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「空気が入らない!」を防ぐための「例のポンプ」メンテ方法
ロングライド界隈に「例のポンプ」が認知されてから約二年が経ちました。
例のポンプとは、以下のポンプのことです。
ピストンを引いたときに内部に空気を圧縮する機構を備えており、従来の携帯ポンプでは押すことすら困難な5気圧以上においても軽い力で押せる画期的なポンプでした。
初代とも言える上記のポンプはもう売っていませんが、同様の機構を備え、素材や長さを変えた「例のポンプ一族」とも言えるポンプが次々に発売されました(恐らく、工場はすべて同じ)。例えば、以下の製品が「例のポンプ一族」の一例です。
確実に「これは例のポンプ一族だ」と判別するのは難しいのですが、「底に吸気口がある」のが特徴です。
そして、2020年、ポンプ界の巨人・TOPEAKもこの機構を採用したポンプ「Roadie TT」を発売します。
(追記)Roadie TTは、この後に記載する「注油」は必要のない機構に進化していました。
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さて、そんな便利な「例のポンプ一族」。実は、性能を維持するための手入れが不可欠なのです。手入れをしないで久々に使おうとすると、「いざというとき使えない」事態が発生します。
この記事では、私が二年間の使用で知った、例のポンプの適切な運用方法を書いていこうと思います。
※運用方法は例のポンプ一族で共通です。
注意点1: 各部の増し締め
普通、携帯ポンプはそうそう緩まないように各部のネジはかなり固く締め付けられています。
が、例のポンプ一族は、どういうわけか購入時から各部のネジが緩んでいることが多いです。ネジが緩んでいると、そこから空気が漏れて上手く空気が入らないことになります。
また、走行の振動で緩んでくることもあるので、定期的に増し締めを行いましょう。
緩みやすい所① ポンプヘッド
一番緩みやすいのが、ポンプヘッドとシリンダー(内側の筒)の接合部です。
シリンダーを持ってヘッドを回して締めます。シリンダーはオイルが塗布されており、握るとオイルが取れます。ここのオイルは動作上で重要な意味があるので、ここを握ったら必ず再注油してください。
また、ポンプをボトルケージ横に付けた状態でここが緩むと、「気付くとヘッドだけ無くなっていた」という事態が発生します。実際、私も一度ヘッドだけを落としました。
緩みやすい所② 底
ポンプの底の部分もネジが切られています。
ここは緩んでもそこまで問題にはなりませんが、締めておきましょう。
注意点2: 定期的な注油
例のポンプ一族が他のポンプと決定的に違うのは、「定期的な注油が必須」ということです。
注油しないと動きが渋くなるとかではなく、空気が入らなくなります。
例のポンプ一族のレビューにはよく、「パッケージが油まみれだった!」と不満が書かれてますが、この機構はオイル無しには成り立たないのです。
注油する部分
シリンダー(銀色の筒の部分)に塗布します。
おすすめのオイルは、ワコーズのシリコンスプレーです。チェーンオイルでも良いのですが、ゴムへの攻撃性を考えるとシリコンスプレーが最適でしょう。
なお、シリコンスプレーは有毒なので吸わないように気をつけてください。
注油の頻度
パッケージには「3ヶ月に一回程度」とあります。ボトルケージの脇など、外に付けて運用する場合には、これくらいの頻度で注油が必要です。
サドルバッグやツール缶に保管するなら半年に一回程度でも良いと思います。
なぜ注油が必要か
注油が必要な理由を知りたい方はこの章をお読みください。長い上にややこしいので、読み飛ばしてくれても大丈夫です。
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普通の携帯ポンプは以下のような構造になっています。
外側の筒とシリンダーの隙間から外部の空気を取り込み、その空気をチューブに送り込みます。
一方、例のポンプは以下のような構造になっています。
ポンプの底部に空いた穴から外部の空気を取り込み、シリンダー内で圧縮を行います。
この時、注目してほしいのは「外側の筒とシリンダーの間」です。普通の携帯ポンプはここに隙間があり、そこから空気を取り込みますが、例のポンプはここに隙間が空いていると内部の空気が逃げてしまうのです。
この隙間を防ぐために使われているのが、ゴム製のOリングと、その劣化を防ぐためのオイルです。シリンダーに注油することで、接しているOリングにも注油されます。
注油というと潤滑のためと思われがちです。もちろんその意味もあるのだと思いますが、携帯ポンプ全般ではパッキンやOリングの劣化防止に使われることが多いと思います。
ただ、普通の携帯ポンプは、Oリングやパッキンを、内部の簡単には触れない所にのみ使います。ユーザーが触る可能性があるとすれば、口金のパッキンでしょうか? パッキンをひっくり返すことで米式と仏式を切り替えられるポンプはよくあります。あのパッキンもオイルが塗られていますよね。
例のポンプは、かなり外側(外気に触れやすい所)に、Oリングが位置しています。Oリングと接するシリンダーはユーザーが触ってしまうとオイルが奪われてしまいますし、ゴミが付く可能性もあります。
そして、Oリングとシリンダーの間にゴミが入ったり、オイルが切れてOリングが劣化すると……隙間から空気が漏れることになります。
「ノーメンテで外付けにした例のポンプを半年ぶりに使おうとしたら空気が入らなかった」という話を数件聞きましたが、恐らく理由はコレです。
以上の理由から、例のポンプでは定期的な注油が必須なのです。
注意点3: 保管場所に気をつける
例のポンプ一族は、他の携帯ポンプよりも汚れに対してデリケートです。
特にシリンダーの保護が大切で、「オイルを切らさず」「異物を付着させず」使う必要があります。
それを考えると、付属のマウントでフレームに取り付けるのは中々リスキー。オイルは乾きやすくなりますし、雨天走行では巻き上げられた砂利がシリンダーに付着する可能性があります。
出来れば、ツール缶やサドルバッグなど、異物を避けられる場所に収納することをオススメします。これにより、振動でネジが緩む可能性も下がります。
私はツール缶に入れて持ち運んでいます。
もし、シリンダーが汚れてしまった場合は、綺麗に拭いた後に注油してください。ゴミが入ってしまうと分解する必要がありますが……。
まとめ
最後にポイントだけまとめると、
・シリンダーへの注油を3ヶ月〜半年に一回行う
・バッグやツール缶に格納して持ち運ぶ
と言うことになります。どれが抜けても、空気が途中で漏れてしまい、使い物にならなくなります。
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ものぐさな人には「例のポンプ」一族は向きません。高圧での押しの軽さは何者にも変えがたいのですが、その性能を維持するのには運用上の注意点が多いからです。このあたり、イマイチ広まらない「ロード用チューブレスタイヤ」と似ている気がしますね。
とはいえ、普通の携帯ポンプも定期的なメンテナンスは必要です。パッキンはどうしても劣化します。10年前の携帯ポンプが投げ売りされていたのを買ってみたら、パッキンが劣化していて全く使えなかった経験があります。
ただ、普通の携帯ポンプのメンテが年単位で足りるのに対し、例のポンプ一族は数カ月単位でメンテが必須なんですね。
恐らく、買ってから一度も外で使ったことがない方もいるでしょう。この機会に是非、メンテをしてあげてください。
良い道具の性能を保つには定期的なメンテが必要です。いざという時にちゃんと使えるよう、手入れは欠かさないようにしましょう。
(完)
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