機材考察(自転車本体編)

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まずは、自転車本体の考え方についてです。

目次

車種

わざわざ言うまでも無いかもしれませんが、キャノボに一番向く車種は「ロードバイク(以下、ロード)」だと思います。巡航、加速、ヒルクライム性能のバランスが良い機材です。また、ポジションの選択肢も多く、疲労を散らせるのもキャノボに向いています。

ただ、他の車種でも達成自体は可能です。2021年現在、以下の車種でのキャノボ達成が確認されています。

・シクロクロス
・ミニベロ(折りたたみ含む)
・クロスバイク
・ファットバイク
・トライアスロンバイク
・TTバイク
・リカンベント

以下の車種は達成が確認されていません。

・MTB

MTBはソロでこそ達成はいませんが、チームで走るFlecheでは24時間を切った記録が残っています。

ミニベロやファットバイクで達成可能という事実は、キャノボにおいて「結果への機材性能の寄与度は低い」と言うことを証明していると言えるでしょう。キャノボは伊賀ルートを選べば523kmほど。これを24時間で走るので、求められるグロス平均時速は21.8km/h以上となります。平地で32~33km/hを維持すると、大体グロス平均時速はこのくらいになります。つまり、32~33km/hを維持できる車種ならばキャノボは実現可能であるはずです。

ただ、これらのロード以外での車種による達成は、いずれも「ロードで一度達成した人によって行われている」と言うことを強調しておきます。いきなり変わった車種でチャレンジしても達成の確率は低いです。それよりは、一度でもロードで達成してコツを掴み、それから他の車種にチャレンジしたほうが達成の確率は大幅に上がるはずです。

私はFlecheでクロスバイクを使用しましたが、他の条件が同じだと仮定すると、ロードより30分~1時間程度遅くなる感触でした。ロードバイクで22時間台でキャノボを走れる方ならば、クロスバイクによる達成も十分可能であるということです。苦しかったのは、走行性能よりもポジションが選べない(フラットバーなので)ことによる各部の痺れと痛み。走行後、数週間は手の痺れに苦しみました。

フレーム素材

統計を取ったわけではありませんが、達成した人の機材を見るとカーボンフレームであることが多い印象です。

やはり重量が軽く、振動減衰に優れ、剛性も高くしやすいカーボンフレームは有利であると思います。そもそも、最近はミドルグレード以上のロードならば大体フルカーボンであることが多いので、割合が多いのは当たり前なのですが。

ただ、アルミやスチールフレームでの達成も一定数いるのは確か。車種と同様、フレーム素材の結果への寄与度は低いのだと思います。個人的にはフレーム素材よりも、フォーク素材が効くと考えています。安いクロスバイクでも、まともなカーボンフォークを入れたら反応性・快適性共に向上しました。

コンポーネント

コンポーネントについても、結果への寄与度は低いと思います。何度も書きますが、性能よりも「ちゃんと調整されているか」の方が大事です。

私が見た中では、SHIMANOならば105以上のコンポーネントを使っている人がほとんど。CampagnoloやSRAMはあまり使用者が居ないのでグレードは分かりませんが、どのグレードでも大きな問題にはならないと思います。もちろん、上のグレードに行けば行くほど、気持ちよく走ってくれる可能性は高いですが。

ちなみに、私は達成時はSHIMANO ULTEGRA SLを使っていました。

ホイール・タイヤ

これはなかなか選択に悩む部分です。速度に直結しますし、パンクと言うメジャートラブルに係るパーツだからです。

ホイール(タイヤシステム)

ホイールとタイヤには、大きく以下の3つのシステムがあります。

・チューブラー
・クリンチャー
・チューブレス(チューブレスレディ)

達成者の中で一番使用率が高いのは、クリンチャーです。

パンクからの復帰が10分程度で可能ですし、タイヤ自体がバーストした場合でも近くに自転車屋があれば高確率で調達可能です。実際、タイヤに大きな穴が開いても、現地の街の自転車屋でタイヤを購入して達成まで持っていった方もいます。

次いで多いのはチューブラーです。ホイールとタイヤの合計重量が軽くなりやすく、走行性能も高い場合が多いのが特徴。

ただし、パンクからの復帰に時間が掛かる欠点があります。「パンクしたら諦める」と割り切って性能に賭けるならばアリな選択だと言えます。なお、キャノボに用いるのならばパンク防止剤のシーラントを入れて走ったほうが良いでしょう。

一番割合が少ないのがチューブレス。チューブが入らないため低圧でも走行抵抗が低く、乗り心地が良いのが特徴。シーラントを入れることが前提となっており、パンクもしにくいのが長所です。

ただし、シーラントで防げなかったパンクの場合、出先での復帰が中々難しいという欠点も(タイヤが中々ハマらない、携帯ポンプではビードが上がらない等)。ただ、MAVICが打ち出したUSTはタイヤがはめ易く、携帯ポンプでもビードが上がるので今後使用者が増えるかもしれません。

タイヤ

そして、どんなタイヤを使うか。

キャノボにおいては、大阪→東京時の箱根旧道を除いて急勾配の下りはありません。また、天気を選べば雨の中を走ることも無いはずです。このため、グリップ偏重タイヤを使う必要は無いと思います。

各社のフラグシップタイヤの中でオールラウンドに位置づけられるものを使っておけば問題ないでしょう。耐パンクベルトも入っていない軽量タイヤはパンクリスクが上がるのでやめたほうが良いと思います。

タイヤの太さについて。一番メジャーなのは23Cです。私が達成した時も23Cでした。そもそも当時は23Cタイヤ以外の選択肢は殆どなかったのですが。

最近はワイドリムがメジャーとなっており、25C以上のタイヤ推奨のホイールが増えました。キャノボのルート上で舗装が荒れているのは伊賀の採石場あたりくらいなので、極端な太タイヤは必要ないと思います。加速性重視か、快適性重視かという所で、23Cか25Cかを決めると良いでしょう。

コンタクトポイント

コンタクトポイントとは、自転車と体の接続部分を指します。つまり、ハンドル・サドル・ペダルです。

ハンドル

ハンドルは、カーボンハンドルだと手の痺れが起きにくく快適。ただ、アルミハンドルで普段問題が無いのならば、そのままで良いと思います。

注意したいのは、ハンドルの高さ。あまり上げすぎると空気抵抗が大きくなりますし、下げすぎると内臓が圧迫されて途中で補給が出来なくなる場合があります。

サドル

サドルは、普段使い慣れたものならば何でも良いと思います。

痛みが出てしまうと走りに集中できなくなるので、300㎞走っても問題ないサドルを選びましょう。

ペダル

ペダルは、個々人の違いが大きい部分です。

私はXTRの両面SPD(PD-M9000)を使用。「SPD-SLのシューズはソールが硬すぎて足裏が痺れる」「両面SPDはキャッチミスがほとんど無くゼロ発進がスムーズ」と言うのが理由です。とはいえ、踏み面が大きいレース用ペダル(SPD-SLやLOOK KEOなど)の方が、効率的には良いのも確か。この辺りは自分の乗り方と相談してみてください。

なお、フラットペダルでも達成した人はいます。足裏に痛みが出やすかったり、ポジションを固定すると膝の痛みが出やすい人は、いっそフラットペダルにするのも手かもしれません。

チェーンオイル

最後にチェーンオイル。道中でオイル切れを起こすと異音が発生してストレスになりますし、走行抵抗自体も増えます。道中で注油している時間はありません。スタート前に注油し、500km以上は効果が持続するオイルを選ぶ必要があります。

とはいえ、スポーツ自転車用のチェーンオイルは、ウェットタイプであれば500km程度は持つものが多いものです。ドライタイプでも雨が降らなければキャノボの距離なら持つものもあります。雨が降れば持続距離は短くなりますが、前述のように雨が降らない天気を選べば良いのです。

一般に、チェーンオイルは「ウェットタイプの持続距離が長い」と言われています。迷ったらウェットタイプを使っておけば良いでしょう。私がキャノボに挑戦した際には、Vipro’s muonというオイルを使用していました。潤滑性能は良かったのですが、やたらチェーンが黒くなりやすいオイルでもありました。

オイルについては何を使うかよりも、決行直前のドライブトレイン(チェーン/ディレイラー/スプロケ/クランク)の洗浄&注油の方が大事だと思います。ドライブトレインの汚れは数ワットの効率低下というデータもあります。是非、キャノボの前にはドライブトレインの洗浄と注油を行ってください。

(完)

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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