PBP 2019 レギュレーションの変更点【修正あり】

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PBP 2019のレギュレーションが発表されました。参加予定の方は、知らず知らずのうちに失格とならないために、一度全て目を通しておいたほうが良いでしょう。国内のBRMルールとは内容がだいぶ異なります。

私は前回参加して大体のレギュレーションは把握していますが、前回と今回とでレギュレーションはいくつか変わっている模様。ということで、PBP 2015とのレギュレーションの変更点を見てみることにしました。

なお、差分を見るために使ったのは、プログラマがよく使う「WinMerge」というツールです。プログラムの変更点を確認するために使うものですが、こんなことにも使えるわけですね。

目次

Article 4 : Preregistration

[追加]

The preregistration fee is €30, not refundable but deducted from the registration fee.
Preregistrations will be cancelled on June 20th, 2019 if the registration was not initiated (minimum three Qualifying events (“Brevets de Randonneurs Mondiaux”) indicated in the registration form).

プレレジストレーション費用に関する注意書きが追加されました。

気になるのは「minimum three Qualifying events indicated in the registration form」の部分です。

「指定期日(2019/6/20)までにレジストレーションを行わないとプレレジストレーションはキャンセルとなる」という事への但し書きなのですが、「最低でも3つの認定イベントを登録フォームに記載する」と書かれています。

PBPの出場条件は「当年度のSR資格取得」です。

そのためには、最低でも4本の認定を得る必要があるわけですが、「3本」というのはどういうことなんでしょう。

認定番号の発行が間に合わない場合への猶予措置なのかもしれませんが……ここに書いてある文章だけでは分かりませんね。

Article 5 : Registrations

[変更]

前: Refunds will only be possible under the conditions set by the cancellation insurance.
後: Any registration is definitive and not refundable.

レジストレーションの返金規定の変更です。前回はキャンセルした場合でも一部返金されましたが、今回は返金は無しとのことです。

Article 7 : Cancellation

[変更]

前: You can can get reimbursed by the insurer provided you meet the conditions of the cancellation insurance.
後: No refund will be made.

前項と同様、「キャンセルしても返金はなし」とのことです。

Article 8 : Rules for Bikes

[変更]

前: tri-bars and all forms of extended bars are forbidden.
後: Handlebars extensions are allowed only if they do not extend beyond a line created between the front of the brake levers, which must not be pointed forward.

今回、一番大きな変更かもしれません。禁止装備に関する変更です。

前回までは、いわゆるエアロバーは全面的に禁止されていました。しかし、今回は条件付きで許可するようです。「ブレーキレバーよりもバーの先端が前に出ないこと」と書かれているので、短いエアロバーならば許可と読めます。ただし、読み方によっては「エアロバーをライトマウントとして使う」ことへの牽制とも取れなくはありません。車検では結構厳しく見られると予想します。

コメントでご指摘がありましたが、「エアロバーの許可」ではなく「ハンドルバーのエクステンションの許可」の条項と読むほうが正しそうです。前回の文章を見ると「all forms of extended bars are forbidden(全ての形状のエクステンドバーは禁止する)」とあります。杓子定規に読んでしまえば、ライトやGPSマウント用のエクステンションバーも不可とも言えます。前回の車検でライトマウント用のエクステンションバーを拒否されたという話は聞きませんでしたが……もしかしたら、「これは大丈夫なのか」という質問が多かったので、明文化の意味で追加された条項の可能性はあります。「ライトマウント用のエクステンションバーは、前ではなく横を向くから許可である」と。

「which must not be pointed forward(エクステンションバーは、前を指してはいけない)」という文章を見ると、集団走行での事故防止や、追突の際の被害防止を狙った条項なのかもしれません。

以上のことから考えると、空気抵抗削減用のエアロバーは使えない前提で考えていたほうが安全と言えそうです。現地の車検で拒否されても困りますしね。

話が二転三転して申し訳ありませんが、どうも最初の解釈(エアロバーは条件付き許可)のほうが正しいようです

Twitterで、「フランス語版のレギュレーションには明示的にエアロバーの話であると書かれている」というご指摘を頂きまして、確認してみました。以下は、フランス語のレギュレーションを英語訳したものです。

On handlebars known as “3 positions or race” extensions with forearm support are allowed provided that they do not exceed the line passing through the most forward points of the brake handles.

「On handlebars known as “3 positions or race” extensions with forearm support」という、英語版のレギュレーションにはないことが書いてあります。

これはどう見てもライトマウントの話ではなく、空気抵抗を減らすために握るエアロバーの話をしていると見るのが妥当でしょう。

また、英語版に書かれていた「which must not be pointed forward」なる言葉は、一切フランス語版にはありません。単純にフランス語版では、「ブレーキレバーより前に出なければOK」と書かれています。

なお、前回参加者の方に話を聞いた所、ライトマウント用のハンドルバーエクステンションを付けていた人に対して、車検では特に指摘はなかったとのこと。

これから考えても、やはり「Handlebars extensions」はエアロバーを意図した言葉のようです。

てっきり英語版のレギュレーションはフランス語版の直訳が載っているものとばかり思っていましたが、どうも他の条項を見ても細部に違いがあります。ちゃんと内容を合わせてほしいものですが……。

また、この件についてはTwitterで「トライアスロンのエリート規則と同じことを言っているのでは?」というご指摘も頂きました。

国際トライアスロン連合のサイトに掲載されているレギュレーションを見ると、エアロバーには以下の規定があります。

・Clip-ons, including the bridge, must not exceed the foremost line of the brake levers;

ほぼPBPのルールと同じことを書いていますね。というより、PBPがこのルールを参考にしたと考えるほうが自然でしょうか。

以上より、英語版レギュレーションにある「Handlebars extensions」は、エアロバーを指すものと考えて良さそうです。といっても、ブレーキレバーより前に出ないってかなり短いエアロバーしか付かない気もしますが。ハンドルのリーチが長ければ多少長くても付く……? 私は今の所エアロバーを付ける予定は無いですが、もし付ける方は車検時に指摘されないようにしっかりと対策が必要になるでしょう。

追突時に前の人を怪我させないよう、エアロバーの先端には↑のようなブリッジを付けて先端を保護しておいたほうが車検もスムーズだと思います。

Article 9 : Equipment

[変更]

前: (safety standard number EN 1150 or EN 471).
後: (EN 1150 or EN ISO 20471 certified to meet international safety standards).

既に取り上げている反射ベストに関する規定の変更です。

前回はEN1150とEN471に適合したベストが求められましたが、今回はEN1150またはEN20471に適合したベストを着る必要があります。

[変更]

前: start control at the National Velodrome of Saint-Quentin-en-Yvelines in MONTIGNY-LE-BRETONNEUX,
後: start control at the Bergerie nationale of RAMBOUILLET

スタート地点の変更についての記載です。

前回はサンカンタンからのスタートでしたが、今回はランブイエからのスタートに変更されています。

Article 13 : Sign-in

[変更]

前: Start control will take place outside the National Velodrome of Saint-Quentin-en-Yvelines
後: Start control will take place outside the Bergerie nationale of Rambouillet

車検と受付に関する記載です。

スタート地点と同じく、サンカンタン→ランブイエへと変更されています。

[変更]

前: For safety reasons, official vehicles will lead the riders through Saint-Quentin-en-Yvelines (12 km).
後: For safety reasons, official vehicles will lead the riders through the first kilometres.

スタート直後の先導についての話です。

PBPではスタートからしばらくは先導者によるパレード走行が行われます。前回はサンカンタンの街を出るまで12kmもの間、交通規制の中を先導してもらえました。

しかし、今回は「the first kilometres.」との記載で、具体的な距離が書かれていません。「kilometres」と複数形なので数キロは先導してくれそうに見えます。

Article 14 : Opening and Closing Time of the Controls

[変更]

前: The opening and closing times indicated in the brevet card must be respected.
Note : For riders starting from 16h00 to 17h15, all opening times are free.
Riders MUST arrive at each control within the time limits.
後: Passage of the participants within the schedule of closure indicated on brevet cards is compulsory for every control.
Opening hours will be also indicated but for information only.

PC(チェックポイント)の開設時間についての話です。

ブルベのPCにはオープン時間とクローズ時間が定められており、その時間内に通過することが求められます。

今回のレギュレーションには「ブルベカードにはPCの営業時間も記載される」とありますが、前回のブルベカードにはPCの営業時間については記載がありませんでした。

裏を返せば、「PCには営業していない時間がある」とも読めますが……どうなんでしょう?

Article 15 : Homologation, DNFs and Failure to Comply with the Time Limits

[変更]

前: Whatever the time of arrival, a brevet ridden in less than 43h56 will not be homologated
後: Whatever the realized time, a brevet ridden in less than 43h24 will not be homologated

最速の認定時間の話です。

ブルベでは制限時間を過ぎると認定されませんが、早すぎるゴールも認定されません。

前回は43時間56分以内のゴールは認定とは認められませんでしたが、今回は43時間24分以内のゴールは認定とは認められないとのことです。

この時間はコースの距離によって決まります。今回は前回よりも15kmほどコースが短くなったので、時間も短くなっています。

ほとんどの参加者には関係ない話ですが、一番時計争いをする人は気にしておく必要があります。

まとめ

変更点を簡単にまとめると、以下のようになります。

  • 一度支払われた参加費等は返金されない。
  • 条件付きでエアロバーの装備が許可された。
  • 反射ベストはEN1150とEN20471を満たす必要がある。
  • スタート地点、受付地点はランブイエに変更。

準備の参考になさってください。

エアロバーに関するACPの見解 (2019/2/27追記)

FacebookのACP公式ページにエアロバーに関する見解が掲載されました。

ということで、やはり「エアロバーは条件付きOK」「ブレーキレバーよりエアロバーの先端が前に出てはならない」ってことのようです。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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