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キャノボにおける持ち物の考え方
私見になりますが、キャノボにおいては「持ち物の引き算」が大切だと思っています。
つまり、いらないものは極力持たないということです。また、いるものも極力軽いものを選ぶ方が良いでしょう。
自転車のエンジンは自分であり、そのパワーは有限です。出来る限り軽いほうが楽に走ることが出来るのは間違いありません。
自転車本体には必ずしもそれは当てはまらないのですが(軽くしすぎると今度は進まなくなる)、その他の持ち物は出来うる限り軽くするべきだと考えています。
一方、絶対に持たなければいけない装備もあります。例えば、ライトやベル等の保安部品。これを付けないで公道を走ることは法律違反となります。また、お金も絶対に必要です。
必要なもの、そうでないもの。それをどうやって見極めるかを本記事では書いていこうと思います。
持ち物を減らす効果
一つ例を挙げましょう。
「雨が降るかもしれないから、雨具の上下を持っていこう」と考えたとします。重量は、上下で約600g程度が普通です。しかし、増えるのは600gだけでは済みません。それを入れるためのフロントバッグやサドルバッグが必要となります。これでまた300g程度がプラスされます。
このように、持ち物が増えると、それを入れるための場所もセットで増えます。そして、増えた持ち物は自転車の上半分に位置することが多いものです。
サドルバッグは言うに及ばず、フロントバッグやトップチューブバッグはいずれも地上から離れた場所に位置しています。こうした場所の重量が増えると、ダンシング時の自転車の振りが重くなるのは多くの方が経験していることだと思います。信号の多いキャノボではこの影響が小さくないのです。また、上側の重量が増えるとフラつきやすくなり、安定性も下がります。
最近はバイクパッキングがロングライド界隈にも持ち込まれ、ロードバイクでもかなりの量の荷物を積載できるようになりました。ブルベのペースであればこういった物を使って多くのトラブルに備える側に振るのも良いのですが、速いペースの要求されるキャノボでは、「それが本当に必要か?」をよく考えるべきです。
一つ一つの荷物の重量は小さいですが、塵も積もれば山となるもの。必要ないものを削っていった際の走行性能の向上は、決して小さくないはずです。
持たなくても良いもの
サイクリング中の持ち物は、基本的にトラブルに対処するためのものです。想定されるトラブルが少なければ、それだけ持ち物が減るということです。
ポイント1: 決行日時を選べる
他のカテゴリでも書いていますが、キャノボの大きな特徴は「決行日時を自分で選べる」ということ。ここがブルベ等の他のロングライドイベントと決定的に異なります。
日時を選ぶことで減らせる荷物といえば「雨具」です。
雨具は重量の割にかさばるため、それを入れるための入れ物(サドルバッグ・フレームバッグ・ツールケース)が必要になり、自転車全体で見ると大幅に持ち物が増えます。
また、雨具は空気抵抗が増えるのでスピードを保つためのパワーが一層必要となります。制限時間の厳しいキャノボでは雨具を着るシチュエーションに身を置くことはそもそも悪手なのです。
せっかく日時が選べるのですから、なるべく降水確率の低い日を選びましょう。そうすれば雨具を持つ必要もありません。
ただ、にわか雨が心配な人は防寒を兼ねる薄手のレインジャケットを一枚持っておくのは良いと思います。箱根や鈴鹿と言った高所は言うまでもなく、昼夜の寒暖差もありますので。本格的な雨具(GORE-TEXなど)が必要とされる天気の場合はそもそもキャノボをするべき日ではありません。
私が晴れ予報だけどちょっと心配な日に持つのが、カペルミュールのクリアレインジャケット。100g以下と軽量、更に伸縮性があってバタつきにくいのが特徴です。メッシュの通気穴が設けられているので防水性は低いのですが、にわか雨程度なら凌ぐことが出来ます。
ポイント2: トラブルに対する割り切り
決行日時と同じくらい強調したいのが、「遭遇率の低い/深刻なトラブルに備えた持ち物は持たない」ということです。
キャノボはとにかく時間がありません。制限時間中に対処できるメカトラブルは、せいぜいパンク1~2回まで。それ以上のトラブルが起きてしまったら、さっさとリタイヤして次回に備える、または時間外完走を目的に切り替えるべきだと思っています。幸い、キャノボルートは常に線路の近くを通っていますし、5km以上駅から離れるところは稀です。お金と輪行袋さえあれば、行き倒れることはまずありません。
私は初のキャノボ挑戦の際に豊橋でスポークが折れてリタイヤした経験があります。リタイヤ直後は「予備スポークを持ち歩いていれば」と思っていましたが、今になって考えてみると素直にリタイヤして正解だったと思っています。予備スポークがあっても、近くにショップがあるとは限りませんし、完組ホイールのスポークトラブルがすぐに直るとは限らないからです。
この経験以降、私は年に1回はホイールの振れやスポークテンションをショップで確認してもらうようになりました。メカトラに関しては「壊れた時のため」を考えるよりも、「挑戦中に壊れないようにする」ことを考えたほうが良いでしょう。キャノボに限らず、大事なライドの前にはショップで一通りの点検(タイヤの摩耗・ワイヤーの劣化等)をしてもらうと安心して走れると思います。
また、人によって「深刻なトラブル」の程度は異なります。
「2回まではパンクしても達成できる」と思う人もいれば、「1回でもパンクしたら諦める」という人もいるでしょう。スポークが折れても、手組だし15分あれば自分で直せる人もいるかもしれません。大事なのは、事前に「ここまでのトラブルが出たら諦める」というラインを決めておくことです。トラブルのシミュレートを行っておくことで、いざトラブルが起きても取り乱さなくて済むはずです。
実は、「持ち物を減らす」と言うのはそれ自体が目的ではなく、このトラブルのシミュレートを行った結果なのです。ちゃんとシミュレートしていれば、持ち物は自ずと厳選されてくるもの。過去のキャノボ達成者の装備を写真で見ると「軽装すぎる」と感じる人もいると思いますが、あれはその人なりの研究の成果ということですね。
ポイント3: ゴール後の着替えは持たない
最後に、「着替え」です。ゴール後の着替えを持って走る方はいないかもしれませんが、念のため。
こうしたものは、ゴール地点近くの郵便局に対して局留めにするか、宿泊予定のホテル(ゴールが自宅に近ければ自宅)に送ってしまうのが定石です。着替えに限らず、走行中に使わないもの(コンセントを使う充電器など)は持って走らないのが原則です。大体、スタートの半日前に送れば、24時間でゴールしたとしても荷物が先に到着しています。
絶対に必要なもの
逆に、キャノボで必要なものを考えてみます。
既に書いてはいますが、私が考える必須の持ち物は以下です。
・輪行袋
・お金(現金、クレジットカード)
究極的にはこれだけあればよいと思います。ボトルはペットボトル運用にすれば必要ないですし、パンク修理用具も諦める人には必要ないでしょう。前述のように、せいぜい5㎞も歩けば輪行出来るのがキャノボの良い所です。
保安部品
保安部品は言うまでもありません。公道を走るのだから絶対に必要です。
輪行袋
輪行袋については議論が分かれるかもしれません。
「退路を断つために持たない!」という人もいますが、私的には時代に合わない考えだと感じます。一昔前だとゴミ袋輪行でも見逃されてはいましたが、今はそうはいかないからです。リタイヤ時に輪行袋を買うにしても、都合よく近くにスポーツ自転車店があるとも限りません。
「ロードサービス付きの保険に入っているから大丈夫!」という人もいますが、ロードサービスは呼んだ場所から最寄りの駅までしか運んでくれません(しかも規約上は自転車のみしか運んでくれません)。駅から家まで帰るには輪行袋が必要です。
最近は軽くて小さな輪行袋も増えてきています。私は「リタイヤする気は無いが、もしもの時のために輪行袋を持つ」場合には、以下の製品を使用しています。
この製品は2018年現在商品として流通している中では最軽量で、200gを切ります。
パッキングにクセがあるので、実際にライドに持ち出す前に一度パッキングのテストをしておいた方が良いです。自主制作界隈では、更に軽い輪行袋もありますので、気になる方は調べてみてください。
また、オーストリッチからも超軽量でコンパクトな輪行袋が発売されています。
お金
最後にお金。
これがあれば最終的には何とでもなります。出来れば現金とクレジットカードの両方を持っておくと良いと思います。
キャノボでは中々無いことですが、自走不能になってしまって最寄駅まで歩けないような距離であった場合のタクシー代等、支払が高額になるケースが考えられるためです。
持っていたほうが良いもの
「絶対に必要なもの」の他に持つべきものは、人によって異なります。前述の「ここまでのトラブルが出たら諦める」のライン内のトラブルに対処できるだけの物を持てばよいでしょう。
基準となるのは、自身の過去のトラブル経験です。そこから、必要性の可否を考えて持ち物を選んでみてください。
ポイントは、「迷ったら持たない」です。迷うということは、自身の中で起きる可能性が低いと考えているトラブルに対処するためのものであるということです。そうしたトラブルが起きてしまったら、運が悪かったと思ってリタイヤし、次の挑戦に切り替えたほうが良いでしょう。