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TPUチューブを開きにしてバルブ周辺の構造をチェック
パンクして使用不可能になったTPUチューブが溜まってきたので、切り開いてバルブ周辺の構造をチェックしてみました。
調査の動機
TPUチューブを使うようになって5年あまり。その間に何度かパンクをしました。
パンクしたTPUチューブを保管
TPUチューブはパンクすると修理が難しい(パッチは数日しか持たない)ので、基本的には破棄となります。
ただ、「なにかに使えるのではないか」と思い、パンクしたTPUチューブを保管していました。
気になるバルブ構造
さて、最近個人的に気になっているのがTPUチューブのバルブ周辺の構造です。
気になり始めたキッカケは、ここ最近使っているCYCLAMIのTPUチューブの空気抜けが早いこと。一週間で2気圧近く落ちており、ブチルチューブや他のTPUチューブより明らかに抜けが早かったのです。この差は一体どこから来るのか?
TPUという素材自体はガスバリア性能が高いはずで、多少素材が違ったとしてもそこまで大きく差が出るとは思えません。となると、怪しいのはバルブそのものか、バルブとチューブの接合部分です。
パンクしたチューブを切って見てみよう
そこで思い出したのが、パンクしたTPUチューブたちの存在。これらのバルブ部分だけを切り取れば、裏(チューブの内側)から構造が確認できるはず。
ということで、パンクしたTPUチューブ(4本)を切り開いて、バルブの付け根部分の構造を比較してみることにしました。
調査対象チューブ
今回は、4種類のTPUチューブを用意しました。いずれもパンク済みのものです。
製品名 | バルブ素材 | 価格 |
---|---|---|
CYCLAMI「TPUチューブ」 | 金属 | 1780円 |
CYDY「超軽量TPUチューブ ロード用」 | 樹脂 | 990円 |
Revoloop「RACE チューブ」 | 樹脂 | 3080円 |
Eclipse「ROAD ENDURANCE TUBE」 | 金属 | 3410円 |
それぞれのバルブ周辺を切り取り、チューブを開いて表面・裏面から確認します。
各TPUチューブの確認結果
各TPUチューブの確認結果を見ていきます。
CYCLAMI「TPUチューブ」
Amazonで売っているTPUチューブ。実売価格は1500円前後。
中華系TPUチューブでは珍しい金属バルブを採用したモデルということで購入。樹脂バルブは太いことが多く、リムの穴を通らないこともあります。金属バルブであればその点は安心。
ただし、どうも空気漏れが他のTPUチューブより早い点が気になります(48時間で0.75気圧低下)。
TPUチューブとバルブを接合するためには、表面または裏面からフタをする必要があります。これを「シール」と呼ぶことにします。
CYCLAMIの場合は、チューブの内側、裏面からシールされています。
横から見るとこんな感じで、シールの中央部が盛り上がった形で成型されており、その盛り上がった部分にバルブの根本が差し込まれるような形になっています。接着剤も入っているように見えますね。
見た感じしっかりと密閉されていそうですが、この膨らんだ部分とバルブの間の接着剤の間からごく少量の空気漏れがあるのかもしれません。表面にはシールがないので、ここに漏れがあると食い止めるものはありません。
CYDY「超軽量TPUチューブ ロード用」
こちらもAmazonで売っているTPUチューブ。
「安いTPUチューブ」というと、国内では1500円前後のものが主流。CYDYのチューブは1本あたり990円と、更に安い価格で販売されています。
こちらもCYCLAMIと同じく、裏面からのシール。中央の膨らみはありませんが、方式的にはCYCLAMIに良く似ています。
こちらのチューブですが、Panaracerのポンプヘッドで空気を入れようとした所、急にパンクしてしまいました。
今回開きにして分かったことですが、シール部分が剥がれてしまっています。Panaracerのポンプヘッドは押し込んで固定するタイプのため、バルブが押し込まれる形になります。そのため、チューブ内側に接着されたシールが剥がれてしまったのでしょう。
金属バルブであればバルブナットで押し込みを防ぐことが出来ますが、本製品は樹脂バルブなのでそれも出来ません。
裏面シールタイプのTPUチューブは、「押し込む」タイプのポンプヘッドで空気を入れることは避けたほうが良い気がします。HIRAMEのように、「掴む」タイプのポンプヘッドが無難です。
Revoloop「RACE チューブ」
ドイツのRevoloop。個人的には品質が最も安定しているTPUチューブだと思っていますが、この個体は低圧運用時に段差でリム打ちパンクをしたものです。
これまでの2製品とは違い、表面からシールされています。バルブ底面にはヒゲのようなものが伸びていますが、これはバルブを上からしっかりシールで押さえつけるための足として機能しているようでした。表面シールであれば、多少バルブが押し込まれてもシールが剥がれることはなさそうです。
これとは別個体ですが、Revoloopもこのシールが剥がれたことは一度あります。カーボン製のリムブレーキホイールで、箱根旧道を降りた直後にパンク。チューブを取り出してみると、シールが剥がれていました。
本製品は表面からのシールということで、ブレーキで熱せられたリム内側面とシールが直接触れることになります。熱が冷めにくいカーボンリムからシールに熱が伝わり、接着剤が溶けてしまったのでしょう。
Eclipse「ROAD ENDURANCE TUBE」
Revoloopと同じくドイツのブランド、「Eclipse」のTPUチューブです。金属バルブ採用。
恐らく中華ブランドではないメーカーで唯一金属バルブを採用しているメーカーです。TPUチューブと金属バルブを問題なく接合するのは難しいらしい(だから多くのメーカーは樹脂バルブを使う)のですが、Eclipseは特許技術によってそれを可能にしたと説明されています。
これまでの3製品と違い、シールらしいシールがありません。
表面にはペラペラとした1枚のシートが入っていますが、これはTPUチューブには接着されていません。ではどうやって、気密を保っているのか?
多分ですが、こんな感じのパーツ構造になっています。バルブ先端をナットに差し込む時に、バルブの根本がチューブ本体とペラペラのシートを巻き込む形で密封しているのではないかな?と。バルブとナットの間には接着剤が見えますが、シートも挟まっている様子が目視できます。特許技術というのはこの構造を指しているのかもしれません。
分類するとすれば、こちらもRevoloop同様の「表面シール」ということになるでしょうか。表と裏の両方からチューブをサンドイッチしているとも言えますが。
合理的な構造に見えますが、これが特許技術であれば他社は真似することは出来ません。
各ブランドのTPUチューブのシール方法
ここまで4製品を見てきて、シール方式には「表面シール」と「裏面シール」があることが分かりました。
そうなると、気になるのは「他の製品はどうなのか?」ということ。分かるだけ調査してみることにしました。
とはいっても、パンクをしていない製品をぶった切るのは勿体ないので、切らずに外側から確認するだけに留めています。また、現物が手元にないものはネット上の写真から判断しました。
裏面の状態は確認していないので、以下の情報は不確実である可能性があります。
ブランド | モデル名 | シール | 確認方法 | バルブ 素材 | 定価 [円] |
---|---|---|---|---|---|
Tubolito | Tubo Road | 裏 | 現物 | 樹脂 | 4730 |
Tubolito | Tubo S-Road | 裏 | 写真 | 樹脂 | 5280 |
Revoloop | Race | 表 | 現物 | 樹脂 | 3080 |
Revoloop | Race Ultra | 表 | 写真 | 樹脂 | 4180 |
Pirelli | SmarTUBE | 裏 | 写真 | 樹脂 | 5600 |
Schwalbe | Aerothan Race | 表 | 写真 | 樹脂 | 5500 |
Schwalbe | Aerothan Endurance Race | 表 | 写真 | 樹脂 | 5500 |
Vittoria | Ultra Light Speed | 表 | 写真 | 樹脂 | 4598 |
Magene | Exar | 表 | 現物 | 樹脂 | 1650 |
TNI | Light 35 | 裏 | 現物 | 樹脂 | 1650 |
TNI | Light 24 | 裏 | 写真 | 樹脂 | 1980 |
Eclipse | Road | 表/裏 | 現物 | 金属 | 3300 |
Eclipse | Road Ultra | 表/裏 | 写真 | 金属 | 3960 |
Eclipse | Road Endurance | 表/裏 | 現物 | 金属 | 3410 |
Eclipse | Road Endurance Ultra | 表/裏 | 写真 | 金属 | 4070 |
Barbieri | NXT ROAD | 表 | 写真 | 樹脂 | 3080 |
Barbieri | Puma Road | 表 | 写真 | 樹脂 | 3630 |
Barbieri | Roccia ROAD | 表 | 写真 | 樹脂 | 3630 |
P&P | TPU Tube | 裏 | 写真 | 樹脂 | 2640 |
CYDY | 超軽量TPUチューブ ロード用 | 裏 | 現物 | 樹脂 | 990 |
CYCLAMI | TPUチューブ | 裏 | 現物 | 金属 | 1780 |
RideNow | RACE FORMULA | 裏 | 現物 | 金属/樹脂 | 650 |
まとめ
「TPUチューブを開きにしてバルブの構造を確認してみた」記事でした。
家にあった4種類のチューブしか細かく見られていませんが、それでもバルブのシール方式はそれぞれに個性がありました。どれも見た目が同じに見えるTPUチューブにも実は差があり、それが運用のしやすさや、パンクへの影響がありそうな事も分かりました。
TPUチューブの泣き所がこのチューブとバルブの接合部のはずなので、ここが堅牢そうなチューブを選んだほうがパンク等のトラブルは減らせそうです。今後は購入の際にはここに注目していこうと思っています。
↓この記事の続編です。
著者情報
年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。