私がPBPで使う機材と、その使用理由を紹介します。前回参加の経験を踏まえて、アップデートを加えたものになります。これから2ヶ月で少し修正を加えるかも知れませんが、概ねこの通りになると思います。
ここで言う機材は走行に寄与するパーツ(フレーム・コンポーネント・ホイール・タイヤ等)を指します。以下のものは別記事で紹介します。
・走行時に持つ荷物(ライトや泥除けなどもこちら)
→ PBP 2019 走行時に必要な荷物
・ドロップバッグに入れる荷物
→ドロップバッグ編 (後日作成予定)
・走行中のウェアに関する話
→ウェア編 (後日作成予定)
以下、長いので折りたたみます。
基本的な考え方
PBPだからと言って、特別な機材を使うことはないと思います。普段使わない機材を使うと、色々と不具合などに対処出来ないものです。基本的には普段のブルベで使い慣れたものを使うべきでしょう。
あとは、きちんと機材を整備した状態でスタートに着くことです。防げるトラブルは未然に防ぐために、出来れば一通りプロに確認してもらうのが確実だと思います。チェーンやタイヤ、ワイヤーと言った消耗品もすべて新品に交換しておきましょう。海外ブルベは体調不良が起きやすいので、機材で問題がおこならないようにしておくのが大切です。
一つパーツ的にこだわるべき場所があるとすれば、足周りになると思います。具体的に言えば、タイヤ・チューブ・ホイールです。前回のPBPを走行して色々と思うところがあったので、今回は足周りを変えました。その辺りは、次項で詳しく説明します。
今回の予定機材
今回のPBPでは以下の機材で行く予定です。
各部位別に、選択意図を説明します。
(1) フレーム・フォーク
細山製作所製のスチールフレームを使用します。フォークは、RITCHEYのカーボンです。
「スチールフレームがロングには最高!」というわけではありません。乗り心地的にはフルカーボンフレームの方が良いと思います。カーボンは素材自体の振動減衰・衝撃吸収性が高いので。ただ、ジオメトリや荷物の積載性、そして見た目にこだわろうとするとスチールも中々の選択肢だと思っています。乗り心地は足周りやその他のパーツでそれなりに修正が効きます。そういった意味で、乗り心地に寄与するフォークはカーボンのものを使っています。
ただ、PBPに行くと、普段着にミニベロのおじさんとか、数十年前のクラシック自転車で完走しちゃうおじさんとか普通にいるので、特にフレームで結果が決まるとは思いません。自分が乗って気持ちの良いフレームを使えば良いと思います。
(2) コンポーネント
SHIMANO Dura-Ace(9000/9100)を使用します。
とはいえ、こちらも「Duraじゃないと!」という話ではありません。前回のPBPはだいぶ昔のULTEGRA SLで完走しました。キャノボと同じで、整備さえきちんとされていればどんなコンポでも問題ないと思います。
電動コンポを使用する方は、充電を忘れずに。昨今の電動コンポならば1200kmは持つとは思いますが、それも充電が十分であればのこと。バッテリーが古い場合は新品にしておいたほうが良いでしょう。
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ブレーキシューだけは、SHIMANOではなく「BBB ULTRASTOP」を使います。雨天でも効きが良いのが理由です。制動力の上限値はSHIMANO R55C4よりも少々劣る感じがあるので、長い下りがあると辛いのですが、PBPは小さい丘ばかりで長い下りはありません。
(3) ペダル
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SHIMANO XTR PD-M9100を使用します。SPDの両面ペダルです。
こちらも慣れていれば何でも良いと思うのですが、個人的にはSPD-SLやSPEEDPLAYのようなレース向けペダルよりも、MTBやツーリング用のSPDペダルを推奨します。理由は、ペダルよりもシューズの方にあります。
PCの構造と設備の記事でも書きましたが、PBPにおけるPCはとにかく広いです。相当の距離を歩くことになります。クリートが出っ張ったシューズだと地味に疲れるはずです。クリートの材質によっては破損のリスクもあります。毎回クリートカバーを付ければ破損は防げますが、結構面倒です。
その点、歩くことが容易なシューズならば、PC内でもそこまで疲れることもないはずです。ただし、シューズ自体はレース向けのものに比べると片足で100g近くは重くなりますが……。あえてフラペ+普通のシューズと言うのもアリだと思います。
それでもレース向けペダルとシューズを使いたい場合、PC内を歩き回るためだけのサンダルみたいなものを持っておいても良いかも知れません。足裏のリラックスにもなります。
(4) サドル・シートポスト
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Fabric Scoop Radius Proと、Bontrager XXX Seatpostを使用します。
繰り返しになりますが、これも慣れているものを。国内で1000km以上走っても問題がないサドルを選んでおくと安心です。
シートポストは、カーボン製のものを私は使っています。セットバックは20mm。材質よりもセットバックがあることが重要だと思っています。そちらの方がしなって乗り心地が良くなるので。セットバック0mmのものをブルベで使っている人はあまり見ませんが、辛いと思います。
(5) ハンドル周り
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ハンドルは3T Ergonova Team、ステムはBontrager XXX Stem。いずれもカーボンです。
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バーテープはSPECIALIZED ROUBAIX。その下に更に、FizikのBAR GELを入れます。衝撃と振動を緩和するためのゲルです。
ちょっとやり過ぎなくらいの快適性を追求した仕様です。ここまでやる必要は無いかも知れません。ただ、私は手のしびれが出やすいので、そこを重視して対策をすることにしています。1000kmを超えるブルベでは上半身を支えられなくなり、手に不要な荷重が掛かってきてしまうのです。最後まで姿勢を保てるだけの持久力があれば良いのですが……。
(6) 足周り
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ホイールはFulcrum Racing3 C17、タイヤはPanaracer GRAVELKING 26Cを使用する予定です。チューブはPanaracer RAIRを使うと思います。
ホイールは、前回のPBPでの経験を受けて、あえてグレードを落としました。というよりも、アルミスポークではなくステンレススポークを選んだという方が正確です。前回はアルミスポークのCampagnolo EURUSを使用しましたが、1000km地点で足裏の痛みが耐え難いレベルになり、一時ストップしてしまいました。
原因は色々考えられますが、主要因は路面からの突き上げと振動だと思います。あまり記憶の中のフランスの路面が荒れていた覚えはないのですが、日本の路面より平滑度は低いのかも知れません。未だに街中は石の舗装も残っていますし。それらの振動が積み重なり、足裏へのダメージとして現れたのだと思っています。
そこで思い出したのが、2011年に参加した三船雅彦氏のPBP報告会でのお話。
「EURUSで参加したが、アルミスポークは体へのダメージが大きかった。
次回はステンレススポークのZONDAで参加すると思う。」
2015年、宣言通り三船氏はZONDAでPBPに参加し、圧倒的なタイムで完走しています。元プロが実売4万円ほどのホイールで走るというのは驚きましたが、それだけ振動が手強いものなのだと思います。そのエピソードから、今回はステンレススポークのRacing3を使うことにしました。
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タイヤはまだ迷っていますが、前回と同じPanaracerのGRAVELKINGを使うことになりそうです。走行性能と耐パンク性能のバランスが自分好みなので。サイドまで耐パンクベルトが入り、なおかつ26Cにしては走りが軽いのが気に入っています。最近、耐パンク性能強化バージョンの「GRAVELKING PLUS」なるものが出ましたが、そこまでの耐パンク性能はPBPの路面ならば必要ないと考えています。
あと、フランスの路面は、雨が降ると日本よりも滑りやすくなります(特に街中)。雨で滑りやすいタイヤ(今どきなかなか無いですが)は避けましょう。
チューブは、RAIRかMAXXISのUltralightを使うと思います。Tubolitoもなかなか良かったのですが、出先でのパンク修理が結構難しいことがわかったので、慣れたブチルチューブで行きます。
(7) チェーンオイル (2019/6/24追記)
一つ書き忘れていたので追記します。チェーンオイルについてです。
PBPで使うオイルは、ウェットオイルを日本から持参予定。スプレータイプのオイルは飛行機で運べない可能性が高いので、非スプレータイプのものを選びます。非スプレータイプならば小分けにして携帯、道中でオイル切れを起こした時に再注油も容易になります。
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今の所、Vipro’sのmuonか、ワコーズのチェーンルブリキッド パワーのどちらかにしようと思っています。どちらもウェットタイプのオイルで、国内ブルベで実際に使用した実績のあるものです。この2つのオイルはどちらも耐久性が高く、雨に降られなければ500kmは潤滑性能が持続します。
とはいえ、それでも500kmです。PBPは1200kmありますので、再注油は最低2回発生することになります。雨が降れば再注油の回数は更に増えるでしょう。私の知る範囲での話ですが、1200kmの間、再注油なしで持続するチェーンオイルはありません。1000km程度持つオイルもあるようですが、恐らくそれも条件が良い場合の話で、雨天走行が長く続けば再注油は必要となるでしょう。
このことから再注油ありきでチェーンオイルを選んでおいたほうが良いと思います。念の為、スタート前日にも現地で注油。そして、そのオイルを小分けにし、走行中にチェーンから異音を感じたら注油するようにしてください。
※注記: ワコーズのチェーンルブリキッド パワーはナフサを主原料とし、引火点が60度以下であるため、空港では没収対象となるようです。ウェットタイプのオイルでもこういった事態が有りうるので、成分表(SDS)と航空会社の持ち込みルールを確認してください。
まとめ
使用予定の機材について紹介しました。ポイントをまとめると以下になるでしょうか。
・機材は普段のブルベで使い慣れたものを使う。
・出発前に一通り整備し、消耗品は新品にしておく。
・足周り(ホイールとタイヤ)は振動と衝撃の緩和を重視したほうが良い。
・シューズは歩きやすいものの方が良い。
繰り返しになりますが、整備はきちんと。そして、飛行機輪行で破損しないようなパッキングも大事です。フランスに着いた後も破損がないことを確認し、破損があれば現地の自転車屋さんに整備をお願いしてからスタートについたほうが良いと思います。ホイールの振れや、チェーンリングの曲がり、ディレイラーハンガーの曲がりは特に起こりがちです。
(完)