ロングライド観点から見るEdge1040

Garminの新作GPSサイコン「Edge1040」が発表となりました。

ロングライド的な観点から、どこが変わったのかを見ていきたいと思います。

※私は実機を触ったわけではないので、公式サイトと各メディアの発表以上の内容はありません。

Edge1040、発表

海外サイトでは昨日の段階で発表されていましたが、日本サイトでは本日プレスリリースが出ました。

GPSデバイスのリーディングメーカーのガーミンジャパン株式会社(以下 Garmin)は、サイクルコンピューターEdgeシ…

徹底的なアウトドアガジェットレビューで有名なヨーロッパのサイト「DC RAINMAKER」には既に実機が貸し出されていたようで、かなり詳細なレビューがアップされています。

製品バリエーション

Edge1040は2種類が同時リリースとなります。

・Edge 1040 Solar (ソーラー充電機能あり)
・Edge 1040 (ソーラー充電機能なし)
Edge1040の最も大きなトピックは「ソーラー充電機能」に対応した「Solar」というバージョンがあることです。
ソーラー充電機能を搭載しない、無印の「Edge1040」も同時に発売されます。価格的には無印の方が10000円ほど安くなります。

Solarと無印の違い

「Edge1040 Solar」と「Edge1040」の差を確認します。

以下の表に、スペック的に異なる部分だけ纏めました。

Edge1040 Solar Edge1040 セット
価格 109800円(税込) 99800円(税込)
重量 133g 126g
ソーラー充電 対応 非対応
稼働時間 35時間+10時間(ソーラー分) 35時間
内蔵メモリ 64GB 32GB
付属品 ハンドルステムマウント
フラッシュアウトフロントマウント
USB-Cケーブル
ストラップ
マニュアル
マウンテンバイクマウント
シリコンケース(黒)
ハンドルステムマウント
フラッシュアウトフロントマウント
USB-Cケーブル
ストラップ
マニュアル
スピードセンサー/ケイデンスセンサー
HRM Dual(心拍センサー)

思いのほか、違いは少ないです。実質的には、ソーラー充電機能の有無と、内蔵メモリの容量差のみ。

ただ、DC RAINMAKERのサイトを見ると、若干外側の形状が異なるとのことです(Solarの方が滑らかな形状らしい)。

付属品は結構違います。無印にはスピード・ケイデンスセンサーと心拍センサーが付属しますが、Solarには付属しません。とはいえ、Edge1040を買うような人ならば、スピード・ケイデンスセンサーと心拍センサーは既に持っている可能性が高い気はしますが。

代わり(?)に、Solarにはマウンテンバイク用のマウントとシリコンケースが付属します。

価格

海外定価は、「Edge1040 Solar」が749.99ドル、「Edge1040セット」が699.99ドル。現在の相場だと、全くマージンを乗せなくても100300円・93600円程度になります。

国内定価は、「Edge1040 Solar」が109800円、「Edge1040セット」が99800円。

正直、国内定価はもう少し高額になるかと思っていました。具体的にはSolarは12万円程度と見ていましたが、予想よりも安かったです。とはいえ、サイコンとしてはかなりの高額製品ではありますが……。

気になる点

「ロングライド(ブルベ)で使う」という観点で考えたとき、Edge1040について気になる点をピックアップしてみます。

ソーラー充電対応

なんといっても一番驚きの話題は、「ソーラー充電パネルを搭載」したという点でしょう。

GarminのGPSウォッチである「Fenix」シリーズでは既にソーラー充電がサポートされていましたが、自転車用GPSにこの機能が搭載されるのは初めてのことです。

Garmin公式サイトより引用
ソーラーパネルの配置

DC RAINMAKERの記事によると、ディスプレイ全体がソーラー充電パネルになっているらしいです。

ただし、画面の上部と下部(写真では「Riding on Birkdale」の表示の上部のかまぼこ型の空間と、「Garmin」文字の上の四角い空間)が発電レベル100%で、その他の部分は発電レベルが15%に留まるとのこと。サードパーティーの保護ケースなどで、発電レベル100%の部分まで覆ってしまうものが出てこないとも限らないので要注意ですね。

発電効率

気になる発電効率ですが、「薄曇りの山岳ライド4時間で30分程度稼働時間が伸びた(DC RAINMAKERの実測)」そうです。日中のライドなら曇りでも12.5%程度は稼働時間を伸ばせるようですね。

公称数値だと、35時間使って「ソーラーパネルで+10時間」稼働時間が伸びるとされています。これは日中かなり晴れた場合の数値を想定しているように見えます。

ブルベで使う場合

45時間という稼働時間が本当ならば、晴れた条件の600kmブルベ(制限時間40時間)を外部充電を全くせずに走りきれるということ。この稼働時間は、eTrex30xをリチウム乾電池で動かした時とほぼ同じになります。

1000kmブルベならば、充電は1回で済みそうです。ただ、そのくらいの距離になると大抵天気が悪い時間が長いので、そこまで充電効率は上がらない気はしますが。

バッテリーへのダメージは?

気になるのは、「充電を常にしながら走る」ことになるという点。

充電可能なバッテリーというのは、充電できる回数が決まっており(大体3-500回程度)、充電をするごとに少しずつ劣化していきます。

2年半前に買ったEdge530も、購入直後の6割程度の稼働時間まで落ち込んでいます。バッテリー内蔵型だと気軽に交換するわけには行かないのでバッテリーの劣化は気になる所。

もちろん、Garminがそういった弱点に気づかないとも思えないので、何らかの対策はされていそうですが。

Type-C端子に変更

ついに、ついにEdgeシリーズがUSB Type-C端子になりました!

ブルベではType-CケーブルとmicroUSBケーブルを持ち歩いていますが、今やmicroUSBケーブルはEdgeを充電するためだけに持ち歩いていました。ライトもスマホもType-Cになりましたしね。

今後、Edgeシリーズの端子がType-Cに統一されるのであれば、ブルベ時に持ち歩くケーブルをType-Cのみにすることが出来ます。これは有り難い。

恐らく、充電時間も早くなっているはずですが、その辺りの情報はまだどこにも出ていませんでした。

本体側マウントがアルミ製に

Garmin公式サイトより引用

従来、樹脂製だった背面のマウント部がアルミ製になりました。

ここは振動で爪の部分が折れることが多かったことから対処されたものと予想します。

さて、そうなると気になるのは受け側の耐久性です。bikerumorのアップしている写真を見ると、Edge1040に付属するアウトフロントマウントの受け部分は樹脂のままのように見えます。

本体をアルミにした場合、受け側の樹脂が削れてしまいそうにも思えるのですが……。もちろん、Garminもそれくらいは先刻承知のはずなので、何らかの対策はされている可能性は高いです。

従来のサードパーティー製マウントだと、受け側の耐久性が問題になるケースは出てきそうな気がします。

測位精度の向上

Edge1040は、マルチバンドGNSS(Global Navigation Satellite System)に対応したことにより、測位精度が向上しています。

GNSSとしては、ヨーロッパのGALILEO・ロシアのGLONASSが有名です。日本仕様のGarminでは、日本の「みちびき」というGNSSをサポートしています。

後からGPSログを確認した際に、本来通ったルートよりもズレた位置に軌跡が出ることはよくありますが、そういった事態を防ぐための機能です。

同時により多くの衛星と通信出来るようになったことにより、ある衛星との通信が切れても、他の衛星でカバーが出来るわけですね。

DC RAINMAKERの記事によると、位置情報精度は他のGPSサイコンに比べてもかなり良いとのことでした。

ただ、通信する衛星の数が増えると、電池の消費量も増える(=稼働時間が減る)ので、一長一短ではありますね。eTrexやEdge530では、私はあえてGNSSとの通信は切っています。

リアルタイムスタミナ機能

Edge1040から追加された機能の一つに、リアルタイムスタミナ機能があります。

Edgeにパワーデータや心拍データを記録させ続けることにより、「これから走ろうとするコースを走りきれるか」を示してくれる機能のようです。「このペースで行くと、最後まで持たないぜ」とサイコンが教えてくれるということですね。無論、自分のデータを一定量蓄積しないとデータの信用が置けないようではありますが。

ブルベではそこまで攻めた走りをして潰れたことはないんですが、ペース管理が重要な東京大阪キャノンボールでは非常に役立ちそうな機能です。

デバイス間ルート転送が削除

Edge1030までは、Edge同士でルートデータを送受信できる「デバイス間ルート転送」機能がありました。

どうやら、Edge1040ではこの機能が削除されているようです。

EdgeではなくeTrexではありますが、私はこの機能を使ったことがあります。ブルベのスタート地点でルートデータが上手く読み込めないことがあり、その際に同じeTrexを使っている方からこの機能でデータを送って頂きました。……残念ながらそのブルベはDNFでしたが。

意外と役に立つ機能だったので、削除されたのは残念ですね。

まとめ

Edge1040は、一言で言えば「もっともバッテリーが長持ちで、もっとも即位精度の高いGPSサイコン」ではあるようです。

個人的には測位精度はあまり重視していませんが、バッテリーが長持ちなのは嬉しいです。というか、割りと自転車用GPSのバッテリーの持ちに無関心に思えたGarminが、ようやくそこに目を向けてくれたことが嬉しい。Edge530/830のあたりからですが、明らかに稼働時間を長くすることに関心を持ち始めましたからね。更にソーラー発電という予備電源を追加してくれたのは大きなトピックです。

そしてType-C端子の導入。これは下位機種にも波及するでしょうから、恐らく来年にでも出るであろうEdge540/840への期待が高まります。


さて、既にEdge1040の予約は各所で始まっています。届くのは最短で6/16とのこと。

現時点(6/10 12:00)、一番ポイント還元率が高いのは、PaypayモールのGarmin公式ストアのようです。「Edge1040 Solar」も「Edge1040 セット」も定価販売ではありますが、キャンペーンのエントリーで20000円前後のポイント還元が設定されていました。


私が買うか?についてですが、しばらく様子を見ようと思っています。欲しいのは欲しいんですけど。

Garminの初物はソフトウェアが安定していないことも多いので。後は、恐らく後から出るEdge540/840のほうがサイズ的に適していそうに思うことも理由です。

ただ、ソーラー発電の効率は画面が大きい方が良いでしょうから、果たしてEdge540/840が出たとしてソーラー発電の効率がどうなのか、そもそも搭載されるのかという話はありますが。

Garminのやる気を感じる新製品、これからの展開が楽しみです。

著者情報

年齢: 37歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。


この記事を書いた人
ばる
ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019年の2回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)