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GENTOS「閃」の思い出
10年前くらいに、ほとんどの自転車乗りが一度は使ったであろうGENTOSのハンディライト「閃」に関する思い出話を語る記事です。
まえがき
昨日、一眼カメラで自転車用ライトの撮影を行いました。
その際にサンプルとしてTwitterにアップしたのが、こちらのライト。GENTOS「閃 SG-325」です。
予想外の反応
なんとなくこのライトをサンプルに選んだだけだったのですが、Twitterでは予想外の反応を頂きました。以下のような反応です。
・かつてのみんなの標準装備だ。
・改造強力ペンライトで使用した後、自転車用ライトになり、今は非常時用に枕元にあるな〜。
2010年頃の定番ライト「閃」
ひろさんのツイートが一番簡潔に「閃」の位置付けを表しているので引用します。
ばるさんのこれ、10年前くらいに自転車やってた人全員持ってる(た)説を唱えたい。いや、持ってたでしょみんなw https://t.co/126Y9nLBIy
— ひろ (@wannyan__team) January 18, 2022
そう、2009~2012年頃はやたらと自転車乗りは「閃」をハンドルに付けていたんですよね。
今回の記事では、10年くらい前にやたら流行ったGENOTS「閃」について振り返ってみようと思います。
「閃」シリーズについて
「閃」は、サンジェルマン(現・ジェントス)が2008年から販売しているLEDライトのシリーズ名になります。
ちなみに、ジェントスは現在、国内のLEDライトメーカーではトップシェアを誇るそうです。
シリーズの特徴
閃シリーズは、基本的に電池式でコンパクトサイズのLEDライトがラインナップされています。
特徴は、ツイストフォーカスコントロール。
ヘッドを捻ることで、広い範囲を照らす「ワイドビーム」と、光を絞って狭い範囲を明るく照らす「スポットビーム」モードが選べるのが特徴です。
現在でもシリーズは継続中。私が使っていた頃は電池式のみでしたが、現在は充電式のモデルもあるようです。
流行った理由
「閃」シリーズが自転車乗りの間で流行ったのは約10年前(2009~2012年ごろ)。確かに何人かで走りに行くと過半数は「閃」をハンドルに付けていました。
BIKEGUYのライトホルダーを使って、こんな感じでハンドルにつけている人が多かったと記憶しています。
何故そんなに流行ったのか? 振り返って考えてみます。
明るい
最大の理由は(当時としては)明るかったことでしょう。
初代の閃(SG-305)の明るさは100ルーメン。今でこそ大した事がないと思われる数値ですが、当時としてはかなり大きい値です。
入手性の高さ
「閃」とほぼ同時期に流行っていたのが「中華爆光ライト」と呼ばれるもの。中国製のタクティカルライトです。秋葉原の怪しげな店で売っていたのを見た記憶がありますが、中々手に入るものでもなく、品質もピンキリでした。
その点、「閃」は日本企業であるサンジェルマンが販売しており、Amazonなどに加えて一般的な家電量販店でも買うことが可能でした。入手性の高さも人気の理由だったのでしょう。
安い
「閃」は当時の定価で3000円ほど。実売は1000円台後半から2500円くらいでした。
今ほどではありませんが自転車用ライトは当時中々高価なもの。
2010年当時のCATEYEの電池式ライトで一番実用的だったのがEL530でしたが、こちらは定価5250円。「夜間の山道でも通用するハイパワーモデル」と説明がありますが、100ルーメンはなかったはずです。
その半額で100ルーメンのライトが買える、というのは中々衝撃的でした。
丈夫
何度も落としてますが、壊れてはいません。10年以上前のライトですが、普通に現在も使用可能です。
耐衝撃性についての記載はありませんが、丈夫なライトだと思います。
ただ、振動には若干弱く、たまに勝手に消えてしまうことがあった記憶があります。
自転車用にちょうどいいサイズ
先述の中華爆光ライトや、当時のタクティカルライトはサイズが大きいものがほとんどで、自転車には大きい&重すぎるものがほとんどでした。
その点、閃は単4電池×3本駆動で、長さは10cm、太さは3cm。重量も電池込みで100g程度。
自転車のハンドルにマウントするにはぴったりのサイズ感だったと言えます。
手持ちの3本の紹介
私が持っている「閃」の紹介です。
ちなみに、リリースは「305」→「355B」→「325」の順になります。
SG-305
2009年購入、初代「閃」です。当時のAmazonの購入記録を見ると「GENTOS 30周年記念モデル」との記載があります。
公称スペックは、「100ルーメン/10時間点灯」。
閃は残念ながら明るさを保つ定電圧回路は恐らく入っておらず、結構急激に暗くなります。
こちらは最近測定した照度データ。点灯開始時は相当明るいのですが、実は1時間もしないうちに半分以下の明るさになってしまいます。
当時から「結構すぐ暗くなるなぁ」とは思っていましたが、いざ測定してみると「こんなに早く暗くなってたのか」とびっくり。
「閃」は急に消えずに、豆電球のような明るさになっても点灯を続けるのも特徴です。このグラフを見ると、4時間過ぎたら前照灯としては役に立たなそうではありますね……。
SG-355B
2010年発売。こちらのモデル名に付いている「B」は恐らく「Bicycle」のB。BlackのBかもしれませんが、他の黒色の「閃」にはBは付きません。
このライトには専用の自転車ハンドル用マウント(公式にはパイプホルダー)が付属しました。ただし、パイプホルダーの対応する径がΦ20-25mm。
ほとんどの自転車用ハンドルには使えなかったため、BIKEGUYのライトホルダーを結局使っていたと思います。
私の想像でしかありませんが、「汎用ライトとして発売したSG-305が思いのほか自転車乗りに受けてしまったので、メーカー側も自転車乗りをターゲットにした製品を出したのではないか?」と思っています。
公称スペックは、SG-305と同じく「100ルーメン/10時間点灯」。
こちらも照度は素早く落ちますが、SG-305よりも緩やかな落ち方になっています。
なお、このライトから数年後、GENTOSからは自転車専用のライトも発売されるようになりました。
SG-325
2011年発売。SG-305の自転車用の後継モデルが「355B」だとすれば、汎用ライトの後継モデルは「325」になるのでしょう。
公称スペックは、「150ルーメン/10時間点灯」と、50ルーメンの向上を果たしています。
確かに最初は20000ルクス超(照射距離30cm)という相当大きな数値を叩き出していますが、その後は急激に暗くなって初期値の20%以下で低速安定走行。ちょっと使いにくいモデルではありました。
「閃」の思い出
10年くらい前の「閃」にまつわる思い出をいくつか振り返ってみようと思います。
とにかく明るかった
正直言って当時の自転車用ライトは実力不足で、今で言えば50ルーメンにも達していないライトがほとんどだったと思います。
TOPEAKのMoonshineのように馬鹿みたいに大きな電池を使うライトはありましたが、値段も重量も現実的ではありませんでした。
そこに登場した、電池式でコンパクトで明るいライト。
閃は自転車用ライトというわけではなく、汎用のハンディライトです。しかし、良いものならば流用するのが自転車乗り。あっという間に「閃が良いらしい」という噂は口コミで広まり、ブームとなりました。
当時のレビューを振り返ると以下のような感想が見られます。
・2本点灯すると昼間のような明るさ。
100ルーメンで何を大げさな……と今では思いますが、確かに最初に使った時の明るさは衝撃的でした。
ルーメン表記をいち早く導入
閃シリーズが新しかったのは、「ルーメン」単位の性能表記をいち早く取り入れていたことだと思います。
今でこそルーメン表記が当たり前になっていますが、当時は「カンデラ」単位でのスペック表記が普通。カンデラの値は照射範囲によって変わってしまうため、なかなか比較がしにくい単位でもありました。
その点、ルーメン表記は「ライトから出る全光束」ということで、ライト同士のスペックの比較がしやすくなりました。
ヘルメットに付けている人多数
全長10cmで100gというコンパクトサイズだったため、ブルベの世界ではヘルメットに付けている人が沢山いました。
光害1号
閃にまつわる一番強烈な思い出といえばこれですね。
ホラフキーさんの「光害1号」です。SG-355Bをハンドルに6連装した、見た目のインパクトが大きすぎる自転車。

2012年のフレッシュで彼がこれに乗って現れた時の衝撃ったら無かったですね。
このブルベは雪に見舞われて大変なことになりましたが、光害1号が先頭に立って行く先を照らしてくれたことが今でも印象に残っています。
光害1号はろんぐらいだぁす!を応援しています。 pic.twitter.com/qxsGBMfp6g
— ホラフキ大根 (@horaphky) February 5, 2017
こちらは「光害1号」のその後。更にエコノムフォースが2灯とDosunのライトが追加されて物凄いことになっています。
光害1号は、漫画「ろんぐらいだぁす!」の葵の自転車のモデルにもなりました。
計画停電
2011年の震災で電力が逼迫し、神奈川県は計画停電の対象となっていました。
計画停電の時間帯は、閃を天井に向けて照らして明かりの代わりにしていました。当時はそれほど多くライトも持っていませんでしたし、これほど明るいライトも珍しかったのです。
しかし、100ルーメンでは部屋を照らすのにはちょっと暗かったですね。
まとめ
10年ほど前に流行った「閃」に対する思い出話でした。ほんと、あの頃は誰も彼もが「閃」でしたね。
2012年頃までは自転車乗りの間で相当なシェアを誇った「閃」シリーズですが、その後は使用者を大きく減らすことになります。

大きかったのはVolt300の登場でしょう。
閃よりも実用的な明るさの「100ルーメン/8時間」モードを備え、バッテリーも交換可能。配光も自転車用に最適化されており、ブラケットはCATEYE自慢のFlex Tight。
それまでもリチウムイオン電池を使った充電式ライトはありましたが、Voltシリーズの登場までは乾電池式のライトが優勢だったはず。Voltシリーズの登場で一気に充電式ライトに移行した印象があります。
Volt300の登場は2013年ですが、2013~2015年の間のLEDライトの進化スピードは物凄いものがありました。LED素子・リチウムイオン電池が共に進化を重ねていた時期だったということだと思います。
10年前、私も「閃」でナイトライドをしていました。
当時は100ルーメンのこのライトでも十分だと思っていたのに、今では「最低200ルーメン、出来れば300ルーメンは欲しい」と思うようになっています。
誰かが書いていましたが、「テクノロジーが進化すると、人間の能力は退化する」のかもしれません。……もちろん、私に関して言うと10年の間の加齢による影響もあるとは思いますが。
現在、我が家の「閃」は、非常用持ち出し袋に入れられて余生を過ごしています。
なお、閃シリーズは後継機が定期的にリリースされ続け、現在の型番は「SG-455B」。明るさは250ルーメンまで向上しています。点灯時間は6時間に減っていますが。
長く愛される、息の長いシリーズとなっているようですね。久々に買ってみようかな。
著者情報
年齢: 37歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。
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