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サイクルモード東京2022 参加レポート(後編・南ホール&試乗コース)
2年5ヶ月ぶりの開催となった「サイクルモード東京」。幕張から有明に会場を移しての開催となった国内自転車界最大のイベントのレポートです。
後編は南ホールのブースと試乗コースについて書きます。

西ホールのブースを紹介した前編の記事は↑です。
ブース紹介(南ホール)
ほぼ全てのブースを回ったと思いますが、その中で気になった・面白かったブースを紹介します。
本記事では南ホールのブースを紹介します。
SHIMANO
入り口そばに大きなステージを構えるシマノ。1日目の入場リストバンドにもシマノロゴが入っていたので、今回のイベントには貢献度が高そうです。
今回実物を見たかったのはホイール。新型デュラのホイールを見てみたかったのです。
これが12速スプロケ専用のフリーボディ。たしかに食い込まなそう。
ブリヂストン・アンカー選手仕様と思われるRP9も展示されていました。
新型アルテグラのパワーメーター。
こちらもかなりセンサーは薄めです。
Stages Cycling
インターテックブースの中で割と小さい扱いとなっていたStages(メインはWahoo)。個人的には結構注目でした。
自転車を兼ねるホームトレーナー、「STAGESBIKE」。お値段297000円(税込)。
静粛性も高く、調整幅もかなり大きそう。同じ代理店のWahooの「KICKRBIKE」とキャラはかぶりますが、むこうは517000円(税込)。ずいぶんとSTAGESの方が割安です。
62.5kgという重量に耐えられる床とスペースは必要ですが、室内トレーニングがメインの人なら悪くない投資だと思います。
結構前からあるクランク型パワーメーター「STAGES POWER」も意外とセンサーは薄いんですね。4iiiiの新作と良い勝負かもしれない。
Canyon
Canyonブースには東京五輪で大きな話題を呼んだ「公式痛バイク」を展示。
あと、通販でしか買えないCanyonのバーエンドベルが会場限定で販売されていたようなのですが、私が行った時間には売り切れ。残念。
LYNX TOURING
大手の自転車パーツ問屋である株式会社TOPが扱う「LYNX TOURING」というブランドがなかなか興味深かったので紹介します。
注目したのがこちらのサドルバッグ。防水生地を採用しているようで、生地同士は溶着されています。防水性能が高そう。それでいてかなり軽いです。
良いなーと思ったのは、底面に反射バンドが縫い付けられていること。この位置は車に対してのアピールがかなり強く、反射材を付けるには効果的な場所です。使われ方をよく分かっていますね。
詳細なスペックはまだスタッフの人も知らなかったので、続報を待ちたいと思います。
AVEDIO
意外と老舗ブランドになってきた感のあるAVEDIO。実はTOPの子会社であったと今回知りました。まだ販売されていないこちらのエアロロードは、カラーリングが中々好み。
エヴァディオはカラーパーツが豊富なのが魅力的ですね。ピンクパーツが多い。
こちらは珍しいアルミスポークのオリジナルホイール。残念ながら部材が中々調達できないそうで現在は追加生産を停止中だそうです。
フカヤ
最近元気なフカヤ(旧・深谷産業)。オリジナルバイクが多数展示されていました。
大注目なのが、こちらの「GE-110」。スタッフの方いわく「ブルベ向き設計のロードバイク」。三船雅彦さんが開発協力をしているようです。
この自転車はブルベにも昔から参加されている三船さんの実車でもあります。
「ブルベ向けのロードバイク」というとグラベルロード方面に行ってしまいがちですが、こちらは三船さんの志向を反映してか、かなりファストランよりの設計にされているようでした。
ケーブルは完全内装方式になっていますが、これは空力というよりも「フロントバッグを付けやすくするため」のようです。確かに私もフロントバッグとケーブルの干渉には悩んだことがあるので納得。
重量はフレーム単体で1000g前後、目標価格は20万円とのこと。かなり楽しみですね。
キャンプツーリングを好むhideaさんが熱視線を送っていたのが、こちらの「ジェットボイル専用ボトルケージ」。キャンプ界隈ではジェットボイルが定番のようですが、バッグに入れるには重くて収まりが悪い。
それをボトルケージに納めることでスッキリ解決。これは求めていた人も多いんじゃないでしょうか。
東洋紡
SPINERGYのスポークは「ザイロン」という鉄より強いスーパー繊維を使っていますが、そのザイロンを作っているのが東洋紡です。
今回は心拍計を取付可能なインナーウェア「COCOMI」を展示していました。
対応している心拍センサーも多いようで、これは中々良さそう。
既にAmazonで売っているようです。
iRC
サイクルモード当日に新クリンチャータイヤ「ASPITE PRO」を発表したiRC。パナレーサーのAGILESTとガチンコ勝負ですね。
トレッドパターンはかなり独特。
すぐ近くに、iRCの自転車用タイヤ開発責任者である山田さんがいたので、この新タイヤについてお話を聞きました。CROSS COFFEEでのチューブレス講座で講師をしていた方です。
まず聞いたのは、「なぜクリンチャーなのにフックレスリム対応なのか」という点。フックレスリムと言えばチューブレス専用というイメージがありました。
しかし、山田さんが言うには「チューブレスと同等のビードを用意すればクリンチャータイヤでもフックレスリム運用は可能」とのこと。チューブレスタイヤのパイオニアであるiRCにはビード作成のノウハウがあるので、フックレスリムでも問題のないビードを搭載することが出来たそうです。その分、ビードにかかるコストが上がっていて大変だと言ってましたが……。

bistaraiさんのレポートによると、ビードの素材をケブラーではなく伸びにくい素材に変えているという差があるようです。
フックレスリムに対応するクリンチャータイヤは恐らく世界初。チューブレスタイヤではなくクリンチャータイヤが使えるのならばフックレスリムを使う人にとって選択肢が増えますし、良いことのように感じます。私自身、フックレスはチューブレス専用と聞いて正直躊躇していましたので……。
もう一つ興味深かったのが、こちらの車いすテニス用のタイヤの話。車いす用の室内競技のタイヤって、必ずカラータイヤらしいんですよね。
理由は、「黒いタイヤだと床に跡が残ってしまうから」。それなので、跡が付いても目立ちにくい色のカラータイヤを使うんだそうです。黄色やピンクなど、体育館の床に近い色のものが採用されるとのこと。
山田さんいわく、「体育館シューズのアウトソールの色は体育館の床に近い色をしてますよね。それと同じ理由です」。

たしかにこちらの記事の画像を見ても、全員がカラータイヤです。
しかし、昔から「カラータイヤは性能が低い」と言われて来た自転車趣味の人間としては、果たしてそれで性能が出るのか疑問でした。そんな私の疑問に対する山田さんの回答が以下です。
・タイヤが黒くなるのはカーボンブラックというものを混ぜるから。これはタイヤの補強が目的。
・しかし、カーボンブラックは低温での転がり抵抗があまり良くない。
・そこで代わりにシリカを使うことがエコランの世界では増えてきている。シリカは白いので、何色にでも出来る。
・以前はシリカを使ったタイヤの性能はカーボンブラックに敵わなかったが、シリカとゴムの仲立ちをする添加剤の研究が進み、現在ではシリカの方が性能を出せるようになってきている。
この10年でかなりシリカを使ったタイヤの性能は上がっている。
・iRCのタイヤもシリカがメインでカーボンブラックは少量しか入っていない。なので、自転車用でも同等の性能のカラータイヤを作ることは難しくはない。
では何故、カラータイヤを作らないのか?と言うと、自転車界隈ではカラータイヤの人気があまり無い(=売れない)からだそうで……。
私のカラータイヤに対する知識がかなり古いまま止まっていたことが山田さんの話を聞いてよく分かりました。この話が聞けただけでサイクルモードに来た意味がありました。
MAGICSHINE
OLIGHTのライト製造を手掛けるMAGICSHINEが出展されてて驚きました。出展していたのは、「e-COSMO」という代理店。最近、ダートフリークもMAGICSHINEの取り扱いを始めましたが、扱い始めたのはe-COSMOが先とのこと。
気になったのは「RAY1600」と「RAY2100」。「RAY2600」は既に持っていてレビューもしているのですが、その弟分がいつの間にか発売になっていたようです。まだ公式サイトにも記載がないんですけどね……。筐体はRAY2600と共通でした。
この代理店の社長さんとMAGICSHINEの社長さんが仲が良いらしいので、ブラケットの改良をしてもらえるように要望しておきました。
HONBIKE
今回、会場でやたら「HONBIKE」と書かれたエコバッグを持っている人が多くて気になっていたのですが。今回、一番派手だったのがHONBIKEのブースです。
この韓流スターのような人物が社長さんらしい。
「片手持ちでチェーンを使わない小径e-bike」というかなりの意欲作を出展していましたが……話題をさらったのは自転車ではなく展示方法。
水着のお姉さん達がステージ上で自転車をアピールするという、バブルの残り香を感じる演出で参加者の度肝を抜いていました。このご時世なので賛否両論はありそうですが、実に「勢い」を感じるブランドでしたね。
2日目の入場用リストバンドもHONBIKE。1日目がシマノだったことを考えると、「冠スポンサー」であることが伺えます。
BTB輪行箱
飛行機輪行に使えるBTB輪行箱。値段を見てみると、203cmタイプは税込で20000円ほどと意外に安いことに気づきました。
PBPでは同じ素材でプラダン輪行箱を作りましたが、復路でアエロフロートの散々な扱いによって箱が破損。保険で何とかなりましたが、結構ひどい目に遭いました。
こちらの輪行箱は大事そうなところは素材が二重になっていて、かなり強そう。その分重くはあるのですが、次に海外輪行をするならこれを買おうかなーと思いました。値段は自作する時の4倍くらいはしますが、自作の手間を考えればトントンかなと。
Panasonic
パナソニックといえばオーダーメイド自転車。
長らくクイックリリースだったパナチタンもついにスルーアクスル化したようです。
エンドは質感が違うものの、全てチタン製。スルーアクスルのレバーが右側にあるのは、ローターで火傷しないようにするための配慮だとのこと。
泥除け用の穴も付属。エンデュランスレーサー志向だと仰っていました。実はフルフェンダーをディスクロードに付けるってかなり難しいので、この穴は嬉しいですね。
TAIPEI CYCLE
3月に開催された台北ショーで優秀賞を獲得した製品が紹介されていました。
私が最も気になったのは、こちらのテールライト。
AIRSHIFというブランドのもので、「3000mAhのバッテリー搭載」「TypeC充電可能」とのこと。普通のテールライトのバッテリー容量はせいぜい500mAhなので、6倍もの容量を持ちます。それを充電するために、高速充電に対応したTypeC端子を採用。かなり期待できるスペックです。
18650バッテリーが中に入るようですが、展示品にはバッテリーが入っていませんでした。そのため当然点灯もせず。スタッフの方も全く製品に対しての話は聞かされていなかったようで、参考になる話は聞けませんでした。
製品ページを見つけました。パナソニックの18650バッテリーを採用しているようです。ただ、「120時間の点滅モード」としか書かれていないのは気になりますね……「点灯」のモードはないのかな。
XPEDOのパワーメーター付きペダルも展示。
ハンドメイドバイシクルエリア
5~6年前のサイクルモードから始まった気がするハンドメイドバイシクルエリア。今回もコーナーがありました。
macchi cycles
まずはハンドメイドバイシクル展でもご挨拶させていただいた、滋賀のmacchiさん。
こちらのカーボン×スチールのミックスバイクは何度見てもカッコいいですね。一度スチールパイプで全体を組んだ後、カットした所にカーボンパイプを入れる手間のかかる工法で作られています。
「何故カーボンを入れてみようと思ったんですか?」と聞いてみたところ、「やってみたかったから」という回答が返ってきました。で、実際に乗り味も好評だそう。
フレーム重量も1200gと、少し前のカーボンフレーム並。いつかオーダーしてみたい一本です。
Equilibrium
こちらもハンドメイドバイシクル展の常連、イクイリブリウム。
こちらもカーボンをミックスした意欲的なバイクがカッコいい。スチール×カーボンは独特のかっこよさがあると思っています。
DACCORDI
スチールフレームが並ぶ中、なぜかカーボンフレームが鎮座するダッコルディのスペース。
何故?と思ったんですが、ダッコルディのカーボンフレームはハンドメイドだそうです。まぁ大抵のカーボンフレームはハンドメイドであるはずですが……。
こちらのNOAHというモデルはジオメトリオーダーも可能。カーボンフレームでそういったことが出来るのは珍しいですね。
Actionステージ
ACTIONステージでは、三船雅彦さんのトークショーに参加。
フカヤブースにあったロードバイクを持ち込んでの「ロングライド講座」でした。笑いが起きるポイントが「ブルベあるある」のところばかりだったので、恐らく周囲はブルベやっている人だらけでしたね。
こちらはブルベ中に遭遇した子鹿だそうです。「野生動物は熱を持たないLEDライトに気づきにくいのでは?」という説を聞いて「なるほど」と思いました。
試乗コース
今回、私はパーツを見ることが目的で試乗はほぼしませんでした。
が、かなり長い試乗コースであるということで、せっかくなので1回は走ってみることに。
試乗したのは、AVEDIO「VENUS」です。フラペでした。
コースマップ
コースは、西ホールと南ホールを結ぶかなり大規模なもの。全長は1kmを超えています。幕張時代のサイクルモードと比べても最長の試乗コースではないでしょうか?
試乗
ビッグサイトの海沿いのスペースを走る気持ち良いコースでした。
屋内の滑りやすそうなカーブには摩擦の強そうなシートが敷かれており、落車対策もしっかり取られている印象。その分、ヘアピンカーブはやたら多いですが。
コース内にも坂ゾーンや段差の多いグラベルを意識したゾーンがあり、距離の長さも相まってこれまでよりも試乗らしい試乗が行えるようになっていた気がします。
2日目はあいにくの雨天となってしまい、屋外コースは使用されず。屋内(西ホールと南ホールを繋ぐ所のみ外を走る)を走る短縮コースで開催されていました。
駐輪場
もう一つ気になったのが駐輪場です。
案内ページには、「盗難対策もバッチリですので、ぜひ愛車とサイクルモードを楽しんでください!」と書いてあるものの、かつてのサイクルモードの駐輪場では毎年盗難が起きていました。
私は2日とも電車で参加しましたが、次回以降のために駐輪場を見ておくことにしました。
入り口にはゲートとスタッフの方がいて、本人確認を行わないと自転車を持ち出せない仕組みとなっていました。
警備員の方も常時2~3人が巡回しています。なるほど、これなら安心は出来そう。ただ、完全野外の駐輪場なので、2日目のように雨が降ってしまうとキツいですね。
次回以降、天気が良ければ自転車で来てみるのも良いかもしれないと思ったのでした。
まとめ
サイクルモード東京2022、南ホールのブース紹介と、試乗コースの紹介でした。
南ホールはe-bikeや観光協会のブースがメインでしたが、本記事ではパーツばかりを取り上げました。結構偏った内容になっていると思います。
南ホールのブースでは、iRCのブースが一番ためになりました。というか、開発責任者が普通にブースをブラブラしているのが強すぎる。こういった専門家の話を聞ける機会なんてそうそうないですからね。やはりリアルイベントはこういう所が良いのです。
初のビッグサイト開催となったサイクルモードですが、客足も多かったですし、一参加者の目線では大成功だったように思えます。試乗コース、駐輪場といったサイクルモードの付随施設も進化しているように感じました。
早くも来年のサイクルモードが楽しみです。
著者情報
年齢: 37歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。