ロングライド時短法

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時間制限の存在するロングライドにおいて、無駄な時間を削るための考え方と方法を紹介します。

「速く走るための方法」については述べず、主に「無駄な停止時間を減らす方法」について述べます。具体的には「コンビニでの過ごし方」及び「信号停止の有効活用」が中心です。ただし、この方法は日本国内でしか使えないと思います。

※本稿は2015年3月に書いた文章を、2020年現在の状況に合わせて追記・訂正を行ったものです。

目次

はじめに

ロングライドの中には、ブルベやセンチュリーライド、キャノンボールと言った制限時間のあるものが存在します。多くの場合、時間制限は、無理のない程度に設定されていることが多いもの。

しかし、それでも制限時間ギリギリになってしまったり、間に合わなかったりという方がいると思います。そういった方が少しでも余裕を持って完走出来たり、制限時間に間に合ったりするためのキッカケとなれば良いと思い、そのための方法を纏めてみました。

なお、「トレーニングして速く走れ!」とか「パーツを良くしろ!」みたいな話は一切しません。能力(スキル)は今のままで、「短い時間で完走する」ための方法を紹介します。キーワードは「無駄な停止時間」です。

完走時間を短くするには

例えば、160kmを制限時間10時間以内に走るイベントがあったとします。

走行時間 + 停止時間 < 10時間

となれば、すなわち「完走」ということになります。多くの人は「走行時間」を減らせば良いと考え、「トレーニングして速度を上げるぞ!」「パーツを良くして効率を上げるぞ!」という解決策を導き出します。そのためには、普段からトレーニングと節制が必要です。

しかし、もう1つ方法があります。「停止時間」を減らせばよいのです。こちらは特にトレーニングを積む必要はありません(ある程度の慣れは必要です)。

例えば、とあるコンビニで、AさんとBさんが休憩したとします。Aさんは5分で出発し、Bさんは15分掛かって出発したとすると、Bさんは既にAさんよりも10分先の地点にいることになります。時速20kmでAさんが走行したとすれば、その距離は3.3kmとなります。この距離を、走行速度を上げて追いつくのは容易ではありません。

いわば「ウサギとカメ」の童話のように、「なるべく止まらず走り続けたほうが結果的に早い」ということなのです。

停止時間の内訳

では、停止時間はどのように生じているのでしょうか?

公道を走るロングライドにおける停止時間を大雑把に分類すると、以下の2つになると思います。

・信号停止時間
・休憩時間

信号停止時間に関しては、意図して減らすことは出来ません。こちらは時間を減らすのではなく、その停止時間を有効活用するアプローチが必要です。その方法については後述します。

休憩時間に関しては、意図して減らすことが可能です。休憩時間の内訳を考えてみると、以下のようになると思います。

・買い物
・トイレ
・食事
・ストレッチ、マッサージ等
・純粋な休憩
・睡眠

「睡眠」が入るのは、よほどの長距離の場合なので、今回は言及しません。また、筋肉や心肺機能を休めるための「純粋な休憩」についても、減らすと危険なので、こちらも減らす方法は考えません。その他の「買い物」「トイレ」「食事」「ストレッチ、マッサージ等」について、その時間を減らす方法を考えてみようと思います。

休憩時間の削減法

日本国内の場合、睡眠以外の休憩をまとめて行える便利な場所が存在します。「コンビニ」です。基本的に24時間営業であることが多く、昼夜を問わず変わらないサービスが提供されているため、ロングライドでは休憩場所の定番となっています。

もちろん、ファミレスやファストフード店で食事をしたり、スーパーマーケットで買い物をする人もいると思います。サポートの豊富なロングライドイベントでは、エイドステーションなどもあるはず。しかし、今回は一番多く使われるであろうコンビニに的を絞って時短法を述べます。

ただし、コンビニは割りと「時間泥棒」なところがあります。それを少しでも減らすための方法が以下です。

買い物時間を減らす

自転車の積載能力は有限です。そのため、補給食(飲み物・食べ物)を買う必要があります。

買い物の行程を考えると、以下のようになると思います。

・商品を選ぶ
・会計をする
・商品の受け取り

それぞれについて、時間を削減する方法を考えてみます。

商品を選ぶ

コンビニで商品を選ぶ際に、「店内を回って、なんとなく気になったものを買う」という方も多いと思います。しかし、それは「何を買うか悩む」「無駄に店内を歩きまわる」と言った無駄な時間を発生させています。

具体的に私が心がけているのは以下の2点です。

①買う物を入店前に決めておく
②入店後の動線を意識する

①は、「何を買うか悩む」時間を減らすための工夫です。自分の体の疲れ具合や、手持ちの補給食の状況から、買う物をあらかじめ走行中に考えておきます。「入店してから悩む」のではなく、「入店する前に決めておく」のです。

割りきって、「全てのコンビニで同じものを買う」のも手です。私の知人には、必ず「プリン2個」を買うという人もいます。

②は、「無駄に店内を歩きまわる」時間を減らす方法です。同じ箇所を行ったり来たりせず、入り口からレジまで一筆書きで辿り着くのが理想です。

コンビニの場合、チェーンごとの商品配置には一定の傾向があります。これは、一般的なお客さんの動線を意識してコンビニ側が配置を行っているからです。

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セブンイレブンの場合は以下の様な配置であることが多いです(ただし、2017年頃から異なるレイアウトの店も増えました)。

一例として、以下の商品を買うときの動線を考えてみます。

・即効元気(エナジーゼリー)
・ブラックサンダー
・メントス
・ポカリスエット
・薄皮あんぱん

この場合、私は大体このように動くと思います。

・栄養ドリンクコーナーで、即効元気
・お菓子コーナーで、ブラックサンダー・メントス
・飲み物コーナーで、ポカリスエット
・パンコーナーで、薄皮あんぱん

買いたいものを①の段階で決めておけば、動線は自ずと決まってきます。実際には同じチェーンでも店内配置や商品ラインナップが違うので、一筋縄では行きません。ただ、「どの辺りに何が置いてあるか」を意識するだけで買い物はかなりスムーズになります。

会計をする

商品を決めたら次に行うのが会計です。会計の時間削減で有効なのは、「現金で会計しないこと」です。具体的には、以下の方法が有効です。

①電子マネー(Edy, Suica等)を使う
②クレジットカードを使う

現金の場合、「適切な金額の小銭を自分が取り出す」「適切な金額のお釣りを店員が取る」といった時間が掛かります。たった数秒ですが、そういった時間を減らしていく意識が重要です。具体的な方法は以下のレビューを御覧下さい。

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商品の受け取り

最後に商品の受取です。

ここは結構悩ましい所です。「袋詰を断る」のはレジ袋を無駄にしないで済むし、袋詰の時間も省けるのですが。基本的には袋詰をしない場合はシールを貼られる事が多く、商品点数によっては袋詰よりも時間が掛かります。

私の場合は、「商品点数が2点以下なら袋詰を断る」「商品点数が3点以上なら袋詰してもらう」ことにしています。

以上が、買い物時間を減らす方法です。

トイレの時間を減らす

用を足している時間自体は減らすことが出来ませんが、コンビニのトイレで厄介なのが「待ち時間」です。コンビニのトイレは1器ないし2器程度しか設置されていないことが多いもの。場所や時間によってはトイレに行列ができている場合もあります。

こうしたことを避けるために、私は以下の方法を実践しています。

①チェックポイント以外のコンビニのトイレを使う
②トイレの数が多そうなコンビニを選ぶ

①は、ブルベや東京糸魚川ファストランといった、コンビニがチェックポイントとなっているイベントの場合の話です。チェックポイントは参加者が必ず立ち寄るので、トイレは必然的に行列が出来ます。そこで並ぶよりは、空いている他のコンビニで用を足したほうが早いというわけです。

②は、自分で自由に休憩場所を選ぶ際の話です。トイレの設置数は店舗ごとに異なりますが、店舗面積が広く、新しいコンビニほどトイレの数は多い傾向にあります。なるべく駐車場が多いコンビニの方がトイレの数も多いはずです。

食事時間を減らす

コンビニで買った食べ物を店先で食べている人も多いですが、そこにも無駄な時間が潜んでいます。私が意識しているのは以下の点です。

①走行中に食べられるものを買う

つまり、店先でボーっと食べ物を食べないということです。具体的には、「包装が開けやすく、片手で食べられるもの」を買います。チョコバーや薄皮あんぱん、一口羊羹が自転車乗りに好まれるのはこの辺りが大きいでしょう。

ただ、走行中に食べるのは怖いという人もいると思います。後述しますが、信号停止中に食べればよいのです。

ストレッチ・マッサージの時間を減らす

これも食事時間と同じです。コンビニの店先でやらず、信号停止中にやればOK。

ただし、信号停止中には出来ない類のマッサージやストレッチは、食事をしながら行うこともあります(お行儀は悪いですが……)。

コンビニに立ち寄る回数を減らす

ここまではコンビニに寄った際の時間削減法を述べましたが、それよりもコンビニに寄る回数自体を減らした方が削減効果は大きかったりします。取れるアプローチとしては以下の様な方法でしょうか。

①一箇所のコンビニでなるべく多くの補給食を買う
②自動販売機を活用する
③寄るコンビニをあらかじめ決めてしまう

①は、補給食を持てるだけ持って走ろうというもの。フロントバッグやリュックに沢山の補給食を入れて走る人もロングライド界隈では多く見かけます。以前はこの方法は使っていませんでしたが、意外とこちらの方が早かったりするので、フロントバッグに食べ物を沢山詰めて走ることもあります。

②は、道端の自動販売機を利用するもの。日本国内であれば、数キロ走れば飲み物の自動販売機があります。飲み物だけならば、コンビニよりも自動販売機の方が圧倒的に速いです。

③は、走行前にあらかじめ寄るコンビニを限定してしまう方法。行き当たりばったりで休憩するのではなく、計画的に休憩するということです。この辺りの話は以下に纏めたのでご参照下さい。

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信号停止時間の有効活用法

公道を走る上で、減らすことが出来ない停止時間が「信号停止」です。減らすことが出来ないなら、有効活用する方法を考えてみましょう。

具体的には、「コンビニで行っていたことの一部を信号停止で行う」のがコツです。単にボーっとしているのは勿体無いので、色々なことをやってみましょう。ただし、信号が青になった時のことを考えて、余裕を持って行動してください。

補給を行う

雑誌などのロングライド指南の記事では「走りながら水分補給しよう」とか「補給食を食べよう」と書いてあることも多いもの。しかし、それは怖いという人もいると思います。信号停止中であれば、割りと余裕を持って補給が出来るはずです。味気なくはありますが……。

ストレッチ・マッサージを行う

信号停止中はサドルから降りてお尻の開放、及び、ハンドルから手を離してブラブラさせるなど、身体を休ませます。首や肩のコリを取るために、マッサージを行ったりもします。

目の前の信号が赤信号の場合、私はおもむろに歩道に退避して、そこでストレッチを始めることもあります。

その他

「道を間違えずに走れているか?」「この先のルートはどうなっているか?」と言った、ルート確認を行うことも多いです。

ミスコースへの対策

停止時間ではないのですが、完走のために減らすべき時間がもう一つ存在します。それは「ミスコース」している時間です。

走るべきコースから外れ、本来とは違う方向に走っている時間は一番無駄で、しかも肉体的にも精神的にも疲れるもの。これも防がなくてはなりません。

特に、ブルベではミスコースをした場合、その場所まで一旦戻ってから復帰する必要があります。ショートカットしての復帰が許されないわけですね。ならば、最初からミスコースをしないように気をつける必要があります。

走る前の対策

まずはルートを予習することが大切です。

RWGPSやStrava等のルートを引けるサービスで走行予定のルートを実際に引いてみて、どんな交差点で曲がるのかを意識します。また、Googleのストリートビューを使えば、曲がる場所の風景も確認可能です。

走行中の対策

走行中の対策として有効な方法を挙げます。

① GPSサイコンやスマホによるナビゲーションを使用する
② 何かおかしいと思ったら一旦止まって地図を確認する
③ コンビニ停止時には、出発する方向に自転車のハンドルを向けておく
①は、もっとも現代的で王道な方法です。GPSサイコンに予め作成したルートデータを入れておき、ナビゲーションをする方法です。設定したルートから外れると警告音が出る設定に出来る機種もあります。
私が使っているeTrex30シリーズは、ルートから外れた場合の警告音は出せませんが、「設定したルートから離れている距離(Off course)」を表示させることが出来ます。この数字が10m以上になったらミスコースを疑うことにしています。

②は、迷子になりがちな人がよくやってしまう、「おかしいなと思いながら突き進む」ことへの対策です。青看板などを見て違和感を感じたら、まずは止まりましょう。間違っていたら来た道を戻る。ショートカットして戻ろうとしてはいけません。余計に迷います。

③は、コンビニから出る時に変な方向へ出発しないようにするための対策です。旅先でコンビニに入ると(特に角地にある場合)、出発時にどちらに行くか分からなくなる場合があります。厄介なのは、GPSでルートの軌跡に乗っていても、逆走しているケースが考えられることですね。

これを防ぐために、到着早々の駐輪時に「出発する方向に自転車のハンドルを向けておく」という対策が考えられます。習慣づけが必要にはなりますが……。

まとめ

以上、「無駄な停止時間を減らす」ための時短法(&ミスコースを減らす方法)について述べてきました。

コンビニや自動販売機が前提の話であるため、あまりにも郊外であったり、日本国外では使えない方法です。ただ、多くのロングライドイベントはこの方法で無駄な停止時間をかなり減らせるのではないかと思います。


今回は「完走時間を短くする」ということを主眼に書きましたが、無駄な停止時間の削減によって得られる効果はそれだけではありません。

例えば、無駄な停止時間を5分減らせたとすれば、5分遅く走っても良いことになります。つまり、ペースを落として走れる→走行自体に余裕が出るということになります。無理なペースで走って余裕を無くすよりも、無駄な停止時間を減らしたほうが結果的に安全であると私は考えています。

また、無駄な停止時間を削ることが出来れば、その分を他の楽しみに回すことも出来るでしょう。コース上にある名所を観光したり、グルメスポットで優雅に休憩することも出来るはずです。


ここまでに挙げたのは、あくまでも私の時短法です。他の人は他の方法を使っているかもしれません。「こんな方法があるよ!」という方は是非教えてほしいです。

なお、「あらかじめコンビニで買う物を決める」「商品配置を意識する」方法については、Audax埼玉の黒澤さんの方法を参考にさせて頂きました。

レビュアー情報

年齢: 35歳(レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

 

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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