「エンデュランスロード」の想定用途の違い

  • 2023年11月4日
  • 2023年11月5日
  • コラム
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各社から販売されている「エンデュランスロード」について、具体的にどういった用途を想定して作られているものなのかをジオメトリ・スペックから考察してみました。

まえがき

まずはこの記事を書こうと思ったキッカケと前提知識から。

ロードバイクフレームの3大カテゴリ

ロードバイクを販売している会社の多くは、用途に応じて大体3カテゴリのフレームを用意しています。それが以下の3つです。

  1. オールラウンド(軽量)モデル
  2. エアロモデル
  3. エンデュランスモデル

代表的なブランドについてモデルをカテゴリに当てはめてみます。

オールラウンド エアロ エンデュランス
TREK EMONDA MADONE DOMANE
SPECIALIZED TARMAC ROUBAIX
GIANT TCR PROPEL DEFY
BIANCHI SPECIALISSIMA OLTRE INFINITO CV

SPECIALIZEDにはかつて「VENGE」というエアロモデルが存在しましたが、現在は存在しません。最近は空力性能が重視される傾向にあり、オールラウンドモデルとエアロモデルが統合されつつあります。

昨今はグラベルロードが流行しつつあります。エンデュランスモデルもそちらに統合される流れになるかと思いきや、現在でも大手各社はエンデュランスモデルをラインナップし続けています。

エンデュランスモデルについて

オールラウンドモデルとエアロモデルはどちらも「レース」を想定して作られたモデルです。前者は山岳を意識しており、後者は平地を意識しているはずですが、競争で勝つことを目的として設計されているはずです。

一方、エンデュランスモデルは目的がイマイチハッキリしません。競争用なのか、規定距離の完走を狙うものなのか。実に曖昧です。

個人的には、大きく「レース系」「ロングライド系」の2つに分かれる気がしています。

メーカーによっては「これグラベルロードじゃない?」みたいなものをエンデュランスロードと呼んでいることもありますが、一旦それは置いておきます。
レース系エンデュランスロード

「エンデュランスモデル」の先駆けはSPECIALIZED「ROUBAIX」だったと思いますが、これはその名の通り「パリ~ルーベ」というクラシックレースをターゲットとして開発されたものです。TREK「DOMANE」や、BIANCHI「INFINITO CV」も同様にクラシックレースをターゲットとしていたはず。

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北フランスの石畳の道が舞台となる第120回パリ~ルーベ(UCIワールドツアー)が、4月9日にコンピエーニュからルーベまで…

「パリ~ルーベ」は石畳区間を多く走るのが特徴で、そうした路面でバランスを崩すこと無く、手に痺れを残さず、それでいて速く走る必要があります。こうした目的を達成するために、「安定性が高い」「快適性が高い」「運動性能はできるだけ高く」という方向性で設計されているはずです。

こうしたクラシックレースを目的としたモデルはあくまでレースがターゲットなので、荷物の積載や泥除けの装着といったオプションはあまり考慮されていないことが多いもの。「荒れた道を最速で駆け抜ける」というのが最優先事項のはずですからね。

なんとなく「剛性が高くなさそう」なイメージのあるエンデュランスロードですが、レース系エンデュランスロードはポジションこそアップライト気味ながら剛性はレース用のロードバイクと大差ないことが多いです。

ただ、最近はクラシックレース向けに開発されたモデルに積載能力を追加したモデルも増えています(ROUBAIXなどはその代表格)。

2016年のパリ〜ルーベでエアロロードのFOILが勝ってしまってからというもの、クラシックレースを本気で狙ったモデルは減ってきた印象があります。

ロングライド系エンデュランスロード

一方、「エンデュランスモデル」として括られる中には、競争ではなく単独でのロングライドを志向したモデルも多くあります。舗装路メインで長い距離をそこそこのスピードで走る人向け。

15年以上前に「コンフォートロード」と呼ばれていたカテゴリの後継にあたるとも言えますが、コンフォートロードは「乗り心地は良いけど運動性能は低い」ものが多かったイメージです。それに比べると、最近のロングライド用エンデュランスロードはエアロ要素なども加えて速さも考慮しているケースが増えています。

昨今のロングライド系エンデュランスロードには、積載のためのアイレット(ダボ穴)が追加されるケースが増えています。

単独でのロングライドはサポートカーがいるわけでもないので、必要なものは自分で全部持って走る必要があります。そのための荷物置き場が必要です。

トップチューブ上にアイレットがあると、こうしたボルトオンタイプのトップチューブバッグを取り付けることが可能です。

ダウンチューブ下にアイレットがあると、その位置にボトルケージをつけてツール缶などを入れることが出来ます。工具やチューブなど一式が入り、かつ重心位置が下がるので自転車の挙動が安定する効果があります。

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キャノンデールのエンデュランスロードバイク「Synapse(シナプス)」がモデルチェンジ。フレームのエアロ効果が高められ…

現代におけるロングライド用エンデュランスロードの代表格はCANNONDALE「SYNAPSE」でしょうか。

SmartSenseと呼ばれる、ライトとリアビューレーダーを統合したシステムが最初から組み込まれています。レースではどう考えても必要のない機能なので、単独でのロングライドを強く意識したモデルと言えるでしょう。

エンデュランスモデルに共通する特性

レース系でもロングライド系でも、エンデュランスモデルには共通する特性はいくつかあります。

  1. ややアップライトなポジションが前提
  2. 直進安定性が高めで低重心なジオメトリ
  3. 乗り心地を良くする仕掛け(ジオメトリ・パーツ・ギミック等による)

例外はありますが、大抵はこれらの要素を踏襲しています。そのうえで、各メーカーは想定用途ごとに必要な機能を足しているように思います。

目的とフレームのマッチング

エンデュランスモデルには「レース系」と「ロングライド系」があるという私見を述べました。

その人の目的とフレームの想定用途がマッチしていないと不幸なことになります。

(日本にはまずいませんが)クラシックレースに出ようとしている人がロングライド系エンデュランスロードを買ってしまうと恐らくスピードや反応性が足りませんし、ロングライドでマイペースで走りたい人がレース系エンデュランスロードを買ってしまうとポジションが出なかったり、思ったより乗り心地が良くないといった事態が起こり得ます。

どれもロードバイクではあるわけですから「そこそこ」は目的をこなせるはずですが、やっていることのレベルが上がるとミスマッチの影響が大きくなってきます。

ジオメトリ・スペックから想定用途を読み解く

ということで、そうした不幸なミスマッチを減らせはしないだろうかと思い、各社のエンデュランスロードの想定用途を考えてみることにしました。

材料となるのは、メーカー側の説明・ジオメトリ表・スペック表です。実際に乗らないと分からないことも多いですが、これらのデータからの考察でもある程度は参考になる結果が得られるはずです。

調査結果

特徴の出そうなパラメータをピックアップして比較表にしました。

対象は13ブランド、15モデルのエンデュランスロードです。

結果表

ブランド名モデル名発売年ケーブル
(ヘッド部)
最大タイヤ幅ヘッド角シート角オフセットトレイルリアセンターBB下がりアイレット
(TT上)
アイレット
(DT下)
フレーム内
収納
ギミック
(ヘッド部)
ギミック
(シート部)
フェンダー対応独自機能
TREKアメリカDomane SLR 92022内装38mm71.3
(54size)
73.7
(54size)
53mm
(54size)
*59mm
(54size)
420mm
(54size)
80mm
(54size)
×
DT内
×
IsoSpeed
-
SPECIALIZEDアメリカS-WORKS ROUBAIX SL82023外装40mm72.3
(54size)
74.0
(54size)
47mm
(54size)
*59mm
(54size)
420mm
(54size)
78mm
(54size)
×
FutureShock
×AfterShock
CannondaleアメリカSynapse Carbon2022外装35mm73.1
(54size)
73.0
(54size)
45mm
(54size)
*56mm
(54size)
415mm
(54size)
73mm
(54size)
×××SmartSense
ARGON 18カナダKRYPTON PRO2023セミ内装40mm72.3
(Msize)
73.7
(Msize)
未記載未記載415mm
(Msize)
78mm
(Msize)

DT内
××-
CerveloカナダCALEDONIA 52021内装35mm72.0
(54size)
73.5
(54size)
50mm
(54size)
*58mm
(54size)
415mm
(54size)
74mm
(54size)
×××××-
CerveloカナダCALEDONIA2021外装35mm72.0
(54size)
73.5
(54size)
50mm
(54size)
*58mm
(54size)
415mm
(54size)
74mm
(54size)
××××-
BianchiイタリアINFINITO CV2019外装32mm71.5
(53size)
74.0
(53size)
43mm
(53size)
*68mm
(53size)
415mm
(53size)
68mm
(53size)
××××××CounterVail
PINARELLOイタリアDOGMA X2023内装32mm72.0
(520size)
73.4
(520size)
47mm
(520size)
*61mm
(520size)
422mm
(520size)
77mm
(520size)
××××××X-STAYS
WilierイタリアGranTurismo SLR2022内装32mm72.0
(Msize)
73.5
(Msize)
未記載未記載412mm
(Msize)
未記載××××
ACTIFLEX
×FD台座着脱可能
CanyonドイツEndurace CFR2023内装35mm71.8
(Ssize)
73.5
(Ssize)
未記載未記載415mm
(Ssize)
73mm
(Ssize)
××
TT内
×××CP0018ハンドル
CanyonドイツEndurace CF2022セミ内装35mm72.0
(Ssize)
73.5
(Ssize)
未記載未記載415mm
(Ssize)
73mm
(Ssize)
×××××-
RIDLEYベルギーFenix SLiC2022内装28mm73.5
(Msize)
73.0
(Msize)
45mm
(Msize)
*54mm
(Msize)
410mm
(Msize)
66mm
(Msize)
××××××-
GIANT台湾DEFY ADVANCED SL2023内装38mm72.5
(Msize)
73.5
(Msize)
50mm
(Msize)
*55mm
(Msize)
420mm
(Msize)
78mm
(Msize)
×××××D-Fuse
MERIDA台湾SCLUTURA Endurance2020セミ内装35mm72.0
(Ssize)
74.0
(Ssize)
未記載未記載418mm
(Ssize)
66mm
(Ssize)
×××××-
GHISALLO日本GE-1102023内装32mm72.5
(Msize)
73.0
(Msize)
45mm
(Msize)
*60mm
(Msize)
415mm
(Msize)
73mm
(Msize)
××××アイレット周辺積層強化

パラメータの説明

補記事項のあるパラメータについての説明です。

ケーブル(ヘッド部)

ヘッド部のケーブル内装の対応状況です。

ジオメトリ関連の値(ヘッド角・シート角等)

これらの値はフレームサイズで変化するため、著者の私(176cm)にマッチするフレームサイズで比べています。

トレイル

トレイルはタイヤ径によって変化します。

今回は28Cタイヤを想定して、ヘッド角とフォークオフセットから計算して導出しています。

アイレット(TT上、DT下)

TT=トップチューブ、DT=ダウンチューブです。

ボルトオン式トップチューブバッグを付ける穴があるか、ダウンチューブにボトルケージを付ける穴があるかを表しています。

フレーム内収納

空洞になっているフレームの中を荷物入れとして利用するフレームが最近出てきています。

通常はダウンチューブに収納しますが、一部トップチューブに収納するフレームもあります。

ギミック(ヘッド部・シート部)

エンデュランスロードには、機械的に稼働するサスペンションのような仕組みをヘッド部・シート部に仕込む場合があります。

そうしたギミックの有無を表しています。

フェンダー対応

エンデュランスロードの中には雨天走行を想定し、フェンダー(泥除け)を付けるためのネジ穴がある場合や、専用のフェンダーが用意されていることがあります。

用意されている場合は◯としています。

独自機能

エンデュランスロードには他のカテゴリのフレームではなかなかやらない実験的な機能が組み込まれている事が多いものです。

そうした独自機能がある場合は機能名を記入しています。

考察

調査結果から読み取れる傾向について考察してみます。

ヘッド角・シート角

まずは、エンデュランスロードとそれ以外のカテゴリ(オールラウンド・エアロ)で差の出やすいヘッド角・シート角から。

ロードバイクの場合、ヘッド角は71-76°の範囲、シート角は72-75°の範囲に収まるのが普通とのこと。

ヘッド角については、以下の傾向があると言われています。

ハンドリング 路面からの突き上げ
ヘッド角が大きい
(立っている)
機敏になる
(直進安定性が低い)
大きくなる
ヘッド角が小さい
(寝ている)
ゆったりする
(直進安定性が高い)
小さくなる

シート角については、以下の傾向があると言われています。

重心 路面からの突き上げ
シート角が大きい
(立っている)
前荷重になる 大きくなる
シート角が小さい
(寝ている)
後荷重になる 小さくなる

今回調べた結果について、ヘッド角を横軸・シート角を縦軸にしてプロットしてみました。

比較用として、オールラウンドモデルの「TARMAC SL8」「Emonda SLR」「TCR ADVANCED」もプロットしています。

ヘッド角については71-73.5°の範囲に、シート角については73-74°の範囲に収まっています。

右上にいくほどよりレース向きの特性ということになりますが、クラシックレースをターゲットにしている「INFINITO CV」「ROUBAIX SL8」「DOMANE SLR9」あたりは軒並み上の方(シート角が立っている)に位置しています。

INFINITOはシート角を立てながらも、ヘッド角は大いに寝かせて直進安定性を高めています。確かに実際に乗っていてもそういった傾向は感じます。

特徴的なのは、「Fenix SLiC」です。シートはかなり寝ていて、ヘッドはかなり立っている。重心を後ろにしながらも、ハンドリングの軽さを重視しているようです。これはFenixに限らずRidley全体に言える傾向で、ヘッド角は立ち気味です。

面白いのは、大手各社のオールラウンドモデルがどれも似たような値になっていること。3社ともにヘッド角は73°で同じ、シート角も73.5-74°の狭い範囲に集中しています。そして、同じメーカーという括りで見ると、エンデュランスモデルはオールラウンドモデルとシート角は一致しています。ヘッド角だけ寝かせる方向にして直進安定性を高めているようです。

BB下がり

ホイールとホイールを結んだ線に大して、BBの中心がどれだけ下がっているかを表す値が「BB下がり」です。ロードでは70mmくらいが普通と言われています。

BB下がりについては、以下の傾向があると言われています。

車体を傾けられる角度 漕ぎ出し
BB下がりが大きい 小さい 重くなる
BB下がりが小さい 大きい 軽くなる

BBの位置が下に下がると、コーナーで自転車を傾けた時にペダルを擦りやすくなります。また、漕ぎ出しについてはBB位置が高いほど軽く、低いほど重くなると言われています。

普通、エンデュランスモデルのBB下がりはオールラウンドモデルに比べると値が大きくなります。よりエンデュランスモデルのほうがBB位置が下にくる可能性が高いということです。ロードレースに比べると車体をそれほど傾けないこと、漕ぎ出しの反応性よりも巡航時の安定性を選んでいることが理由だと思います。

その特性が顕著に出ているのが「Domane SLR(80mm)」「DEFY ADVANCED(78mm)」「DOGMA F(77mm)」です。TREKはEmonda比で10mm、GIANTはTCR比で8.5mm、PINARELLOはDOGMA比で5mmほど低くなっています。重心を下げて順行性を重視した結果でしょう。反面、あまり急角度で自転車を傾けることは想定されていないように思えます。

逆にBBが高いのが「SCLTURA Endurance(66mm)」「Fenix SLiC(66mm)」「INFINITO CV(68mm)」です。この辺りのメーカーは、エンデュランスモデルとオールラウンドモデルでBB下がりを変えていません。巡航よりも漕ぎ出しの軽さを重視したということでしょう。

チェーンステー長

BB中心から後輪のホイール軸までの長さを表す数値がチェーンステー長です。

チェーンステー長については、以下の傾向があると言われています。

加速性能 路面からの突き上げ
チェーンステー長が大きい 低い 小さくなる
チェーンステー長が小さい 高い 大きくなる

大体、オールラウンドモデルの場合は410mmが標準値です。加速性能を上げたい場合は405mmくらいになっている場合もありますし、乗り心地を重視したい場合は415mmにする場合もあります。

今回調査したモデルを見ると、最短で410mm、最長で422mmに落ち着いています。

最短はまたも「Fenix SLiC(410mm)」。ヘッドは立ってて、BBは高くて、チェーンステーは短い。あまりエンデュランスっぽくないですね。普通にレーサーの数値に見えます。

最長は「DOGMA X(422mm)」。なんとなくDOGMAと聞くとレーサーっぽいイメージが強いんですが、BBもかなり下がっているし、チェーンステーも長いので割りと穏やかな特性を持っていそうです。

積載能力

「荷物を積む前提で設計しているか?」を見てみます。

レース系ならば荷物は積まずに悪路走破性に全てを振り分けるでしょうし、ロングライド系ならばトラブルの自己完結や食料のためのストレージを付けることを考えねばなりません。

こうして表にしてみると、まだまだトップチューブ上・ダウンチューブ下にアイレットを備えたフレームは少数派です。ここにアイレットが付いていたのは元々アドベンチャー系フレームやグラベルロードといったジャンルのフレームであり、ごく最近になってエンデュランスロードにも輸入されてきたものです。今は過渡期であり、今後はアイレットを備えたエンデュランスモデルは増えていくでしょう。

シクロワイアードは、スポーツ自転車の総合情報サイトです。ロードレースなどのレース情報から、フレームやパーツ、イベントやシ…

例えば「ROUBAIX SL8」は前世代のモデルにはアイレットがありませんでしたが、SL8からはアイレットを備えるようになりました。レース用途に使う人には不要でしょうが、あってもそこまで邪魔にはならないという判断なのだと思います。

最近増えているのは、「フレームの中にストレージを設ける」パターンです。

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元々やり始めたのはDOMANEだったと思いますが、ARGON18が追随しています。そして、最近発表されたCANYON「Endurace CFR」はなんとトップチューブに穴をあけてストレージを作ってしまいました。乗り味にマイナスな気もしますが、大丈夫なんですかね……?

なお、グラベルロードではフォークにアイレットを設けるモデルも増えていますが、まだエンデュランスロードにはそこまでやっているフレームはありません。

フェンダー対応

結構ブランドごとの考え方の差が出るのが「フェンダー対応」です。取り付けが考慮されていないフレームに本格的なフェンダーを付けるのって結構面倒なんですよね。

エンデュランスモデル以外でフェンダー対応をしているフレームはほぼ聞いたことがありませんが、エンデュランスモデルは半分くらいは本格的なフェンダーの取り付けを考慮している印象です。

レースに本格的な泥除け付きで出る人はいないでしょうから、クラシックレースを目的としたモデルでは省かれているのでしょう。

表を眺めると、北米やアジアのメーカーはフェンダー対応に力が入っていて、ヨーロッパメーカーは「フェンダー?なにそれ?」という感じに見えます。世界最大のフェンダーメーカー、SKSはドイツにあるんですけどね……。

ちょっと不思議なのは、日本メーカーであるGHISALLOがフェンダー対応をしなかった点ですね。これだけアイレットを設けたならば、フェンダー用の隠しアイレットを設けても良い気がするんですが。

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GHISALLOの兄弟ブランドであるDAVOSから出ているキャリア用スルーアクスルで何とかしてくれという意図かもしれません。

稼働ギミック

「エンデュランスロードといえば稼働式ギミック!」みたいなイメージが合ったのですが、意外と少なかったです。3モデルだけでした。

そして、アメリカメーカーは稼働式ギミックが好きですね。それだけ荒れた道が多いということなんでしょうか。

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キャノンデールの人気グラベルマシン「Topstone」がアップデート。カーボンモデルはKingPinとジオメトリーの改良…

そして意外にもギミックが好きそうなキャノンデールはギミックなしでした。グラベルモデルであるTOPSTONEにはキングピンという稼働式ギミックが入っていますが、ロードモデルのSynapseには入っていません。その代わりに、ライトとレーダーを連動させるという違う方面のギミックは入っていますが。

ちょっと意外だったのがWilierです。ヨーロッパメーカーで唯一稼働ギミックを採用しています。

地域別の傾向

今回の表は地域別に並べてみましたが、割と「お土地柄」みたいなものが出ている気がします。

  • 北米メーカー
    ・乗り心地はギミックで出す。
    ・元々はクラシックレーサーとして作ったけれど、後からロングライド向け機能を追加。
    ・リアセンターは長め。
    ・ケーブルは外装が好き。
    ・フェンダーの装着を考慮している。
  • ヨーロッパメーカー
    ・乗り心地はジオメトリを調整して出す。
    ・クラシックレーサーっぽい性格の物が多い。積載はあまり考えていない。
    ・リアセンターは短め。
    ・ケーブルは内装が好き。
    ・フェンダーの装着は考えていない。
  • アジアメーカー
    ・基本的にヨーロッパと同じ。
    ・リアセンターは長め。
    ・フェンダーの装着を考慮している。

いくつか例外はあるものの、大体こんな感じになっていると思います。

ヨーロッパはクラシックレース&グランフォンド文化が、北米はグラベル文化がエンデュランスロードに合流している気がしますね。

そして、こう見てみると「レーサー系」「レーサー系にロングライド要素を追加」というものが大半で、純粋な「ロングライド系」のエンデュランスロードは少ない印象を受けました。

まとめ

エンデュランスロードの想定用途の違いについて考えてみました。

私自身で考えてみると、用途は明らかに「ロングライド系」です。レースはほぼ出ずにブルベのみ出ているので。

それなのに今乗っているINFINITO CVは、スペック表を見ると限りなく「レーサー系」であることが分かりました。ジオメトリだけ見れば、ヘッドを伸ばして少し寝かせただけのOLTRE XR4ですからね。

「反応性の良いエンデュランスロード」が欲しくて選んだのでその点では間違っていなかったのですが、荷物の積載やフェンダー対応という意味では未だに苦労しています。

何故かトップチューブバッグを付けたい場所の真ん中が盛り上がっていて、トップチューブバッグが付けられないんですよね……。これは買ってから気づきました。

私がINFINITO CVを買った当時(2019年末)はそもそも「アイレット付きのエンデュランスロード」というものがまた存在していませんでした。そういったものが欲しければグラベルロードの中から探す必要があったわけです。

現在はアイレット付きのエンデュランスロードという選択肢があるわけで、ロングライド系の用途に使おうと思っている人であればそうした機能があるフレームのほうがオススメできると思います。スマートに積載できますので。

今回作った表で言うと、私の用途に合いそうなのは「KRYPTON PRO」「GE-110」です。ロングライド系エンデュランスロードのジオメトリを持ち、積載能力が高いからです。

実はこの2台、周りのブルベの達人が相次いで購入したフレームでもあります。

KRYPTON PROは、ふぃりっぷさんが購入。言わずとしれたスーパーロングライダー。今年はRAAMも走っていましたね。

同じくRAAMに出ていたhideaさんはGE-110を購入しています。

やはり、用途が似ていると気になるフレームも似てくるということですね。


この記事で言いたかったことは「一口にエンデュランスロードと言っても、想定用途は様々」「自分の用途に合ったものを見極めましょう」ということです。

メーカーの書いている用途とスペックから読み取れる用途が異なる場合もあるので難しいですが、フレームは長く付き合う相棒です。じっくりスペックと向き合って選びましょう。

もちろん、見た目で気に入ったものを選ぶのも全然ありです。テンションの上がる効果は小さくないですからね。

著者情報

年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。


この記事を書いた人
ばる
ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)