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PBP2019 リザルト考察
PBP2019のリザルトが発表されました。
通例ですと年明けであることが多いのですが、年内に発表となりました。スタッフの方が頑張ってくれたようです。お疲れさまでした。
せっかくなので、簡単に結果を考察していこうと思います。
結果サマリ
PBP2019(と、過去2大会)の結果サマリは以下です。結果からはDNS数を除き、出走者ベースで比率を出しています。
過去2大会に比べて完走率が大幅に低下しました。更に一つ前の2007年大会は69.9%でしたが、この年はまれに見る悪天候だったそうです。
それに比べて、2019年大会は雨もほとんど降らなかった(通り雨が1~2回あった程度)のにもかかわらず、ここまで完走率が低いとは予想外でした。なお、私も時間外完走なので、完走率を下げている一人です。
リザルトに掲載されたタイムはネットタイム(ウェーブのスタートからの起算)ではなく、スタートゲートをセンサが通過した時刻を起点とするグロスタイムで算出されていました。
完走率低下の要因
従来のPBPの完走率は、出走者ベースで80%前後となるのが普通です。それに比べると、67.9%という数字は有意に低いと言えます。その要因を考察してみます。
気候(気温・風)
2019年夏のフランスは熱波が心配されましたが、PBP開催中の気温はむしろ通常よりも低めでした。
朝の気温は2015年比で1~2℃低く、5℃前後まで冷え込みました。暖かい地域からの参加者にはかなり辛い気温となったはずです。
また、往路はフランスには珍しく西風が吹き、参加者にとっては辛い向かい風となりました。
参加者数の増加
2019年の出走者数は6418名と、過去最高記録となりました。2015年比で10%も増加しています。
参加者が増えると、集団(トレイン)を形成しやすいというメリットがあります。
その一方で、睡眠や食事などをこなすPC(チェックポイント)の混雑度がかなり上がったな、と感じました。レストランやトイレは待ち時間が伸び、仮眠所では寝たくても寝られないという事態が発生していました。
PCのボランティアの方は頑張ってくれていましたが、トイレや仮眠所といった面積が必要なものはどうしようもありません。PCとなる施設が決まっている以上、既にキャパシティをオーバーしているように思えます。
スタート地点の変化
スタート地点は、2019年からランブイエに変更となりました。
このランブイエという街、歴史ある街ではあるのですが、ホテルがほとんどありません。
そのため、参加者は近場の大きな街に分散してホテルを抑えることになりました。私も電車で20分ほどのトラップという街にホテルを取りましたが、スタート地点までの移動には正味1時間半ほど掛かっています。
電車の本数も多くないので、結構移動時間が掛かるのです(日本のように時刻表通りには電車が来ません)。その分、ホテルでの休養時間は減っています。
2015年までのスタート地点であるサンカンタンは中々大きな街で、ホテルも豊富でした。
前回も私はトラップのホテルに泊まりましたが、スタート地点まではたった5km。ホテルから自転車で15分あれば到着できる立地です。スタート前の1時間は結構大きいと思いました。
ただし、ランブイエがスタート地点となったことで、コース距離は1230km→1218kmと、10km以上減っています。この点は有利に働くかと思われましたが、他の要因で相殺されてしまったようです。
認定タイムの厳格化
2015年以前のPBPの結果を整理していて気づいたのですが、PBPの認定時間が「90:00(制限時間ちょうど)」という人が結構います。数人ではなく数十人です。
これはちょっと不自然だぞ、と思ってトラッキングデータを照合してみると、90:00の人たちは全て90時間を超えてゴールしていました。
共通点は、「90:30までにゴールしている」ことでした。90:31の人は認定されず、90:29の人は90:00として救済されていたのです。ちなみにこれは80時間制限の部、84時間制限の部でも同様の事例が見られました。実際、私の知人でも2011年大会に5分オーバーでゴールしながらも認定された方がいます。
ルール上は、制限時間を1分でも過ぎたら「時間外完走」扱いのはず。しかし、実は裏ルールとして、「30分オーバーまでは救済」というものがあったんじゃないかと思います(あくまでの結果からの推測)。2015年までは。
しかし、2019年の結果を見ると、90:01の人は「時間外完走」扱いになっていました。
90:00という結果の人も数名いましたが、前回よりも一桁人数が減っています。この方たちは恐らく、事故者救護などのやむを得ない事情で90時間をオーバーした人たちなのでしょう。事故者救護の時間は走行時間から引くというルールがありますので。
また、90:00:02でゴールしている人は認定されていました。90:00:59までは認定されるっぽいですね。
割と温情ある認定を出していたPBPですが、今回からはタイムを厳格に見るようになったものと思われます。時間外完走の比率が増えているのも、このあたりの影響でしょう。
当たり前ですが、ブルベは制限時間までにゴールすることが重要です。
東・南アジア勢の参加比率増
こちらの記事でも触れましたが、2019年大会は日本を含む、東アジア・南アジアからの参加者数が激増しています。
出走者ベースで比較すると、
2015年: 535人
2019年: 1066人
で、ほぼ200%に増えています。ですが、完走者数で言うと……
2015年: 275人 (51.4%)
2019年: 362人 (34.0%)
130%しか増えていません。そして完走率は34.0%と、3人に1人しか完走出来ていないことになります。
全体の完走率が67.9%ですから、東・南アジア勢がかなり完走率を下げているということになってしまいます。
東・南アジアは、
- フランスからの時差が大きい
- 気温の高い国が多い(寒さに弱い)
という地理的要因から元々フランス開催のPBPに不利ではあるのですが、今回はここに寒さが加わってここまで低くなってしまったのかもしれません。
参考までに、今回の東・南アジア勢の結果を貼っておきます。
次回大会の展望
PBPの主催であるACPが今回の結果をどう受け止めるかは不明ですが、全体的な参加者数を減らす方向に動きそうな気はします。
PCにおけるボランティアの方の負荷もかなり高かったと思われますし、PCのキャパの限界を主催側も感じ取っていると思います。
その参加者数を減らす方法ですが、「国別参加者数枠」の復活があり得るのではないかと私は推測します。
(追記)
この記事を書いた後に送られてきた2019年のリザルトブックには国別参加者数枠の復活をほのめかす文章がありましたが、2023年大会では復活せずに従来通りのエントリー方法が継続されました。
2011年大会まではこの方式が取られており、日本には288人という枠が割り当てられていました。この時は全体の参加者数上限が6000人とされていました。
2011年にはこの枠よりも参加者は少なかったのですが、2019年大会は日本から378人が出走しています。仮に2011年と同じ288人という枠が割り当てられた場合、走りたくても出走できない人が多数出てくることが予想されます。
となると、国内でセレクションをかけることになるわけですが、2011年段階では前年度の認定距離数で優先順位が決定されていました。もし、国別参加者数枠が設定された場合、次回開催の前年度となる2022年はかなりの距離の認定を取る必要が出てくると思います。