大阪→東京キャノンボール ⑥箱根湯本→日本橋

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渋滞峠

命からがら箱根を抜けると、そこは地元・神奈川県。これまでの心細さと疲労はどこへやら。走行時間も19時間を過ぎて本来なら眠くて仕方ないはずが、地元の安心感で力がみなぎる。

平塚過ぎてあと65くらいです。行きます! (10/11 18:48)」

呟く内容にも余裕が出てくる。

しかし、三連休の最終日の19時前後。懸念していた藤沢バイパスはやはり大渋滞。しかしここは織り込み済み。車の間から出てくるバイクなどに気を付けつつ道路の端をゆっくりと走る。もう一つの心配の種だった戸塚の開かずの踏切(注: 2014年に撤去され歩道橋に)はあっさりと通過。少し前まで戸塚で働いていたため、この踏切の「開かず」っぷりは知っている。場合によっては10分は開かない。最悪、駅の地下通路を抜けるつもりだったが、杞憂に終わる。タイムロスは30秒も無かった。運が良い!

ラストスパート

事前の予想では、この区間のグロスAveは20km/hくらいになるはずが、「地元パワー」か、23km/h台を維持。保土ヶ谷駅近くのコンビニまで到達したところで20時10分。残りの距離は約30km。この勢いならばあと1時間半。都内の渋滞を鑑みても1時間40分あれば日本橋に到達できるはずだ。「誰かゴールに来てくれたら」と淡い期待を抱きつつ、Twitterで

【募集】21時50分前後に日本橋交差点でゴールを見届けてくれる方…なーんて。さすがに急すぎか。 (10/11 20:29)

と呟く。横浜駅を過ぎると正に地元も地元。平日の練習コース、R15だ。信号が青になる間隔も分かっているので、調整しつつ手際よく進む。

東京入り

多摩川を超えるとついに東京都突入。R15上の京急蒲田駅の踏切(注: 2012年に撤去され高架化)も引っかからずにそのまま突破。またしても運が良い。

品川を越え、残り7km。タイムは22時間と40分を指している。

(…あと20分以内にゴールすれば23時間切れるじゃないか…!)

どうせなら大台である23時間を切りたい。そう思い、ここから更にペースを上げる。しかし、現実は厳しい。都心に近づくにつれ、増える信号。特に銀座~日本橋間はインターバル練習かというほど信号に引っかかった。

550kmの果てに

そしていくつもの信号を越えた先、高島屋の向こうに見えた「日本橋」の文字。ラストは特にスプリントすることもなく、ゆっくりとゴール。GPSの計測終了ボタンを押す。時刻は21時42分36秒。実に23時間02分に及ぶ道のりが終わった。

……ホントに来たのか、日本橋まで。自転車で。自分の力で。大阪から24時間以内に。

あまりに色々な風景が頭に飛び込んでは後ろに消えていったため、本当に全てが今日1日の出来事なのかよく解らない。

21時42分ゴールしました!タイムは23時間02分でした。(10/11 21:54)

スレとTwitterに達成報告をする。文面は落ち着いたものだが、達成感と充実感で叫びだしそうな心境。

一度は失敗しながらも、成功に漕ぎ着けた。事故もなくゴールに辿り着いた。残念ながら出迎えてくれる人は居なかったが、このキャノボは実にいろいろな人に力をもらった挑戦だった。Twitter、mixi、スレの応援。そして浜名湖での出会い。一人では諦めていたかもしれない。全てが自分の背中を押してくれたからこそ達成できたのだと思う。

単独走でありながら単独走ではない。それがキャノンボール。もし、これから挑戦する人がいれば、可能な限り応援に駆けつけるだろう。それほどまでに、この孤独な道程では応援が力になるのだ。

次のエピソード
大阪→東京キャノンボール エピローグ 自宅へ 結局、誰も出迎えてくれる人は居なかった。その後、キャノンボールも有名な挑戦にはなったが、当時のコンテンツ力はそんなものである。ずっと飲みたかったメロン...
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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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