GROWTAC EQUALブレーキを導入(前編)

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最近話題になっているメカニカルディスクブレーキ「GROWTAC EQUAL」を導入することにしました。

端的に言えば、油圧ホースを使った油圧式ディスクブレーキを捨てて、ワイヤー引きの機械式ディスクブレーキに移ることになります。

目次

所有するディスクロードの問題点

昨年3月、私はディスクロード「Bianchi INFINITO CV」を購入しました。

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2015年にディスクロード選びで失敗した私は「次こそは失敗しない」と心に誓い、50台の試乗を経た上での購入だったのですが……。

走行距離が伸びない

せっかく買ったディスクロードですが、あまり走行距離が伸びません。

 

購入から一年半が過ぎましたが、走行距離は4000km程度。私はだいたい年間の走行距離は12000km程度なので、一年半だと18000km程度は走行します。そのうちで4000kmしか出番がなかったわけです。

割合にすると20%強。80%弱はリムブレーキ車に乗っていたことになります。

ブルベにもどんどん使っていこうと思っていたのですが、結局200kmブルベを1本走っただけでした。

端的に言えば「乗る気があまり起きない」のです。

なぜ乗る気が起きないのか

乗る気が起きない理由は色々あるんですが、最大の理由は「走りが重い」ことです。

INFINITO CVの車重自体はそこまで重くありません。ライトやサイコン等の装備を外した状態の重量は7.4kg(ペダル無し)。リムブレーキより0.6-7kgくらい重くなることが多いディスクブレーキ車ではかなり軽い部類に入ると思います。

でも、同じくらいの重量のリムブレーキ車と比べると、「走りが重い」と感じるのです。

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ホイールを変えれば解決するかと思い、2つほどカーボンホイールを購入して試してみました。確かに多少は走りが軽くはなったのですが、「走りの重さ」が完全に消え去ったわけではありませんでした。

走りの重さの正体

では私が感じている「走りの重さ」の正体は何だったのか。恐らくですが、「ハンドル周りの重さ」ではないかと思い至りました。

こちらは私がINFINITO CVに試乗した時のツイートです。この時はかなりの好感触で、この時点で購入を検討し始めたほど。

この時のINFINITO CV試乗車は「走りが重い」とは微塵も感じられなかったのに、自分の手元にあるINFINITO CVは何故「走りが重い」と感じたのか。

その答えは、2台のINFNITO CVの装備の差を見ると浮き上がってきます。試乗車は「電動式変速の油圧ディスクブレーキ」で、私の手元にあるのは「機械式変速の油圧ディスクブレーキ」なのです。

特に問題となってくるのは、ハンドルに付いているSTI(デュアルコントロールレバー)の重量です。

ハンドル周りが重い

STIの重量に着目してみます。

試乗車に付いていたST-R9170(電動式・油圧)の重量は320g

私の所有するINFINITO CVに付いているST-R8020(機械式・油圧)の重量は554g

その差、なんと234g。これだけの追加重量がハンドルの左右の端に付いているわけです。

ハンドルを大きく左右に振るダンシングの際はもちろんのことですが、自転車に乗っている際には細かくハンドルを切り続けています。その際に、ハンドルの中心から一番遠い場所に付いているSTIの重量は大きく影響してくるはずです。

恐らく、私はこの機械式変速の油圧ディスクブレーキSTIの重さを「走りの重さ」と感じていたのではないかと考えました。

問題の解決案

とはいえ、せっかく買ったディスクロード。活躍の場を増やしてやりたいし、ブルベにも投入したい。

ディスクロードの試乗は50台程度行いましたが、電動変速でもイマイチだと感じたフレームはありました。チョイ乗りの印象を良くするためなのか、今確認すると電動変速が付いている試乗車が多かったことに気づきます(写真を必ずTwitterに上げているので確認しました)。

INFINITO CVは試乗時に電動変速コンポが付いていたから良く感じたというのもあるのでしょうが、フレームの素性自体は良いはず。ということは、ハンドル周りが軽くなると「化ける」可能性は高いということです。

ということで、何とかディスクロードを使うための解決策を考えることにしました。つまりは、「ハンドル周りを軽くする方法」です。

案①: 電動式変速の油圧式ディスクブレーキ

もっとも王道な方法は、油圧ディスクブレーキのまま、変速周りを電動化することです。

ただし、電動化する場合にはSTIだけではなく、前後のディレイラーも電動化する必要があります。コンポーネントをほぼ総入れ替えしなければなりません。

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先日発表された新型アルテグラ(R8100シリーズ)には非常に期待していたのですが、予想よりも高価でした。

そしてシマノは、機械式変速の油圧STIを廃止。やっぱり重すぎたということでしょうね。結局、機械式の油圧STIは一世代しかラインナップされませんでした。

R8100シリーズのセット価格が約28万円。これに組換工賃が4~5万円が追加されるため、諸々を含めで掛かる金額は35万円程度になるでしょう。ちょっと前ならばアルテグラの完成車(リムブレーキ)が買えてしまう金額です。さすがに組換に出せる金額ではありません。

新型ではなく旧型のアルテグラ(R8000シリーズ)ならば、もう少し安く仕上がるはずです。しかし、今から組み替えるというのに、わざわざ型落ちの電動コンポーネント一式を買うのは気が引けるのが人情というもの。

このような理由から、電動化案は諦めることにしました。

案②: 機械式ディスクブレーキ

次の案は、油圧ディスクブレーキを捨てて、機械式ディスクブレーキを使う方法です。

機械式ディスクブレーキはリムブレーキと同じく、金属ワイヤーを引くことで制動力を伝達します。つまり、リムブレーキ用のSTIを使うことが出来ます

たまたま我が家には、新品のST-9001(デュラエースのリムブレーキ用STI)がありました。あとは、機械式ディスクブレーキのキャリパーさえ調達すれば移行は可能ということです。

今、機械式ディスクブレーキと言ったら、やはり「GROWTAC EQUALブレーキ」を置いて他にはないでしょう。まさしく私のようなリムブレーキ資産を余らせてる人間に向けて作られた新世代の機械式ディスクブレーキです。

発売開始直後にお世話になっているショップが試乗車を用意してくれたので試しました。

通常、機械式ディスクブレーキは油圧式ディスクブレーキよりも性能的に劣るのですが、油圧式と遜色のない制動力とコントロール性を持っていることに驚きました。

詳しい話はGROWTACの開発資料に譲りますが、力の伝わる経路(ワイヤーやキャリパー内部の構造)を工夫することで、油圧式に性能を近づけたとのこと。その性能は実際に触って体感することができました。

GROWTAC EQUALブレーキの価格は、ブレーキパッド・ワイヤー付きで前後セット33000円。載せ替え工賃はやはり4~5万程度は掛かるはずですが、合計しても10万円以下で移行できそうです。

油圧式ではないのでブレーキパッドとローターのクリアランスの自動調整機能はありませんが、リムブレーキでもブレーキシューがすり減ったら調整するものなので、そこまでのデメリットではないと考えました。

このような理由で、今回はGROWTAC EQUALブレーキを採用することにしたわけです。

……一応、購入前に再度サイクルキューブで試乗し、感触を確かめて納得の上で注文しました。

油圧式→機械式って、傍目には時代に逆行する行為ですからね。それでもやはり私には機械式にしてでもハンドル周りを軽くするメリットのほうが大きいと思えたのです。

 

ブルベ界隈でも少しずつEQUALブレーキの仕様車が増えています。先日の北海道ブルベで知り合った、ゆーさんは既に導入してSR600を完走されていました。

注意点

GROWTAC EQUALはワイヤーで引くブレーキなので、最近流行っているケーブル完全内装タイプのフレームには向きません。

ハンドルへのケーブル完全内装は、多少ケーブルが曲がっても問題がない油圧ホースを前提としたシステムです。ワイヤーの場合は無理に曲げると引きが重くなっちゃいますからね。

私の乗っているINFINITO CVは、ハンドル周りのケーブル類は普通の外装式なのでEQUALブレーキとは相性が良かったのでした。

予定構成

ということで、INFTINITO CVは以下のように組み変わる予定です。

 

組換前
(機械式変速
油圧式ディスクブレーキ)
組換後
(機械式変速
機械式ディスクブレーキ)
STI
(デュアルコントロールレバー)
SHIMANO ST-R8020
554g
SHIMANO ST-9001
365g
ディスクブレーキキャリパー SHIMANO BR-R8070
276g
GROWTAC EQUAL
272g
ハンドル 3T ERGONOVA TEAM
200g
CADEX RACE
157g
ディスクローター(後側) SHIMANO RT-MT900 (160mm)
109g
SwissStop Catalyst (140mm)
121g
合計重量 1139g 915g

 

組換後は、224gの軽量化となります。ディスクローターが重くなっているので、それを除くとハンドル周りだけで232gの軽量化ですね。

これにより、車体重量は7.15kgとなる想定です。

ディスクブレーキキャリパー

EQUALブレーキは全5色。カラーバリエーションのあるパーツが少ない昨今において、まさかの5色です。

私はレッドカラーを選びました。アルマイトと思われますが、良い発色です。

こだわりのブレーキワイヤーもセットには付属するので、そちらのブレーキワイヤーを使おうと思っています。

変速用のワイヤーはこの機会に日泉ケーブルに変更ですね。

ハンドル

せっかくワイヤー類を全て外すので、この機会にハンドルも交換することにしました。

 

CADEX RACEハンドル。実測156gの超軽量ハンドルです。これで更にハンドル周りの軽量化を狙います。

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ディスクローター

ディスクローターは、組換前の現在、以下の構成で使っています。

前: SwissStop Catalyst (160mm)
後: SHIMANO RT-MT900 (160mm)
前輪のみCatalystにしているのは横風対策です。空気抜けの良いCatalystは横風の影響を受けにくいんですよね。後輪はあまり煽られても関係ないので、それまで使っていたRT-MT900を継続使用していました。
これを以下のように変更します。
前: SwissStop Catalyst (160mm)
後: SwissStop Catalyst (140mm)
前後をCatalystに揃えます。単純に、前後が揃ってないと見た目が締まらないな……と思っていたので。
あと、140mmにしたのは、EQUALブレーキがそういう前提となっているからです。
160mmのローターも付けることは可能なのですが、アダプタを追加購入して取り付ける必要があるとのこと。余計なパーツは取り付けたくないので、140mmにしました。制動力が足りないと感じたら将来的に160mmに戻す可能性もあります。

まとめ

まさか油圧式→機械式へ移行するとは思っても見ませんでした。ただ、ハンドルの重さは度し難く、もはや他に方法も無さそうなので仕方ないですね。

こんなことなら、INFINITO CVを最初から電動アルテグラ版の完成車で購入しておくべきでした。

電動と機械式の差額は15万円ほどだったので、「それなら差額でホイールを買ったほうが良いや」と思って機械式を買ったのですが……まさかディスクロードにおいては電動と機械式でここまで挙動に差が出るとは想像もしていませんでしたね。

今からディスクロードを買う方は電動変速のものを購入したほうが良いでしょう。もっとも、次世代のデュラ&アルテグラには機械式STIは存在しないのですが。

 

https://laroute.jp/impression/2021/06/0076-023

GROWTAC EQUALブレーキが気になる方は、是非こちらの「La route」の記事(月額会員登録要)も是非読んで欲しいです。

ライターの安井さんも私と全く同じ悩みを抱えており、EQUALブレーキに乗り換えられています。私はほぼその後追いです。


「GROWTAC EQUALブレーキ移行計画」の前編記事はここまで。後編記事では、組み上がり後のファーストインプレッションを書いていく予定です。

組み上がり予定は再来週。遅くても10月中には組み上がるはずです。具合が良ければ、いきなり今月開催のブルベへの投入もあるかもしれません。

果たして、ずっと感じていた「走りの重さ」は解消されるのか?

試乗の時に感じた「INFTINITO CV」の走りは戻ってくるのか?

組み上がりが楽しみです。

 

 

↓後編を書きました。

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著者情報

年齢: 37歳(レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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