PBPにおける各言語での「私設エイド」の呼び方

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PBPにおける「私設エイド」の呼び方が各国で異なることがわかったので、それらについて調べてみました。

目次

まえがき

まずは私設エイドについての説明から。

私設エイドとは

PBPで特徴的な存在が「私設エイド」です。

私設エイド概要

私設エイドの多くは、路肩にテーブルが置かれ、そこで食べ物や飲み物が振る舞われるという形式です。スタートからゴールまで、数kmに1箇所は存在しています。

PBPではルートが事前に発表されているので、それを見て開設するというわけですね。

PBPの私設エイド

投げ銭用の箱が置かれていることもありますが、基本的には無料であることが多く、参加者の大多数は一度はお世話になる場所です。

メカニックブースを備えた私設エイド

私設エイドで提供されているのは飲食物であることが普通ですが、稀にベッドがあって寝られるようになっていたり、メカニックブースを備えていることもあります。

他のブルベでも私設エイドは存在するのかもしれませんが、これほど大規模かつコース上の広範囲に存在しているのはPBPだけかもしれません。

開設している人たち

この私設エイドは誰かが音頭を取っているわけではなく、自発的的なもの。四国ではお遍路さんに対する「お接待」という習慣がありますが、それと似た精神で運営されています。

基本的にはルート上の商店や地元の住人の方がイベントの応援としてやっていたり、街のお祭りを兼ねてやっている事が多いようですね。

また、小俣さんのレポート(有料記事)によれば、過去にPBPに参加していた人が私設エイドを出す側に回っていることが多いようです。過去に参加して辛さを知っているからこそ応援したくなるというのは良く分かります。

私設エイドの呼び方

ただ、この「私設エイド」という呼称はどうも日本独自のものらしく、別の国の参加者に「Private Aid」といっても全く通じないようです。

YO-TAさんのこちらのツイートを受けて、確かに私も呼び方の違いが気になってきました。

そこで、海外のPBP関連のフォーラムで「皆さんの国では路上にテーブルを出して飲食物を提供してくれるアレのことを何と呼びますか?」と聞いてみることにしました。

結構バラエティ豊かな回答が集まったので、ここに記事化しておきます。

言語別の呼び方

まずは、言語別の私設エイドの呼び方を表で示します。

言語 呼び方
日本語 ・私設エイド
フランス語 ・Ravito(Ravitallement)
・Ravito improvisé
・Ravitaillement sauvage
・Générosité
・saviour
英語 ・Pop up cafes
・Kindness food stop
・free coffee and water stop
・Generosity
イタリア語 ・Ristoro

日本語

これまで書いてきた通り、日本語では「私設エイド」と呼んでいます。これは略語で、フルバージョンは「私設エイドステーション」となるはず。

日本ではマラソンやトライアスロンで主催者が用意する補給ポイントを「エイドステーション」と呼称することが多く、それに対して「公式ではなく私設のもの」という意味を追加して「私設エイド」と呼ばれるようになったと推測されます。

自転車のロングライドイベントでも、途中に設けられる公式の補給ポイントを「エイド」と呼ぶことが多いため、それに影響されてブルベの世界でも「エイド」という単語が一般的になったのでしょう。

あとは、2003年大会(日本人が初参加した回)のPBPレポートで「私設エイドステーション」という単語が使われていたことも大きそうです。これが以降の参加者に受け継がれて「私設エイド」という単語が定着したのかもしれません。

ただ、英語圏の人にとっては「aid」は「救護室」みたいなニュアンスのほうが強いようで、割と不思議な顔をされます。ただ、ホノルルセンチュリーライドの英語版パンフレットには「Aid Station」という文字も出てくるので通じないことはないのかも?

たまに「私設PC」と呼んでいる方もいますが、これは誤りです。PC=Point de Controleなので、チェックの無い私設エイドはPCではありません。

フランス語

PBPの開催国であるフランスでは「Ravito」という単語がもっとも良く使われるようです。フランス語のレポートを見てもこの単語がよく登場します。

Ravitoは「燃料補給」を意味する「Ravitallement」の略語です。単純に補給場所として呼ばれていることが多いようですね。

Ravitoの後に「improvisé(即興の)」を付けたり、「sauvage(野生の)」を付けたりする用例もあります。

とりあえずPBPの現場で私設エイドについて話したい場合には「ラビト」と言えば通じるはず。

また、Générosité(利他主義)、saviour(救世主)と呼んでいる人もいました。

英語

英語圏の方のレポートを読んでみましたが、日本語やフランス語のように「これ!」という決定的な呼称はなさそうです。

多かったのは、「Coffee Stop」というもの。他の言語では私設エイドを指す際に「コーヒー」という単語は一切出てこないんですが、英語レポートではやたらとコーヒーという単語が出てきます。

確かに多くの私設エイドでは「キャフェ オア ショコラ?」と尋ねられます。前者はコーヒーで、後者はココアを指しています。

また、英語圏でも「Generosity」という単語を使っている方がいました。これはフランス語の「Générosité」と同じ言葉です。

イタリア語

イタリア語では「Ristoro」という単語が使われるようです。この単語は「回復させる食べ物」って意味だそうで。

まとめ

私設エイドの呼び方の違いを調べました。

こう見ると、同じものを指してているはずなのに、国によって見えているものがちがうというか。「最初にその言語でその概念に名前を付けた人」の影響などもあるかもしれませんが、違いが見られて面白かったです。

私設エイドはPBPの素晴らしい文化です。これに助けられたという方はかなり多いはず。私もいつか私設エイドを出す側に回ってみたいものです。

著者情報

年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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