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「旅ぎゃる!(著: 川喜田ミツオ) 1巻」購入
11月に発売された自転車マンガ「旅ぎゃる!」の1巻を購入しました。
面白かったので、簡単にあらすじの紹介と感想を書いていきます。
購入のきっかけ
Twitterで作者の方(川喜田ミツオ先生)にフォロー頂いたのがキッカケでした。
固定ツイートに掲載されていたサンプルを読んでみると、主人公の乗る自転車はロードでもMTBでもなく、ランドナー。これは驚きました。令和の時代にグラベルロードではなくランドナー。
「アオバ」シリーズにはランドナーがよく出てきますが、主人公の相棒としてマンガに出てくるのは「サイクル野郎(1970-79年)」まで遡る必要があるでしょう。実に40年ぶり。それくらいランドナーがメインで出てくる自転車マンガは珍しいはずです。
そして、主人公はランドナーとは対極にありそうなギャル。この組み合わせは間違いなく史上初でしょう。
もう一つ興味を惹かれたのは、作者の方。割と自転車趣味の漫画家の方は把握しているのですが、「旅ぎゃる!」の川喜田先生は失礼ながら全く存じ上げませんでした。
割と自転車漫画の連載をされる方って、趣味としてかなり自転車にハマってる人が多く、連載をする前にTwitterなどでそのハマりっぷりが分かったり、コミケで自転車をテーマの同人誌を出したりしているパターンが多いものです。しかし、今回はそういった気配が一切なく漫画の連載がスタートしていました。どうやらこの作品が連載デビュー作でもあるようです。
川喜田先生の過去のツイートを見ても、自転車の話はほとんど無く、むしろ多いのは釣りの話。そんな方がランドナーをテーマにした漫画を描くというのが、どうにも気になったのでした。
調べてみると、「旅ぎゃる!」は11月に1巻が発売になった様子。
これも何かの縁と思い、コミックを購入してみることに。折角なので電子書籍ではなく、紙の本を選びました。
あらすじ
鹿児島に住むギャル・道端ミチカ。極度の乗り物酔い体質で、乗り物を想像するだけで吐いてしまうほど…。
だが、北海道に住む親友の結婚を祝うため一大決心! 唯一乗れる自転車で鹿児島から北海道を目指すことに…!?
――公式サイトより
ということで、主人公が走るルートは「日本縦断」。コース取りにもよりますが、2500~3000kmの距離になるはず。
それを自転車で走るのが「ギャル」。鹿児島に住む、高校2年生のミチカです。……学校はどうしたんでしょうか。暑そうだから夏休みなのかもしれません。
ちなみに、協力欄には「パナソニックサイクルテック」「ジョブインターナショナル」「ジャイアント」「シマノ」と有名な自転車関連企業が並んでいます。
1巻 感想
簡単にネタバレを避けつつ感想などを。
本格的な機材描写
設定はハチャメチャなのですが、この漫画、機材描写はかなり本格的です。ちゃんと自転車をいじって構造が分かってないと書けないシーンが含まれているんです。
例えば整備不良のママチャリのハンドルが取れるシーンがあるのですが、そもそも抜けることを知っている人は少ないはず。更に、ちゃんと抜けたステムの臼構造まで書き込まれています。本筋のシーンではないのですが、ここを見ただけで「この作者、只者ではないな」と思いました。
主人公のミチカが乗るのは、Panasonicのランドナー。このランドナーは主人公がママチャリを壊して駆け込むことになった、近所の自転車屋に転がっていたものです。再起不能のママチャリの代わりの足として、ミチカはこのランドナーを貰い受けることになるわけですが……
このランドナーに付いているライトが激渋。CATEYE HL-EL300です。2005年発売で、未だに使っている人はまず見かけません。
付いているカンチブレーキはこれでしょう。SHIMANO BR-CT91。こちらは今でも手に入ります。
他のパーツを見ても年代が揃っており、2008年前後に組まれたものと推測されます。かなりリアルな構成です。
一体なぜ……と思いましたが、巻末のおまけ漫画で謎が解けました。作者の川喜田先生は大学のサイクリング部に所属していたとのこと。自転車漫画「オーバードライヴ」に当時ハマっていた所から自転車に興味を持ったと書かれていました。
オーバードライヴの連載期間は2005-2008年なので、ちょうど上のパーツの年代と符合します。このランドナーは川喜田先生自身の愛車なのでしょう(多分)。
サイクリング部所属となれば、自転車の整備も自分でやる人がほとんど。構造を知らないと描けないはずの機材描写の本格さにも納得です。
ミチカのデコ趣味
ギャルであるミチカは何でもデコるのが好きらしく、スマホケースはもとより、ランドナーの泥除けからヘルメットまで、ラインストーンでデコっています。
……このデコ趣味、ものすごく見覚えがあったんですよね。
妻が作ったラインストーン・ヘルメット(2015年作)。発想が全く同じです。
妻に「旅ぎゃる!」を見せた所、「共感しか無い」とのコメントが返ってきました。
そして、この写真を作者の川喜田先生に見せた時の反応が↓です。
ご購入ありがとうございます😊デコメット…ネット検索しても引っかからなかったのにこんなところに実在していたとは‼️
— 旅ぎゃる!1巻 11月4日発売@川喜田ミツオ (@kituneno_kichan) December 4, 2020
想像の産物だったデコメットが5年も前に実在していたことを驚かれたようです。私も漫画に出てきて驚いた。
背景を感じる登場人物
各話に様々な登場人物が出てきますが、どの人物も背景がきちんとある感じがするというか、生きているキャラだなと。信念を感じる人物が多いのも個人的には好きなポイント。
地味子と父親のやり取りは中々グッと来るものがありました。
まとめ
非常に面白かったです。これまた良い自転車漫画が現れたなと。
お色気描写もそれなりにあるので気になる人はいるかもしれませんが、自転車ツーリング派、ロングライド派の人にオススメできる作品だと思います。
サイクリング部出身の方が描くだけあって、パッキング描写の生々しさがとても良いですね。スマートさよりも積載性。それをギャルが駆る。さすがにスカートで乗り続けるのは現実的には不可能だと思いますが、その辺のフィクションの入れ方も上手いと感じました。
目下気になるのは、「これ、ちゃんと北海道まで辿り着けるのか?」という部分。かなりゆっくりペースで進んでおり、ちょっとそこだけ気がかりです(作者コメントで自ら突っ込んでおられますが)。
この作品はWEB連載作品です。2巻発売まではこちらで楽しもうと思います。
著者情報
年齢: 36歳 (レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。