この記事は約 15分で読めます。
Magicshine RN3000 ファーストインプレッション
Magicshineの新作ライト「RN3000」のモニターレビューを担当することになりました。
製品紹介と、購入直後のファーストインプレッションを書いていきます。
Magicshine RN3000
今回の記事で取り上げるのは以下の製品です。
OLIGHTとコラボレーションをしている自転車ライト専業メーカー「Magicshine」の新作ライトになります。
本製品はMagicshineより製品提供を受けており、モニターとしてレビューをフィードバックすることになっています。
モニターをする経緯
先日、RN3000とより少し前に発売されたMagicshineの新作ライト「RAY2600」についての記事を書きました。
こちらの記事をMagicshineの社員の方が目にしたらしく、「是非、RN3000もテストしてフィードバックして欲しい」とのご依頼を頂きました。
RN3000は正直かなり大きい&重いということもあり、「あまりうちのサイトでは良い評価にはならないと思いますが大丈夫ですか?」とは聞きました。これに対し、Magicshine側は「今後の研究開発・改善に非常に役立っておりますので、客観的に評価していただきたい。」との回答。
「それならば」と受諾することにしました。
RN3000の公称スペック
RN3000は、その名前の通り「RN1500 × 2」と言った感じのスペックとなっています。
横に並べてみるとよく分かりますね。レンズ・リフレクターの形もよく似ています(少しだけレンズの形は異なる)。
RN1500はOLIGHTの製品ですが、製造はMagicshineが担当。ある意味、RN3000とは兄弟機であるとも言えます。
スペックを比較してみましょう。
OLIGHT RN1500 | Magicshine RN3000 | Magicshine RAY2600 | |
重量 | 172g | 279g | 190g |
横幅 | 30mm | 48.5mm | 44.9mm |
電池 | 21700電池(5000mAh) × 1本 |
21700電池(5000mAh) × 2本 |
18650電池(3350mAh) × 2本 |
電池容量 | 3.6V / 5000mAh | 3.6V / 10000mAh | 3.6V / 6700mAh |
LED数 | 1個 | 2個 | 2個 |
幅と重量こそ倍にはなっていませんが、電池はRN1500の電池相当のものを2本積んでいます。LEDの数も2倍。同じく2LEDのRAY2600と比べると、RN3000のほうが一回り大きいと言ったサイズ感です。
RN3000の特徴は、LEDが2灯になっていること。片側ずつ点灯することも出来ますし、両側同時点灯することも出来ます。RN1500よりも横方向に広範囲を照らせるはずです。
RAY2600とは異なり、左右のLEDは同一のものを使用。レンズもリフレクターも左右で同じ。単純に横方向の照射範囲を増やすことを目的にしているようです。
2灯モードで常用できそうなのは300ルーメン。点灯時間は、驚異の31.5時間。長過ぎる。31.5時間も点灯可能となると、1000kmブルベを充電なしで乗り切れる計算になります。凄まじい。
とはいえ、同じ300ルーメンで照射範囲を広くしたら、照らされる範囲の明るさは若干落ちてしまうのですが。割り切って750ルーメンモードを使うのもありかもしれません。それでも13時間半も持ちますからね。
たとえ電池切れになっても、TypeC端子での高速充電に対応しているので、3時間半で充電が完了します。
ファーストインプレッション
室内でのテスト(ランタイム・照度変化)を実施した後、40km程度の夜間走行を行った結果のファーストインプレッションを書いていきます。
装丁
前回同様、送付から5日ほどで手元に届きました。箱のサイズはRAY2600より少しだけ幅も高さも大きいですね。
箱の大きさが少し大きいことを除けば、RAY2600やRN1500と同様の梱包です。付属品も同じ。特に目新しいものは入ってなかったです。なぜか乾燥剤が入っていたのは唯一新しかったことかも。
重量
公称279gで実測281g。重量級です。
RN1500が166gなので、およそ1.8倍。Volt800が135gなので、およそ2倍。かなりズッシリ来ます。
これだけ重いとハンドリングにも影響が出るはずですが、それよりも心配なのはライトブラケットが耐えきれるか?ということです。
本製品を始め、MagicshineのライトはGarmin互換のマウント方式を採用しています。Garminのサイコンの中で一番重いのはEdge1030で、約150g。このマウント方式で想定されている重量って、その辺りが上限だと思います。
RN1500は166gなのでギリギリセーフだとしても、RN3000の281gはさすがに重すぎる気がします。
これまでも2000~3000ルーメンのライトはありましたが(上の写真はMONTEER 5000という製品)、いずれもバッテリーパックは別体。Garminマウントに取り付けるライト部分は100~150g程度だったのです。
10000mAhものバッテリーをライトに内蔵したRN3000の重量は281g。これまで最重量だったALLTY2000が183gなので、一気に100gも重くなります。「さすがにこれは問題が出るだろう」と、使う前から予想していました。
案の定、問題は出たのですが、詳しくは「安定性」の章で述べます。
ちなみに、本製品の仮想ライバルと思われる、「CATEYE Volt1700」の重量は256g。大きさ・重量ともにだいたい同じです。Volt1700は横幅56mmなので、若干RN3000のほうがコンパクトですね。
大きさ
左から、RN1500・RAY2600・RN3000。三兄弟的な感じですね。さすがにRN3000は大きな電池を2本積んでいるだけあって、横幅も大きいです。
RN1500とRN3000は21700電池ですが、RAY2600は18650電池。18650電池のほうが少し短いので、ライトの縦サイズも少し短くなっています。
ちなみに、18650電池は「直径18mmで長さ65mmの電池」で、21700電池は「直径21mmで長さ70mmの電池」です。単純に太さと長さで記載されてます。
あまりにも幅が大きく、ハンドル上に付けるとサイクルコンピューターと干渉するため、エアロバーの先端のライト用スペースにRN3000を取り付けました。
ロック機能
RN1200、RAY2600と同様に、RN3000にもスイッチのロック機能が搭載されています。
目的は、誤作動の防止。ライトをカバン等に入れた際に、発熱・発火した事例があったことから取り入れられた機能です。
なるほど、こういう挙動か。
・スイッチオフ状態から5秒長押しでロック
・ロック中にスイッチを押しても起動しない(赤ランプ点滅)
・ロック中に5秒長押しでロック解除 pic.twitter.com/nBNGy9inW7— ばる (@barubaru24) July 9, 2021
「ライトをカバンに入れることなんてあるのか?」と思いましたが、RNシリーズはモバイルバッテリーとしても使えるわけで、そうした用途で使う場合に誤作動は起こりうるようです。
注意したいのは、「RN3000は、商品出荷時にロック機能がオンになっている」という点。輸送中の発火を防ぐための措置だと思われます。
私はロック機能の存在を知っていたから解除出来ましたが、多くの人は「ライトが点かない?不良品か?」と思ってしまうでしょう。マニュアルにも記載はあるのですが、分かりにくいんですよね。
最初の点灯時は、「5秒間スイッチを長押しして、ロック機能をオフにする」事を忘れないでください。
操作
複雑極まるRAY2600よりは操作が単純ですが、RN1500よりは複雑です。
ボタンは1つで、長押しして点灯後は以下のように操作します。
ローモード→ミドルモード→ハイモードの順に切り替わる。
・ダブルクリック: 点灯モードを変更
右1灯点灯→左1灯点灯→2灯点灯→点滅の順に切り替わる。
配光
レンズのカットがよく似ていることもあり、RN1500やRN1200の配光に似ています。ただし、横に2灯が並ぶため、照射範囲の横幅は広めになります。
RN3000 vs RN1200
夜の多摩サイでライトの比較テスト。カメラはマニュアルモードで撮影しており、絞り・シャッタースピード・ISO感度は揃えています。
RN1200に比べて、RN3000のほうが照射範囲の幅が広く、ワイドに地面を照らせることが分かります。
RN3000 (1灯と2灯の比較)
1灯モードと2灯モードの比較もしておきます。1灯モードは右側のLEDだけを点灯したモードです。画面の左側があまり照らせていませんね。2灯モードになると、左右を広く照らせていることが分かります。
RN3000 (2灯での明るさ比較)
最後に、2灯モードで明るさを変更した時の比較画像。1500ルーメンモードと3000ルーメンモードの差があまり分からないんですよね……。照度を計測すると、3000ルーメンのモードは1500ルーメンの1.3倍程度しか出ていないので、2000ルーメン程度ではないかと推測します。
他の点灯モードでも比較用の写真を撮影しましたが、全部の写真を貼ると記事の読み込みが遅くなりそうなので、ZIPファイルに纏めてアップしておきます。興味がある方はZIPファイルを落として画像を確認してください。→ RN3000_light_test.zip
ランタイム
当サイトでは定番となっている、ランタイム(連続点灯)テストを今回も実施しました。
あまり明るいモードだと燃える可能性があるので(温度制御回路が入ったらしいですが)、「2灯・300ルーメン」モードでテストを実施します。
結果は以下でした。
→インジケータが赤に(残20%)。
・33時間01分
→インジケータが赤点滅に(残10%)。
・33時間13分
→消灯。
300ルーメンのモードでの公称ランタイムは31時間30分なので、ほぼ公称通り。33時間も点灯できてしまうとは驚きです。1000kmブルベはこれ1本で行けてしまいますね。
他のモードのランタイムは発熱が怖くて計測していませんが、これならば公称値は信頼が置けそうです。
明るさ
さて、ランタイムは公称通りでしたが、明るさはどうでしょうか?
こちらも恒例の、照度計を用いた最大照度計測テストを実施しました。対象としたモードは、ランタイムテストと同じく、「2灯・300ルーメン」モードです。
結論から言うと、「点灯開始から30分で最初の50%の照度まで徐々に暗くなり、その後は5~60%の照度をずっと維持する」という結果になりました。つまり、「最初は300ルーメンで点灯しているものの、30分後以降は150~180ルーメンクラスまで暗くなる」と言えます。ちょっとこれは困りますね。
で、この動きはRN1200の動きと全く同じなんです。
グラフで表すとこんな感じ。横軸が15時間ではなく33時間になりますが、グラフの形はこうなるはずです。
ユーザーとしては、300ルーメンのモードでは300ルーメンの明るさを期待しているわけで、無断で明るさが半分になるのはちょっと困ります。ちなみにRAY2600も連続点灯時には明るさが少し落ちますが、それでも最初の90%を維持します。ユーザー的にはこちらのほうが有り難いでしょう。
「5~60%まで明るさが落ちて維持される」のが意図的な動作なのか、それとも何らかの理由で偶発的に発生した動作なのかは不明です。
発火防止のために、ロック機能とともに温度監視回路が追加されたらしい記載がありましたが、それが悪さをしているのかもしれません(温度を維持するために電流量を絞っているとか?)。
仮にRN1500と同じLEDを使っているとすれば、300ルーメンをずっと続けた場合のランタイムはRN1500の2倍(電池容量が2倍なので)、つまり25時間程度になるはず。33時間持つというのは、ちょっと不自然なんですよね。
RN1500より高グレードのLEDを使っているならば33時間のランタイムもありえない話ではないのですが、実際には暗くなることでランタイムが伸びていたようです。
「スペック詐欺だ!」と思う人もおられるかもしれませんが、実はライトの規格上は、全く問題がありません。Magicshineのライトは「ANSI FL1」という規格に沿った性能表記をしていますが、ANSI FL1では以下のように定義されています。
(ランタイムの測定)
照射開始30秒後の出力を100%とし、出力が10%に到達するまでの時間。(最大光度の測定)
照度測定器を用いて、最大値を記録する。
測定は、点灯30秒後から2分経過するまで行われる。
つまり、明るさが最初の10%(30ルーメン)になるまでをライトのランタイムと主張できるのがANSI FL1のルール。
とはいえ、ユーザーにとっては、途中で暗くなるライトというのはあまり嬉しくないもの。ちゃんと明るさを維持する工夫をしてほしいです。
安定性
危惧していた安定性ですが、やはり問題が出ました。
まず、路面の小さな段差でも光軸が揺れます。マウントがライトの重さを支えきれておらず、振動してしまうのでしょう。
次にこの画像を見てください。
路面が荒れた道を走行した所、ライトが水平より上を向いてしまいました。
最初はこの角度でした。しかし、ライトの後ろ側が重すぎて、振動で徐々に後ろ側に傾いたようです。Garminマウントの部分が壊れると予想していましたが、マウントを取り付けるバンドがこのライトの重さに耐えきれなかったわけですね。
私のネジの締め込みが足りなかったのではないか?と思いましたが、ネジを強く締め込むとベルトが張力に耐えきれず、突起部分が取れてしまいます。
つまり、この純正ブラケットではRN3000を正しくハンドルに固定することは不可能です。重量級のライトを発売するならば、十分な強度を持ったブラケットに刷新してほしかったですね。
そこで、ゆるふわーくすさんのGarmin用マウント+フレックスタイトブラケットを使ってみることに。
これであれば、ライトが上を向くことはありませんでした。ただ、今度はGarminマウント部分が破損する可能性があります。先述の通り、Garminマウントは150g程度までしか想定されてないはずなので。ライト側の爪が折れるかもしれません。
RN3000ほどの重量があるライトをGarminマウント互換のブラケットで取り付けることは難しいですね。やはり、もっと丈夫なブラケットを開発するべきだったと思います。
充電
TypeC端子での充電に対応しています。
USB-PDでの充電を実施。テスターで調べた所、12V/2Aで充電されていました。RN1500は5V/2Aだったので、かなり爆速で充電されます。
製品の表記を見ると、「5V/3.0A」「9V/2.0A」のはずなんですが……テスターの値は「12V/2A」。謎です。
充電時間は公称2時間半のところ、実測では2時間20分程度でした。10000mAhもあるのに、この充電時間の早さは驚きです。
給電機能
TypeCのケーブルを利用することで、USB PDを用いたスマホ等への給電が可能となっています。
10000mAhもあるわけで、モバイルバッテリーとしても重宝しそう。ただし、ポケット等に入れる際にはロック機能をオンにすることを忘れずに。ポケットの中で発火したら怖いですからね。
リモートスイッチ
RAY2600で導入されたリモートスイッチですが、RN3000には対応していませんでした。
まとめ
いろいろな意味で「Big」なライト。
電池容量が大きいので、大光量で長時間の点灯が可能となっています。実用的な明るさで33時間の点灯は驚異的と言えるでしょう。また、2灯のLEDを並列で搭載しているため、横方向の照射範囲が広いのも特徴です。
ただ、難点も多かったですね。
まず、ライトの重量が重すぎて、ブラケットが支えきれていません。もっと丈夫なブラケットを用意するべきでした。
そして、明るさが落ちるのは頂けません。300ルーメンのモードであると主張するならば、300ルーメンを出来るだけ長く維持するようにしてほしいものです。
「150~180ルーメンで十分!33時間持つほうが大事!」という方にはオススメできます。Volt1700ですら、200ルーメンで15時間ですからね。それよりやや暗いだけで2倍の時間持つライトは有用だと感じる人も多いはず。
個人的には、RN3000を1本持つよりも、RN1500を2本持つ構成の方が便利だと思いました。
総重量こそ増えますが、どちらか片方が壊れても、片方は使えますし。そういった冗長性はロングライドでは大事なので。
ただ、充電時間の面ではRN3000の圧勝です。USB PDの急速充電に対応しているのは大きいですね。電源コンセントが一箇所しか開いていない場合でも、RN3000は2時間半で10000mAhも充電出来ます。
もう少しテストをして、更に本格的なレビューを書く予定ではあります。
ただ、このライトの重量を支えきれるマウントを探すことが難しそうです。「ゆるふわーくす」さんが強化版のGarminマウントを作っているそうなので、そちらに期待するしか無いですかね。
出来ることならばMagicshineさんから純正のブラケットの改良版を出してほしいところではありますが、Garminマウントを捨てない限りはRN3000を支えるのに十分な耐久性を出すことは難しいと思います。
現在、自転車用ライトの15%割引クーポンコードが発行されています。
対象:ストア内すべての製品
回数制限: 1人1回限り
著者情報
年齢: 37歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。