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PBP 2019 走行時に必要な荷物
私がPBPの走行時に持つ荷物を紹介します。前回参加の経験を踏まえて、アップデートを加えたものになります。これから2ヶ月で少し修正を加えるかも知れませんが、概ねこの通りになると思います。
なお、このページで紹介する「荷物」に、自転車本体とコンポーネントなどのパーツは含みません。以下のものは別記事で紹介します。
バッグ構成
前回の私のPBP参加時の自転車がこれです。バッグ構成は以下の通りでした。
- トップチューブバッグ
- ツール缶(シートチューブ)
- ツール缶(ダウンチューブ下)
- サドルバッグ
今回はこのような構成で行く予定です。
- フロントバッグ
- ソフトツールケース(シートチューブ)
- ツール缶(ダウンチューブ下)
- サドルバッグ
写真ではシートチューブ側のボトルケージに輪行袋を入れていますが、これはソフトツールケースになる予定です。
前回からの変更点
前回からの変更点は、「トップチューブバッグ→フロントバッグ」だけです。これは、トップチューブバッグだけでは補給食を入れるのに容量不足であった反省が理由となります。
フロントバッグは空力的には不利ですが、補給場所の少ないPBPのようなコースでは大量の食料を持ち運べるメリットがあります。
前回のPBPで最速だった参加者も、オルトリーブのフロントバッグに食べ物を満載してノンストップで走っていたとか。空力的なデメリットより、停止回数を減らせるメリットのほうが勝るのだと思います。
また、サドルバッグだけを重くするよりも、前後のバランスが取れるという点もメリットと言えます。
フレームバッグを使う人は、それでフロントバッグを代用することも可能でしょう。私は太ももに擦るのがどうしても気になり、採用には至りませんでした。ただ、空力的に見ればフレームバッグの方が明らかに抵抗が小さいはずです。
サドルバッグは前回と同じ、Ovejanegraにする予定です。
この4年間で、これを上回るサドルバッグを見つけることが出来ませんでした。残念ながらもう廃版のようですが……。
持ち物
持ち歩く予定の荷物を一覧表に纏めました。
格納場所別に、特徴的な荷物と、その荷物を選んだ理由について書いていきます。
部位別: 本体
自転車本体に付ける荷物の紹介です。
サイクルコンピューター
サイクルコンピューターは、Garmin eTrex30を使う予定です。予備は持ちません(念の為、ドロップバッグにeTrex30xを入れておくつもりですが)。
これは山用のGPSなのですが、自転車で使うためのマウントも用意されています。
eTrexを使う理由は、「単三電池2本で最大45時間駆動するから」です。リチウム乾電池という特殊な電池を使用することで、ほぼ2日間付けっぱなしで使うことが出来ます。
以前は私もGarmin Edgeシリーズを使っていました。しかし、稼働時間は15~20時間程度。
キャノンボールのように24時間で終わるなら良いのですが、600km以上のブルベではモバイルバッテリーを用意する必要があります。
モバイルバッテリーを用意すれば、それを格納するためのバッグが必要となります。結果的に持つべき荷物は増えます。
また、「電池が後何時間もつのか」「手持ちのバッテリーで最後まで乗り切れるか」を常に考えながら走る必要が出てきます。
電子機器が1つ増えると、それに付随して重量と電源マネジメントの手間が増えるわけです。
その点、単3電池で45時間稼働するeTrexはPBPの距離であっても、電池を一度交換するだけで済みます。取るスペースは予備の電池2本分だけ。電源マネジメントに頭を悩ませる必要がありません。
フロントライト
フロントライトは安定のCATEYE Volt800の3本体制(ハンドル2個・ハブ軸1個)です。
ローモードなら10時間稼働。さらにカートリッジバッテリーが共通なので、ハンドルのライトが電池切れになったらハブ軸のライトからバッテリーを使い回すことを考えています。
テールライト
リヤは、テールライトと三角おにぎり反射板。
テールライトはこれまたCATEYE。OMNI5と、OMNI3 AUTOです。
電池の持ちの長さからの採用ですが、前回のPBPの車検にCATEYE REFLAX AUTOを左右に付けていったところ、「どうした、点かないじゃないか!」とスタッフに怒られたのがトラウマなのでこの構成にしたというのもあります。
それでも自動点灯のオートライトは手放せないので、片方だけOMNI3 AUTOにしています。
ボトル
ボトルは1Lの大型ボトルをシングルで行きます。
理由は、シートチューブ側のボトルケージにツールケースを入れたいからです。ツールケースをそこまでして使いたい意味については後述します。
通常のボトル1本だとPC間で水が不足することもあるので、1L程度は水を確保できる体制を作っておいたほうが良いと思います。
泥除け
今回は泥除けも付けます。フランスの天気は非常に変わりやすいです。また、PBPの参加者は泥除け装着率が非常に高く、雨天時には泥除けの付いていない自転車は集団に入れないとも聞きます。
フロントはBBBのフルフェンダー、スリムガード。
振動でもズレにくいので気に入っています。CH1200やビワイチ1000でも採用しました。
リヤはまだ迷っていますが、第一候補はGORIX マッドガードマン。
片手持ちの軽量フェンダーです。コンパクトな割に効果が高く気に入っています。
ただ、フルフェンダーには敵わないので、雨が強そうな場合はBBB スリムガードを後ろも付けていくでしょう。
部位別: フロントバッグ
フロントバッグに入れる荷物の紹介です。
私は、mont-bell サイクルフロントバッグを使用しています。3エリアあり荷物を分類出来ること、見た目の割に軽量であることが気に入っています。
中央エリア
3室のうち、中央の一番大きいコンパートメントは補給食用スペースとして空けておきます。
左エリア
左エリアには電源を。モバイルバッテリーと電池を入れます。
モバイルバッテリー
PBPではドロップバッグが使えるので、持ち歩くモバイルバッテリーはスマホを1回充電できるだけの容量があれば十分だと考えています。
電池
Volt800用のカートリッジバッテリーを格納します。
右エリア
右の1室には薬・サプリメントを入れます。
薬は、痛み止め・眠気覚まし・足攣り防止と国内でも一般的なものを。
胃薬
特殊なのが「ガスター10」です。これは是非持参されることをオススメします。
一言で言えば「強力な胃薬」です。薬剤師がいないと買えません。海外の食べ物は、やはり日本のものとは異なります。水も硬水です。胃に不調を抱えるリスクが大きいわけで、その対策としてこれを持っていくのです。2015年の参加時に、2011年に参加した人から「とりあえずガスター10は必携」と言われましたが、本当に現地で役に立ちました。
(2019/6/20 追記)
ガスター10の副作用についてご指摘を頂いたので追記します。ガスター10は「H2ブロッカー」と呼ばれる成分を含みます。
このH2ブロッカーの副作用として、「せん妄」と呼ばれる症状があるらしく、幻覚を見るような例もあるそうです。特に疲労や寝不足が重なると、そのリスクが高まるとか。私は特にそういった副作用は無かったのですが、人によっては合わない場合もありますので、購入の際は薬剤師とご相談ください。
また、ガスター10は「胃酸の過剰分泌を抑える」薬です。胃酸が出すぎた場合には良い方向に働きますが、胃の働きが落ちている場合には逆効果となる場合があります。そういった場合には、俗に「総合胃腸薬」と呼ばれる太田胃散や、キャベジンなどのほうが良いかもしれません。
症状に沿った胃薬を飲むのが良いのですが、なかなか現地の環境に身を置いてみないと分からないのが辛いところです。私も総合胃腸薬は一つ持っておこうかと考え直しました。
痛み止め
ロキソニンを持参します。
ただ、これを使うならラスト100kmまでは使わないはずです。薬で無理やり痛みを止めても悪化するだけなので。
足攣り防止
芍薬甘草湯を持参します。
足攣りに対して予防も出来、症状が出てしまってからでも即効性があります。
部位別:サドルバッグ
サドルバッグに入れる荷物の紹介です。
主に、軽くて容積の大きいもの(ウェア類)を格納します。ここが重いと自転車の左右の振りが重くなるので。
バッグはOvejanegraのGearjammer Mサイズ。
容量は6-10リットルと、標準的な大型サドルバッグよりは一回りコンパクトなサイズです。フロントバッグがあるので、これくらいの大きさがあれば十分。
レインウェア
まずはレインウェア。フル装備を一式持っていきます。
これだけで600g程度になりますが、前述のようにフランスは天気が変わりやすいので持ったほうが良いでしょう。
そして、夜は一桁気温に冷え込むので、防寒具にも使えるものを用意すると良いです。
私はGORE-TEX採用のmont-bellサイクルレインジャケットを持っていきます。
雨天対策の詳しい部分は、拙著の「雨天ライド攻略本」をご一読ください。かなり詳しく書いています。
輪行用具
輪行袋も持参します。POCKET INという200g以下の簡易な輪行袋です。
PBPで万が一リタイヤした場合には電車でパリに戻ることになるわけですが、その際に必要です。
フランスの新幹線に当たるTGVは輪行袋に入れなくても持ち込める編成と、持ち込めない編成があるそうです。持ち込めない編成の場合に輪行袋が無いと、駅でOS-500クラスの重くて大きい袋を買うことになるんだとか。
その際の保険として、簡易な輪行袋を持っておきましょう。仮眠所で寝る時の掛け布団としても使えたりします(仮眠所が寒くて前回実際に使いました)。
また、輪行袋は比較的折りたたむと固くなるので、大型サドルバッグの先端部分に詰めておくと、シートポストがサドルバッグに食い込みづらくなり、安定性が増します。
その他
仮眠所の寒さ対策でエマージェンシーシートも持っておくと良いです。mont-bellのエマージェンシーシートは小さくなるのでオススメです。
また、PBPでは昼間は反射ベストを着なくても構いません(霧などの視界不良の場合は除く)。
反射ベストを格納するためのスペースをサドルバッグに残しておくか、バンジーコードで反射ベストを括り付けられるタイプのサドルバッグを使うと便利です。
部位別:ツール缶(ダウンチューブ下)
私のフレームはオーダーフレームで、ダウンチューブ下にボトルケージを付けられるダボ穴を開けてもらっています。
こういった穴がない場合でも、ELITE VIP BOTTLECAGE CLIPSなどを使えば、ボトルケージを増設可能です。重いパーツをより下に持っていけるので体感的に軽く感じられるメリットがあります。
この位置のツール缶は雨天時に前輪の水が掛かりまくってすぐに浸水するため、私は防水化対策を施しています。
パンク修理用具
ここには、主にパンク修理用具を入れています。
チューブを2本と、小型化によってツール缶に入るようになった例のポンプを持っていきます。
携帯工具他
携帯工具と予備ブレーキシューも格納。私のフレームはエンド一体型なので持っていませんが、予備のディレイラーハンガーも持っておいたほうが良いと思います。
ワイヤーロック
PCでは駐輪することもあるので、念のためワイヤーロックも持参します。
一応スタッフの人が見ていてはくれますが、用心は必要です。
部位別:ソフトツールケース(シートチューブ)
シートチューブのボトルケージには、ソフトツールケースを入れます。
このツールケースには、PCで使うものを一式入れています。中身にアクセスしやすい形状なのがポイントです。
なお、この手のツールケースは防水性が期待できないので、雨に備えてキッチン用のポリエチレン袋などに包んでおくと良いかも知れません。
皮膚保護クリーム
トイレで股擦れ防止のために塗るプロテクトJ1は、ダイソーの化粧容器に小分けします。
前回のPBPでも使っていた容器ですが、未だに売っている息の長い商品です。歯磨きは目が覚める効果があるので、少し眠気があるときのために携帯用のセットを持っておくと良いです。
チェーンオイル
チェーンオイルも、皮膚保護クリームと同様、化粧容器に小分けして持参します。
私はVipro’s「muon」を持参予定です。
トイレ関係
割と重要なのはトイレ関係。
海外のトイレは日本のように必ず紙があるわけでもなく、荷物を引っ掛ける親切なフックがあるわけでもありません。
そのため、一応ここにはウェットティッシュタイプのトイレットペーパーを忍ばせておきます。
また、ビブ派の人はトイレで脱いだジャージを置いておく場所を確保するため、トイレにコンビニ袋を持っていくと良いでしょう。フックなどが無くても、ビニール袋にジャージを入れて床に置くことが出来ます。
部位別:カードホルダー
PBPではスタート受付で首から下げるカードホルダーを貰えます。
ブルベカード
PBPのブルベカードは通常のブルベカードよりも大きく、冊子状になっています。
日本国内で売られている防水スマホケースには入らないので、配布されたカードホルダーを使うのが無難でしょう。
パスポート
私はお金とパスポートも一緒にここに入れて首から下げていました。
「パスポートを持ち歩くべきか?」については意見が分かれる所かと思いますが、警察に身分証明を求められた時や万が一の事故のことを考えると、海外旅行中は常に携帯しておくべきものだと思います。
首から下げたケースが盗まれるとなると、その時点で体も無事では済まないでしょうから、ここが最後の砦になると思います。
現金・クレカ
現金は200ユーロもあれば足ります。
PCでの食事が1回10ユーロとして、4日間で座って食事をするのは8回程度(80ユーロ)。
睡眠は5ユーロで3回(15ユーロ)。
シャワーは4ユーロで2回(8ユーロ)。
100ユーロあれば足りそうですが、色々と道中で買い食いなどをしても200ユーロには収まるでしょう。
ただ、売店でパーツなどを買っていたら足りなくなるので、その時のためにクレジットカードも持っておくと良いと思います。今回、いくつかのPCではクレジットカードを使えるとの告知が出ていました。
部位別:バックポケット
普段のライドではメインの荷物格納場所となるバックポケットですが、私はスマホくらいしか入れない予定です。
空いたポケットは、補給食用の場所として空けておきます。
PBPのPC名物でもあるバゲットやバナナみたいな細長いものはフロントバッグに収まらないので、バックポケットに収納するわけです。
背中からバゲットを生やして走るのはPBPでよく見る光景なので、ぜひ一度やってみてください。硬くて噛み切るのが大変ですが。
まとめ
私が持っていく予定の荷物一式を紹介しました。
上記で紹介した装備で、大体総重量は3kg程度になります。これは全体の参加者で見ればかなり少ない方になるんじゃないかと思います。海外勢は未だにキャラダイスやパニアバッグといったかなり重い装備を付けていることが多く、バッグだけでかなりの重量になると思います。5kg以上の装備を身に着けている人も多いんじゃないでしょうか。
ロングライドにおいて持つべき荷物は、その人が「リスクをどこまで許容するか」で変わってきます。私のPBPにおける基本方針は以下です。
- 行く前に機材はすべてプロの目を通して不備が無いようにしておく。
- 初物は使わない。
- 電子機器は最小限にする。
- PCでは大体のメカトラは解決可能。PCに辿り着ける最低限のものは持つ。
- 海外特有の事情に備えた特殊装備を持つ。
①~③は私の基本理念で、PBPでもキャノボでも変わりません。トラブルが起きてから対処するための物をアレコレ持つよりも、トラブルの種をあらかじめ潰しておくべきです。
④はPBP特有です。PBPのPCにおける売店の品揃えは充実しており、タイヤやチューブやウェア類は手に入ります。また、メカニックサービスもあるので(腕には個人差があるようですが)、変速の不具合やホイールの振れ取り程度ならば対応してもらえるはずです。予備のタイヤはドロップバッグに入れようと思っていますが、持って走ることはしません。予備スポークも持たない予定です。きちんと整備されていればそうそう問題は起きないと思うので(若干、飛行機輪行の不安はあります)。
⑤は、トイレ事情や、胃腸のトラブルに備えて胃薬を持つといったことを指しています。トイレのトラブル、内臓トラブルは侮れません。是非備えてください。
(2019/06/21 追記) ゼッケンについて
Twitterで知人が書いているのを見て、重要なことを書き忘れたのを思い出しました。それは「ゼッケンプレート(PBPではFrame Numberと呼ばれる)」についてです。
通常、ブルベではゼッケンプレートを付けることはありませんが、PBPやLELなどの国際的な長距離ブルベではしばしばゼッケンプレートが配布されることがあります。PBPのレギュレーションを見ると、
In order to make checks easier, all riders will have their number marked on a frame badge which must remain attached to the bike throughout the ride.
The abandoning rider has to remove the frame number and the tracking device.
との記載があります。要は、参加者かどうかの区別をスタッフがしやすいようにすることが目的と思われます。日本ならば反射ベストでブルベを走っているかの区別は付きますが、PBPでは昼間の反射ベストは義務付けられていません。となると、傍目には参加者かどうか判断がつきにくいわけです。このため、参加者は完走またはリタイヤするまでゼッケンプレートを付けることが義務付けられています。
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さて、このゼッケンですが、2015年は3箇所分と、取付のためのタイラップがスタート受付時に配布されました。
- ヘルメット前面用(シール)
- ハンドル前面用(コーティングされた紙)
- フレーム側面用(プラスチック)
①はさほど大きくはありません。3cm×5cmくらいのコンパクトサイズ。ヘルメットの通気口を大きく塞ぐこともないはずです。
問題は②と③です。写真の上が②、下が③です。
②はハンドルにぶら下げるための穴が2箇所空いており、そこにタイラップを通すようになっています。ただし、これの空気抵抗は馬鹿にならないほど大きいです。また、結構バタつくので走行中に気になりました。
注意してもらいたいのは、ハンドルにライトを吊り下げる運用をしている方です。前回の時の私がまさにそれだったんですが、ゼッケンプレートを付けるとライトと干渉するため、結局ハンドルの上にライトを付け変えざるを得ませんでした。サイコンとライトがかなり近くなってしまい、サイコンのサイドボタンの操作に苦労したのを覚えています。
今回は、フロントバッグに貼り付けるような運用を考えています。バッグ側にマジックテープの片方を貼っておき、配布されたゼッケンプレートにもう片方を貼る方法が有力でしょうか。
③は、フレームバッグとの干渉が考えられます。横幅の広いフレームバッグを使っている方は注意が必要です。その場合には、シートチューブとシートステーの間のスペースに取り付けることになるでしょうか。
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今回のゼッケンも同じ形式・大きさになるかは不明ですが、ゼッケンを取り付ける可能性を考えて装備を選んでおいたほうが良いと思います。