この記事は約 3分で読めます。
大阪→東京キャノンボール ③豊川→掛川
因縁の豊橋
本宿駅を過ぎると、道が下り基調になる。さらに追い風も手伝って、この区間は全然頑張らずに40km/h巡航。事前に立てた目標よりも大分先行している事が分かり、テンションはかなり高くなった。
そして、豊川を過ぎると前回のリタイア地点、因縁の豊橋市。一ヶ月前はここでサドルを降りた。直接的なリタイヤ原因はメカトラではあったものの、あの時は心もすっかり折れていた。
しかし今回は違う。風向きにも恵まれ、ショップで再度組みなおしてもらったキシエリも万全。体調もまだまだ余裕がある。今回こそは行ける気がする。達成の予感を感じた。
静岡県入り
潮見坂を降りると、静岡県に入る。前回はこの区間でかなり向かい風に悩まされた記憶があったため、今回は追い風ヒャッホウ!だと考えていた。……が、なぜか向かい風だった。静岡の風は気まぐれらしい。
まもなく、浜名湖を渡る弁天島に差し掛かる。キャノンボールにおける弁天橋はちょうど全行程の中間に当たる。いわば折り返し地点。そう、逆向きからの挑戦者・261さんとすれ違うのであればこのあたりのはずなのだ。
baru「上手く行けば浜松あたりですれ違いますね。頑張りましょう! 」
261「浜松で会える奇跡を祈りますw 」
上記は事前にキャノボスレで交わした書き込み。本当にここで会えるのだろうか?
書き込みによれば、261さんの格好は「青のメルクスに、青ジャージ、青メット」という青ずくめとのこと。これだけ特徴があればすぐに分かるかな・・・とは思ったが、浜名湖付近は実にローディーが多い。時間帯は朝9時、さらに連休の最終日の快晴。まさにサイクリング日和なのだから当然といえば当然かもしれない。
対向車線に注意を払いながら走るが、弁天島を過ぎてもそれらしき人は来ない。来た!!……と思ったら、青は青でもピナレロだった。
奇跡の邂逅
8時57分。出発から10時間17分後。弁天島から500mほど東に行った所で、前から青メット、青ジャージのローディーがやってきた。また違うか……と思ったが、フレームには「MERCKX」の文字。間違いない、261さんだ!あちらも気がついたようで、道を挟んで同時に立ち止まる。
「キャノンボーラーですか!?」
261さんと思われる人がこちらに叫んだ。
「そうです!」
その声に応える。
しかし、261さんは走りだす。
(アレ? 今確かに「キャノンボーラー」って言ったよな? 聞き間違いだったかな?)
と思ったら、すぐに踵を返す。あとで聞いたところによると、自分がSPECIALIZEDのバイクに乗っていなかったので違うと思ったらしい。確かに、「スペシャの赤ジャージで走る」とは予告したものの、この日のバイクはGHISALLO。普通、ジャージと別のブランドのバイクに乗っているとは思わないだろう。そりゃ勘違いもする。
道を挟んで会話するも、写真だけを撮り合ってすぐに逆向きに走り出す。互いに先を急ぐ身、それぞれのゴールを目指して戦っている最中。こうするのが最善だとお互い分かっていたのだと思う。
GPSのログによればこの間2分。しかし、この2分がその先どれだけの力になったか解らない。
後から考えて見れば、お互い違うルートを選ぶかもしれないし、片方の休憩中に通りすぎてしまうかもしれない。道が広ければ擦れ違ったことにも気づかないかもしれない。様々な偶然が重なったが故の奇跡の邂逅。
「逆からキャノンボールしてる人と奇跡の遭遇!エール交換しました!」
と、興奮気味にキャノボスレに書き込む。開始から10時間、中弛みしつつあった体と心に強力な鞭が入った気がした。
ここから掛川のあたりまでの記憶は何故かすっかり抜け落ちている。それだけこの出会いが衝撃的だったということ。テンションは最高潮。
……イケる。
予感は確信に変わり始めていた。