心拍計の比較実験(電気式 vs 光学式)

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心拍計の方式でどのような差が出るかを比較実験してみました。

目次

まえがき

光学式心拍センサの付いたスマートウォッチを購入しました。

Forerunner 255s Musicを購入

購入したのは、我らがGarminの最新モデル「Forerunner 255s Music」です。

グレード的には、ロードバイクのコンポに例えれば105グレードと言った所。高機能ですが、ハイエンド機ではなくミドルグレードです。今回が初めてのスマートウォッチなので、いきなりハイエンドを買っても使いこなせないかと思いまして。

スマートウォッチは基本的に一日中付けっぱなしにする必要があるので、それに自分が耐えられるか未知数だったので、あまり高いものを買うのは怖かったのも理由です。

買ったらやりたかったこと

とりあえず、スマートウォッチを買ったらやりたかったのが「光学式心拍センサは、いわゆる胸バンド式の心拍センサと比べてどうなのか?」という実験。

少し前の光学式心拍センサと言えば、「目安程度」「使い物にならない」という評判が多く見られました。

ただ、ここ数年では精度が上がり、「使えるレベルになった」という話も聞いていました。

私が購入した「Forerunner 255s」は今年6月に発売されたばかりの最新機種です。その精度は、従来の胸バンド式の心拍センサと比べてどうなのか?を確かめたいと考えました。

すくみずログ
Garmin Fenix 6s Elevate光学式心拍計の精度について | すくみずログ パワーメーターを使ったトレーニングを行っていても、身体の負荷を測る指標として心拍数も重要。心拍計の主流は、胸に巻いたバンドから心臓の電気信号を読み取る心拍バンド...

これはスマートウォッチを買った自転車乗りが「とりあえずやってみる」実験のようで、シクロクロッサーのすくみず氏も実験しています。

すくみず氏のスマートウォッチは「Fenix 6s」。一つ前の世代のフラグシップモデルです。コンポに例えるならばデュラエース。

ただ、この世代の光学式心拍計は4センサ式です。Forerunner 255sは6センサ式となり、センサ配置も変更となりました。Garmin公式の宣伝文句は以下の通り。

第4世代にパワーアップした光学式心拍計は4つのセンサーから6つのセンサーにアップグレードされ、
その配置も調整されたことで更に精度高く、フィットネスアクティビティや心拍数の変動を測定し、ストレスレベルスコアを計算します。
ハートレートセンサー無しで水中でも心拍数をトラッキングします。

最新の6センサ式の精度がどうなのか、という情報はあまり見つからなかったので試してみる価値はありそうです。

心拍センサの方式

ここで軽く、今回比較する心拍センサの方式「電気式」と「光学式」の違いについて触れておきます。

電気式

電気式は、心臓が脈動する際の電気信号を直接拾う方式です。

自転車界隈で一般的な胸バンド式のセンサは電気式です。

心臓から近い位置で直接信号を拾うことになるので、測定精度が高いことが特徴と言えます。

光学式

光学式は、センサーから光を照射して血管中のヘモグロビン密度の変化を計測する方式です。

これはForerunner 255sを裏から見た写真です。中央部に黒い円があり、その中に6つのセンサーがあります。ここから緑色の光が照射され、その反射から心拍の変化を見るわけです。

心臓から遠い位置かつ間接的に心拍を取得する光学式は、電気式に比べると精度的に劣ると言われています。

実験内容

電気式と光学式の心拍センサを同時に身に着けて自転車で走行、その際の心拍の時間変化を比較します。

比較対象機器

心拍センサ 記録機器
電気式(胸バンド) Garmin HRM2-SS Garmin Edge530
光学式(手首) Garmin Forerunner 255s Garmin Forerunner 255s

HRM2-SS(胸バンド式)と、Edge530のペアリングはANT+です。記録機器の時刻は秒単位で揃えてあります。

走行コース

いつも練習で使用している10km程度のコース。

20~30m程度のアップダウンを繰り返すので、インターバルトレーニング的な心拍変化となります。

実験結果&考察

実験結果と考察です。

まず、結果のグラフはこちら。

平均心拍数と最大心拍数

各測定方式での平均心拍数と最大心拍数を以下に示します。

平均心拍数 最大心拍数
電気式(胸バンド) 135bpm 173bpm
光学式(手首) 135bpm 176bpm

 

平均心拍数は両者一致。最大心拍数も2%程度の差しか出ませんでした。

すくみずさんの実験では、振動によって値がブレることが多いという結果になっていましたが、今回の私の実験ではそういった様子は見られず。スプリント的な動作は一応入れましたが、動きにも追随できているように見えます。4センサ→6センサの効果でしょうか?

ただし、私の実験で走ったコースの路面はそこまで悪くないので、荒れた路面では値のブレが出る可能性はあります。

波形

グラフの形状については、ほぼ両者一致しているように見えます。数年前の機種だとインターバル区間はズレが大きくなると聞いていたので、意外と正確なことに驚きました。

グラフ形状はほぼ一致しているものの、電気式のグラフに比べて光学式のグラフは若干右にズレています。これは、光学式のほうが少し計測値が遅れて表示されるということです。時間にして、5~10秒程度遅れます。

今回のコースで最大心拍数となったのは高低差30mの坂を一気に登りきったタイミングです。電気式の場合は即座に値が出ますが、光学式の場合は坂を登りきって5~10秒後に心拍数がピークを迎える感じ。測定部位が遠かったり、ソフトウェア処理をしている時間などがあるのだと思いますが、その分だけ光学式は遅れるようです。

ブルベなどのロングライドでは「傾向」が見たいので、この程度の遅れは許容出来ます。一方、ヒルクライムやレースでは「180bpmを越えたら踏みやめよう」的なシーンの場合、それが5~10秒遅れることになります。少し過去の心拍数を見ていることになります。短い時間ですが、踏みすぎてしまう危険性が排除できません。まぁ、そんな負荷が掛かっている状態でサイコンの心拍数を見ている余裕があるかは不明ですが。

急上昇・急下降時のブレ

気になったのは、心拍が急上昇・急下降する時に、光学式の場合は心拍数が一時的に落ちる点です。

具体的には、点線で囲んだ部分。赤いグラフ(光学式)が不自然に一度落ち込んでいるのがお分かりになると思います。

正確な理由は不明ですが、恐らくはソフトウェア処理の段階で「急上昇」「急降下」をノイズとして捉えてしまっているのではないか?と。変化が激しいので、2拍分を1拍として数えてしまっているというか。

ソフトウェア処理の部分なので、こちらは今後のファームウェアアップデートで解消される可能性があります。

その他

今回は光学式センサの結果をForerunner 255s自身で記録しました。これだと、心拍センサと記録機器が同一なので途切れることはありません。

Forerunner 255sには、「心拍転送モード」という外部のサイコンに心拍数を転送するモードがあります。この際にはANT+で通信をするわけですが、無線通信なので途切れる可能性はあります。

あと、心拍転送モードは結構電池を食うようで、スマートウォッチの電池残量の減りが結構早くなります。

まとめ

電気式と光学式の心拍センサの結果比較でした。

光学式はもっと値がブレブレなのではないかと予想していましたが、5~10秒の遅延を除くと意外と正確でした。私のメイン用途であるブルベであれば十分に使えそうなレベルに仕上がっていると思います。光学式心拍計も進化しているということなのでしょう。心拍の急上昇・急降下時のブレに関しては今後のソフトウェア更新に期待します。

次のブルベでは、Forerunner 255sを心拍転送モードで使ってみる予定です。

著者情報

年齢: 38歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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