iRC「ASPITE PRO S-LIGHT」ファーストインプレッション

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iRCの新型クリンチャータイヤ「ASPITE PRO S-LIGHT」のファーストインプレッション記事です。

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今回の記事で取り上げる「S-LIGHT」と同時発売された「ASPITE PRO RBCC」は既に一度使用しました。

しかし、このタイヤは「フックレスリム対応のクリンチャータイヤ」という特徴から、脱着が物凄く硬いという嬉しくない特徴がありました。フックのないリムに対応する以上は密着度を上げないといけないのでしょうが、いくらなんでも硬かったです。

とても出先で交換できる気がしなかったため、早々に使用をやめてしまいました。なので未だに本レビュー記事は書いていません。

その話を山田さんにした所、「S-LIGHTならそのあたりはマシかもしれません」とのこと。全面が耐パンクベルトに覆われたRBCCに対し、S-LIGHTの耐パンクベルトはトレッド下のみ。その分だけしなやかであり、タイヤの脱着もしやすいとのことでした。特に、一度取り付けた後は普通のクリンチャータイヤと同様に着脱が可能になるとのこと。

RBCCは漕ぎ出しこそモッサリ感はあったものの、走行性能自体は良さそうでした。

S-LIGHTならば重量的な部分からモッサリ感は解消されているでしょうし、最低限の耐パンク性能はありそうです。試して見る価値はあると思い、PEDAL DAY GOから帰る電車の中で「ASPITE PRO S-LIGHT」を注文しました。

ファーストインプレッション

ASPITE PRO S-LIGHT(25C)のファーストインプレッションです。

チューブはPanaracer「R’AIR」、取り付けるリムはPAX PROJECT「AR30W(内幅19mm)」。比較対象は、2022年に発売された新ETRTO対応のクリンチャータイヤ2本(Panaracer「AGILEST CL」とVittoria「CORSA N.EXT」)です。

パッケージ

まずは箱の観察から。

ほぼ、RBCCのパッケージと同じ感じです。「フックレスリム対応」の文字が誇らしげ。ただ、私は普通のフックドリムに取り付けます。

サイドにはタイヤの特徴が書かれています。「NEW ETRTO STANDARD」の文字があり、新ETRTOに対応していることが分かります。

重量

ASPITE PRO S-LIGHTの公称重量は200gです。

二本実測して、200gと210g。片方は公称通りで、片方は公称+10g。RBCCは二本とも公称+10g以上だったので、それに比べればマシですが、上ブレ気味。

AGILESTの25Cの公称重量が190gなので、重量的にはいい勝負。

組付け

耐パンクベルトが全面になっていない分、持った感じはRBCCよりもしなやか。これは組付けも楽になるか?!と思ったのですが。

残念ながら、組付けはかなりキツかったです。

AGILESTやCORSA N.EXTは素手で取り付けられましたが、このタイヤはタイヤレバーが必要でした。それでもかなり難しく、貴重なR’AIRを1本ダメにしてしまいました。

悪戦苦闘の末、取付完了。二度目の取り付けの際には楽になるというのは、今後また確かめます。

空気圧範囲は、6-8気圧。

回転方向に指定があります。

太さ

C19リムに取り付けて、タイヤ幅は25.25mmでした。新ETRTOでは25CタイヤはC19リムに最適化されるので、もっともらしい数値です。

これまでしばらく28Cタイヤを付けていたので、随分細く感じます。

パターン

RBCCと同じく、センターはスリックで、サイドに「ヘリンボーン」と呼ばれるパターンを採用。このパターンで、コーナーリングの味付けを行っているとのこと。

ちなみに、ヘリンボーンとは「ニシンを開きにしたときの骨」を意味するそうです。

耐パンクベルト

S-LIGHTとRBCCの耐パンクベルト仕様の違いは以下の通り。

ASPITE PRO S-LIGHT
耐パンクベルト:ナイロンベルト

ASPITE PRO RBCC
耐パンクベルト:840d 40x40TPI X-GUARD/ナイロンベルト

S-LIGHTはトレッドゴムの1.5倍ほどの太さのナイロンベルト補強が入り、RBCCはタイヤ全面をX-GUARDで覆うという仕様の違いがあります。

iRCの方に詳しい仕様に付いて問合せてみたところ、以下の回答が得られました。

S-LIGHTにも、耐パンクベルトは入っております。
幅はトレッドゴムの1.5倍程度の広さのものが入っていますが、他社品ではトレッドゴムよりも狭いものが入っているケースが多く見られます。

RBCCはビードから反対のビードまで 前面に強固なX-GUARDで覆っています。
突き刺しパンクだけでなく、サイドカットにも優れた効果を発揮し、耐パンク性を高めています。

ということで、S-LIGHTと言えども耐パンク性能は考慮されているようです。

乗った印象

前:6.5気圧、後:7気圧で、平日の夜練で40kmほど乗りました。

なお、保護用ワックスを取るために、トレッド面をぬるま湯で水拭きしてから走り出しています。

漕ぎ出し・加速

RBCCの寸評では「AGILESTに比べてモッサリしています」と書きましたが、S-LIGHTにモッサリ感はありません。かといってAGILESTほど加速が鮮烈だとは感じないのですが、CORSA N.EXTとは同列といった所。無理やり数値化して比較すると以下のような感じ。

AGILEST: 5
ASPITE PRO S-LIGHT: 4.5
CORSA N.EXT: 4.5
ASPITE PRO RBCC: 3.5

信号加速での引っ掛かりを感じないので好印象です。立ち漕ぎ時の腰砕け感もありません。

乗り心地

RBCCに比べると耐パンクベルトのカバー範囲が減っているので乗り心地は良くなることが予想されましたが、いざ乗ってみるとRBCCと大差ないように感じました。硬めではあるけど、衝撃の収束は早い感じ。

RBCCの寸評では「タイヤの取付時に手に伝わる感触は硬いタイヤだったのですが、乗ってみると乗り心地は良いです」と書きましたが、S-LIGHTも同様の印象。RBCCとS-LIGHTの差は耐パンクベルトのみらしいとこちらの記事では言及されていますし、乗り心地は似通うのかもしれません。

グリップ

RBCCの寸評でも書きましたが、ヘリンボーンパターンは見掛け倒しではなく、かなり効いている気がします。コーナーで倒し込んだ時に強烈に路面に食いつく感触がありました。人によってはこれをクセと感じるかもしれません。

スプリント的な動きをした際にもタイヤが路面を掴む感じがあるというか、左右にブレずにまっすぐ進みやすい感触があります。

2022年にリリースされた新ETRTO対応タイヤは各メーカー試しましたが、グリップの高さではiRCが一番じゃないかと思います。

ただ、ヘリンボーンパターンの溝の深さは1mmもなく、パターンがすり減った時にタイヤの挙動が変わってしまう気がするのは気になる所です。

スリップサイン

タイヤの摩耗の具合を示すスリップサインも付いています。かなり浅いですが。

その他

新型ASPITE PROが発表された際には、KINANの選手たちが新型ASPITE PROの良さを語る動画が公開されました。

ただ、私が確認した限りでは、選手たちが使っているタイヤはすべて「S-LIGHT」。「RBCC」を使っている選手はいませんでした。

位置付けとしては、S-LIGHTは軽快さ重視のレース用、RBCCは耐久性重視のエンデュランス用といった性格のようでした。なんとなく名前の印象だと「RBCCはレース用、S-LIGHTは軽量性を活かしたヒルクラ用」と思いこんでいましたが、そうではないようです。

ロードバイク用クリンチャータイヤって同じメーカーで「軽量(ヒルクラ用)」「オールラウンド(ロードレース用)」「耐パンク性重視(エンデュランス用)」の3種類に区分けされていることが多かったと思います。

各メーカーの代表作を区分けすると以下のような感じでしょうか。

軽量 オールラウンド 耐パンク性重視
Continental GrandPrix TT GrandPrix 5000 GrandPrix 4Season
Panaracer AGILEST LIGHT AGILEST AGILEST DURO
MICHELIN POWER TT POWER COMP POWER Endurance
iRC ASPITE PRO S-LIGHT ASPITE PRO RBCC

「S-LIGHT」という名前に引っ張られると「耐パンク性能を犠牲にして軽さに振ったタイヤ」というイメージになりますが、恐らくカテゴリとしては「オールラウンド」に分類されるべきタイヤです。その意味では、iRCのクリンチャータイヤのラインナップには「軽量」カテゴリのタイヤは今のところ無いですね。

まとめ

フックレス対応ということで脱着は硬いですが、走行性能は高いレベルでまとまっていると思います。特にグリップ性能は高いと思いますが、倒し込んだ時のグリップの立ち上がりが若干唐突にも感じるので好みは分かれるかもしれません。

少なくとも、RBCCよりはS-LIGHTのほうが断然好きなタイヤです。もう少し脱着がしやすいと良かったんですけど。

個人的にはブルベのようなロングライドには「耐パンク性重視」よりも「オールラウンド」タイプのタイヤを選ぶことが多いので(信号のたびにモッサリ感を味わうのが嫌)、S-LIGHTでブルベにも参加してみる予定です。恐らくは特に問題はないと思っていますが。

今後の使用で耐パンク性能・耐久性・ウェット性能を見ていくことになります。また追って詳しくレビューしたいと思います。

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著者情報

年齢: 38歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

 

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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