【実験】タイヤの周長はリムの内幅で変わるのか

この記事は約 7分で読めます。

「同じタイヤを違う内幅を持つリムに取り付けた時に、タイヤの周長(外径)は変わるのか?」を実験しました。

目次

実験の動機

まずは実験の動機から。

ハンドリングに影響するタイヤ周長

一つ前にこんな記事を書きました。

この記事を書く中で分かったことの一つが、「タイヤ周長が変わるとハンドリングも変わる」ということです。

「タイヤサイズが変わるとタイヤ周長が変わる」ということは自明なんですが、「それ以外にもタイヤ周長が変わりそうなケースがないか?」と考えた時に一つ思い当たったのが、タイヤを付けるホイールのリム内幅です。

タイヤ幅はリム内幅によって変わる

リム面の内側の幅を「リム内幅」と呼びます。「C15」だったら内幅15mm、「C21」だったら内幅21mmを表します。

そして、同じタイヤを違う内幅のリムに取り付けた場合、一般に内幅が大きいほどタイヤ幅は大きくなります

例えば「タイヤサイズ: 25C」のタイヤがあった場合、通常は「内幅: 19mm(C19)」を前提に設計されています。「C19のリムに取り付けた際にタイヤ幅が25mmになる」ように設計されているわけですね。

このタイヤをC21のリムに付ければタイヤ幅が26mmくらいになるはずですし、C17のリムに付ければ24mmくらいになるはずです。

Panaracer「AGILEST」のパッケージ

以前は「内幅が太くなると、タイヤ幅が太くなる」ということはあまり知られていませんでしたが、最近は内幅とタイヤ幅の関係をパッケージに書くメーカーも出てきました。

タイヤ周長も内幅によって変わるのでは?

さて、リム内幅によってタイヤ幅が変わることは分かりました。

……それならば、タイヤ周長も変わってもおかしくないのでは?という考えが頭をよぎりました。

例えば、C19を前提に設計された26Cタイヤを、C21のリムに取り付けたらタイヤ幅は約27mmになります。横に広がる分、縦に縮みそうな気がする。逆にC15のリムに取り付けたら、横が縮む分、縦に伸びるかもしれない。

周長が変わってしまうと、前の記事で書いたようにトレールが変わります。つまり、ハンドリング特性が変わってしまうということです。

もちろんトレール値だけでハンドリング特性が決定されるわけではないのですが、興味が湧いてきたので実験をしてみることにしました。

実験前にアンケートを実施

せっかくなので、実験前に結果がどうなるかのアンケートを取ってみることにしました。

アンケートでは、「内幅15mmのリムに付けたほうが周長が大きくなる」という選択肢が圧倒的に人気でした。私も考えは同じで、「タイヤ幅が小さくなった分だけ上に伸びる=周長が大きくなる」と予想していました。

さて、結果はどうなるでしょうか。

実験内容

実験の内容を説明します。

実験方法

3種類の内幅(C15/C18/C21)のホイールと、2種類のクリンチャータイヤ(旧ETRTO規格/新ETRTO規格)を用意し、全ての組み合わせに対して以下の計測を行います。

STEP
タイヤの取付

ホイールにタイヤを取り付け、6気圧まで空気を入れる。タイヤに荷重は掛けずに以降の計測を行う。

STEP
タイヤ周長の計測

巻き尺でタイヤ周長を実測する。

STEP
タイヤ幅の計測

ノギスでタイヤ幅を実測する。

タイヤ周長は、以下の伸びないガラス製の巻き尺を用いて周長を直接測ります。

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誤差の大きい方法なので、3回測定してズレがないことを確認します。

周長計測の起点・終点にはビニールテープを貼って、位置を明確化しました。

ホイール

ホイールは、内幅の異なる3種類のリムを用意しました。いずれも前輪で、フックありのリムです。

用意したのは以下の3種類のホイールです。

ブランドモデル名公称リム内幅リム素材
GROWTACEQUAL カーボンリム 30mmハイト22mmカーボン
SPINERGYFCC 3.2 リムブレーキ18mmカーボン
CampagnoloSHAMAL ULTRA C1515mmアルミ
実験で使うホイール

なお、内幅22mmのホイールの内側には、内幅15mmのホイールがすっぽり収まってしまいました。10年くらいでホイールのリム内幅はこれだけ太くなったわけですね。

タイヤ

タイヤは、新ETRTOのタイヤと旧ETRTOのタイヤを一つずつ用意しました。いずれもクリンチャーです。チューブは、R’Airを使用しました。

ブランドモデル名タイヤサイズ前提内幅
VittoriaCORSA N.EXT26C19mm
(新ETRTO)
ContinentalGP500025C17mm
(旧ETRTO)
実験で使うタイヤ

これらのタイヤは使い古しなので、トレッド面は少しすり減っています。新品時よりも少し周長が減っている可能性は高いです。

Vittoria「CORSA N.EXT 26C」

2022年発売、グラフェン使用の軽量クリンチャータイヤ。2021年から始まった新ETRTOに準拠しており、内幅19mmのリムに最適化されています。

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Continental「GP5000 25C」

言わずとしれた定番クリンチャータイヤ。2018年発売なので旧ETRTOに準拠しているはず。リムに付けた時の幅を見ると内幅17mmのリムに最適化されているようです。

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実験結果

実験の結果です。

#タイヤホイール内幅
(mm)
周長
(mm)
タイヤ幅
(mm)
1CORSA N.EXT 26CEQUAL カーボンリム22.4213127.2
2Spinergy FCC 3.218.1213125.5
3Campagnolo SHAMAL ULTRA C1515.6213124.5
4GP5000 25CGrowtac EQUAL 手組リム22.4213227.6
5Spinergy FCC 3.218.1213125.4
6Campagnolo SHAMAL ULTRA C1515.6213224.2
実験結果

読み取れること

結果としては、「違うリム内幅のホイールにタイヤを付けても、周長は変化しない」でした。正直、かなり意外でした。

事前アンケートでも、「周長は変化しない」を選んだ人はわずか9%。一番人気のない選択肢が正解だったことになります。

唯一、GP5000×Spinergyの組み合わせでは1mmだけ短いという結果になりましたが、全体で見ると内幅と周長にはこれといった相関が読み取れません。もしかしたら7気圧まで入れれば差が出たかもしれませんが、現状は7気圧まで入れる人もさほど多くないはずと考えて今回は6気圧で行いました。

一方、タイヤ幅は綺麗にリム内幅と比例して大きくなっていることが分かります。これは良く知られた話ですが、実際にそうなることが確かめられました。

なぜこうなったのか

ではどうしてこういう結果になったのか?

考えてみましたが、分かりませんでした。空気圧を高めてもタイヤは縦には伸びず、横にだけ伸びるような構造になっているんでしょうか。

サイクルモードでその辺りに詳しそうな人に(迷惑にならない範囲で)話を聞いてみようかなーと思っています。

昔行った実験では……

実は7年ほど前に、似たような実験をやっています。

この時はまだ「リム内幅によってタイヤ幅が変わる」ということが知られておらず、それを確かめるために行った実験でした。ついでに周長も測っていました。

この時の実験結果では「リム内幅が増えるとタイヤ周長も増える」という結果になっているのですが、この時の計測方法は少々精度が怪しいです。裁縫用のメジャーで計測して、確か1回しか計測していなかったので。

今回はそれなりにしっかりしたガラス製テープのメジャーで3回計測したので、それなりに結果には信頼性が置けるはずです。

まとめ

結果としては、「内幅によるタイヤの周長変化は、特に気にしなくても良さそうである」ことが分かりました。

700Cのホイール同士なら、同じタイヤを使えば同じ周長になりそう(トレールは変わらなそう)です。厳密には乗車時の潰れ方が変わってくるはずで、走行時の周長は1mm~2mm変わってくるかもしれませんが、空気圧で調整可能な範囲のはず。

フックありのロード用リムとしては、多分今手に入る中で一番細いC15と、一番太い部類に入るC22のリムで差が出なかったので、検証範囲としては十分かなと思っています。もっと内幅が大きいリムもありますが。

こうなった理由については引き続き考えていきますが、とりあえず周長に関しての結論は出たのでスッキリしました。

著者情報

年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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