PBP 2019 PCの構造と設備

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PBPはフランスの田舎道を走ります。

時折、街中を通ることはありますが、24時間営業のコンビニは一件もありません

フランス国内では、夜は基本的に全ての店が閉まります。

PBP期間中は応援の意味で夜でも営業している店や、沿道の人が開設する私設エイドもありますが、あくまで例外です。

補給・睡眠・シャワーと言った「走る」以外の作業は、全てPC(Point de Control)またはWP(Welcome Point)で済ませる必要があります。

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本記事では、PBPにおけるPC&WP内の設備・サービスについて紹介します。

目次

PBPにおけるPC

ブルベにおいてPCと言えば、チェックポイントを意味します。チェックポイントを不通過の場合、完走とは認められません。

PCに指定される場所

日本国内では、大抵コンビニがPCに指定されます。通過証明はレシート。レシートに記載された時刻をPC通過時刻とみなします。しかし、こうした形式は日本独特のものです。

PBPでは、多くの場合は学校がPCに指定されます。学校以外の場合は、公民館やスポーツ競技場などの施設が指定されるようです。通過証明はスタッフによる有人チェック。PC通過時刻は、スタッフがブルべカードにサインした時刻となります。

学校がPCに指定される理由を聞いたわけではありませんが、推測される理由は以下です。

・PBP開催期間は夏休み
 →使われていないので、借りやすい。
・十分な面積
 →PBP参加者とボランティアスタッフが常時1000人以上は滞在できるだけの広さがある。
・十分な設備
 →トイレや水回りなど、設備が揃っている。また、部活動で使用する体育館(=仮眠所)、シャワー室もある。

PCとWP

PBPでは、通常の「PC」の他に「WP」と呼ばれるものが存在します。

PC(Point de Control)は、通過証明が必要です。必ず寄らなければなりません。PBPにおいては、補給や休憩の場所としても機能します。

ちなみに、PCの入口にはセンサが置かれており、足に巻いたタグを読み取って、自動的に時刻が集計されています。この状況は、リアルタイムでPBPの公式サイトから確認可能です。

WP(Welcome Point)は、通過証明の必要がないものの、PCと同等の設備を備えた場所を指します。主催者からのサービスとも言えるでしょう。必ずしも立ち寄る必要はありません。

注意点としては、「往路はWP・復路はPC」という場所も存在することが挙げられます。

また、WPはシークレットPCに指定されることもあります。「PCじゃないから寄らなくてもいいや」と思ってスルーすると、認定が貰えない事態もありえるわけです。

シークレットPCの場合は、PCの手前でスタッフによる誘導がありますので、WPの近くに差し掛かったら身構えておきましょう。

PCの面積

PCの面積は場所によって違いますが、基本的には広いです。日本における、田舎の小中学校クラスの広さがあります。

サンプルとして、「Loudeac」のPCを挙げます。Loudeacは、往路でも復路でもPCとして指定され、各国のサービス業者がドロップバッグを置く場所でもあります。面積も、全PCの中で最大クラスです。

LoudeacのPC面積をGoogleMapの計測機能で測ったところ、48,000㎡でした。

これは、日本的表現をすれば「東京ドーム1個分(46,755㎡)」の面積と同等です。東京ドームだと想像しにくい方には、一辺220mの正方形を想像していただくと良いと思います。かなりの広さです。

これだけ広いと、PC内で歩く距離も相当なものになります。クリートカバーを用意するか、MTB用の歩きやすいシューズで走ることをオススメします。

PCの滞在時間

日本のコンビニならば、その気になれば3分もあればレシートを貰って離脱することが出来ます。トイレに寄っても10分以内には離脱可能でしょう。

しかし、PBPの場合は、そんな短時間でPCを離脱することは出来ません。前述のように「PCが広い」ことと、「PC内でやるべきことが多い」ことが理由です。

どんなに効率よく行動しても20-30分は時間を取られることを覚悟してください。フランスは日本のように信号が多くはないのですが、その分PCでは時間が取られます。

PC内での動きは大体、以下のような流れになります。

・指定の駐輪スペースに自転車を置く&施錠
・Controleでブルべカードにチェックを貰う
・バー/レストランで食事をする
・トイレを済ます
・シャワーを済ます
・仮眠所で寝る
・バー/売店で補給食を買う
・給水所/バーで飲み物をボトルに入れる
・自転車を駐輪スペースから取り出す

やることも多いですが、行列が出来ている可能性も高いです。あと、当然のように割り込んでくる国の人もいます。

特に今回は参加人数が前回より1000人程度増えるので、混雑度は増す可能性が高いです。

日本のホテルなら出来る「充電」はまず不可能です。コンセントがたまたま空いていることはあるかもしれませんが……。電源は「持って走る」か、「ドロップバッグに入れる」ことになるでしょう。

あまり電子機器に頼りすぎると、電源の運用が難しくなることに注意してください。

PC内の設備

PC内にある設備を列挙します。

・コントロール (表記: Controle)
・レストラン (表記: Restaurant)
・カフェ / バー (表記: Bar)
・売店 (表記: 調査中)
・仮眠所 (表記: Dormir / Dortoir / Couchage)
・給水所 (表記: Eau Potable / Point d’eau)
・トイレ (表記: WC / Toilettes)
・シャワー室 (表記: Douche)
・メンテナンスサービス (表記: 調査中)
・救護室 (表記: Médicale / Soins)

WPには、上記のうちControle以外があると考えてください。

また、全ての設備がPC/WP内に存在するわけではありません。特に、シャワー室は大きめのPCにしか無いと考えてください。

以降は、各設備の詳細内容を述べていきます。続きは折りたたみますので、[続きを読む]のリンクをクリックしてください。

コントロール (表記: Controle)

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(写真提供: クマさん)

ブルべカードに通過証明を貰う場所です。日本のブルベにおけるゴール受付のような雰囲気の場所で、ブルべカードにスタッフのサインを貰います。

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(写真提供: Guile.Kさん)

受け付けてくれるのは、本場のフランス紳士・フランス淑女です。序盤のPCは混んでいて行列になることもありますが、後半に行くほど空きます。

ブルべカードを出す時には「Bonjour」、サインを貰ったら「Merci」を忘れずに。

レストラン (表記: Restaurant)

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PC内には大きく2種類の食事スペースがあり、本格的な食事を食べられるのがResutaurantです。

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カフェテリア方式が採用されています。ガラスケースや机に並んだ皿の中から好きなものを取ったり、カウンター越しに料理をよそってもらい、最後に会計。

大学の学食を想像して頂ければ分かりやすいと思います。会計は現金(ユーロ)で行っていましたが、クレジットカードも使えたそうです。

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主に提供されるのは以下のような料理です。

・主食(パン・パスタ)
・サラダ
・フルーツ
・肉類
・ヨーグルト
・ケーキ
・飲み物

PBP名物としてよく名前が挙がる「伸びたパスタ」は、ここで提供されるものです。乳製品はレベルが高いですが、その他のものはそれほど美味しくありませんでした。

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ただ、ColhaixのPCで食べた牛肉の煮物は個人的に大ヒット。PCによっては、本イベントの名前に由来する「パリブレスト」を売っていることもあります。

深夜はメニューが減ります。とあるPCではパスタのみでした。ただ、深夜でも早朝でも開いているだけでありがたいですね。

 

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そして深夜のRestaurantやBarは、仮眠所からあふれた人たちが机に突っ伏したり、床で寝ています。さながら野戦病院。

カフェ / バー (表記: Bar)

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飲み物や軽食を買うこと出来るのがBarです。Restaurantに比べると、簡易。カウンターのみで座る場所が無い場合もあります。会計は、前回は現金のみだったと記憶しています。

主に提供されるのは以下のものです。

・サンドイッチ(発音はサンドウィッシュ)
・パン(菓子パンもあった)
・飲み物
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ここでいうサンドイッチは、ガレットという硬いパンに切れ込みを入れて、そこにハムやチーズを挟んだものです。具は場所によって異なります。

細長い形状なので、バックポケットに入れてPC間の補給食として活用しました。

バーで売っている飲み物には酒も含まれます。

フランスでも血中アルコール濃度が一定以上を超えたら自転車を運転してはいけないのは日本と一緒なのですが、日本よりも基準値が上&欧米人はアルコールの分解が早いので、ツールドフランスのラストステージで選手たちが酒を飲みながら走る……みたいなことが起こり得ます。

近年はフランスでも飲酒運転に対する取り締まりが厳しくなってきているので、今回もバーで酒が提供されるかは不明です。

売店 (表記: 調査中)

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補給食やパーツが購入できる場所です。確か、こちらもクレジットカードが使えたはず。

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(写真提供: クマさん)

以下のようなものが売っています。

・自転車用補給食(エナジーバーやジェルなど)
・タイヤ&チューブ
・自転車アパレル(グローブなど)
・その他自転車パーツ

取り扱っているものはPCごとにまちまちですが、大体上記のものは売っていたと思います。

私は自転車用補給食はあまり好きではないので、移動用の食事はもっぱらバーで買ったサンドイッチでした。

また、PBPの夜~早朝は想像以上に冷えます。グローブやウェアの選択を間違ったと感じたら、売店で何か探してみると良いでしょう。

ただ、ウェアやパーツは日本で買うより割高なプライスタグが付いていた記憶があります。

仮眠所 (表記: Dormir / Dortoir / Couchage)

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仮眠できる場所です。前述の通りPCは学校を使うことが多く、学校の中の体育館が仮眠所に割り当てられることが多いです。

最終PCであるDREUXは競技場でしたが、バスケットボール用の体育館が仮眠所でした。

利用法は以下です。

・受付で、料金を支払う。通常4ユーロ、現金。
・受付で、起床時間を指定する。紙で出来た時計が置かれており、それで指定するのでフランス語を話せなくても平気。
・指定されたスペース(大抵はマット)で寝る
・起床時間になると、係の人が起こしてくれる
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基本的には体育館に体操用マットが敷かれているだけです。場所によっては、ベッド用のマットが敷かれていて、枕がある場合もあります。

指定した時間に起こしてくれるサービスはありがたいのですが、時間前に起こされたり、時間が過ぎても忘れられたりと、割とトラブルも多いようです。

指定時間に起きる用意は自分で別にしておく必要があるでしょう。アラームはひんしゅくを買うので、バイブレーションやイヤホンでのアラームをセットしておくと良いと思います。

また、エアコンが効いているわけではないので、夜中は冷えます。ブランケットを借りられる場合もありますが、手持ちの衣類は全て着込んで寝たほうが良いでしょう。

私は一回、輪行袋まで引っ張り出す羽目になりました。

給水所 (表記: Eau Potable/ Point d’eau)

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(写真提供: エスフジさん)

水を汲める場所です。ここは無料だったと思います。

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(写真提供: クマさん)

PCによって、蛇口だったり、ウォーターサーバーだったりします。指定給水所以外の水は飲めるか分からないので避けたほうが無難です。

なお、給水所で手に入る水は全て硬水です。私も硬水に対する耐性は低かったようで、胃の調子が悪くなりました。

PC間の何もない場所で急に腹痛になり、尊厳の境目をさまよったほどです(結局ホテルを見つけてトイレを借りた)。後半は缶ジュースばかり飲んでいた記憶があります。

缶ジュースも硬水で作られているのかもしれませんが、水をそのまま飲むよりはマシでした。

給水所以外で水を入手する場合、Volvic(ボルビック)をオススメします。ヨーロッパでは珍しい軟水です。日本でも良く見かけますね。

同じく日本で良く見る「Evian」「Vittel」は硬水です。

トイレ (表記: WC / Toilettes)

トイレです。もっとも文化の違いを感じる場所かもしれません。料金は無料です。

まず前提としてお伝えしたいのは、日本のトイレへのこだわりは世界最強であるということです。日本以上にトイレに熱心な国はありません。

逆に言えば、海外ではトイレへのハードルを相当下げる必要があります。

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(写真提供: エスフジさん)

建物の外には仮設トイレがあります。写真右側に並んでいるのは、個室の仮設トイレ。中の便器も日本とは違う形をしています。

写真左側にあるのは、男性用の小便器です。3人同時に使用可能。気まずいので私は一回も使わなかったですが……。

建物の中にもトイレはあります。仮設トイレとは違い、いわゆる洋式便器です。

ただ、便座が壊れていたり、盗まれていることもあります。トイレットペーパーが無いことすらあります。携帯用のウェットティッシュは常に持っておくと良いでしょう。

あと、日本のトイレほど綺麗に使われてはいません。これはPBP参加者による影響も大きそうですが。

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更に、便座が無いトイレも。これは洋式に座る姿勢で中腰で使うのが正しいやり方だとフランス人通訳の方に聞きました。難解すぎる……。

シャワー室 (表記: Douche)

シャワーを浴びられます。料金は3ユーロ。

あまり設置されているPCは多くなかった記憶があります。少なくともLoudeacにはシャワー室がありました。

Loudeacでは、学校のプールのシャワールームと思われる場所を使いました。お湯は出ません。水です。

石鹸やスポンジも無いので、必要ならば持参する必要があります。ペーパータオルは体を拭くには頼りないので、ハンドタオルが一枚あると良いでしょう。

私がシャワー室を使ったLoudeacはドロップバッグが置かれるので、中に入れていたハンドタオルを持参しました。

PBP中は衛生状態があまり良くないので、水のシャワーと言えども浴びておいた方が良いと思います。

特に股ズレを起こしやすい人はシャワー室+石鹸+スポンジは必須。シャモアクリームだけでは4日間を乗り切るのは難しいです。

メンテナンスサービス (表記: 調査中)

メカトラブルに対応してくれるサービスです。私は一度もお世話にならなかったので詳細不明。

料金は掛かる場合と掛からない場合があるようです。変速調整や、ホイールの調整など、困った時の駆け込み寺です。空気入れも多分ここで借りられます。

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(写真提供: Guile.Kさん)

知人はホイールトラブルでメンテサービスを利用していましたが、スポーク交換に振れ取りまでやってもらって工賃は無料。

ただ、技術力は担当者ごとに差が激しいようで、知人の問題が解決したのは2つ目のメンテナンスサービスだったようです。

余談ですが、ストレートプルスポークは常備されている可能性が低いようです。

Jベンドの一般的な手組用スポークはどのPCにもあるようですね。万が一のホイールトラブルに備えるなら手組ホイールを選ぶのもまた作戦の一つです。

救護室 (表記: Médicale / Soins)

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(写真提供: エスフジさん)

身体トラブルに対応してくれるサービスです。私は一度もお世話にならなかったので詳細不明。

簡単な傷の治療や、テーピング、薬を出してくれるようです。料金は不明(PBPのブルベカードを見せれば治療費は無料だったとの証言あり)。お世話にならないに限りますが、何か体に不調があれば頼りましょう。

まとめ

PBPのPC(&WP)の構造・設備についての解説でした。

PBPはいわずもがな時間との闘いです。無駄な時間は少しでも減らし、走行と休息に充てる必要があります。

PC内で迷っている時間は損なので、出来ればPCの中でやることは到着前に決めておいた方が良いでしょう。

とはいえ、現場に行かないと中々雰囲気は掴めないものです。最初のWP(モルターニュ・オ・ペルシュ)で、PC内にどんなものがあるか、探検しておくと良いと思います。

追記(各PCの構造データ)

各PCの構造を把握しておくことで「無駄に歩かなくて済む」であろうということで、PBP参加者の皆様からの情報を元に各PCの構造情報を作成しました。

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PCが別の場所に変わった場合は役に立ちませんが、そのままであれば参考になると思います。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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