「自転車道 vol.1」のベアリング特集が面白い

この記事は約 7分で読めます。

八重洲出版「自転車道 vol.1」という本の中のベアリング特集が非常に面白かったので、内容をかいつまんでご紹介。

「そろそろBBにセラミックベアリングを使ってみようかな?」という方は是非一度読んでみてください。

目次

自転車道

この記事で取り上げるムック本「自転車道」について、まずは紹介。

概要

自転車道……という文字だけを見ると「サイクリングロード?」と勘違いしてしまいますが、剣道とか柔道の方の「道(Do)」の方の意味合いで付けられたタイトルです。

元々はサイクルスポーツ誌の連載企画であり、全30回に渡って掲載されました。

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その特集を2冊のムック本に纏めたのが「自転車道 vol.1」「自転車道 vol.2」です。

テーマ

連載では毎回テーマが設定され、その内容を深く掘り下げるという連載でした。

記事のテーマとなるのは「自転車の構成部品」。自転車雑誌でありがちな記事といえば、トレーニングとか走り方とか機材インプレです。その辺の話をあえて外し、自転車の構成部品について製造メーカーや専門家に詳細な話を聞いた内容が記事として構成されていました。

各ムックに収録されているテーマは以下のとおりです。

・自転車の物理を知る
・フレーム形状の謎に迫る
・ジオメトリーの謎に迫る
・美しい自転車とは
・カーボンの真実に迫る
・自転車色相学
・ベアリングの真実に迫る
・潤滑の謎に迫る
・カーボンフレームの作り方
・スチールチューブの作り方
・スチール素材の謎に迫る
・自転車の塗装を考える
・自転車ケーブルの秘密に迫る
・チタンフレームを知る旅

どれも相当マニアックなテーマです。一応、工学部出身の私的にはかなり興味深い話ばかり。毎号、食い入るように記事を読みました。

ただ、内容が専門的過ぎて一度読んだだけでは内容がさっぱり理解できないテーマもあったことも事実です。今回紹介する「ベアリングの真実に迫る」の記事も、最初に読んだ時はほとんど内容が理解できませんでした。

記事の著者

自転車道はほぼインタビューで構成されているので、インタビュアーという方が適切かもしれませんが、著者と書きます。

著者は、ライターの安井行生さん&吉本司さんです。

安井さんは工学部出身の自転車ライターで、インプレ記事を良く書いておられる方です。

安井さんのインプレは相当マニアックな所まで踏み込んだものが多いです。例えば、フレームはファイバースコープで内部を確認したりするし、ホイールのインプレをする際には基準となるクセのない私物ホイールで感覚をリセットするという力の入れよう。どう考えても仕事としてペイしないような労力を掛けてインプレを行う姿勢には、私もかなり影響を受けています。

吉本さんも同じく自転車ライター。連載「自転車道」の発案者です。

サイクルスポーツ誌では長らくライターとして活動されていましたが、「自転車道」企画の連載中にいきなり編集長に就任。2019年度を編集長として過ごし、現在はまたフリーの編集者・ライターに戻られています。

この二人が「”自転車そのもの”を考える骨っぽい記事をやりたい」ということで始まった企画が「自転車道」だったとのこと。よくぞ始めてくださいました。

読み直した感想

今回取り上げるベアリング特集が掲載された「自転車道 vol.1」は2020年7月発売。

発売直後に購入したのですが、今回はとあることが発端でベアリング特集を読み直すことになりました。

発端

ウィッシュボーンのBBのベアリングを打ち替えた、という内容の記事を書きました。

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やった内容としては、「元から入っていたセラミックベアリングを外し、鋼球の汎用ベアリングに交換した」というものになります。

この記事を書くにあたって、ベアリング会社に勤める知人二人(自転車乗り)から色々と話を聞きました。そこで話題に出たのがこの「自転車道」のベアリング特集です。

この特集、ベアリング会社に勤める人が読んでも楽しめる内容だというのです。と言っても、知識的な意味では彼らの持つ専門知識の中の入門編程度の内容しか含んでいないとは思いますが、「読み物として面白い」ということだと理解しました。

実は一度「ベアリング特集」を読んで、あまりの内容の難しさに挫折した私。しかし、ウィッシュボーンの記事を書くにあたって少しはベアリングに関する知識が増えていたので、「今なら読めるかもしれない」と思い、読み直してみることにしたのでした。

「そんな読むのに覚悟のいる記事なのか?」と思われるかもしれませんが、写真も文字も図表もぎっしりな高カロリーな記事が全40ページあります。なかなか読む側にも体力が要求される記事でした。

再読の感想

2日に分けて読みました。予想通り読むのは疲れましたが、非常に面白かったです。こんな密度の濃い特集が他に6テーマも入っているのだから、1980円という値段は格安ですね。

以前読んだ時は分からなかった用語が大体分かるようになっていて、なんとか読み進めることが出来ました。大手ベアリング製造会社であるNTNの技術者(自転車乗り)が語るベアリング論は必見です。

そして、この特集の中にはウィッシュボーンの記事を書く際に引っかかっていたことの答えが書かれていました

 

引っかかっていたことというのは、「果たしてセラミック球のベアリングから、あえて鋼球のシールベアリングに交換したのは正しかったのか」という点です。

傍目に見ればわざわざ性能を落としたようにしか見えないこの行動。耐久性を上げるためとは言え、ホントに良かったのかなぁ……と思っていたのですが、この特集を読んだことで全く問題のない行動だったという確信が得られました。

書いてあった内容はネタバレになるので書けませんが、これからセラミックベアリングを使ってみようと考えている方は是非このベアリング特集を読んでほしいです。そして、それから購入するかどうかの判断をしても遅くはないはずです。

あと、ベアリング特集には、各社(MAVIC・シマノ・カンパ)のBB・ハブ・プーリーのベアリング分解写真と重量測定結果が載っています。これだけでもこの本を買った価値がありました。わざわざBB-7900とBB-9000のサイズ違いのBB比較をやっているのが最高です。

まとめ

いやー、こんな素晴らしい本が手元にあったとは。買っておいて良かったです。

一つのテーマだけでも数日掛けて読むくらいエネルギーを使う濃い内容ですが、中身に興味があるとこれほど面白い記事も無いですね。

これを連載企画に起こした安井・吉本両名氏も凄いですし、30回に渡って掲載し続けたサイクルスポーツ誌も凄いです。やはり現状で一番古くからある自転車雑誌はやることが違います。

一つのテーマにかなりのページ数を使っているものの、恐らく各テーマの専門知識を持つ人から見れば入門編の内容に留まっていると思います。ただ、門外漢には知識が0→1になるだけでも大きいのです。

「自転車道」の連載は終わってしまいましたけど、サイクルスポーツ誌はこういった骨太な連載を是非またやって欲しいですね。読み手の知識欲を満たし、正しい知識を提供してくれるような記事を期待しています。

 

今回はベアリング特集のみのご紹介でしたが、他のテーマも非常に面白いです。「自転車という乗り物」の仕組みに興味がある方は是非この本を読んでみてください。

「自転車道」、本当に買う価値のある書籍でした。


ちなみに、安井さん&吉本さんコンビは会員制サイト「La route」で自転車道の続きのような記事も書いています。ネジの特集はなかなか面白かったですよ。実際、こちらのページを読むと、La routeで「自転車道」的なものををやろうとしているようです。

でもこの手の内容はWebよりも紙媒体の方が相性が良いと思うので、このタッグによる紙媒体の「自転車道リターンズ」を期待しています。

 

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著者情報

年齢: 36歳 (執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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