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ディスクローターの摩耗具合の測定方法について
ディスクローターの摩耗具合の測定方法について、現状で妥当と思われる方法を調べました。
まえがき
まずはこの記事を書くことになった経緯から。
自分の測定方法の間違いに気づく
先日、ディスクローター(RT-CL800)の厚みをノギスで測っていて、ふと気づきました。
「あれ、これってちゃんと摩耗した分の厚みを測れてないのでは……?」
ディスクローターを触った際に、再外周部の縁が内側よりも少しだけ盛り上がっている感触があったのです。
なぜノギスでは正しく測定できないのか
「再外周部の縁が、内側よりも少し盛り上がっている」様子を写真で示します。
縁の部分と、それより内側の部分で色が若干違うのがお分かりでしょうか。指で触ると分かる程度に厚みの差があります。
実は縁の部分は削れておらず、新品時の状態を保っています。
組付けが正しく行われていれば、ブレーキパッドは縁よりも少し内側を通り、縁は削れずに残るわけです。
さて、ではこの状態でノギスを当てるとどうなるか。読み取られるのは一番厚い縁の部分の厚みになります。
縁は新品の状態から削れないわけですから、いくら使っても表示される数値は1.75-1.80mm(シマノローターの新品時の厚み)になるということです。摩耗した部分の厚みは測れていません。
数千km使ったローターにノギスを当てて「全然薄くなってないなー」とか思っていましたが、我ながら滑稽です。
ただ、案外この間違いをしている人は多いようで、海外の有名サイト(Road.cc、 FeedbackSports)もノギスでローターの厚みを計測しています。
一番「おいおい」と思ったのは、シマノのアメリカサイトです。
縁の厚みが残っているイラストを描いていながら、ノギスで計測する例を示しています。そこまで分かっていて何故……。
ノギスで測れると思い込んだ理由
では、なぜ私はノギスでローターの厚みを測れると思い込んだのか。
以前乗っていたフレームはブレーキパッドの当たり位置があまり良くなかったようで、ローターの縁までしっかり削れていました。
これならばノギスで摩耗具合を測ることも可能です。……しかし、この状態はちょっと危険でもあります。
例えば、ディスクローターの縁よりも外側をパッドが押さえる状態が続くとどうなるか?
こちらの画像のようにブレーキパッドが偏って削れ、最終的にはレバーを握るとブレーキパッド同士が接触するようになります。こうなるとブレーキが相当効きにくくなるはずです。
そうならないよう、パッドが縁より少し内周部を通るようにセッティングされている必要があります。
逆にパッドが内側を通り過ぎるのもダメなはず。ブレーキトラックの範囲内にパッドが収まっているのが理想形です。
こちらのローターは中々きれいに削れていると思います。縁は0.5mmほど残り、内側も放熱フィンに掛かっていません。ブレーキトラック部分にパッドが綺麗に当たっています。
摩耗具合を正しく測る
ではどうすればディスクローターのブレーキトラックの摩耗具合を計測できるのか?
現状では、マイクロメーターによる計測が一番確実と言えそうです。
シマノが推奨している方法
シマノの日本サイトには「ディスクブレーキのローターは消耗します」というページがあります。
測定方法についてもこちらの画像の通りガイドされていますが、見ての通りマイクロメーターを使用して厚みを測定しています。
マイクロメーターはノギスと異なり、厚みのある縁を飛び越えて目的の部分だけを計測できるので、今回のようなケースには最適な計測工具と言えそうです。
そして、「(赤色部分を避けて)青色部分で計測してください」という部分も重要ですね。パッドの当たらない部分は避けて、パッドが当たる部分の厚みを計測することが重要です。
シマノには「ディスクブレーキローター簡易チェック協力店」という制度があるらしく、こちらのショップではローターの厚み計測を行ってもらえます。
なお、この協力店には計測機器大手「ミツトヨ」のマイクロメーターが配布されているようです。我が家の最寄りの協力店、「ワイズロード川崎」で現物を見せて頂きました。
ローターの摩耗は見た目で分かりにくいのでマイクロメーターで測ります。メーカーは厚み1.5mmで交換としてますがローター・パッド両方減った状態だとエアを噛みやすくなるのでもっと早めの交換がおすすめです。約4000kmごとの点検が目安です! pic.twitter.com/OwkSMjnxKL
— CYCLECUBE (@CYCLECUBE_JP) March 8, 2024
私がお世話になっているサイクルキューブでもマイクロメーターを使用されていました。
私の計測方法
参考までに私の計測方法の紹介です。
サイクルキューブや他のショップ店員の方に聞いた所によると、ブレーキトラックは上の画像のように減っていくことが多いそうです。ブレーキトラックの中央部分が一番削れるということですね。
こちらはtatsushiさんご提供の写真ですが、確かにその通りに削れていることが分かります。
シマノのガイドでは「厚みが1.50mmを切ったら交換時期」とされているので、「中央部分の厚みが1.50mmを切っていないか?」をチェックする必要があります。
ということで、ブレーキトラックの中央部分を3~4箇所測定することにしました。同じ中央部分でも、場所によって微妙に厚みが違うので念のため複数箇所を調べます。
なお、私が購入したのはシンワ測定のデジタルマイクロメーターです。
ノギスで厚みを測る方法も無くはない
マイクロメーターが確実だとは思いますが、ノギスでも工夫すれば摩耗具合を測ることは出来ます。
ジョー根元の逃がしを使う
ノギス先端のモノを挟む部分(ジョー)の根元は少し凹んでいることが多いです。
この部分で縁を乗り越え、ブレーキトラック面を斜めに測れば一応は厚みが計測できるはず。ジョーの先端が、削れていない内周部分に掛からないようにする必要があるので、なかなか難しいです。
アダプタを使う
工具で有名なパークツールですが、なんとノギスに取り付けるローター測定用アダプタなるものを販売しています。
ちなみにお値段5000円。これならマイクロメーターを買ったほうが良い気はしますね……。
間接測定
ブレーキトラックの摩耗している部分に小さく変形しないモノを置き、後からそのモノの厚みを差し引けば、ブレーキトラック部分の厚みを間接的に測定することが出来ます。
手近なモノとして、M4のナットは中々良さそうです。変形しませんし。ブレーキトラックの中央部分に置いて、厚みを測定します。
ローターは表も裏も縁が発生するので、より正確性を期すならば表裏両方にナットを配置し、ナットでローターを挟んで測定すると良いでしょう。
(ナットを含めた厚み) – (ナットの厚み) = ブレーキトラックの厚み
試しにこの方法でノギス測定した値とマイクロメーターで測定した値を比べてみましたが、差は0.01mm程度に収まりました。
10円くらいで出来る方法ですが、なかなか悪くなさそうです。
ナットの他にも、磁石で挟み込む方法もありそう。ただ、磁石よりはナットの方が平滑さが求められそうなので、今回はナットを使いました。ブレーキトラックに付くので、磁石のほうが測りやすそうではあります(ナットは付かないので位置合わせが難しい)。
まとめ
ディスクローターの摩耗具合について、妥当そうな測定方法を紹介しました。
しかし、最後に紹介した「ノギス+ナットでの間接測定」が割とそれっぽい値になって驚きました。「厚みが1.50mmを切っているかどうか」を確かめるならこれで十分かもしれません。
正確さにこだわるならば、マイクロメーターです。私は測定値の写真をブログに載せたかったのでデジタルにしましたが、アナログでも値の読み取りは割と簡単です。
ただし、普通のご家庭ではディスクローターの厚み測定以外でマイクロメーターの出番はそうそう無いかもしれません……。
シマノが専用の簡易測定工具を発売してくれれば一番良いんですけども。
著者情報
年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。