チェーンオイル(液体)の消防法上の分類一覧

  • 2021年11月27日
  • 2021年12月22日
  • コラム
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国内流通しているチェーンオイルの、消防法上の分類をまとめた一覧です。

まえがき

昨今、「空港の検査でチェーンオイルを没収された」という話を多く聞くようになりました。

法律上の基準は特に変わっていないはずですが、2021年の中盤あたりから検査が厳格になったようです。

チェーンオイルの大半は”危険物”

チェーンオイルの大半は石油由来であり、法律上の「危険物」に指定されているものが多くなっています。消防法の基準を満たさないチェーンオイルは飛行機には乗せられないため、没収となります。

ただ、全てが全て禁止というわけではなく、各航空会社が定める基準をクリアしているチェーンオイルであれば検査を通過することは可能です。

国内大手の基準

例えば、国内大手のANAは「ANA便で自転車をお預けになるお客様へ」というページが設けられており、そちらでは以下のように定められています。

■ 自転車のメンテナンス用品(スプレー)は、引火性ガス・毒性ガスを含まないものに限ります。
(潤滑油は、引火点60度を越えるものに限る。)

ここから読み取れるのは、「スプレー式のオイルは基本的に持ち込めない」「液体のオイルは引火点が60℃を超えていれば可」ということです。

あくまでこれはANAの基準であり、他社の基準がどうなっているかは個別に問合せていません。

ただ、国交省が配布しているPDF「危険物を航空輸送するために」においても禁止条件として以下のように記載があることから、他社も恐らく同じ扱いではないかと思われます。

引火点が60℃以下の液体
(例: 塗料、化粧品、香水、接着剤等)

やはり「引火点」が一つのキーワードになっているようですね。

SDS

もう一つ知っておきたいのが「SDS(安全データシート)」の存在です。

SDSについての説明を厚生労働省のサイトから引用します。

SDSとは、安全データシート(Safety Data Sheet)の略語です。
これは、化学物質および化学物質を含む混合物を譲渡または提供する際に、その化学物質の物理化学的性質や危険性・有害性及び取扱いに関する情報を化学物質等を譲渡または提供する相手方に提供するための文書です。

端的に言えば、「化学物質を含む製品の取り扱いについてメーカー側が発行するデータを纏めたシート」です。MSDSとも呼ばれます。

チェーンオイルには大抵このSDSが存在するはずで、メーカーによってはサイト上でダウンロードできるようになっています。そうでなくとも、問合せを行えば個別に送付してもらえるはずです。ただし、送付してもらうまでに1週間程度を要する場合もあるので、飛行機に乗ることが分かったらすぐに取得に動いたほうが良いでしょう。

昨今、空港の手荷物検査ではSDSの提示を求められるケースが増えているようです。

例え、そのチェーンオイルの引火点が航空会社の基準を満たしていたとしても、SDSが無ければ没収されてしまうケースもあるということです。

飛行機にチェーンオイルを持ち込むためには、「SDSを事前に入手する」「印刷して空港に持参する」方が確実ということになります。

第X石油類

チェーンオイルの大半は石油由来です(そうでないものもあります)。

消防法上では、石油由来の液体は「第四類(引火性液体)」という類別に属しますが、更にその中でも引火点によって「第X石油類」と分類されています。

以下に、その分類内容を示します。

第1石油類 引火点が21℃未満
第2石油類 引火点が21℃以上70℃未満
第3石油類 引火点が70℃以上200℃未満
第4石油類 引火点が200℃以上

国交省の示す引火点のボーダーラインは「60℃」なので、以下のように解釈できます。

・第1石油類 → 不可
・第2石油類 → 高確率で不可(引火点が61℃以上ならば可)
・第3石油類 → 可
・第4石油類 → 可

第3・4石油類と書かれていれば、「61℃以上」は必然的に満たすので、引火点の観点から言えばOKということになります。

ただ、その場合でもSDSが無いと没収されてしまった実例があります。SDSを印刷して持参しましょう。

小分け

ロングライダーはチェーンオイルを目薬容器などに移し替えて持っていることが多いものです。

ただこれも飛行機輪行の際には没収対象となる可能性が高いので注意してください。

例えSDSを持っていたとしても、その別容器の中身がSDSの対象製品であると確認できませんからね。疑わしきは没収……ということになると思います。

よって、「元々売っていた容器でそのままチェーンオイルを持参する」方がベターだと思われます。

小分け容器は別に持っておいて、渡航先で入れ替えると良いでしょう。PBPでフランスに行く際には、私はそうしていました。

チェーンオイルの分類一覧

国内流通している主要なチェーンオイルの消防法上の分類一覧です(最終更新日: 2021/12/22)。

※1: 「種目列」の背景色は、引火点的に持込可能かどうかを示しています
  凡例) 緑: ○、黄: △、赤: ×、白: 不明
※2: 「SDS」列には、SDSの入手方法を示しています。サイト上で配布されている場合には、配布URLにリンクしています。
※3: 本一覧で対象としているのは「液体」のチェーンオイルのみです。スプレーは対象外です。
※4: 本一覧で緑色としているチェーンオイルであっても確実に飛行機で預けられるとは限りません。最終的には現場判断です。

メーカー 製品名 類別 種目 危険等級 引火点 SDS
アイリス EXLUB 第四類(引火性液体) 第4石油類 III 200℃ 要メーカー問い合わせ
ヴィプロス Blue no 第四類(引火性液体) 第1石油類 II <21℃ 配布サイト
ヴィプロス W3 第四類(引火性液体) 第1石油類 II 不明 要メーカー問い合わせ
ヴィプロス De muon 第四類(引火性液体) 第4石油類 III 210℃ 配布サイト
ヴィプロス Keiten 第四類(引火性液体) 第4石油類 III 88℃ 配布サイト
ウェルドタイト ドライルブ 第四類(引火性液体) 第2石油類 II <23℃ 配布サイト
ウェルドタイト エクストリームウェットルブ 第四類(引火性液体) 第3石油類 III >100℃ 配布サイト
ウェルドタイト オールウェザールブ 第四類(引火性液体) 第3石油類 III >100℃ 配布サイト
ウェルドタイト ドライワックス 非該当 分類対象外 配布サイト
ウェルドタイト セラミックルブ 第四類(引火性液体) 第3石油類 III >100℃ 配布サイト
ウルフトゥース WT-1 第四類(引火性液体) 第4石油類 III >218℃ 配布サイト
エーゼット B1-001 マルチパーパス 第四類(引火性液体) 第4石油類 III >220℃ 要メーカー問い合わせ
エーゼット B1-002 ウォータープルーフ 指定可燃物 III >250℃ 要メーカー問い合わせ
エーゼット B1-003 クリーン 第四類(引火性液体) 第1石油類 II <21℃ 要メーカー問い合わせ
エーゼット B1-004 ロードレース 指定可燃物 >250℃ 要メーカー問い合わせ
エーゼット BIc-004 ロードレースSP 指定可燃物 >250℃ 要メーカー問い合わせ
エーゼット BIc-007 バンク 第四類(引火性液体) 第3石油類 III >110℃ 要メーカー問い合わせ
エーゼット BIc-010 フッ素オイル
非該当 データなし 要メーカー問い合わせ
エーゼット BIcS-001 マルチパーパスSP 第四類(引火性液体) 第4石油類 III >220℃ 要メーカー問い合わせ
エーゼット CKM-001 超極圧・水置換 第四類(引火性液体) 第1石油類 II <21℃ 要メーカー問い合わせ
エーゼット CKM-002 超極圧・極潤滑 第四類(引火性液体) 第4石油類 III >210℃ 要メーカー問い合わせ
クレ チェーンルブ ドライ 第四類(引火性液体) 第1石油類 II 不明 個人には提供しない
グロータック GT-OIL 第四類(引火性液体) 第4石油類 III >200℃ 配布サイト
グロータック GT-OIL HARD 第四類(引火性液体) 第4石油類 III >200℃ 配布サイト
シルコリン Dry Lube 非該当 分類対象外 配布サイト
シルコリン Everyday Lube 指定可燃物 300℃ 配布サイト
シルコリン Wet Lube 第四類(引火性液体) 第4石油類 III 201℃ 配布サイト
タクリーノ マホウ 第四類(引火性液体) 第3石油類 III 不明 要メーカー問い合わせ
ダブリューディー40 Bike Dry Chain Lubricant 第四類(引火性液体) 第1石油類 II -9℃ 配布サイト
ダブリューディー40 Bike Wet Chain Lubricant 第四類(引火性液体) 第3石油類 III 97℃ 配布サイト
ナスカルブ NASCALUB 第四類(引火性液体) 第4石油類 III 260℃ 配布サイト
フィニッシュライン 1-Step(黒青) 第四類(引火性液体) 第3石油類 III 96℃ 配布サイト
フィニッシュライン Ceramic Wax Chain Lube(白金青) 第四類(引火性液体) 第1石油類 II 18℃ 配布サイト
フィニッシュライン Ceramic Wet Chain Lube(白金緑) 第四類(引火性液体) 第4石油類 III >184℃ 配布サイト
フィニッシュライン Dry Lubricant(黒赤) 第四類(引火性液体) 第1石油類 II -9℃ 配布サイト
フィニッシュライン Wax Chain Lube(黒銀) 第四類(引火性液体) 第1石油類 II -9℃ 配布サイト
フィニッシュライン Wet Lubricant(黒緑) 第四類(引火性液体) 第4石油類 III >150℃ 配布サイト
ブリヂストン Green Drive 第四類(引火性液体) 第3石油類 III 不明 要メーカー問い合わせ
ベルハンマー LSベルハンマー原液 第四類(引火性液体) 第4石油類 III 208℃ 配布サイト
ボーシールド T-9 第四類(引火性液体) 第2石油類 III 49℃ 配布サイト
マックオフ C3 CERAMIC WET LUBE 第四類(引火性液体) 第3石油類 III >100℃ 要代理店問い合わせ
マックオフ LUDICROUS AF LUBE 第四類(引火性液体) 第3石油類 III >100℃ 要代理店問い合わせ
マックオフ HYDRODYNAMIC LUBE 第四類(引火性液体) 第3石油類 III >93℃ 要代理店問い合わせ
マックオフ C3 DRY CERAMIC LUBE 非該当 分類対象外 要代理店問い合わせ
マックオフ DRY LUBE 第四類(引火性液体) 第3石油類 III >93℃ 要代理店問い合わせ
マックオフ WET LUBE 第四類(引火性液体) 第3石油類 III >100℃ 要代理店問い合わせ
モーガンブルー Race Oil 第四類(引火性液体) 第4石油類 III 不明 要代理店問合せ
ライドオアシス De La Trail 第四類(引火性液体) 第3石油類 III 不明 要メーカー問合せ
ワコーズ チェーンルブリキッド エクストリーム 第四類(引火性液体) 第2石油類 III >62℃ 購入店を通して請求
ワコーズ チェーンルブリキッド スピード 第四類(引火性液体) 第2石油類 III >62℃ 購入店を通して請求
ワコーズ チェーンルブリキッド パワー 第四類(引火性液体) 第2石油類 III >62℃ 購入店を通して請求

まとめ

チェーンオイルの消防法上の分類を紹介しました。

私は危険物の専門家ではないので、誤っている点があればご指摘を歓迎致します。

また、一覧に未掲載のチェーンオイルの分類情報も募集しております。コメント専用記事にて情報をいただければ、上記一覧に追記致します。

 

分類は、大抵オイルのラベルシールに記載されています。


飛行機輪行でチェーンオイルを持ち運ぶ必要がある場合、以下のポイントに注意すると良いでしょう。

・引火点が61℃以上のチェーンオイルを選ぶ。
・チェーンオイルのSDSを取り寄せて印刷しておく。
・空港には、買ったままのチェーンオイル容器を持っていく(小分けにしない)。印刷したSDSも持参。
・SDSを求められたら提出をする。
ここまでやっても検査官によっては没収されてしまうこともありそうですが、サイクリスト側がこの対応を続ければ検査官側にも認識が浸透するのではないかと思います。

著者情報

年齢: 37歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。


この記事を書いた人
ばる
ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019年の2回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間13分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)