続・ツール缶の中身と運用

この記事は約 11分で読めます。

Twitterで「皆さんのツール缶の中身を見せてください!」と募集した所、予想を超えて50件ほどのご回答を頂きました。

思わず膝を打つようなテクニックが多数ありましたので、この記事で纏めて紹介します。

目次

あらすじ

前回、ツール缶の中身についてこんな記事を書きました。

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内容としては、私個人のツール缶の中身と運用法の紹介です。

この記事の告知ツイートに続けて以下のようなツイートをしてみました。他の人はどんなものをツール缶に入れてるのか単純に気になっただけだったのですが……。

なんと、これに50人以上の方が反応。ツール缶の中身を写真で投稿して下さいました。まさにノウハウの宝庫ですので、是非このツイートのリプライ欄を御覧ください。


この記事では、お寄せ頂いた情報をまとめて、以下の切り口で紹介させていただこうと思います。

・準定番品
・特徴的なツール缶の方

準定番品

この章では、お寄せ頂いた「ツール缶の中身」の中で、「定番品ではないけれど、多くの人が入れていたもの」の紹介です。

定番品は以下のものです。

・パンク修理用具
 - チューブ
 - タイヤレバー
 - タイヤ用パッチ
 - チューブ用パッチ
 - 携帯ポンプ
・工具
 - 携帯工具
・鍵
 - ワイヤーロック
私はほぼ定番品のみしか持っておらず、ここにチェーンカッターとミッシングリンクを加えたくらいの装備になっています。
ここから紹介する準定番品は、「そういえばコレ持っておくと便利そうだな」ということで、参考になる方が多いかと思います。

予備ディレイラーハンガー

出先で自転車を倒してしまった時、よく曲がるのがディレイラーハンガーです。曲がると変速に異常をきたすので、出来れば避けたいトラブルと言えます。
ディレイラーハンガーはフレーム専用品であることが多く、出先で調達することはまず出来ません。そのため、フレームや完成車を購入した時に予備を購入しておき、ツール缶に入れるのは定石と言えます。
一応、互換ディレイラーハンガーを作っているメーカーも存在しています。North Shore BilletやWheels Manufacturingなどのメーカーが有名です。フレームの年式などが分かっていればメーカーが販売終了としていても買えることがあります。
専用品ではなく、汎用品の「エマージェンシーハンガー」というアイテムも存在します。ただし、出先での調整はなかなか難しいので、あくまでもエマージェンシー用ですね。
私はスチールフレーム用のツール缶にはディレイラーハンガーを入れていませんが(フレーム一体のハンガーであるため)、カーボンフレーム用のツール缶には専用の予備ハンガーを入れています。

ブレーキシュー・パッド

リムブレーキならブレーキシュー、ディスクブレーキならブレーキパッドの予備を入れている方は多いようです。

私は雨ブルベであることが分かっている場合には念の為ブレーキシューを持つこともあります。1200km中800kmが雨だった「CH1200」では、2日目終了時点でブレーキシューが無くなってしまって交換しました。

リムブレーキの場合、シマノ・カンパ・スラムの船に共通して使えるBBBのウルトラストップがおすすめです。同行者のブレーキシューが無くなった時でも高確率でプレゼントすることが出来るはず。

チェーンカッター

これも定番、チェーンカッター。ただ出先で実際にチェーントラブルに遭った人はあまり多くないだろうと思います(私も一度もありません)。ほぼお守りと考えて、なるべく小さいものを使う方が多いようです。

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私が使っているのはKMCのもの。恐らく現時点では最小・最軽量です。この手のミニ工具は実際は使い物にならないこともあるので、是非家で一度使って試しておいたほうが良いでしょう(KMCのチェーンカッターはちゃんと使えました)。

マスター・リンク+専用工具

チェーンカッターと同じくチェーントラブルに対処するためにマスターリンク(KMCのミッシングリンク的なもの)を持つ方も多いです。私も持っています。

マスターリンクの定番「ミッシングリンク」は、11速になってから中々手でハマらなくなってしまいました。仮留めした状態でブレーキを握ってペダルを踏むとハマるんですが、私はそれで一度失敗してリンクごとふっ飛ばしたことがあります。そして、外す時も手では中々外れません。

ミッシングリンクの着脱工具というのもあるのですが、これが中々大きくて持ち運ぶには辛い。なにか良いものはないか……?

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と思っていたら、こんなアイテムがあるんですね。小型の着脱工具。柄の部分に予備のマスターリンクをストックしておける構造になっています。今回写真を頂いた中で、10人くらいの方がこの工具を入れていました。

「ミッシングリンクが外せないなら他のメーカーのを使えばいいじゃない」派の方も多かったです。ワイパーマンというメーカーのマスターリンクは手で着脱が可能とのこと。ただ、結構高いです(国内価格3000円前後)。

CO2ボンベ

パンク時に素早く空気を充填できるCO2ボンベも未だに人気は高いようです。

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CO2ボンベも出先でいきなり扱うと失敗しやすいアイテムです。出来れば川の土手などで一度練習しておいたほうが良いでしょう。家で練習すると失敗した時に相当大きな音が出るので、出来れば野外のほうが良いです。発砲事件と間違われます。

私は携帯ポンプが腐るほど家にある&意外とボンベは重いので、携帯ポンプに殉じます。

ニトリルグローブ

ニトリルグローブは、食品業界や医療現場などでよく使われる使い捨ての極薄ゴム製グローブです。テムレスで有名なショーワグローブなどが販売しています。

自転車でよくあるトラブル(パンクやチェーン落ちなど)では手が汚れるので、それを防ぐために持っている方はかなり多いようですね。

「これは凄い!」と思ったのが、改さんのニトリルグローブ活用法。チューブを保護するためにも使うというのです。

私はジップロックでチューブを保護していましたが、確かにニトリルグローブで保護するほうが賢いですね。ジップロックは手袋の代わりにはなりませんし。私も真似しようと思います。

ハンドクリーナー

ニトリルグローブが「手を汚す前に何とかする」ものなら、ハンドクリーナーは「手が汚れた後に何とかする」ためのものです。

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一番多くの方が使っていたのはこちらのアイテム。水不要で手に付いた油汚れが落とせるものです。中身はゲル状で手をすり合わせるとゲルが凝固してそれに汚れが絡め取られる仕組み。

これはいいな、と思ったのがワカオさんが入れていたワンショットプラスというアルコール綿。かなりコンパクトで、汚れの落ちも良いとのこと。ウェットティッシュでも良いわけですが、こういうのもあるのか!と膝を打ちました。

タイラップ

いわゆる結束バンド。これもかなり入れている人が多かったです。私もツール缶ではなくサドルバッグにリピートタイ(手で外せるタイプ)を3本ほど入れています。

使い方を伺ってみると、思った以上に多用途でした。ただし、いずれも応急処置なので、その状態で長く乗ってはいけません。あくまでもリタイヤ場所まで(駅や自転車店)に辿り着くためのものという認識です。

用途① RDの固定

私が真っ先に思いつく用途はこちらのジョニーさんがやっているような、リアディレイラーの固定。シフトワイヤーが切れてしまうとスプロケがトップ固定になってしまうので、適度なテンションを掛けて任意のギヤを使う用途です。

用途② スポークの固定

ホイール組めない人間にはやり方がよく分かりませんが、「スポークが折れた時に固定する」ためにも使えるとか。過去に一度だけ折ってしまったことがありますが、確かにカラカラ言ってうるさかった記憶はあります。

スポーク本数に余裕があるのでこの技も使えそうですが、昨今の完組はスポーク数が少なく、1本折れるとすぐに他のスポークも歪みます。(当たり前ですが)スポークが折れたら走らないほうが良いです。

用途③ ボトルケージの固定

意外と壊れやすいボトルケージ。それを固定するために使ったという例。

用途④ ライト・サイコンの固定

ライトマウントやサイクルコンピュータマウントもたまに壊れます。そうした時の固定用に。

その他の用途

他にもこんな用途があると教えていただきました。

・eTapのバッテリーの爪が折れた時の固定
・サドルバッグの破損の応急処置
・フロントバッグのマウント破損の応急処置
・輪行でタイヤ固定バンドを忘れた時の代用
・チェーンリングの固定

特徴的な運用の方

ここからは、特徴的な運用をしている方のツール缶をご紹介。どれも個性的ですが、運用の参考になると思います。

takeさんの場合

数々の国際的なブルベを走破しているtakeさん。ワイン栓抜き付きの工具が目を引きますが、私が注目したのはシリカゲルです。

工具等の金属部品のサビを防止するためにシリカゲルで吸湿をしているとのことでした。私はツール缶を防水加工することでサビさせないようにしましたが、「こんな手もあるのか!」と驚きました。

Hideさんの場合

キャノボ最速記録を二度更新など数々のロングライド記録を持つ超人Hideさん。

彼は荷物の軽量化への徹底的なこだわりも有名ですが……いやいや、ホント少なすぎでしょう。曰く、「ちゃんと事前に整備していればこれだけで十分」。ごもっともです。

面白いのが、タイヤブート代わりにタイヤの切れ端を持っていること。タイヤブートは端の部分が少し尖っていて再パンクした経験があるようで、それを避けるためにタイヤの切れ端という選択に至ったようです。……しかしポンプはどこに行ったんでしょう?

ponicさんの場合

50台以上の自転車を家に持ち、「自転車を置くために戸建てに引っ越した」伝説を持つponicさん。そのツール缶運用スタイルも独特です。

私は自転車ごとにツール缶を仕立てていますが、彼は用途別にツール缶をキット化しているそうです。常人では考えられない台数を持つ彼でないと辿りつけない境地ですね。

まとめ

多くの方のツール缶の中身を見て、私も大変勉強になりました。

ツール缶って非常用持ち出し袋のようなもので、その人の経験がかなり反映されるものなんですよね。

「これまでどんなトラブルに遭遇してきたのか」
「どんなトラブルに対応するつもりなのか」
「どんなトラブルは諦めるつもりなのか」

そんなストーリーがツール缶の中身からは読み取れます。

そこから自分のスタイルに取り入れられるヒントもあるはずです。私自身もニトリルグローブでタイヤを包むスタイルや、タイヤブート代わりに廃タイヤの切れっ端を持つ運用は真似てみようと思っています。

最後に、ツール缶の中身を見せてくださった50数名の皆様、ありがとうございました。

著者情報

年齢: 36歳 (執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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