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WH-R8170(アルテホイール) ファーストインプレッション
先月の話になりますが、ディスクロード用にWH-R8170-C36/C50を購入しました。
現行アルテグラグレードに属する、ディスクロード用のカーボンホイールです。
購入まで
「La route」のインプレ企画で乗ってみたところ、想像以上に良かったことから購入に踏み切りました。
La route インプレ企画
こちらの記事(月額有料記事)で初めてアルテホイールに試乗しました。
昨年登場したデュラエースのホイール群は、各性能を驚くほどの高みでバランスさせつつ、23万円という戦略的価格でマーケットを…
乗る前から何となく気になっていたホイールでしたが、乗ってからは「欲しい」に変わりました。
購入理由①: 類まれなる横風耐性
アルテホイールでもっとも衝撃的だったのは、その対横風性能の高さでした。
La routeの企画における試乗時は最大風速10m/sという風の強い日だったのですが、36/50/60mmの全てのハイトで横風による恐怖感を感じることがありませんでした。これにはびっくり。
ディスクロード用ホイールとしては、今まで以下のホイールを使ってきました。
① Fulcrum 「Racing Zero Carbon DB」(30mmハイト)
② HUNT 「44 Aerodynamicist Carbon」(44mmハイト)
③ MAVIC 「KSYRIUM SL DISC」(25mmハイト)
この中で「横風が強い場所でも不安定にならない」と感じたのは③のみ。あと2つは横風の強い場所で使うには怖かったのです。
突風もそうですが、強い風が吹いている中で走ると、真っ直ぐ走るために少し意識をそちらに向けなければならない点が気になっていました。
②のHUNTは基本的にかなり私としてはお気に入りのホイールです。巡航や加速といった走行性能は素晴らしい。ただ1点、横風が強い場所では常に操舵に気を使う必要が有る点のみが不満でした。
アルテホイールは50mmはおろか60mmでもHUNTよりも横風に対して安定していると感じられました。良い意味で「ボーっと乗れる」というか。
この横風耐性の高さこそ、「欲しい」と思った最大の理由です。
購入理由②: 基本性能が高い
アルテホイールで一番印象的だったのは「横風耐性の高さ」でしたが、その他の性能も穴らしい穴がありませんでした。
加速・巡航・ヒルクライム・乗り心地・ハンドリング……そういったパラメータが「全て最高」というわけではないのですが、どれも高レベル。安井さんは「オール85点の優等生タイプ」と表現していましたが、私も同じ印象です。
個性らしい個性はないのですが(横風耐性は個性と呼べるかも?)、誰からも大きな不満が出ないホイールだと思います。
購入理由③: カーボンホイールとしては安価
アルテホイールは前後セットで税込157300円です。
かつてのアルテホイール(WH-6700など)が前後4万円台だったことを考えるとえらく高くなった感じがありますが、アレはアルミリム。カーボンリムで15万というのはそこまで高い部類には入らないと思っています。
直販ブランドでコスパが高いと言われるHUNTも、海外からの配送料や輸入税を含めると137300円でした。
今回のアルテホイールはショップに在庫がなく、楽天で購入しました。購入価格は134300円。更にポイントが15000円分付いたので、実質12万円程度で買えたことになります。
前後ハイトをどうするか?
アルテホイールは36/50/60mmの3種類のハイトがあり、フロント・リヤをバラで購入することが出来ます。価格はセットで購入したときと同じ。
ということは、前後違うハイトを組み合わせて使うのもアリだということです。組み合わせは全部で9パターン。その中のどの組み合わせで買うのか?
結論としては、「フロント36mm」「リヤ50mm」の組み合わせで購入しました。
試乗で一番印象が良かったのは「前後50mm」。しかし、ブルベで使うことを考えると、少しでも横風に対して安定していたほうが良い。時折、すごい風の中を走る場合もあるので。その意味では、横風の影響を受けやすいフロントを36mmにしようと考えました。前後36mmも考えはしましたが、リヤが50mmの方が「後ろから押し出してくれる」感じがあったので、リヤは50mmにすることに。
以上の理由から、フロント36mm/リヤ50mmという組み合わせを選びました。
ファーストインプレッション
5月中旬に着弾。300kmブルベを含めた600km程度を走行しました。
フロントは「WH-R8170-C36-TL」、リヤは「WH-R8170-C50-TL」。
タイヤはPanaracer「AGILEST CL 25C」、チューブはRevoloop「RACE」、ディスクローターはSwissStop「Catalyst」という組み合わせで使っています。
重量
それぞれ重量を実測しました。
■フロント(WH-R8170-C36-TL-F)
実測: 682g (公称: 657g)■リヤ(WH-R8170-C50-TL-R)
実測: 881g (公称: 872g)
前後合計で1563g。公称重量での組み合わせだと1529gとなるはずですが、34gほど重かったです。HUNTはリムテープ込みで1512gだったので、約50g重くなりました。とはいえ、内幅21mmとかなり太いリムであることを考えると、なかなか軽く仕上がっている気はします。
この重量は最初から貼られたチューブレステープ込のもの。テープだけで片輪10gとすると、両輪で20g。それを加味すると公称重量との差異は14gであり、誤差1%程度と割と正確です。
ちなみに、同形状のリムを採用するデュラエースのホイールは、大体同じハイトで100g前後軽くなります。リムのカーボン素材が違うんですかね。
アルテとデュラホイールの公称重量は以下のとおりです。
C36 | C50 | C60 | |
アルテ | 前: 657g 後: 831g 合計: 1488g |
前: 698g 後: 872g 合計: 1570g |
前: 738g 後: 911g 合計: 1649g |
デュラ | 前: 620g 後: 730g 合計: 1350g |
前: 674g 後: 787g 合計: 1461g |
前: 751g 後: 858g 合計: 1609g |
各部詳細
一見ホールレスのように見えますが、ニップルホールはあります。チューブレステープがかなり綺麗に貼られているんですよね。気泡が全く入り込んでいません。シマノには専用の取り付け装置とかがあるのかもしれませんね。
なお、シマノの区分では、このリムは「チューブレスリム」。「チューブレスレディリム」ではなく「チューブレスリム」です。
つまり、タイヤさえシーラント不要なチューブレスタイヤであれば、シーラントを使わない「ピュアチューブレス」の構成で使用可能なホイールであるということです。ニップルホールがありながらピュアチューブレス運用が可能なホイールはかなり珍しい。
空気圧は最大7.5barまで。もはや8気圧も9気圧もタイヤに入れる時代ではないってことですね。
リム面には貫通した水抜き穴。
アルテホイールの大きな特徴が「11速/12速の両対応」であるということ。
デュラホイールは12速専用なので、R9200/R8100の最新コンポを揃える必要があります。アルテホイールは、旧来の11速コンポにも組み込めるということです。
スポークは前後24本。ストレートプルタイプのエアロスポークです。
リム内幅は21.3mm。ETRTOで言えば21C。
リム外幅は28.0mmです。太い。
テンション調整
乗り始めてすぐに、試乗時と違う感触に気づきました。
原因は、後輪のスポークテンションが低かったこと。
どうもこの症状は私だけではなく、新型デュラ/アルテのホイールにテンションが低い個体が結構な高確率で存在しているようです。これらのホイールをお持ちの方で「何か反応がヌルいな~」と感じている方はショップでテンションを見てもらうと良いかもしれません。
テンションを調整してもらった後は、試乗時の感触に戻りました。
実走
6月11日の300kmブルベ「かすみがうら300」を含めて600kmほど走行しました。
横風耐性については期待通り。霞ヶ浦周辺は常に強い風が吹いていますが、全くハンドルを取られることはありませんでした。ホイールの横方向の挙動に気を取られなくなったので、より走りに集中できるようになった気がします。
ゼロ加速はそれほど良くはないです。剛性は十分にあるけれど、硬すぎない感じでブルベには丁度いい。
巡航状態からの加速は、割りとバネ感があるというか、1テンポ遅れて飛び出す感じ。これも少し硬さを抑えているのが効いているのでしょう。ディスクロードのホイールはスポーク本数が多い&リムハイトも高くてガチガチなものが多いイメージなんですが、割りと「しなやか」で新鮮味があります。
巡航も若干タメがある感じ。脚に来ないながらも、なかなか速い。
正直「前輪のスポーク24本」は空気抵抗が大きそうだなーと思っていたのですが、40km/hを超えても抵抗を体感は出来ませんでした。これまでは前輪のスポーク本数を基準にホイールを選んでいたんですが、実はリムの幅や形状のほうが重要なのかもしれません。
今回のブルベでは短めの激坂しか走っていないのでヒルクライム能力を判断できるほどは乗り込めていませんが、ダンシングでも引っ掛かりを感じません。シッティングでも淡々と登ることができました。
D2リム
リムについて補足。
アルテホイールの横風に対する強さは、恐らくシマノ提唱の「D2リム」という断面形状にあるのではないかと思います。
あまりホイールについての技術的なアピールをしてこなかったシマノがわざわざ専用ページを作ってアピールしているリムが今回のデュラ/アルテホイールには採用されています。デュラとアルテはリムの素材こそ違うものの、形状は全く同じです。
D2リムの主目的は空気抵抗の減少ですが、結果的にこれが横風耐性の高さに繋がっているのではないかな?と。
シマノにスポンサードされながらもグランツールの勝負ステージではLightweightを使うイネオスですが、今年のグランツールでは普通にデュラホイールを使っていました。マージナルゲインを提唱するあのチームが使うってことは、シマノの今世代のホイールは少なくともマイナスにならない性能を持っていると判断してよいのではないかと思います。
ちなみに、ドイツの自転車専門誌「ツアーマガジン」が行ったディープリムホイールの空力テストによると、6社(シマノ/カンパ/ZIPP/DT/Vision/Bontrager)の最新製品の中でデュラのC60が2番目の好成績を収めたようです。D2リムは、ちゃんと数値的にも優位であるようですね。
見た目
最近流行りのステルスロゴ。遠くから見るとどこのブランドのものだか分かりません。
マットブラックのリムも格好良くはあるのですが、汚れは落ちにくいです。
まとめ
一言で言うならば「ちょうどいいホイール」です。3種類のハイトから用途に応じて選べ、前後のハイトも変えられるのが良い。
性能的には全方位優秀で、完成車付属のホイールからのステップアップとして最適なホイールなのではないかと思います。15万という価格は安くはありませんが、「カーボンホイール」「性能」という点を加味すると高いコストパフォーマンスであると言えるでしょう。
「アルテグラ」という名前が付いてしまっているから15万という値段に違和感が出ている気もしますね。何かグレードを感じさせない名前を付けても良かったのではないかとは思いますが……。
レースユースで使うか?と言われたら微妙ですが、私のようなロングライド・ブルベをメインで走る人間にはオススメできるホイールです。クセもないですし。
アルテホイールの購入をLa routeのインプレ企画を立てた安井さんにお伝えした所、「してやったり」とのお返事を頂きました。
インプレ企画で使った結果、気に入って自腹購入した経験は安井さんも何度もあるそうで。企画でインプレをやる上では「あるある」なのだなーと思いました。
とりあえず、このホイールを買ったことでディスクロードに関して感じていた「引っ掛かり」の最後の2つのうちの1つ(横風がストレス)が消えました。
残る「引っ掛かり」は「輪行のしやすさ」のみ。これが解消されれば、ディスクロードをメイン機に据えても良いと思えるようになってきました。
著者情報
年齢: 37歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。