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iGPSPORT「iGS320」ファーストインプレッション
iGPSPORTのGPSサイコン「iGS320」を購入しました。
公称72時間動作するモデルですが、価格は7000円台という強烈な安さです。
まえがき
まずは購入した経緯について。
iGS320の第一印象
iGS630のレビューを依頼された際に、同社のサイコンラインナップは一通り確認しました。
iGS320のスペックで目を引いたのが「72時間稼働」という点です。代理店である日直商会のサイトには以下の記載があります。
フル充電から72時間のバッテリーライフは、例えて言えばパリ・ブレスト・パリなどのロングライドでも安心して使えます。
日直商会サイトより引用
PBPの名前を出されると俄然気になります。ただ……その他のスペックを見るとちょっと不満が感じられるものでした。
まず、パワーメーターと接続できないのが残念な点。
昨今のサイクルコンピューターは当たり前のようにパワーメーターとの接続が出来るもの。心拍計やスピードセンサーは接続できるのに、パワーメーターが接続できないのは片手落ちに感じました。まぁ、上位機種との差別化の意味であえて落としているのだろうとは思いましたが。
マップの表示機能もなし。まぁ8000円という値段を考えれば、マップがついている方がおかしいので、ここは仕方ない。
ログ取り専用機として持つなら中々良さそう。でもそれならば、パワーメーターにも対応していて欲しい。
そう思い、結局購入には至りませんでした。
バージョンアップによりパワメ対応
そんなiGS320ですが、2023年2月に大幅なアップデートが入りました。
なんと、ファームウェアのアップデートにより、パワーメーターに対応したとのこと。
そうなると俄然興味が出てきました。
PBP用のサブサイコンが欲しい
なぜ興味が出てきたかと言えば、PBPに向けてほしい装備の中に「サブのGPSサイコン」があったからです。
PBPは前回・前々回とeTrex30で走りました。今回もメインのサイコンは後継機のeTrex32xを使う予定です。
ただ、eTrexシリーズってパワーメーターとの接続に対応していないんですよね。元々はトレッキング用のGPSなので、そこまではやらないということなのでしょうが。
一方、PBPの走行ログにパワー値は欲しいのです。あと、ペース管理にもパワーは役立ちますので、現在の値も見たい。そのためには、パワー値の取れるサブサイコンが必要です。
サブサイコンの要件
サブサイコンの具体的な要件は以下です。
① パワーメーターと接続可能で、GPSログにパワー値を出力可能であること。
② PBP(90時間)を、充電1~2回で乗り切れること。
③ ナビ機能やマップは不要。GPSログが取れればOK。
④ 出来れば軽くて小さい方がいい。
ならば、軽量かつそれなりにバッテリーの持つEDGE530はどうか?
先日の300kmブルベでテストしましたが、バッテリーセーブモードでも20時間で電池切れになってしまいました。
購入直後はもっと持ったはずなんですが、さすがに4年使っているとバッテリーがヘタってくるようです。
PBPは90時間なので、4回ほど充電が必要ということになります。サイコンのバッテリー管理に頭を悩ませたくないので、これは却下。
EDGE530を買い替えようにも、値上がりにつぐ値上がりで、ついに単価は5万円を超えてしまいました。私が買った時は37000円くらいだったはずなんですがね……。
EDGE540がPBPまでに出る可能性もありますが、まだ噂も聞こえてこないので、期待するのは辞めることにしました。
そして購入へ
そうなると、実売7700円でパワー値を含むデータが取れるiGS320は魅力的に見えてきます。
72時間持つというのが本当だとは思えません(iGS630も公称の半分程度しか持たなかった)。
ただ、GPSログが取れてパワーメーターと接続可能なサイコンという意味では、恐らく2023年2月現在で最長稼働時間を持つ機種がiGS320です。PBPでも1回の充電で乗り切れるくらいのスペックではありそう。
事前にレビューを眺めると機能的には少し不足がありそうながら、ファームウェアの更新で対応できそうな内容ばかり。
iGPSPORTは割りと機能要望に答えてくれるので、PBPまでの半年間の間に改善される可能性があるかもしれないと考えました。
というわけで購入。今回はレビューを頼まれたわけではないので、普通にAmazonで購入です。
iGPSPORT「iGS320」
iGS320の概要を紹介します。
ブランド内での位置付け
iGPSPORTは多数のGPSサイコンを販売していますが、iGS630は2023年2月時点でのミドルグレード機種です。2021年発売。
最低限の機能を備えたGPSサイクルコンピューターでしたが、2023年になってパワーメーターにも対応し、存在感を出してきました。
特徴
iGS320の特徴は以下の通り。
① 2.4インチのモノクロ液晶(タッチパネルは非対応)。
② 最大72時間のランタイム。
③ Type-C端子による高速充電。
④ GPSは4つの測位システム(みちびき, Glonass, Galileo, Beidou)に対応。
⑤ パワーメーターに対応。
ミドルグレードだけあって、かなり機能は削られています。ただし、実売7000円台でこれだけの機能を備えているのは凄い。
フラグシップであるiGS630とスペックを並べてみました。
iGPSPORT iGS320 | iGPSPORT iGS630 | |
重量 | 65g | 94g |
画面 | 2.4インチ | 2.8インチ |
バッテリー容量 | 1000mAh | 1300mAh |
充電端子 | USB Type-C | USB Type-C |
最大稼働時間 | 72時間 | 35時間 |
防水等級 | IPX7 | IPX7 |
タッチパネル | 非搭載 | 非搭載 |
内蔵地図 | なし | OSM |
ストレージ容量 | 16MB | 8GB |
対応衛星 | GPS GLONASS Galileo みちびき BeiDou |
GPS GLONASS Galileo みちびき BeiDou |
パワーメーター | 対応 (ANT+のみ) |
対応 |
Di2 | 非対応 | 対応 |
機能は絞られており、液晶画面上の表示内容も固定という割り切った作りですが、その分だけ圧倒的な稼働時間を誇ります。
ファーストインプレッション
iGS320のファーストインプレッションです。とりあえず開封して少し使ったくらいの段階ですが、今の時点での感想を書いていきます。
あくまでも、「サブのGPSサイコン」として見ていきます。
パッケージ
やたら手の込んだパッケージだったiGS630よりはシンプルで簡素なパッケージです。裏面に書いてある日本語は若干怪しい。
内容物
パッケージの内容物は以下の通り。
・Type-C USBケーブル
・標準マウント
・O-リングバンドX2
・ユーザーマニュアル
iGS630には保護フィルムと落下防止ストラップが付いていましたが、こちらには必要最低限のものだけが付属します。
保護フィルムはサードパーティーから出ているようです。
大きさ
Edge530と並べて大きさを比較してみました。
一回り、iGS320の方が小さいです。厚みはほぼ同じ。
重量
公称65gで、実測71g。Edge530は実測77gなので、少しだけ軽いことになります。
防水性
公称の防水等級はIPX7です。水に沈めても大丈夫というもの。サイコンを水に沈める機会なんて普通はないはずですが……。
水の入りそうな充電端子は、ゴムカバーでしっかりと保護されています。
当サイト恒例の水攻めも行いましたが、内部への浸水はありませんでした。
ボタン配置
ボタンは2個だけという割り切った作りです。電源ボタン(左)と、ページ送りボタン(右)だけ。
2つのボタンの中央にあるのは、落下防止のストラップを通すための穴です。
初期セットアップ
まずは初期セットアップ。
ペアリング
とりあえず既にインストールしてあるiGPSPORTのアプリとペアリングをします。
すぐに認識しました。
ファームウェア更新
そして、ファームウェアを早速最新版に更新。これでパワーメーターとの接続に対応しました。
メニューの確認
アプリ上での設定項目はiGS630より少ないです。
本体の設定
左ボタンを長押しで本体が起動します。
起動後、右ボタンを2秒間長押しで設定モードに入ります。
こちらはセンサーのペアリング画面。近くにあるセンサー類を自動認識します。
対応するセンサーは以下の通り。
・心拍センサー(ANT+/BLE)
・スピードセンサー(ANT+/BLE)
・ケイデンスセンサー(ANT+/BLE)
・パワーメーター(ANT+のみ)
これで設定は一通り完了です。
画面表示
基本の画面表示はこんな感じです。
最大9項目表示されます。この表示内容は固定で、高機能なサイコンのように表示内容をカスタマイズすることは出来ません。
全部で3ページあります。
一応全画面共通で、「GPS感度」「スマホとの接続の有無」「現在時刻」「気温」「バッテリー残量」は画面の一番上に表示されます。
1ページ
主に「現在」のデータが表示されるページです。
表示される情報を以下に示します。
現在向いている方角 [NAV] | 現在の斜度 [GRA] |
現在のスピード [KMH] | |
現在の時刻 | |
経過時間 [TIMER] | 距離 [DST] |
ただし、各種センサーとペアリングすると表示内容が変わります。
パワーメーター・心拍センサー・ケイデンスセンサーを取り付けてみた図。
表示内容が以下のように変更されます。
現在のパワー [PWR] | |
現在のスピード [KMH] | |
現在の心拍数 [HRM] | 現在のケイデンス [CAD] |
経過時間 [TIMER] | 距離 [DST] |
パワーを表示させると、方角と斜度が見えなくなっちゃうわけですね。ちょっとこれは不便かも?
まぁ、データ取りが目的で、あまり画面は見ないと思うのですが。
2ページ
主に「平均」のデータが表示されるページです。
表示される情報を以下に示します。
現在向いている方角 [NAV] | 平均斜度 [GRA] |
平均スピード [AVG KMH] | |
平均心拍数 [HRM] | 平均ケイデンス [CAD] |
獲得標高 [AST] | 現在の標高 [ALT] |
一部、平均ではない情報も混ざっています。
また、パワーの平均は表示されないようです。データとしては取っているようですが。
3ページ
主に「最大値」のデータが表示されるページです。
表示される情報を以下に示します。
現在向いている方角 [NAV] | 最大斜度 [GRA] |
最高スピード [MAX KMH] | |
最大心拍数 [HRM] | 最高ケイデンス [CAD] |
消費カロリー [CAL] | 積算距離 [ODO] |
一部、最大値ではない情報も混ざっています。
やっぱりパワーの最大値は表示されないようです。
取り付け
マウントはGarmin互換です。
走行時の様子
早速、短い距離ですが走ってみました。
Edge530とダブルレコードで計測してみて、値も比較しました。
表示内容
使う前から気になっていたのが、「パワー表示の値」です。
以前、Bontragerのパワー表示が可能なサイコンを使ったことがあったんですが、値が安定しない……というか、スパイク値みたいなのが結構表示されたんですよね。
恐らく、Garminのサイコンなどは生のパワー値をそのまま表示しているのではなく、ある程度の期間で平均した値を出しているんじゃないかと思います。
iGS320を実際使ってみると、Bontragerの値の表示パターンに近い印象を受けました。ちょっと現在のパワーの表示内容は感覚とズレている感じがありますね。今後の改良で、「3秒平均パワー」とか表示できるようになると良いのですが。
ナビ
簡易ながらナビ機能があるようなので、試してみました。
アプリで作ったルートを転送すると、「NAV」欄に矢印でナビゲーションが表示されます。
分岐となる交差点の500m前になると距離が表示され、曲がる方向が表示されるというもの。
複雑な交差点は表現出来なそうですが、ないよりはマシといった所でしょうか。
データ
走行終了後、アプリから走行データを確認してみました。
割りと近しい値になりました。
iGS320の方が平均スピードが高いのは、5km/hより遅くなると自動的に計測が中断される設定になっていたからです。Edge530はスピードが0km/hになっても計測が続くように設定しているのでこのようになったのでしょう。
iGS320もスピードによるオートポーズをOFFにすることは可能なので、早速オフにしました。ブルベでは停止時間も含めた走行時間が大切なので。
バックライト
本製品は、夜になるとバックライトが自動点灯します。
内部で持っている日没時間から日の出時間までは自動で点灯するようにプログラムされているようです。
逆に言うと、夜間はバックライトをOFFにすることが出来ません。
バックライトは一番電池を食う部分なので、夜間でもOFFに出来るようにしてほしいですね。夜間の情報はメインサイコンで見れば良いので、サブサイコンは粛々とデータを取り続けてくれるのが理想です。
まとめ
少し触ってみた感じでは、シンプルながら取れるデータの精度はそこまで悪く無さそうです。
目下、気になるのは「本当に72時間も持つのか?」という点。
morouさんのテストでは、公称時間の半分である36時間ほどしか稼働しなかったようです。iGS630も大体公称の半分でしたし、ありそうな話ではあります。
恐らく「72時間」というのはバックライトを全く使わない状態での稼働時間だと思うので、夜間でもバックライトをOFFに出来る設定が実装されたら是非実測テストをやりたいと思っています。
とりあえず、しばらくサブのサイコンとして使って見る予定です。その後、詳しくレビューします。
著者情報
年齢: 38歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。