap Lite (latin1)」を選んでも良いですが、地図上に表示されるデータはOSMを選んだ場合より少なくなる可能性があります。
Name of area to extract
今回作成する地図データの領域に名前を付けます。
例として「PBP_map」という名前を入力したものとします。
Your email address
自分のメールアドレスを入力します。
地図データの出力には数分掛かるため、出力が完了してダウンロードが可能な状態になると、このメールアドレスにメールが届きます。
5. 地図データを出力
メタデータを入力したら、地図データを出力します。
メニュー領域にある「extract」ボタンを押します。
これによって、地図データの作成処理が動き始めます。
同時に、上の画面に遷移します。「データの作成には2~7分ほどかかるよ」と書かれていますね。
6. 地図データのダウンロード
しばらく経つと、入力したメールアドレス宛に、地図データのダウンロードURLが書かれたメールが送られてきます。
もしくは、こちらのURLから出力状況を確認することも出来ます。
「Running extracts」に並んでいる項目は、現在出力中の地図データです。
出力が完了した地図データは「Ready extracts」に表示されます。
私が入力した「PBP_map」のデータも「Ready extracts」の中に存在していました。
その右側に表示されている「download」をクリックすると、データがzip形式でダウンロードされます。今回のデータは300MB程度になったようです。
この地図データがいつまで残るのかは分かりませんが、私と同じデータで良ければ「PBP_map」のデータを検索してダウンロードすれば、「データ作成」の手順は必要なかったりします。
これで地図データの作成手順は終了です。
地図データのインストール手順
次に、ダウンロードした地図データをサイクルコンピューターにインストールする方法を説明します。
今回、インストールする機種はEDGE530です。他の機種も細かい点は違いますが、大体やり方は同じです。
eTrexシリーズの場合には、地図を有効化するのに少し特殊な操作が必要となることがあります。
1. 地図データファイルを解凍する
解凍ソフトを用いて、ダウンロードしたzip形式の地図データを解凍します。
解凍するといくつかのファイルが出てきますが、この中の「gmapsupp.img」が作成した地図データです。
2. 地図データファイルのリネーム
この地図データをサイクルコンピューターにインストールするわけですが、ファイル名がこのままだと既にインストールされている日本の地図データが上書きされて消えてしまいます。
そうならないように、ファイル名をリネームしましょう。
ファイル名は何でも良いのですが、ここでは「gmapsupp_pbp.img」に変更したものとします。
3. 地図データファイルをサイコンにコピー
USBケーブルで、EDGE530をパソコンに接続します。
「Garmin」フォルダを開きます。
このGarminフォルダに、先ほどリネームした「gmappsupp_pbp.img」ファイルをコピーします。
これで地図データのインストールは一旦完了です。
4. 地図データが有効化されているかの確認
EDGE530からケーブルを取り外し、電源ボタンを押してEDGE530を起動します。
そして、下記の通りメニューをたどります。
設定
→アクティビティプロフィール
→(使用中のプロファイルを選択)
→ナビゲーション
→地図
→地図情報
かなり深い所に地図データの設定は隠れています。
恐らく一番下に「PBP_map」が表示されているはずです。ここに「有効」と表示されていれば、地図データのインストールは正しく完了しています。
試しに、PBPの折り返し地点であるブレスト近辺の地図を表示させてみましたが、正しく地図が表示されていることを確認できました。
まとめ
GarminのGPSサイクルコンピューター用にフランスの地図データを入れる方法を紹介しました。
今回はPBP用ということでフランスを例にとって説明しましたが、この方法を使うと選択範囲さえ変えれば世界全土の地図データを作成することが出来ます。
台湾を旅行する際には台湾のデータを作成することが出来ますし、オーストラリアに行くならオーストラリアのデータを作成可能です。
ただし、一度に作成可能な地図データの範囲には制限があります。そういった場合には、領域を分割して地図データを作成する必要があるでしょう。
重ねて書きますが、このサービスの維持には恐らくかなりのお金が掛かります。
このサービスを利用される方は是非、サービスへの寄付をお願いします。次回のPBPの時にサービスが消滅していたら困りますので。
私も10ユーロほどを寄付しました。
著者情報
年齢: 38歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。