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ディスクローターの厚みと寿命
ディスクロードで約3000km使用したディスクローター(SHIMANO RT-MT900)を、交換のために外しました。
その作業の中で分かったことを記事として纏めておきます。
経緯
先日、SwissStopのディスクローターを買ったという記事を書きました。
早速こちらのローターをディスクロードの前輪ににインストール。ということは、前輪に付いていた古いローターを外したということです。
外したディスクローター
左が外したローターです。RT-MT900。ブレーキが当たる面に跡がついて凹んでいるのが分かると思います。
重量の測定
何の気無しに、外したディスクローターの重量を測ってみました。
101g……!?
驚きました。付ける前は106g。そこから5gも減っていたのですから。
ローターの寿命
シマノの160mmサイズの場合、ローターの初期の厚さは1.8mmです。
初期の厚さはメーカーごとに違うようで、私が買ったSwissStopのCatalystは140mmサイズだと厚さ1.85mm、160mmサイズだと厚さ1.80mmとサイズごとに異なる場合もあります。
ブレーキを掛けると当然表面が削れていくわけで、少しずつローターのブレーキ面は薄くなっていきます。となると、どこかで交換時期が来るわけですね。
シマノのローターの場合、何mmまで使えるか、ローター自体に刻印されています。
Min.TH=1.5。「厚さが1.5mmになったら交換時期ですよ」、ということを表しています。
初期の厚さが1.8mmなので、0.3mm摩耗したらそのローターは寿命であるということです。
厚さの間接測定
さて、ここで気になったのは、「外したRT-MT900はあとどれくらいで寿命となるのか?」ということでした。
0.3mm摩耗すると寿命になるわけですが、今現在何mmくらい減っているのかを確かめてみることにしました。
摩耗した厚さの計算
摩耗で減った厚さは、減った重量から推定することが可能です。
方法は、こちらの記事でやったことと同じです。材料の比重と、ブレーキ面の面積が分かれば、何mm摩耗したのかが推定できるわけですね。
計算式
以下の計算で算出しました。
ブレーキ面の面積
まずは、ローターのブレーキ面(パッドが削る部分の面積)から。
今回は160mmローターですが、縁は面取りをしてあるので直径は1mm縮んで159mmでした。半径は79.5mmです。ローターの中心からブレーキ面までの長さは65.0mm。
外側の円の面積から内側の円の面積を引けば、ブレーキ面の面積が算出できます。
3.14×7.95^2 – 3.14×6.50^2 = 65.8[cm^2]
ただし、ディスクローターのブレーキ面には肉抜きがされています。正確な肉抜き量は分かりませんが、おおよそ1/4ほどが肉抜きされているとします。ということは、肉抜き部分を除いたブレーキ面の面積は、
65.8 × (1 – 1/4) = 49.35[cm^2]
となります。
比重
比重とは、ある体積あたりの重量を指します。
シマノのローターの場合、ブレーキ面はステンレスであることが公開されています。
ステンレスと言ってもいろいろな種類があるのですが、詳細な分類は不明です。ステンレスの比重は7.7~7.9[g/cm^3]とされていますが、ここでは7.9g[g/cm^3]を仮定します。
7.9[g/cm^3]
摩耗した厚さ
今回、摩耗によって減少した重量は5gでした。正確にやるのであればもう一桁くらい細かく計測しておけば良かったのですが、今回は約5gです。
減った重量を、面積と比重で割れば、何mm薄くなったのかが判明します。
5 ÷ (49.35×7.9) =0 .013[cm] = 0.13[mm]
ということで、0.13mm薄くなったことが判明しました。……あれ、結構減ってない?
寿命までに使える距離
前述のように、ローターは0.3mm摩耗すると寿命を迎えます。しかし、既に0.13mmを摩耗しています。つまり、寿命の4割は既に使い切ってしまったわけですね。
ここまでの走行距離は3000km。同じように摩耗していくとすれば、あと4500kmほど使うと寿命を迎えることになります。
このことから導き出されるディスクローターの寿命は7500km程度ということになります。……短い!
今回計測したのは前輪で使っていたディスクローターです。ただでさえ前輪の方が制動時の削れ方が大きい上に、私は前輪7割、後輪3割くらいのペースで使います。更に私は体重があるので、普通の体型の人よりはローターが減りやすいというのは分かるのですが……それでも7500kmは短いですね。
このローターではほとんど雨の中を走っていません。雨の日は更にローターが削れやすくなるので、雨天のブルベを走った日には更に速いペースでローター交換の時期を迎えることになるはずです。
厚さの直接測定
ノギスでの測定は不正確であることが分かったので、妥当な計測方法については↓の記事を参照してください。
重量から摩耗の度合いを計算したとTwitterに書いたところ、「普通にノギスで測れば良くないですか?」と言うリプライを頂きました。言われてみれば確かにそうだ。
リムの摩耗の時を思い出して重量から摩耗度合いの計算を行いましたが、ディスクローターは普通に厚さを測れます。リムはノギスで厚さは測れないから、苦肉の策で重量から推定をしたのでした。
ノギス購入
恥ずかしながら、我が家にはこれまでまともなノギスがありませんでした。
どこで買ったのか分からないプラ製のノギスはあるのですが、これでは0.1mm単位ですら測ることは出来ないでしょう。
ということで、良く技術系メーカーの社員の人が使っているというシンワ製のポケットノギスを買ってみました。こちらでローターの厚さを実測してみます。
初期の厚さ
まずは、「最初は何mmの厚さだったのか」を確かめます。
ブレーキ面より少しだけ内側のステンレス面の厚さを計測すると、1.80mmでした。さすがシマノ、正確です。
ブレーキ面の厚さ
そして今度はブレーキ面の厚さです。
何箇所か計測してみましたが、1.65mm~1.70mmと幅がありました。均等に削れているわけではなさそうです。
初期の厚さを考えると、摩耗したのは0.10~0.15mmとなります。計算結果の0.13mmはこの範囲に含まれているので、妥当な推定であったと言えそうです。
そして摩耗した厚さが計算通りであったということは、残りの寿命も恐らく計算通りということになります。うーん。
ちなみに後輪のローターの摩耗は3000kmで0.08mm程度でした。こちらはあと8000kmは持ちそうですね。
まとめ
ローターの寿命が思った以上に短い事が分かって驚きました。
7500kmというのは、前側ブレーキを中心に使う&体重がある私に特有の数字で、多くの人はもう少し長持ちであるはずです。
検索してみると、ローターの交換時期は人によって1~2万km程度と、結構開きがありました。体重や乗り方、使っているディスクローター径によって変わるのでしょうが、概ねこの範囲には収まるのでしょう。
私の場合、年間走行距離が12000km程度なので、ディスクロードだけに乗っていたら年に1回以上の頻度でローターの交換が必要になります。半年経過時点でディスクローターの前後ローテーションを行えば何とか丸一年は使えそうではありますが……そこまでするか?とも思ったり。
ブレーキパッドも3000km程度で変えなければならないし、ロングライダーのディスクロード維持コストは中々高そうです。
リムが減らないのがディスクロードの強みですが、もう少しローターが持ってくれるとよいのですけどね。SwissStopのローターは耐久性に自信があるようなので、こちらも半年ほど使ったら摩耗度合いを計測して見る予定です。
著者情報
年齢: 36歳 (執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。