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Mageneがセミワイヤレス変速システムを発表
中国のMageneがセミワイヤレス変速システム「QED」を発表しました。ちょっと気になるので内容を調べてみました。
まえがき
5/5~8まで上海で開催された展示会「China International Bicycle Fair 2024(上海ショー)」にて、Mageneがセミワイヤレス変速システムを発表しました。
下記動画の0:28~2:00あたりまででMageneの製品が紹介されています。
増える(セミ)ワイヤレス変速システム
近年、ロードバイク用のワイヤレス変速システムが急激に選択肢を増やしています。
主なブランドを挙げると以下の通り。
ブランド | 製品名 | 方式 |
---|---|---|
SRAM | eTap | ワイヤレス |
FSA | K-FORCE WE | セミワイヤレス |
SHIMANO | Di2 (R9200/R8100/R7100) | セミワイヤレス |
Campagnolo | SUPER RECORD WIRELESS | ワイヤレス |
L-TWOO | eRX | ワイヤレス |
WheelTop | EDS | ワイヤレス |
そこに新たに名を連ねようとしているのがMageneというわけです。
Mageneについて
Mageneは中国のメーカーですが、日本のグロータックが代理店となっていくつかの製品が既に国内でも販売されています。
代表的な製品はクランク式パワーメーター。日本では「PES-P505」という製品しか販売されていませんが、実は本国には「QED-P505」という製品も存在しています。
今回の上海ショーで出展されていたワイヤレス変速システムもQED。恐らく、Mageneとしては「QED」というシリーズ名でロード用コンポーネントを一通り揃えるつもりなのでしょう。今回のワイヤレス変速システムを加えれば、あとはブレーキ・スプロケット・チェーンでコンポーネント一式が揃います。
とはいえ、まだ業者向けの展示会で発表されただけ。Mageneの中国公式サイトにも一切ワイヤレス変速システムへの言及はありません。
しかし、先に挙げた動画を見ると既にそれなりの完成度には達していそうです。
ここ最近のサードパーティーによるワイヤレス変速システムの盛り上がりには非常に興味があるので、現状手に入る情報を紹介してみることにしました。
Mageneのセミワイヤレス変速システム
現状の情報ソースは先に挙げた動画と、その動画の作成者の方が自ら書いたと思われる記事くらい。あとは、上海ショーに行ってらっしゃったYOELEOの輸入代理店の社長さんのツイートくらいでしょうか。
情報は少ないですが、Mageneのセミワイヤレス変速システムについて現在分かっている情報を紹介します。
製品名
製品に刻印されたロゴを見る限り、「QED」というシリーズ名ではありそうです。
先に紹介した通り、既にこの名前が付いたクランク型パワーメーターがあるので、コンポーネントを一通り作ろうとしているのだと思います。
ちなみに、QEDは「証明終了」という意味です。昔、そういう名前の漫画がありましたね。
システム方式
現在、ワイヤレス変速システムは大きく分けて2つの方式があります。
リヤディレイラーとフロントディレイラーが完全に独立している「(完全)ワイヤレス」方式と、リヤディレイラーとフロントディレイラーが共通のバッテリーを使用する「セミワイヤレス」方式。前者の代表はeTap、後者の代表はDi2です。
Magene(マージーン)が電動コンポ発表してました!
— きのぴー@J.ROAD(ジェイロード) (@muxia0327) May 6, 2024
シマノのようにバッテリーをシートポストの下に入れるセミワイヤレスです🚵
変速具合はこんな感じです✨ pic.twitter.com/QM1g2LySNc
Mageneのシステムは「セミワイヤレス」方式のようです。
ブリフターには3つずつボタンがあるようで、人差し指で操作する2つのボタン(ブレーキレバーと並んだ場所にある)と、親指側に追加ボタンがあるとのこと。それぞれのボタンにはアプリを通じて好きな機能を割り当てられるようです。
レバー形状はシマノの105に似ています。
対応ブレーキシステム
先の動画を見ると、以下のようにコメントされています。
Magene のこのワイヤレスシフティング グループセットには、油圧ディスクブレーキバージョンと、すべてのリムブレーキファン向けのリムブレーキバージョンの両方がリリースされます。
Panda Podiumより
「リムブレーキバージョン」というのは、ワイヤー式ブレーキに対応したものと解釈できます。これは朗報ですね。
シマノもカンパもワイヤレス変速システムは油圧のみしか販売していません。ワイヤーで引くメカニカルディスクを使っている私としてはリムブレーキバージョンを出してくれるブランドを歓迎します。
変速性能
上海ショーに実際に行かれたらしい、きのぴーさん(YOELEO代理店の方)が挙げている動画で変速の様子を確認できます。
Magene(マージーン)が電動コンポ発表してました!
— きのぴー@J.ROAD(ジェイロード) (@muxia0327) May 6, 2024
シマノのようにバッテリーをシートポストの下に入れるセミワイヤレスです🚵
変速具合はこんな感じです✨ pic.twitter.com/QM1g2LySNc
リヤもフロントもなかなかの速さに見えます。WheelTopのEDSのフロント変速が中々のゆっくりさだったのでそう感じるのかもしれませんが……
ただ、動画を見るとチェーンリングはMageneの自社製のものを使っているように見えます。自社のものであれば特化できるわけで、サードパーティーのチェーンリングを使うことが前提のEDSを比較するのはちょっと酷かもしれません。
Mageneのシステムが「自社ドライブトレイン特化」なのか、「サードパーティー前提」なのかは分かりませんが、少なくとも自社ドライブトレインにおける性能は出ているように見えます。
重量
動画をくまなく確認しましたが、レバー重量の話は出てきませんでした。個人的にはそこが重要なんですが。
日本で販売されるのか?
動画の中では、以下のようにコメントされています。
このグループセットは今年中国で発売されるようですが、西側では来年まで発売されません。
Panda Podiumより
「西側」に日本が含まれるかは謎ですが、国内で年内の発売はなさそうに見えますね。
前述の通り、日本ではグロータックがMageneの代理店を務めています。ならばグロータックがこのワイヤレス変速システムを輸入してくれるのだろう……と思ってしまうのですが、今回はちょっと特殊な事情があります。
この「変速システム」って、グロータックが推し進める「EQUALコンセプト」と少なからず競合するところがあるのではないか、と。
こちらの記事の中で、木村社長は「次はディレイラーを作る」と言っています。ブレーキは既にあり、レバーは先日発売されたばかり。グロータックもコンポーネントメーカーとしての方向性を打ち出してきたわけですね。
そういった状況にある中で、代理店をしているとは言え、他社のコンポーネントを取り扱うのか? 私見ですが、ちょっと微妙な気はします。実際、Mageneはスマートローラー台や完組ホイールを販売していますが、日本には輸入されていません。
グロータックはMageneの国内総代理店というわけでもなさそうなので、別の代理店が付けばそちら経由で入ってくる可能性はあるでしょう。
もう一つの問題は「技適」です。
先日、WheelTopの試乗会でホダカのスタッフの方に話を聞きましたが、中々ワイヤレス機器の技適取得には手間と時間がかかるんだそうで。
とはいえ、既にグロータックはレーダーテールライト等の技適認証が必要な製品を販売しているので、そこは問題ないのだと思いますが。このレーダーテールライトにも技適マークがしっかり入ってます。
また、グロータックが取り扱うか以前に、ちゃんと発売されるのかも気になるところ。ワイヤレス変速システムは特許問題をよく聞くので、「やっぱり権利的に出せませんでした」という可能性も無くはありません。
まとめ
Mageneのセミワイヤレス変速システムが発表された話を紹介しました。
当サイトでは基本的に自分で買ったもの or 試したものの記事を書くようにしていて時事ネタには可能な限り言及はしないようにしています。ただ、今回は久々に興味深い新製品だったもので取り上げてみました。リムブレーキ用を用意してきた点が良いです。
果たして発売にこぎつけられるのか? 日本で販売されるのか? 今後の動向に注目します。
著者情報
年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。