PBP 2019 フランス国内の交通ルール

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PBPはもちろんフランス国内の道路交通法に則って走らなければなりません。事故に遭ったり、検挙されたりなんてことにならないためにも、現地の交通ルールを確認しておく必要があります。

日本の交通ルールと大きく違いがあるわけではないですが、前回参加して気になった交通ルールの違いを本記事では書いていきます。

※途中で出てくる標識の画像は、Wikipediaフランス版のフリー画像を使用しています。

目次

フランスの交通ルールの注意点

日本とフランスの交通ルールの違いについては、在フランス日本大使館のサイトにまとめられています。

ただ、こちらはどちらかと言えば自動車目線の記事なので、自転車目線での解説を追加します。

右側通行

日本との最大の違いは、右側通行であることです。車道の右側車線が自転車の通行区分となります。

慣れてしまえば大したことは無いのですが、慣れるのに1日2日掛かります。出来れば本番前日にも少し街を自転車で走り、右側通行に感覚を切り替えておいたほうが良いでしょう。

着く足を変える

自転車乗り的に厄介なのは、「交差点で停車時に着く足」も切り替える必要があることです。

いつもは左側のビンディングを外して左足を着く人が多いと思いますが、右側を外して右足を着く練習をしておきましょう。

ただ、逆にバランスを崩しそうになるのであれば、日本と同様に左足を着くことで貫いても大きな問題にはならないと思います。

私は右足を着くようにしていましたが、道中見かけたイギリス人はずっと左足を付いていました。イギリスも左側通行の国なので。

そもそも、PBPのコースはほとんど信号が無いので、交差点で足を着く機会は多くないんですよね。

ミラーやライトの位置を変える

また、車体や体にバックミラーを付けている場合、日本では右側に付けることが多いと思うのですが、フランスでは左側に付ける必要があるでしょう。

ハブにライトホルダーを付ける場合も、左側にホルダーが来るようにつける必要がありそうです。

ラウンドアバウト

日本では環状交差点と呼ばれるものです。

日本にもありますが、まだまだ普及はしていません(2013年にようやく初登場)。

それに対し、フランスでは交差点がラウンドアバウトである比率がかなり高くなっています。とりわけ、PBPで走る田舎道にある交差点は8割以上がラウンドアバウトであると言っても過言ではありません。

ラウンドアバウトとは

ツール・ド・フランスの中継を見たことがある人なら、集団が交差点内の円形の島を避けて2つに別れて、交差点が終わるとまた1つの集団に合流する様子に見覚えがあると思います。あれがラウンドアバウトです。

レースでは道路を封鎖するのでラウンドアバウトに対して時計回りに進入することが許されています。

しかし、PBPは道路を封鎖しているわけではないので、ラウンドアバウトには必ず半時計回りで進入する必要があります。

round_about.jpg

代表的なラウンドアバウトの例です。矢印の方向に右折しながら交差点に進入し、円の一番外周部を自転車が走ることになります。そして、出ていきたい方向に右折して交差点から出ていきます。

優先権

ラウンドアバウトで重要になるのが「優先権」という考え方です。

基本的に、交差点で2方向から車が来た場合、フランスでは右側にいる車に優先権があります。ラウンドアバウトの場合、常に「交差点の中を走る車」よりも、「交差点に入ろうとしている車」が右側に来ます。

つまり、特に標識などで注意がなければ、交差点の中に入ろうとしている車が優先となります。パリなどの大都市内のラウンドアバウトはこちらの方式が多いそうです。

Vienna_Convention_road_sign_B1-V1.png

ただ、ラウンドアバウトの入口にこの標識が立っていると、優先度は逆転します

この標識は「ゆずれ」という意味。この標識が立っているラウンドアバウトは、交差点内にいる車が優先となります。

そして、PBPで走る田舎道のラウンドアバウトはたいていこちらの方式です(過去のPBP参加者の動画を見ると分かると思います)。

自転車の立場としては、交差点内を回っている車の列が切れた所で交差点内に進入することになります。

ラウンドアバウトの標識

France_road_sign_AB25.png

ラウンドアバウトの標識はこちら。交差点の入口手前50mくらいのところに立っていることが多いです。

PBPの道中、100回以上はラウンドアバウトを通過するので、出来ればこちらも本番前に走って慣れておくべきでしょう。

夜間(または視界不良の場合)の反射ベスト装着義務

日本のブルベではスタートからゴールまで反射ベストの着用を義務付けられていますが、これはあくまでAudax Japanが定めたルールとなります。

日本の道路交通法では反射ベスト着用を義務付ける規定はありません。

フランスでは、道路交通法で夜間の反射ベスト着用が義務付けられています

この法律に従う形で、ブルベ参加者も夜間走行時は反射ベストを着用することになります。PBPで夜間走行時に反射ベストを着ていないと、ルール違反であるだけではなく、法律違反にもなるので注意してください。逆に、PBPでは昼間の反射ベスト着用義務はありません。

詳しくは、「PBP 2019 反射ベスト要件」の記事を参照してください。

参考: フランスのWikipedia「反射ベスト」の項目

飲酒運転の基準

「フランスでは飲酒運転が認められている」というような話も聞きますが、それは間違いです。フランスでも飲酒運転に対する取り締まりは存在します。

フランスでは、血中アルコール濃度が、0.5g/リットル(呼気中のアルコール濃度換算で0.25g/リットル)を超える場合、飲酒運転と見なされます。

ただ、日本では呼気中のアルコール濃度が0.15g/リットルを超える場合に飲酒運転と見なされるので、その許容量は日本の2倍とかなり緩く設定されています。

これは、フランス人のアルコール代謝能力が日本人より高いためだと言われています。

実はPBPのPCでは酒も普通に売られています。寝て起きて分解が終わっている自信のある方は飲むのも良いかも知れませんが……その辺りは自己責任で。

私は酒は全く飲まないのでこの辺りの話は加減がよく分かりません。

歩道走行

日本では自転車で歩道を走行する人はまだまだ多いですが、フランスでは相当白い目で見られます。歩道に上がる際には押し歩きしましょう。

一方通行

France_road_sign_B1.png

日本でもおなじみの進入禁止マーク。「自転車を除く」という補助標識付いていれば自転車は進入可能です。

フランスの場合、「Sauf Cyclistes」という補助標識が付いていれば、同じ意味となります。

PBPのルート上に一方通行はありませんでしたが、パリの街中を散策する時に覚えておくと役立つかも知れません。

ベル

日本では公道を走る際の必須装備であるベル(警音器)ですが、PBPのルールを見ても特に装備すべきという記載はありません。

ただ、フランスの道路交通法を参照すると、どうもベルの装備は日本と同じく車両の義務であるようです。

【参考】Article R313-33

PBPの車検でチェックされていなかったと思うのですが、ベルは付けていったほうが無難でしょう。

ライトの点滅

2016年4月13日までは、フロント・テールライト問わず、点滅は道路交通法で禁止されていたようです。現在は点滅でもOKというように変更された模様です。

ただ、PBPのルールではライトの点滅を禁じています。法律違反にはならなくとも、ルール違反になるので、ライトは「点灯」で使いましょう。

特徴的な道路標識

大体の標識は日本と同じですが、一部違うものも存在します。

ここまで出てきた「ゆずれ」標識などは日本にはない標識ですね。すべてを網羅はしませんが、特徴的な標識を紹介しておきます。

なお、このページに頻出する「赤枠に白背景」の標識は、フランスにおいては「警告」を表す場合に使われます。日本だと「黄色背景」の標識に相当していると考えてください。「赤枠に白背景」の標識が現れたら、何かに対する注意を伝えようとしているという意識を持ちましょう。

前方交差点、当方が優先権あり

France_road_sign_AB2.png

「優先権」については先に述べましたが、この標識がある場合は、脇道が横切っていても、自分が走行している道路の方に優先権があります。

調べると日本にも同様の標識があるようですが、ほとんど見たことはありません。

PBPで通るフランスの農道には結構この標識が多く、夜中に見ると藁人形のように見えて不気味だったことを覚えています。

急斜面あり

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日本でもおなじみ、斜度標識です。デザインがちょっと違います。

家畜横断注意

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畜産が盛んなフランスでは、標識に出てくる動物も牛だったり羊だったりします。実際、道の脇から出てくることもあるので注意。

街の始まり/終わり

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標識ではありませんが、一応紹介。

フランスでは明確に街の始まりと終わりがあります。街の名前が書かれた横文字の看板が街の始まり、街の名前が斜めの赤線で消された看板が街の終わりです。

日本では大体どこに行っても家がありますが、フランスでは街と街の間には畑があり、そこには民家はありません。補給などを行う場合は、街が始まって終わるまでに行うようにしましょう。

PBPルートの路面状況

ついでにPBPのルートの路面状況についても触れておきます。

2015年のPBP前に開催された情報交換会では、「フランスの路面は荒れている」と聞いていたのですが。実際、現地に行くと結構路面は綺麗でした

あまり荒れていた覚えがないです。2015年参加者がYoutubeにあげている動画も確認しましたが、路面は綺麗なところが多いですね。前回と同じ路面ならば、23Cのタイヤで参加しても問題はないでしょう。

とはいえ、路面状況は整備の有無でいかようにも変わるものです。この4年間で路面が荒れている可能性もありますので、私は前回同様26Cのグラベルキングで参加する予定です。

まとめ

長々と述べてきましたが、基本的には「右側通行」「ラウンドアバウト」「夜間の反射ベスト着用」あたりを抑えておけば問題ないと思います。

日本で安全に自転車を運転するために心がけていることを、向こうでも同じようにやればOKです。

しつこいようですが、ラウンドアバウトの走行方法は非常に重要です。出来ればスタート前に最低一回、数時間は現地で自転車に乗るようにしてください。

同じラウンドアバウトでも、「交差点内優先」と「進入車優先」の両方があるのも忘れずに。見分ける方法は、入口に立っている「ゆずれ」標識の有無です。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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